| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第58話 マテリアル覚醒

 
前書き
こんにちはblueoceanです。




今更何を言うかと思いますが、今回も相変わらず原作と違う表現が多々あります。
そこだけご了承ください……… 

 
「ここは………?」

星達4人が着いた場所は大聖堂の様な壁に包まれた広いホールだった。

「ここは聖堂。ゆりかごで生活する上で祈りやそう言った事をする場だな」

懐かしい声がし、4人は反射的に振り返る。

「レイ………?」

そんな疑うような問いかけに零治はニヤリと笑った。

『いいえ、マスターじゃないです。気をつけて下さい』

星の持っていたラグナルがそう話すと零治がクスクスと笑い始めた。

「壊れてなかったのねポンコツデバイス?」
『マスターの声で気持ち悪い言葉を話さないで下さい!!』
「マスターの声ね………」
「ニヤニヤ笑うな!!」

笑う零治の姿に優理が叫ぶがそれでもバカにしている様に笑う。

「ごめんなさいねちょっと滑稽だったから」
「何が滑稽だと言うのだ」
「だってもう手遅れなのよ。有栖零治の精神は死んだ。もう2度と戻ってこない」
「嘘だ!!そんなの嘘だよ!!」

そんなライの言葉を無視し、話を続ける。

「彼は実に面白かったわ。彼の内を見ていて様々な事が分かったわ。彼は死ぬ前は佐藤孝介と言う名で、この世界も彼の世界ではアニメで放送されていたらしいわ」
「何を言っているの………?」

ライが不思議そうに問い掛ける。

「やっぱり聞いていないのね………まあ話せる内容でも無いし、貴方達は知る必要無いわ。………だって貴方達はこの場で全員死ぬのだから」

そう言うと手に持っていた刀を抜く。

「負けない………!!」
「僕達は絶対にレイを取り戻すんだ!!」
「我等を舐めるなよ………!!」

優理やライや夜美がそれぞれデバイスを展開する。

『星様、エローシュ様が居ない以上、マスターを呼び覚ますのに私を使う作戦でお願いします』
「レイには悪いけど少し痛い思いをさせちゃうと思います。………だけど絶対に呼び起こしますから!!」

最後に星がデバイスを展開し、その腰にラグナルがあった。

「皆、戦闘開始です!!」

そこ掛け声と共に戦闘が開始された………














「到着しました」

バルトとなのははイクトに案内され広い部屋へとやって来た。

「ここは………?」
「玉座の間………でございます。私は案内を終了しましたので失礼します。どうぞ感動の再開をお楽しみください………」

そう言って部屋の奥へと消えるイクト。少し経つと気配が完全に消えていた。

「バルトさん………」
「ああ、誰か座ってる」

部屋に入ったばかりでその奥に誰かが座っていることは確認出来たが、誰なのかは確認出来ない。
2人はゆっくりと歩いていく。

「待ってたよ」
「えっ………?」
「まさか………」

2人が目視でハッキリ確認出来たが辺りで相手が先に声を掛けて来た。

金髪のポニーテールに黒いスーツを着た女性。

「ヴィヴィオか………?」
「流石バルト、気がつくんだね……」

そう言って立ち上がるヴィヴィオだが、その顔は笑っていなかった。

「本当にヴィヴィオちゃんなの………?」
「そうだよなのはお姉ちゃん」

そう言われてもなのははまだ信じられない様子で驚いていた。

「ヴィヴィオ、お前が何ででかくなったとかそんな事どうでもいい。連れ帰りに来た」
「嫌だ」
「ヴィヴィオちゃん!?一緒に帰ろう!!」
「嫌だ!」

バルトにもなのはにも言われたが首を縦には振らなかった。

「私には目的があるの。本当のお父さんとお母さんを探しに行く。クレインは言ってたもん、このゆりかごで探せば必ず本当のお父さんとお母さんが来てくれるって」
「そんなのでまかせだ!!お前だって分かってるだろお前は………」
「そんなの嘘だ!!私みたいな力を持つ子供はクローン技術じゃ作れないって言ってたもん!!まだ弱いからってこの綺麗な石の力を使うけど、それでもやっぱり特別だって!!」
「ヴィヴィオちゃん違うよ!!」
「違くない!!」

なのはの言葉に反論し睨んだ。

「そんな分かりやすい嘘を信じやがって………いいから帰るぞ!!」
「帰らないよ!!迎えに来てくれるのは本当のお父さんとお母さんだ!!バルトやなのはお姉ちゃん達じゃない!!」

その言葉にショックを受けたのかなのはは呆然として立ちすくんだ。

「ヴィヴィオ!!!」

しかしそんなヴィヴィオにバルトは大きな声で怒鳴った。

「てめえよくもそんなこと言えたな!!偽物だろうと本物だろうと一緒にいたら家族だろうが!!それを真っ向から否定しやがって!!!なのはの奴はまだ怪我明けで傷も癒えてねえ状態でお前を迎えに来たんだぞ!!!」
「だったら帰って!!私の邪魔をしないでよ!!!」
「この………!!!」
「待ってバルトさん」

