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鎮守府にガンダム(擬き)が配備されました。

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第1部
  第9話 星一号作戦、発動

 
前書き
第9話です。
短いです。
コーヒーブチまけて吹っ飛んだパソコンが修理から帰ってきたら9話の書き途中のデータ無くて泣きました。
みなさん、執筆しながら艦これやるのはやめましょう(;´Д`A 

 
8月22日 PM7:25
横須賀鎮守府 第2埠頭
エインヘリアル艦隊旗艦 リンドヴルム
第1カタパルト


吹き荒ぶ夜の潮風に、縛った髪が揺れる。
潮風に微かに紛れる異様な空気に、頰がピリピリと痺れるような感覚を感じた。

「こんな所にいたのか」
「…ラトロワか、何の用だ」
「用が無いと来てはいかんのか?」
「んな事言ってねぇだろ」

カタパルトの縁に座って煙草を噴かす俺を、ラトロワは呆れたように見下ろしている。

「……艦長、出港準備の進捗は…」
「カズハ、〝今は2人だけだぞ〟。
そう硬くなるな」
「……」
「……ふっ、お前は昔からそうだ。
純粋というか…単純というか……」
「…悪かったな単細胞で」

隣に腰掛けたラトロワが意地悪そうな笑みを浮かべた。
俺が向こうの世界に行ってから、ずっと面倒を見てくれていたのはラトロワだった。
サイド6生まれの宇宙育ちで、引っ越して来た俺を軍務に明け暮れていた向こうの親父に代わっていろんな場所に連れまわしては、よくラトロワの両親に叱られたものだ。

「艦隊結成から6年、ラトロワと初めて出会ってから22年か……早いもんだ」
「もうそんなに経つのか……あの頃が懐かしいな」
「訓練校じゃ、2人揃ってバカやったな」
「PXでの乱闘騒ぎの事か?
私の事など放っておけば良いモノを、お前が横槍を入れるからだぞ?」
「幼馴染の大親友が馬鹿にされて、黙ってられるかよ」
「それで2人揃って営倉入りとは笑えるな」

2人で腹を抱えて盛大に笑い合う。
思えば、こうして2人で居るのも久しぶりだ。

「……お前なら大丈夫だ」
「えっ?」
「何を迷ってるのかは知らんし、詮索する気もない。
だがこの艦隊の提督はお前だ。
我々はお前を信頼している、お前が信じる道を行け。
我々はその背後に着いて行くだけだ」

真っ直ぐな瞳で俺を見つめるラトロワに、内心ドキッとしながら、平静を保つ。
その純粋な力強い眼差しに、俺の悩み事なんて一溜まりもなく崩れ去った。

「……提督、時間だ。
埠頭へ来て頂きたい」
「…了解だ、行くぞ大佐」

俺は心の中で一言だけ礼を言い、ラトロワを連れ立って歩き出した。


◉◉◉


横須賀鎮守府 第1埠頭


すっかり夜の闇に覆われた鎮守府の港。
その港の埠頭に、多くの人々が集まり、列を成していた。
人種も様々、艦娘や妖精の姿もあり、一様に物々しい雰囲気に包まれていた。

昼間に突如奇襲を掛けてきた深海棲艦の艦載機群は、針山のように乱立する防空陣地を猛然と爆撃。
防空指揮所を破壊された防空陣地が、その効力を半減させた頃合いを見計らい、後続の第二波と共に横須賀鎮守府を襲った。

幸い民間人の避難は済んだものの、繋留されていた各国の艦娘達は空襲に晒され、大損害を被った。
侵攻してきた艦載機群は艦娘達の対空射により大半が撃墜されたが、轟沈は無いものの大多数が大破、中破状態である為、接近しつつある敵深海棲艦の主力艦隊の迎撃には出る事が出来ない状態だった。

そこで、唯一損害の軽微であるリンドヴルムに、日本帝国大本営から直々に作戦の打診があった。

リンドヴルムの最大火力を持って、敵大艦隊を殲滅する……という至ってシンプルな作戦だ。

「……以上が作戦概要であるッ‼︎
では、日本帝国全権代行、煌武院悠陽殿下の御言葉を賜うッ‼︎
総員、敬礼ッ‼︎」

埠頭の集団の中心。
リンドヴルムの乗組員の隊列の前に置かれた演説台に煌武院悠陽殿下が登り、その場の全員が一糸乱れぬ敬礼で迎える。

「……まず此度の作戦を了承して頂き、誠に有難う御座います。
そして、本来ならば我々が征くべき死地に、貴方達を追い遣る事しか出来ない私を、どうかお許しください。
貴方達の力は、今や我々人類にとって必要不可欠な存在です。
ですから、必ず……必ず‼︎
……もう一度、この場に帰還して頂きたいのです。
願わくば、貴方達の挺身が人類の未来の礎とならん事を切に願います……」
「敬礼ッ‼︎」

簡素ながらも力強い言葉を放ち、悠陽殿下は壇上より退いた。
その壇上に俺は入れ替わりで歩を進めた。

「総員、艦隊司令に対し、敬礼ッ‼︎」
「……直れッ‼︎ 艦隊司令より、天皇陛下の御言葉を賜うッ‼︎」

艦隊員の敬礼に答礼し、懐から一通の手紙を取り出し、声を張り上げた。

「……本作戦ノ成功、モトイ日本帝國國民並ビニ全人類ノ生命ノ存亡ハ、一重ニ諸君等ノ双肩ニ有リッ‼︎
眼前ノ敵ヲ見事撃滅シ、本作戦ヲ遂行セシメヨッ‼︎
……本作戦の遂行に至って、俺から改めて言う事は何も無いッ‼︎
1人1人が、エインヘリアル艦隊員としての誇りを胸に、一騎当千の力を発揮すれば、成し得ない戦では無いと俺は信じているッ‼︎
……人類ノ興亡此ノ一戦ニ在リッ‼︎
総員、死力ヲ尽シテ勝利セヨッ‼︎
只今を持って、星一号作戦を発動するッ‼︎」
《《《オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーッ‼︎》》》


漆黒の闇に、異界の戦士達の雄叫びが谺す。
この戦いの先に待ち受ける戦士達の行方は未だ分からず……。

今、激戦が始まろうとしていた。


◉◉◉


「彼等は征くようです、姫」
「……そう」

人気の無い林の中、戦艦棲姫とル級、ヲ級が埠頭の様子を伺う。

「我々は如何するのですか? 姫」
「…………」

押し黙る戦艦棲姫。
その瞳は真っ直ぐ〝彼〟を見据えている。

「……私は…」

〝彼〟の言葉が頭の中に谺す。
そして、何かを決断した戦艦棲姫は、1人海へと歩を進めた。

嘗て、世界最大と言われた戦艦の強い意志が、戦艦棲姫の瞳に、再び燃え盛り始めていた。

 
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