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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第五章 楽園
  第4話 いつもの朝

 
前書き
早く原作に追いつきたいと願っている作者です。 

 

凜袮「当麻……起き……早くしな……時間に……っちゃうよ……」

上条「(……何だ?)」

心地よく寝ている上条を起こそうとしている者がいた。目が少しずつ開いてゆき、意識も少しずつ覚醒していく。

上条「ん……?」

ふぁぁぁとあくびをしつつも上体を上げる。ふと左を見ると、そこには見慣れない顔があった。

凜袮「ふふ……起きた?」

上条「凜袮か……おはよう」

凜袮「おはよう、当麻。あまりいい目覚めじゃないみたいだね」

朝起きるというのはそんなものだ。教科書とかで早めに寝ると朝気持ち良く起きれるとかいうのが乗っているが、アレは嘘ではない。だがほとんどの確率で無理だ。

夜更かししなくても寝る前にテレビやゲームをしていたら結局は気持ちいい目覚めなどはできない。現代の子供達には到底不可能なことである。

と、心の中で愚痴をいいつつも、暑苦しいベッドからゆっくりと出て着替える準備をする。

凜袮「わ!ち、ちょっと!」

凜袮の存在を忘れながら。

上条「え……?」

そして今、上条は現在進行形で服に手をかけている。

上条「ごごごごごごごゴメン!!」

パジャマ姿のまま全力土下座をする。その姿はあまりにも綺麗だった。

凜袮「そこまで謝らなくても……」

そこまでやられると流石に困るというものである。

上条「こんな上条さんがお願いするのもなんですが……」

凜袮「えっと……何?」

上条「出来れば……部屋を出て行ってくれれば上条さんも助かるのですが……」

凜袮「あ、ゴメン!えっと……朝ごはん作ってくるから着替えたらリビングに来てね」

上条「面目ない……」

最後の最後まで土下座を貫いた上条だった。凜袮が颯爽と出て行き、ハァ、とため息しつつも着替え始めた。



ーーーー
ーーー
ーー



少し、園神凜袮という人物に違和感を覚えた。



それが何なのかは分からない。




でも、



凜袮「みんな席についたみたいだね。それでは、どうぞ召し上がれ」



朝飯は食べよう。



と、上条の耳にいろいろな人の声が重なった『いただきます』の声が響いた。

ダイニングテーブルには凜袮の作った朝食が並べられている。

上条も少し遅れていただきますと言って朝ごはんを食べ始める。

上条「うまい……」

そう言わなきゃいられない美味しさがそこにあった。

佐天「やっぱり上条さんもそう思いますか?」

上条「すごいな凜袮。また作り方教えてくれよ」

凜袮「別に褒められるようなことはしてないけど……それぐらいならいつでもいいよ」

十香「う〜ん!凜袮、今日も一段と美味いぞ!」

凜袮「十香ちゃん。そんなに褒めても何もでないよ?」

十香「う……それはおかわり出来ないということか……?」

凜袮「え?おかわり?」

十香らしい発言である。素直にそう思ってしまった。

凜袮「あーくん、さっきから黙ってるけど……もしかして美味しくなかった……?」

凜袮が心配そうに一方通行の顔を見ている。いつも機嫌が悪そうな顔をしているのでそう思ってしまったのだろう。

一方「ン?別に食えなくはねェよ」

佐天「素直じゃないなぁ……」

一方「何か言ったか?」

佐天「いいえ。別に何も」

その時、凜袮が佐天と一方通行を交互に見ているのが見えた。凜袮は一方通行の発言をどう捉えたのかは知らないが、それ以上は追求してこなかった。

十香「うむ!凜袮の飯はいつもとてもおいしいぞ!」

凜袮「ちゃんと噛んで食べなきゃだめだよ?あ、四糸乃ちゃんは熱いの苦手だったからお味噌汁冷ましておいたんだけど、大丈夫だったかな?」

四糸乃「あ、ありがとう、ございます……っ!」

よしのん『いや〜凜袮ちゃんは気が利くねぇ〜理想のお嫁さんになれるよ』

士道「そうだな。安心して家事を任せられるし」

十香「うむ!料理も美味いしな!」

凜袮「もう、どうして今日はみんなそんなに褒めてくるのかなぁ……照れちゃうよ……」

照れている凜袮。その姿はこの世の男の9割以上を落としそうな可愛さだった。

琴里「凜袮おねーちゃんの作るお味噌汁おいしー!」

凜袮「本当?そう言ってもらって嬉しいよ」

琴里「おにーちゃん、出し巻き卵余ってるなら1つちょーだい」

士道「ん?あぁ。余ってるから別にいいよ」

琴里「おにーちゃんありがとー!あいしてるぞ!」

士道「お、おう……」

過激な妹からのプロポーズに反応に困った士道であった。

と、ふと凜袮が気づいた。

凜袮「あ、でも士道の足りなくなっちゃう。私の1個あげるね」

士道「いや、そうすると凜袮の分がなくなっちゃうし……」

凜袮「いいの。私がそうしたいんだから。はい士道、あーん」

士道「あーん……うまい。凜袮独特の味付けがおいしいよ」

と、この行為に、十香、四糸乃、琴里が黙ってはいなかった。自分たちもそれを士道にやりたいと。

