【完結】剣製の魔法少女戦記
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第六章 正義の在り処編
第百八十二話 『リオン、再び』
前書き
更新します。
再度の対決です。どうなることか………。
ではどうぞー。
あの謎のスバルとティアナを指定してきた人物の映像から翌日の夜………つまり明日、パークロードに二人だけで向かうことになっている。
そんな中でスバルとティアナは自室で黙り込みながらもお互いに真剣な表情でデバイスを磨いていた。
明日、もしかしたらまたリオンと戦うことになるかもしれない。いや、絶対に戦うことになるだろう。
二人はそれを予測しながらもどうやってリオンを説得、あるいは捕縛するかを考えていた。
そんな折、スバルがティアナに話しかける。
「………ねぇ、ティア」
「なに? スバル?」
「明日のことなんだけどね………」
「ええ。わかっているわ、スバル。どんなことになっても必ずリオンを説得するんでしょう?」
「うん………。でもね、リオンにもあたし達に話せない事情とかもあると思うんだ。それで結局は戦闘も起こると思う」
「そうね」
ティアナもそれを予測していたのだろう、少し疲れた表情になる。
それからすぐに表情を引き締めて、
「でも、まずは戦闘は回避の方向でいきましょう。あたし達が戦闘になったら無関係なパークロードに遊びに来ている一般市民にも被害が出ちゃうんだからね?」
「うん。やっぱりそれが問題だよね。対等に話をしたいのにリオンの背後にいる奴のせいであたし達は後手に回らざるえないからね………」
「そう。リオンの背後にいる奴の尻尾くらいは掴みたいわね。そうすればシホさん達が必ず対応に当たってくれるはずだから」
「八神部隊長もなにかしら手を打つって言っていたから……だから、あたし達はあたし達でできるだけの事をしよう。精一杯!」
スバルは腕を上げて「ふんすっ!」と息を吐く。
それにティアナは思わず笑い出す。
「ふふっ、相変わらずスバルらしいわね。難しいことはとりあえず後回しにして目の前の問題だけを片付けることだけに集中しちゃうんだから………」
「ダメ、かな………?」
それでスバルは少し不安そうに瞳を揺らす。
「いえ、ぐじぐじ後ろ向きに考えるよりかは健全でいいんじゃない? そう、あたし達はいつもやることなすことすべてぶっつけ本番で挑んでいった。今回もそれでいいと思うわよ。いつも通りよ」
「そうだね! いつも通りだよね、ティア!」
スバルはそれで嬉しそうに声を弾ませる。
「(そう、いつも通りのあたし達でいけばいいのよ………。でも、どうしてだろう? この胸にあるっ不安が消えないのは………)」
ティアナは外面だけではスバルを元気つけるくらいには余裕はあった。
だけど内心ではかつてない不安でいっぱいであった。
それがなにかは分からないが、きっとあたしのターニングポイントになりえるかもしれない出来事が起こるかもという漠然な思いであった。
スバルはリオンを説得することに燃えて、ティアナは得も知れない不安感に塗りつぶされないように心を強くしながらも、二人はお互いに明日のために鋭気を養うためにすぐに就寝についた。
◆◇―――――――――◇◆
そして、翌日。
つまり予告された日のこと。
スバルとティアナの二人は私服でありながらもお互いにデバイスは肌身離さずに持ち歩きパークロードに訪れていた。
シホ達は今頃どこかで待機しているのだろう、どこかで見守ってくれているという思いで二人は人がたくさん出歩いている中、真剣な表情で先を進んでいき指定された場所へと向かっていく。
そして到着したその場所にはこれまた私服姿のリオンの姿があった。
リオンの周りだけなぜか人が寄り付いてこないから実質大声でも上げない限りは三人の会話は観客達には聞こえることはないだろう。
「………」
そしてリオンは無表情でこちらへと振り向く。
それに思わずスバルは声を上げようとしたが、それを堪えてらしくないと思いながらも冷静な声で、
「リオン………」
「スバル、ティア………来てくれたんだね……」
「「ッ………!」」
リオンは声を発する。
しかしその音色は嬉しい半分悲しい半分のような感じであった。
そしてその瞳はかなりの具合で揺れていて、それを見た二人はまるで暗闇の中をさ迷う子供のように見えたという感想を思い一瞬言葉を詰まらせる。
でも、それではいけないとスバルは思い質問を投げかける。
「ねぇリオン、教えてほしいんだ」
「なにを………?」
「どうして、その、暗殺者なんかに………」
「どうして、か………」
