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リトルマーメイド

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4部分:第四章


第四章

「それはね」
「そうでしょ?だから私だって」
「水着なんだ」
「そういうこと。誰だって無理よ」
「そうだよね。考えてみれば当然か」
「そういうことよ。それでだけれど」
 今度は魔矢の方から言ってきた。
「私もちゃんと着いたでしょ」
「そうだね」
 明信はこのことに話が戻ってきたことに少し戸惑った。それまでの水着のことが頭に残っているからだ。それで戸惑っているのである。
 それでもだった。何とか落ち着いてだ。摩耶の話を聞くのだった。
「それは本当にね」
「どう?凄いでしょ」
 摩耶は自慢げな顔で明信に言ってきた。
「泳ぐことには自信があるからね」
「言うだけはあるね」
「将来は水泳選手になれるかな」
「なれるんじゃないの?ちゃんと」
 明信は少し真剣にその言葉に頷いた。
「ずっと泳いでいったら」
「泳ぐわよ、私」
 摩耶は実際にそうすると答えた。
「泳ぐの大好きだし」
「そうすればいいよ。それじゃあだけれど」
「戻るのね」
「戻るだけの体力ある?」
 今度はそれが心配だった。明信は摩耶に問い返す。
「それは。ある?」
「あるわ」
 返答は一言だった。
「ちゃんとね。あるから」
「そう、あるんだ」
「今度も競争?どれだけ長く泳げるか」
「いや、もうそれは止めよう」
「しないんだ」
「うん、止めよう」
 そうするというのである。
「後は帰るからそれをしても意味がないからね」
「帰るだけだからなのね」
「そう、だからね」
 それでだと話すのである。
「もう競争は止めよう」
「速さは競わないの」
「速さを」
「距離だけ競争してもあれじゃない。それはどうかしら」
「ううん、どうしようかな」
「私はいいわよ」
 今度は挑発する顔になっている摩耶だった。表情がめまぐるしく変わる。
「それでね」
「言うね。本当にやるつもりなんだ」
「本気よ、それはね」
「どうしようかな」
「やらないの」
「いや、やるよ」
 明信もだ。決めた。摩耶の言葉に乗ることにしたのだ。
 それでだ。早速海の中に足から飛び込んだ。その海の中から摩耶に対して言うのだった。
「今からね。岸にどっちが先に着くかね」
「競争ね」
「そうだよ、競争しよう」
 今度はその競走だと言う。摩耶の言葉に乗ったのである。
 そうしてだ。摩耶も海の中に飛び込んだ。ちゃんと手を揃えてそこから入る。競泳の飛込みをしてみせて入ったのである。
 それからだ。また話す彼女だった。
「今から競争よね」
「うん、そうしようか」
「よし、それじゃあね」
 こうしてだった。二人は平泳ぎで競争をした。先に着いたのは。
 同時だった。二人同時に岸に着いた。その時はもう夕暮れだった。
 その夕暮れの中で海にあがったうえでだ。二人は話すのだった。
 それまで青かった空も海も赤くなっている。とりわけ海は赤くなりそこに銀色の波が輝いている。二人はその海と夕焼けを見ながら話す。
 
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