またも怒鳴ろうとしたバルトをなのはが止めた。

「私にも話をさせて」
「………分かった」

なのはの顔を見てバルトは怒りを鎮めた。

「ヴィヴィオちゃん、ヴィヴィオちゃんが本当の両親を求めるのは仕方が無いと思う。バルトさんや私はそう思ってないけど赤の他人って言われても間違いじゃない。だけどヴィヴィオちゃん、このゆりかごを起動させるって事の重大さをちゃんと分かってる?」
「重大さ?」
「このゆりかごは世界を滅亡させるほどの力を持っているの。それを止めるために機動六課、機動七課、武装隊のみんなに地上の部隊の人達………みんなこの世界を守るために戦ってる。ねえヴィヴィオちゃん、ここまで皆を犠牲にしてまで叶えなくちゃいけないほどなの?」
「仕方が無いよ、だってそうしないとお母さんとお父さんが迎えに来てくれないんだもん」
「仕方がない………?他に方法を考えようとも思わないの?」
「うん。他の人達なんてどうでもいい」

そう淡々と答えるヴィヴィオになのはも驚いたが、直ぐに顔が俯いた。

「………ヴィヴィオちゃん、貴方はずっと機動六課で私やバルトさん達みんなが一生懸命戦って来た事を見ていたよね?それなのに周りのことを考えないで自分の事を優先するんだ………」
「それの何が悪いの?皆自分の為に生きてるでしょ?」
「そうだよ。だけど皆一緒にこの世界で生きてるの。ある程度皆の事を考えて生きていかないとずっと衝突していつまでも戦いばかりの世界になっちゃうよ?そしてそのゆりかごはその他人である人達を一掃出来る力を持ってるの」
「だったらそれで世界は綺麗になるよ!!」
「残るのは皆がいる世界じゃなくて都合のいい自分の世界。一人ぼっちで自分以外が居ない世界。そこに本当の幸せがあると思う?」

なのはの言葉にヴィヴィオの脳裏のある景色が浮かび上がった。

(何これ………?多くの人が地面に倒れててゆりかごを降りた人がそれをゴミの様に退かして道を作ってる………何で?私は戦争が終わって平和になると聞いていたのに………皆幸せになれると思ったのに………)
「うあっ!?」

それと同時に頭痛がヴィヴィオを襲った。

「ヴィヴィオ!!」
「ヴィヴィオちゃん!!」

「痛い……!!何で、何で邪魔するのよ!!!」

苦悶の表情からは考えられないほどの虹色の魔力がヴィヴィオから湧き出る。それはバルトやなのはにも視認出来るほど湧いて出ていた。

「………ったく、物凄い力だな」
「おそらくさっき言ってた綺麗な石の効果なんじゃ………?このまま放出し続ければヴィヴィオちゃんにも影響が……!!」
「なのは、先ずはヴィヴィオを止めるぞ!!」
「はい!!」

「ああああああああああああああああ!!!2人共消えちゃえ!!!」

ヴィヴィオは大きな叫び声を上げた後、2人に襲いかかった………























「どけろ!!」

アルトアイゼンになった桐谷の一突き。ガジェットだろうとブラックサレナだろうと一撃で貫いた。

「ラケーテンハンマー!!」

ヴィータも負けていない。小柄なその身体から繰り出されているとは思えない一撃が敵を襲う。

「やるなヴィータ!!」
「桐谷もな!!流石隊長だぜ!!」

互いに背を預けながら呟く。
倒しても倒しても敵が湧いて来る。現在も2人を中心に包囲されていた。

「面倒だ、一掃する。ヴィータ、付いてこい」
「おう!!」

そう言った後、両肩のシリンダーが展開される。

「クレイモア、喰らえ!!」

そう叫んだ後、大量の魔力弾が広範囲に発射された………




























「ふむ、中々激しく暴れているね。流石加藤桐谷と言ったところかな?」
「はぁはぁ………」

クレインは関心しながら映像を見ていた。
そんな中、バルトマンは壁を背にゆっくり体を起こす。

「そう、まだ壊れてしまっては困るよ?まだまだデータを取っておきたいんだからね」

そう言って魔力刃を腕に展開する。

「それは加藤桐谷のデバイスか………」
「そう、たしかセレンと呼んでいたかな?」

全身白の鎧に包まれたクレイン。顔までマスクで覆われたその姿は、アーマーと呼べるか怪しいほど薄い軽装で、ブラックサレナやアルトアイゼン、ゲシュペンストの様なブースター等一切無く、武装もついてなかった。それでも自分の操作次第でどんな武器でも展開でき、それを使う事が出来る。現在クレインが展開したのは両腕に沿って展開された双剣の魔力刃である。

(攻撃は多彩でパターンは無限に近い状態。武装展開も即時に出来、タイムラグはほぼ無い。攻撃に関してはかなり面倒だ………防御面が動きやすさを考慮してかアーマーと言うよりもスーツの様な状態なのがつけ入る隙になるか………)