士道はその時遅刻するからまた今度といい、この場をおさめた。

凜袮「あれ?」

士道「どうした?」

凜袮「え?ううん。なんでもない」

士道「?そうか」

凜袮のあたふたな態度に疑問を覚えつつも、朝ごはんを少しずつ平らげていく。

凜袮「(確か、士道に私の出し巻き卵をあげて、私の分は無くなったはずなのに……)」

凜袮の目の前の皿には確かに出し巻き卵が1つある。

誰がくれたのだろうか。

消去法で確認していこう。

自分が士道に出し巻き卵をあげる前に、琴里、十香、佐天、一方通行は既に平らげていた。

四糸乃は士道にあーんする時に1つ余ってるのが見えた。その出し巻き卵は今食べている。

士道は琴里にあげたのが最後だったはずだし……残るは、

凜袮「(当麻……?)」

右隣にいる上条当麻の方を見る。彼は何事もなく普通にご飯を食べているようにしか見えなかった。

凜袮「ねぇ当麻。もしかして、この出し巻き卵って……」

上条「うん?」

凜袮「当麻が私にくれたの?」

上条「ん、まあな。凜袮が作ったのに凜袮1人だけ損するのはなんか嫌だったからな」

凜袮「え?でもそうしたら当麻が……」

上条「別に上条さんは構いませんことよ。こんな立派な朝飯を食べれるなんて、1年前の上条さんには考えられないことでしたよ?出し巻き卵1つ食べられただけでも幸せもんです」

一体どんな壮絶人生を送ってきたのだろうか。深くは追求しないでおこう。トラウマっぽいから。

士道「そういや、最近暗いニュースが多いな」

凜袮「そうだね……あ、十香ちゃんごはん大盛りにする?」

十香「うむ!よろしくだーーーッ!?」

パリン!

という音がリビングに響き渡った。

十香が凜袮に茶碗を渡そうとしたところ落としてしまったのだ。

佐天「あっ!」

士道「十香、大丈夫か!?」

凜袮「十香ちゃん大丈夫?怪我とかしてない?」

十香「うむ。それは大丈夫なのだが……士道すまない!茶碗を割ってしまった!」

凜袮「茶碗より十香ちゃんの身体の方が大事だよ!怪我がなくて良かった……」

十香「でも、あれは士道と一緒に買ったやつなのだ!大切にすると言ったのに……」

凜袮「ご、ごめんなさい!私そういうつもりじゃ……。どうしよう……」

士道「また一緒に買ってやるよ」

十香「本当か!?」

士道「あぁ。本当だ」

士道が十香を慰める。この光景を見た凜袮は、

凜袮「士道はすごいなぁ……」

と呟くような小さい声でそう言った。

上条「(え……?)」

士道「ん?何か言ったか?」

凜袮「ううん!何でもない」

幸か不幸か、士道には聞こえなかったが、上条には聞こえていた。

こうして、五河家の朝食は終わっていった。


ーーーー
ーーー
ーー


玄関にて。

十香「シドー!まだかー?」

士道「もう少し待ってくれ!すぐ行く!」

琴里「ちょっと待ちなさい」

急いで玄関に向かおうとしている時に琴里が急に話しかけてきた。

十香「シドー、凜袮達はもう外に出てるぞー」

士道「先に出てくれ!後で行くから!」

十香「う、うむ……わかったぞ……」

十香が外に出るのを確認すると、士道は琴里に話しかけた。

士道「どうしたんだ?」

琴里「さっきの十香の様子みたでしょ?」

士道「あぁ」

琴里「あの不安げな表情……四糸乃や私もそうだけど、霊力がいつ暴走してもおかしくない状態だわ。どうすればいいか……いくら士道でも分かるわよね?」

士道「デートしろ……ってことか?」

琴里「それしか方法がないでしょうね。〈ラタトスク〉は今、機能不全に陥ってるし……」

士道「一体何が……」

琴里「ラタトスクが復活すればまだやれることはあるんだけど……精霊達を安定させるには士道と一緒にいる時が一番いいのよ。特にデートの時はね……」

士道「やるしかないって訳か……」

琴里「ええ。ただし、次に危険な状態になったら逃げなさい。あなたは……今、不死身じゃないんだから、下手すりゃ……死ぬわよ?」

士道「でも俺にしか出来ないんだろ?だったらやってやるよ」

琴里「そのいきよ。あとこれ」

と手のひらに置かれたのは銀色に光る真新しいものだった。

士道「……鍵?」

琴里「ええ。精霊とはいえ女の子かが1つ屋根の下で暮らすことになったのよ。当麻くんと一方通行と無害が取り柄が一匹いるだけだし……」

士道「無害が取り柄……って俺のことかよ」

琴里「他に誰がいるのよ。ほら、これ以上十香を待たせると不安にさせちゃうから早く行きなさい」

士道「あぁ。分かった」

と言って士道は出て行った。この場に静寂が訪れる。

琴里「今の話、全部聞いていたんでしょ?」

振り返ることもなく、誰もいない廊下に話しかける。

琴里「″そういう訳″だから、私のおにーちゃんを支えてちょうだい……頼むわね……」

琴里もゆっくりとドアを開けて外へと出て行った。



再び静かになった廊下に、足音と杖のつく音が聞こえていた。

































今日は、6月26日。 
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