魔法科高校~黒衣の人間主神~
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入学編〈上〉
試合後の疑問解決
試合が終わったので、深雪のところに行こうとしたら呼び止められた俺。
「先ほどの不発といい、一瞬にして服部の後部へ移動、そして各エレメンツの使用についての説明を求める」
「あの草や水とはエレメンツだったのですか!」
「では順に説明をしましょう。まず始めにと、ドライグ。俺に向けて火炎弾を頼む」
「分かったぜ、相棒!」
と言ってから放ったドライグの火炎弾を手をかざしたらまるで無効化されるようにして炎が消えた。深雪が放つ魔法に対しても同じことだった。
「これは魔法及び全ての異能の力を無効化できる力。そして無効化したあとの動きは自己加速術式ではなく身体的技能です。まあその他は中条先輩の言うように属性を使ったまでのこと。先ほど出力確認をしたのは、これのためですよ」
「私も証言しますが、あれは兄の体術と風術といえるものでの技術。つまり風の力を使って加速をしたのですよ。それと兄は、忍術使い・九重八雲先生の師範ですよ」
深雪が言う前に拳銃型を脇に挟んでから、左手に蒼い風を右手に炎の球を見せた。そして深雪が言った意味を知ったけど。
「!?あの忍術使い九重八雲か!身体技能のみで魔法並みの動き・・・・さすが古流。それと弟子ではなく師範となると、君は九重先生の師範となるが?」
「正解です。私は表では親友ですが、裏では私の弟子ですよ。今いる九重寺の門下生は知っていますが」
「では中盤辺りはエレメンツによる攻撃として、終盤に電気を放ちましたが私には電気と一緒にサイオンの波動そのものを放ったように見えましたが」
驚いてばかりであったが、最後にしたのは電撃と見せかけたもんだ。一応魔法師としての戦いとしては最後ぐらいはと思って。他の魔法師が使った非公開の術式についての仕組みを詮索するのは、魔法師にとってマナー違反とされている。自身が得意とするサイオンの弾丸を駆使する七草会長は、物理的な作用を持たないはずのサイオンそのものを武器とした攻撃が一体どのようなメカニズムで副会長にダメージを与えたのか、興味を抑えられないようで。
「最後のは電撃を撃ちましたが、それだけだと倒れないのでサイオンの波動を一緒にして放ちました。あれは振動の基礎単一系魔法でサイオンの波を作ったのですよ」
「それだと電撃により倒れたと見えます、はんぞーくんが倒れた理由が分かりませんが」
「酔ったんですよ」
「酔った?電撃だと酔わないはずですが」
「確かに電撃だけだと酔いませんし、倒れたりはしません。電撃を放つ前にサイオンの波動を放ったのですが、魔法師はサイオンを、可視光線や可聴音波と同じように知覚します。それは魔法を行使する上で必須ですが、その副作用で、予期せぬサイオンの波動に曝された魔法師は実際に自分の身体が揺さぶったように錯覚をするんですよ。その錯覚が身体に影響を及ぼしたのです、まあエレメンツには催眠術で暗示をかけることも出来ますが。それはあくまでエレメンツ使いとしてですので、最後に魔法師らしく使ってみたということです。そして激しく揺さぶられたという錯覚のあとに電撃を受けたので、ダメージ自体は揺れによるものになります」
「そんな、信じられない・・・・魔法師は普段から、サイオンの波動に曝されて、サイオン波に慣れているはずよ。無系統魔法はもちろんのこと、起動式だって魔法式だってサイオン波動の一種だもの。それなのに、魔法師が立っていられないほどのサイオン波なんて、そんな強い波動を、一体どうやって・・・・?」
とまあそんな感じだったけど、俺としては属性を使うという方が得意だ。あとは殺傷性はどれもあるが、出力を抑えれば風の刃だってただの衝撃波となって身体が前に倒れるようにした。花びらの舞も頬に傷が付く程度の威力を抑えた方だ。電撃もだが。
「波の合成、ですね」
「リンちゃん?」