それでリオンは顔を俯かせて表情に影を作らせて、
「簡単な答えだよ、それが私の唯一与えられた仕事だったから」
「なっ!」
それで黙って聞いていたティアナが思わずといった声を上げる。
それでもリオンは気にせずに話を続ける。
「少し、昔話でもしようか。私はある人からあのみんなで過ごした訓練校に“自分たちの配下にふさわしい戦士をさがす”という密命を受けていたの」
「自分たちの配下に………」
「ふさわしい戦士をさがす………?」
スバルとティアナはリオンの言葉に困惑の表情を浮かべる。
「そう。それが唯一与えられていた任務だったの」
「そんな………それじゃリオンは最初からあたし達を狙って接触してきたっていうの?」
「ううん………最初はだれでもよかったんだ。それがたまたまスバルとティアの二人だけだった………ただそれだけのこと」
「でもそれじゃおかしいんじゃない………?」
「ティア………?」
スバルの前に半歩出てきてティアが言う。
「それなら最初から最後まであたし達を勧誘して仲間に引き入れればよかったじゃない? なのにリオン、あなたは結局最後まであたし達を勧誘してこなかった。これはどういう事………?」
「うん。やっぱりティアは鋭いね。私もね、最初は勧誘しようとしたんだ。けど、なにも夢や希望もなかった私と比べて二人には立派な夢があった。
スバルは高町なのは一等空尉やシホ・E・S・高町一等空尉のように強く、そしてたくさんの人を助けられるような人になりたいっていう夢。
ティアは死んでいるかもしれないお兄さんの夢を継いで立派な執務官になるっていう夢。
私には、眩しかった。いや、眩しすぎた………。
だから私は二人の勧誘を諦めた………」
リオンの告白に二人は少し悲しい表情になる。
「リオン、夢や希望もないなんて、悲しいこと言わないでよ……。見つければいいじゃない?」
「無理なんだよ、スバル。私には、最初から、そして最高評議会のあいつ等を殺してからはもうそんな権利もないんだから」
「権利だなんて………ッ!」
スバルがそう叫んだ瞬間だった。
突如としてどこからともなく「ドォオオオン!」という爆発音が響いてくる。
「なに!?」
「爆発!?」
スバルとティアナの二人はそう叫ぶ。
そして同時に観客が次から次へと悲鳴を上げて逃げ出していく。
「リオン、これって!?」
「ああ、安心してティア。あれはただの空砲の音だから。私達の戦いには一般人は巻き込みたくないからね」
そしてリオンの言ったとおりに観客のほとんどはいつの間にか避難誘導でもされたのだろう、いなくなっていて残ったのはリオンとスバル、ティアナの三人だけになった。
「これで、思う存分戦える………」
そしてリオンはバリアジャケットを纏う。
その姿はあの深夜の時はあまり気にしていなかったので見られなかったが青を基調としたもので、上半身には黒いボロボロのフードを纏っていた。
その手には鍔の部分にリボルバーがある銀色のサーベル型のデバイスが握られていた。
デバイス名は『シルバー・ブレッド』。
それを握り、リオンは二人に向けて構える。
「いくよ」
「待って、リオン! あたし達はまだ!」
「スバル、今はあきらめなさい! 空砲とはいえ一般市民に危害を加えようとしたのは確かなんだからリオンを逮捕するわよ!」
「でも!」
「前にも言ったわよね!? 事情を聴くことなら捕まえた後にでもできるって!」
「あ、うん!」
「いくわよ!」
「「セットアップ!」」
そして二人は覚悟を決めてバリアジャケットを纏った。
「準備はいいね? いくよ!」
リオンはシルバー・ブレッドを構えて二人に疾駆してくる。
それをスバルが前衛、ティアナが後衛で構えて対抗する。
「リオン! きっと事情は聞き出すからね!? だから、今は!」
それでスバルはリボルバーナックルのタービンを回転させながらマッハキャリバーを吹かして突撃をする。
ティアナもクロスミラージュを片方で構えてクロスファイアを精製する。
「うぉおおおりゃーーー!!」
スバルの渾身の拳がリオンに迫る。
それをリオンは刀身で衝撃を抑えるようにしながら受け止める。
そのまま反動を利用して回転をしてスバルの背後に回り遠心力がかかった剣の切り付けをしようとする、がそこでティアナのクロスファイアが通過して、リオンはすぐにバックステップで避けきる。
「っ、さすが………」
「動きは止めさせない!」
スバルは攻撃がいなされたことを察したすぐにウィングロードを展開して急反転をしてティアナのクロスファイアに集中しているリオンの背後を取る。
