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マザコン

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第三章


第三章

「やってやるさ」
「何も知らないから言えるんだよ」
「そんなことはな」
「なあ」
 だが周りは口々にこうしたことを言う。
「あのな、本当に凄いんだからな」
「子猫が母猫にいつもまとわりつく感じだぞ」
「そんなのなんだぞ」
「子猫だって何時か親猫になるだろ」
 しかしハイメは明るい笑顔で返すのだった。
「だからな。いいだろ」
「じゃあどうしても告白するんだな」
「それでゲットするんだな」
「世の中は何でもチャレンジだろ」
 またアメリカ人らしいことを言うのだった。
「そうだろ?アメリカ人だったらな」
「まあ精々頑張れ」
「何があっても知らないからな」
「何があるかわからないからいいんだよ」
 相変わらずの言葉である。
「そうだろ?世の中ってのはな」
「御前本当に楽観的だな」
「っていうかそれは有り得ないだろ」
「なあ」
 周りはそんな彼に呆れるばかりだった。
「しかしそれでも若しあいつをゲットできたらな」
「その時はパーティー開いてやるからな」
「おっ、いいなそれ」
 パーティーと聞いてだった。ハイメはまた笑顔になるのだった。笑顔の絶えない男なのは間違いない。性格に暗いものは見当たらないように見える。
「じゃあ用意しておいてくれよ、パーティーのな」
「ゲットできたらだぞ」
「その時にだぞ」
「いいな、それは」
「ああ、わかってるさ」
 笑顔はそのままである。
「それじゃあな」
「わかってるのかな」
「わかってないだろ」
「どう見てもな」
 周囲はそんな彼を見てこう言うばかりだった。
「まあ玉砕しても何度でもアタックするみたいだしな」
「ダメージは受けるなよ」
「ふられてもな」
「ふられる?そんな選択肢は最初からないさ」
 そう言われても平気なハイメだった。
「じゃあ行って来るな」
「さて、どうなるかな」
「俺達も上手くいくことを祈ってるけれどな」
 かくしてハイメはサリーにアタックするのだった。彼の行動は迅速かつ直線的だった。
 まずサリーのところに来てだ。こう言うのである。
「映画館のチケット二枚あるんだ」
「二枚?」
「ああ。一緒に行かないか?」
 こう言うのである。オーソドックスではある。
「一緒にさ。どうだい?」
「ちょっと待って」
 しかしであった。サリーはここで携帯を取り出した。そのうえでこう彼に対して言うのである。
「マミーに相談するから」
「相談って?」
「メールで聞いてみるから」
 そうするというのである。
「ちょっと待ってね」
「ああ、そうしなくても大丈夫だよ」
「えっ、どうして?」
「一緒に行くのが俺だからだよ」
 だからだというのである。
「それはだ。気にしなくていいよ」
「気にしなくていいって」
「次の休み一緒に行こう」
 また言うハイメだった。
「それでいいよね」
「あっ、待って」
 しかしであった。サリーはまた携帯を持ってた。そうして言うのである。
 
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