まだ疑問だった会長は市原先輩の一言でもまだ理解はできなかった。
「振動数の異なるサイオン波を三連続で作り出し、三つの波がちょうど服部君と重なる位置で合成されるように調整をして、三角波のような強い波動を作り出したんでしょう。よくもそんな、精密な演算ができるものですね」
「お見事です、市原先輩」
俺の演算能力については呆れていたが、まだ疑問があるようだった。あとはそれを初見で見抜くのは凄いと思ったが。
「それにしても、あの短時間にどうやって振動魔法を三回も発動できたんですか?それだけの処理能力があれば、実技の評価が低いはずがありませんが」
正面から成績が悪いと言われているが、俺がそうさせたからだ。実技の評価もホントは高いけどそうしたのは入学前に話した事だ。で、なぜか知らんがさっきから俺の持っているCADを覗きこんでいるのが分かる。
「あの、もしかして、織斑君のCADは『シルバー・ホーン』じゃありませんか?」
「シルバー・ホーン?シルバーって、あの謎の天才魔工師トーラス・シルバーのシルバー?」
会長に言われると中条先輩の表情が明るくなった。「デバイスオタク」とも言われているそうで、嬉々と語りだした。
「そうです!フォア・リーブス・テクノロジー専属、その本名、姿、プロフィールの全てが謎に包まれた奇跡のCADエンジニア!背かで初めてループ・キャスト・システムを実現した天才プログラマー!あ、ループ・キャスト・システムというのはですね、通常の起動式が魔法発動の都度消去され、同じ術式を発動するにもその都度CADから起動式を展開し直さなければならなかったのを、起動式の最終段階に同じ起動式を魔法演算領域内に複写する処理を付け加えることで、魔法師の演算キャパシティが許す限り何度でも連続して魔法を発動できるように組まれた起動式の複写を両立させる演算能力の配分がどうしても上手く行かなかったのを・・・・・」
「ストップ!ループ・キャストの事は知っているから」
「そうですか・・・・?それでですね、シルバー・ホーンというのは、そのトーラス・シルバーがフルカスタマイズした特化型CADのモデル名です!ループ・キャストに最適化されているのはもちろん、最小の魔法力でスムーズに魔法を発動できる点でも高い評価を受けていて、特に警察関係者の間でも凄い人気なんですよ!現行の市販モデルであるにもかかわらず、プレミアム付で取引されているくらいなんですから!しかもそれ、通常のシルバー・ホーンより銃身が長い限定モデルですよねっ?何処で手に入れたんですかっ?」
「あーちゃん、チョット落ち着きなさい」
息が切れたのか深呼吸しながら、中条先輩は目をハート型にして俺の手元にある物を見つめている。会長が言わなければ、俺と至近距離になる可能性が高いが。やはりこの世界・外史でも中条先輩はこんな感じなんだなと思った。元々ここにいるメンツが何を喋るのかは、予測済みだし。月中基地本部にいるあいつらは元気にしているだろうか。
「でも、リンちゃん。それっておかしくない?いくらループキャストに最適化された高性能のCADを使ったからって、そもそもループキャストじゃ・・・・」
おっ、やっと気付いたのかな。でもそろそろあいつらが来ると俺の脳量子波から警告が来ている。いつゲートが開くのか、どこで開くのか。深雪やドライグたちも気付いていたけど、深雪の禁手化も見られるのかね。
「ええ、おかしいですね。ループ・キャストはあくまでも、全く同一の魔法を連続発動する為のもの。同じ振動魔法といえども、魔法師の設定する波長や振動数が変われば、それに合わせて起動式も微妙に異なります。同じ起動式を自動生成して繰り返し使用するループキャストでは、『波の合成』に必要な振動数の異なる複数の波動を作り出すことはできないはずです。振動数を定義する部分を変数にしておけば同じ起動式で『波の合成』に必要な、振動数の異なる波動を連続で作り出すこともできるでしょうけど、座標・強度・持続時間に加えて、振動数まで変数化するとなると・・・・まさか、それを実行しているというのですか?」