そのまま高速で足蹴りをかまそうとする、が、リオンは意表を突いたはずがクロスファイアに突撃していきスバルの足蹴りを難なく避けてティアナに突撃していく。
「あたしが狙いか………。常套手段ね。でも………! “大地を掴め”!!」
ティアナはクロスミラージュをモード2、ダガーモードにして瞬動術をかまして今度こそリオンの意表をつくことをした。
瞬動術をかました瞬間、ティアナの地面が爆ぜる。
それは単純で突撃してくるリオンの目の前に一瞬で移動をかまして、
「“振動を放て”!」
ダガーモードを構えている反対の手を独特の握りをして魔力球を展開して構えて、ティアナは目を見開いているリオンの胸に魔力球とともに手を添えた。
「破ッ!」
瞬間、ティアナの足先から伝達し手の先まで伝わってきていた力が一気にリオンに向けて解放されて振動をリオンの体の内部にまで振動させる。
「カフッ!?」
それでリオンは思わず前のめりにのけぞる。
そう、ティアナが使用したのはシホお得意の中国拳法の浸透剄をリオンに叩き込んだのだ。
過去になのはが編み出してヴィータに叩き込んだオリジナルの技、ディバインシェイクバスターという技がある。
今回ティアナが使用したのはこれをなのはがシホとともに完璧に調整して完成したその名も『新・ディバインシェイクバスター』という技になる。
ティアナは銃型のデバイスを使うことから後衛型だと思われるが近距離戦の技能も充実しているのである。
閑話休題
それでリオンは地面に倒れてそこにティアナが首筋にダガーをつけながらも、
「あたしを援護タイプだと思っていたリオンの負けね。これでもシホさん達に鍛えられているだけあるのよ? さて、降参しなさい。リオン」
ティアナがそう言って降伏宣言をリオンに突きつける。
スバルもリオンの背後に立ち無言で警戒している。
だけども、リオンはそこで小さいながらも呟く。
「………私には、後がないんだ。………だから、こんなところで、負けるわけには………」
「「ッ!?」」
リオンの体に雷と風の魔力が吹き荒れる。
それによってそばにいたティアナは思わず吹き飛ばされる。
「ティア!? くっ!」
スバルがすぐにウィングロードを展開して空に飛ばされたティアナをだっこする。
そんなことも構わずリオンは発する。
「負けるわけには、いかないんだぁあああーーー!!」
咆哮とともにリオンの体からスパークが発生してその場に積乱雲を発生させる。
「モード2! 風神! 雷神!」
シルバー・ブレッドが双剣タイプの風神と雷神へと変化する。
そしてそれをスバルとティアナの二人に構える。
風神には風が纏わりつき、雷神には雷が宿り放電現象を発生させる。
「あああああああああーーー!!」
目を大きく見開きながらも見た目暴走しているかのようにそれぞれの属性が宿っている双剣をまだ態勢を整えていないスバルとティアナの二人に振り下ろした。
それは緑と黄色の魔力刃を発生させて向かっていく。
「いけない!」
スバルは急いでプロテクションを展開しようと手を構えるが、それより早く二人に魔力刃が衝突してしまった。
「うわぁあああーーー!?」
「きゃああああーーー!?」
二人の体に電気が流れて感電してしまい、風の刃でさらにバリアジャケットを切り刻まれていく。
そして「ドサッ」と二人は地面に倒れる。
「はぁ、はぁ、はぁ………」
リオンは荒い息をしながらも気持ちが次第に落ち着いてくる。
そして落ち着いたと思った矢先に自身がやってしまった事を自覚して目を見開く。
「あ………わ、私はなにを………?」
リオンの目には倒れて起き上がってこない二人の姿が映る。
「あ、あぁあああぁあああ!? スバル、ティア!? そんな、私は………!?」
先ほどの攻撃は無意識だったのであろう、リオンはその場でやってしまった事を後悔してしまっていた。
親友達を傷つけてしまった………。
傷つけずに捕縛しようと考えていたのに、私は!と……。
それでリオンはすぐに駆け寄ろうとするが、そこで、
「リィオ~ン? 手間取ったようだけど終わったようだねぇー?」
「ヒッ! あなたはッ!?」
そこで謎の男性の声が聞こえてきたのだった。
リオンはその声に思わず脅えるのであった。
後書き
奮戦はしたもののやられてしまったスバルとティアナ。
そして現れた謎の男性の正体とは………?
どうなるかは次回をお楽しみに!
―――こんな展開で大丈夫か?
―――大丈夫だ。問題ない。
それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
では。
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