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旧エクリプス(銀河英雄伝説編)

作者:cipher
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第04話 地球教

帝国暦457年10月 2日 地球 地球教本部 総大主教の部屋

Side タチコマ

光輝とタチコマが総大主教の部屋に訪れるのは、2度目である。
1度目は、総大主教のDNAマップを取得する為に訪れていた。
今回は総大主教のすり替えが目的である。

『光輝さん、睡眠スプレーの照射が終わりました。総大主教は朝まで起きません。』

タチコマが電脳通信で光輝に連絡する。
その後、扉が開き光輝が部屋に入って来る。

「サイレント・・。もう声を出して構わないぞ。この部屋の外には音が漏れない。」

光輝はサイレントの魔法を使い部屋の外に音が漏れないようにして、タチコマに話し掛ける。

「光輝さん、後のハッチ開きました。」

タチコマが答えると、後ろのハッチから一人の男が降りてくる。その姿は総大主教そのままである。それもその筈、総大主教のDNAマップから作られたバイオロイドである。3年も前からミニコマ達に総大主教を見張らせ、言動や立ち振る舞いを観察し総大主教の擬似人格を持っている。

「よし、総大主教の服に着替えろ。」

総大主教のバイオロイドは、クローゼットから服を取り出し、着替えを済ました。

「次は総大主教をタチコマのポッドに入れるのを手伝え。」

光輝の司令で、光輝とバイオロイドは総大主教をタチコマの後部ポッドに押し込んだ。

「今からお前が総大主教だ。」

「はい。分かりました。」

光輝とタチコマは熱光学迷彩で姿を消し、来た道を戻って行った。


Sideout


帝国暦457年10月 3日 地球 地球教本部近郊 病院船

Side プロト

「光輝さん、お帰りなさい。」

プロトが光輝とタチコマを出迎える。ここは、ヒマラヤ山脈の地下にある地球教本部の出入り口から離れた場所に停泊している病院船だ。
病院船も熱光学迷彩で視認されない様にしてある。

「夜分済まないが手伝ってくれ。」

そう言うと光輝とタチコマは、病院船の手術室に向かった。プロトも後を追うように手術室に入った。

「今から総大主教の電脳化手術を行う。」

「了解しました。」

光輝とプロトはタチコマの後部ポッドから総大主教を降ろすと、手術用の医療ポッドに総大主教を寝かせた。
光輝は医療ポッドのコントロールパネルを操作して、ポッドのハッチを締めるとポッド内に霧のようなガスが充満して、殺菌を行う。
医療ポッドは自動化された手術マシンである。いくつもの世界の技術が詰め込まれている。それから二三時が経過して、総大主教の電脳化手術は終わった。
電脳化とは、脳に直接、膨大な数のマイクロマシンを注入し、神経細胞とマイクロマシンを結合させ、電気信号をやりとりすることで、マイクロマシン経由で脳と外部世界を直接接続する技術である。
総大主教の場合は外部世界とはアクセス出来ないよう施してある。

「これから総大主教の記憶を全てバックアップする。」

この為の電脳化であった。
バックアップが行われている間に、光輝は諜報活動で得た、地球教本部のコンピュータのバックアップや電子化された書物や書類を一通り目を通す。

「ここまで来るともはや怨念だな。」

光輝は地球教がしてきた暗殺などの陰謀を目にしてため息を漏らす。

「光輝さん、バックアップには暫く時間が掛かります。休憩室でお休み下さい。」

プロトが光輝を労った。

「そうさせてもらう。」

光輝はプロトの言葉に従うと手術室を出て行った。


Sideout

その後、数日はこの場所に停泊する事になった。地球教の情報をフェザーンのマザーコンピュータに送り、今後の対応を協議する事と、総大主教のバイオロイドの補助記憶装置に、総大主教の記憶をコピーする為である。
今、病院船は地球を離れ、ローエングラム星系を目指して航行している。


帝国暦457年10月10日 地球とローエングラム星系の航路 病院船

Side 総大主教

「ここはどこだ・・。」

暫くして、扉をノックして一人の男が入ってきた。

「お目覚めですか、総大主教猊下。」

「ここはどこだ。貴様は何者だ!」

「この船は病院船ですよ、猊下。ゆっくり落着いて話を聞いてください。私は光輝(こうき)一条(いちじょう)と申します。猊下を拉致させて頂きました。今この船は地球からローエングラム星系に向かっております。」

「・・・。」

「過去の総大主教が何をやったか、猊下が何を企んでいるのか、地球教本部のコンピュータの情報と猊下の記憶を拝見しました。またフェザーンとの関係も調べがついております。」

「・・・。」

「猊下の影武者が今の地球を支配しております。次期に猊下のお仲間達も同様な措置をとります。一緒に死ぬまで自分達のしてきた事を懺悔(さんげ)すると良いでしょう。」


Sideout

この後も罪を認められる者は、バイオロイド達にすり替えられ、地球教は皆が知らない内に壊滅した。
フェザーンは地球復興の為、溜め込んでいた資産を徴収されるその殆どがエクリプス社に流れていた。
地球は資源が枯渇していると思われているが、それは可採埋蔵量(かさいまいぞうりょう)の話で、地下資源の埋蔵量のうち、技術的・経済的に掘り出すことができる埋蔵総量から、既生産分を引いた量のことを言う。
地球の4分の1は、鉄で構成されている。
光輝達は核融合炉の膨大な電力を利用した熱分解応用した資源採取技術により、通常は採算の合わない土壌からでも微小金属を採取出来る。また海底の鉱脈やマグマからも資源採取できる為、資源を輸入しなくても地球復興が可能だった。
またマイクロマシンにより放射能汚染も除去できる。
その事を知らないフェザーンの自治領主は総大主教の言われるまま、地球復興為に資金や資源を用意する。またエクリプス社は自分の手の物だと知らされている為、何の疑いも持たずに資金や資源を渡したのである。
こうしてその資金と資源を活用して、銀河帝国の直轄領は開発されて行くのである。
 
 

 
後書き
原作のアスターテ星域会戦まで、後30年です。
原作と違い門閥貴族を排除して資産没収しなくても、総大主教を操ればフェザーンから資金を巻き上げられます。 
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