またまた驚愕した市原先輩の顔を見るのもいいけど、あいつから教えられたときはまるでそういう顔で俺も驚いたが。
「最初の無効化に中盤のエレメンツ、そして終盤のあれが一番分かると思いますが。多変数化は処理速度としても演算領域としても干渉強度としても評価されない項目ですからね。私の力は周りから見ると規格外な力として、だから学校での魔法実技ではあまり評価されないのですから」
「・・・・実技試験における魔法力の評価は、魔法を発動する速度、魔法式の規模、対象物の情報を書き換える強度で決まる。なるほど、テストが本当の実力いや能力か。それを示していないとはこういうことか・・・・」
と立ち上がろうとしているが、まだ酔いの錯覚に電撃の後だからまだ身体が痺れているはず。俺は副会長の前に立つ。
「な、何をする?」
「こういうことですよ、服部副会長。あまり無理して立つと倒れますからね」
と言って服部副会長に向けて手をかざしてから光輝いた。輝きが終えると真っ黒になっていた身体は綺麗さっぱりなくなり、酔いも身体状況も試合をする前に元に戻した。
「あれ?さっきまでの酔いに電撃で痺れたはずなのに、回復している?それに真っ黒焦げになったのにそれも消えている」
「一真君。今はんぞーくんに何をしたのですか?」
と聞かれたので、「回復魔法」とだけ言ったけど。そのあとずっと俺ら会話を聞いていたそうだが、物欲しそうにしていた中条先輩の目は俺のCADに向けられるのでとっととしまった。ケースではなく服の中にあるホルダーにしまったからだ。それに俺のはただのCADではないからな、各エレメンツも最小から最大の威力を発揮するし全系統魔法を使えるようにチューニングをしたからだ。
「織斑さん」
「はい」
ようやく言い訳を終えて妹である深雪に言ってきた服部副会長。それに声のトーンがさっきより違うのが分かる。
「さっきは、その、身贔屓などと失礼などと失礼なことを言いました。目が曇っていたのは、私の方でした。許してほしい」
「私の方こそ、生意気を申しました。お許し下さい」
深々とお辞儀をするけど、これはあいつからの電話で特別に許すという方がいいな。俺は通信機器を出してある人物にかける。そして出たので、俺はスピーカモードにして副会長に言う。
「服部副会長。私の実力と深雪の曇ってはいなかったようだが、私に散々暴言を吐いたのはお忘れですかな?それについてある人物からの電話からぜひとも生徒会のメンバーと話したいというのだが、いかがかな?」
「誰なのですか?」
まあ聞けば分かると言ってスピーカーモードにした俺は通信端末から腹話術で零達也の声を出した。
『やあ初めましてもいるが、久しぶりとでも言おうか』
「この声は零達也社長?」
「ええええええっ!あの大企業蒼い翼のCEOをしていて、さっき言っていたトーラス・シルバー並みに謎の人物とされているあの零達也ですか!会長」
「そうだな。せっかくだから零社長の前で一真君に謝ってもらおうか?」
「副会長には言っていなかったが、達也とは親友でね。副会長が散々言った事も聞いていたのだよ」
『さて、そこにいる服部刑部少丞範蔵殿。初めましてと言おうか、まあいいとして俺の友達である一真に向けてのことは聞いている。前あった一科との殴り合いのことも、まあ今謝るのであれば官職を無くしたりしないようにしとくがどうかね?』
と言った俺であったが、ちゃんと謝罪をしてから謝ってきたので俺は許したので零達也も謝罪を受け取り、服部家に対することもしないと言ってから電話を切った。俺の後ろ盾の意味を知ったからこそ、認めた相手として顔は気持ちのいい顔になっていたけど。そしてドアに向けて歩き出した服部副会長だったが、ドアが開かないようだった。
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