自分の怪我も含み、防戦一方ながらもバルトマンは冷静に分析していた。

「どうしたんだい?前の君ならもっと荒々しく戦っていたものを………」
「てめえがそれを言うか………!!」

大ききモーションになった瞬間を見逃さず、蹴りを決め、距離を取る。

「ボルティックブレイカー!!」

バルトでもお馴染みの雷の砲撃魔法。

体勢を立て直すところを狙ったバルトマンの攻撃はクレインの避けられないタイミングで放たれた砲撃だった。

「流石、経験が違うか」

避けられない事を分かりつつも、嬉しそうにそう呟くクレイン。
砲撃に飲み込まれてもその態度は変わらなかった。

「これで終わればとてつもなく楽なんだが………」

そう呟きつつ、クレインの様子を確認する。

「んな訳ないよな………」

クレインは右手を前に突き出した状態でその場に立っていた。

「………流石に無傷とは思わなかったな、一体どうやって防いだ?」
「………佐藤加奈との戦闘を覚えているかい?」
「佐藤加奈………?ああ、あのうざったいサーチャーやプロテクションを張る女か。奴がどうした?」
「彼女の技の一つ、フォースフィールド。あの技は遠距離からの魔力による砲撃を完全に無効化していた。最初は私の協力者のヴェリエ元帥に言われ、研究を続けてね。結局最後まで同じ物は出来なかったが、あのフィールドと同等のシールドを作る事には成功したんだよ。これの意味が分かるかい?」
「………砲撃系の魔法は効かないとでも言いたいのか?」
「そう、このアーマーは魔導師相手では無敵と言って良い出来栄えなんだよ」

と自信満々に答えるクレイン。まるで自分のおもちゃを見せて自慢している様に嬉しそうに答えていた。

「バカバカしい………結局真似て近づかせただけだろ?そんなものが完璧な道理があるわけねえ。それにそのフィールドの対処方は分かっている」

そう言うとクレインに向かって駆け出すバルトマン。

「はあああああ!!」

クレインに向かって振り下ろした。

「ふん」

それをクレインは涼しい顔で腕に展開した魔力刃で受け止めた。

「ちっ………!!」
「ふむ?こんなに軽かったかな?やはり怪我の影響かい?」
「舐めるな!!」

地面に着地すると同時に横なぎに回転して斬りかかるバルトマン。

「遅いよ」

しかし実際に斬りかかる前にその斧をしゃがんで避け、懐へ潜りこんだ。

「うぐっ!?」

勢いよく回転して攻撃したバルトマンは避ける事も守る事も出来なかった。
クレインの拳を受け、上に体が浮いてしまうほどの衝撃を受ける。

「………残念だよ見る影も無いね」

そう言うと足を上げ、顔に振り下ろした。

「がふっ!?」

その威力はバルトマンの体全体が叩き付けられるほどの威力があった。

「君は以前にレリックコアを無理矢理取り付けた事と幼い頃から続けた無理な戦闘の影響で魔力枯渇病になっているね?それだけでも既に戦いづらい状態だろうにそのうえ大怪我。ボロボロだね本当に」

立ち上がろうとしたバルトマンを足蹴りにしながら呟く。

「自慢の力も雷の様なスピードもあの獣の様な迫力も無い。………どうだい?顔なじみのよしみで今帰るのなら見逃そう。ゆりかごの効果が完全に広がるまで、君の大事な人達と過ごすがいい」

そう言って後ろを向くクレイン。既にその目にはバルトマンの興味は失せていた。

「さて、次はまだ暴れている加藤桐谷とヴォルケンリッターの鉄槌の騎士を相手にしてみるとするかな………」
「待て………!!」

立ち上がるバルトマンが去ろうとしたクレインを止めた。

「………言ったと思うが、もう君に興味は無いんだ。時間も無駄にしたくない。さっさと出て行ってもらいたいんだが………」
「悪いが、それじゃあ俺が満足しないんでね………!!」

そう言い、体全体が雷で覆われた。

「ほう、バルト・ベルバインが使っていた雷神化か………所詮悪あがきだね」

そう呟きながらクレインは再びバルトマンに対するのだった………
























「やっぱり厄介ね………」

そう呟きながらライの攻撃を躱すホムラ。
有栖家の隊列はライをフロントアタッカーに置いた、3バックだった。
それにより、ライの相手をしているホムラは後ろの3人も同時に相手をしなくてはならなかった。

普通の敵を相手にしている分はいくらでもやりようはあったのだが、速さでも零治とひけをとらず、むしろ一番速いアーベントの状態でも付いてくるライを完全に躱す事は出来ず、ライはホムラから張り付いたまま攻撃を繰り返していた。

「ブラストファイヤー!!」
「ちっ!?」

それに加え、有栖家4人の連携は全員意識をシンクロしているのではと思うほど、隙の無い連携をしていて、ホムラは攻めに転じられず、防戦一方だった。

「………正直舐めてたわ。有栖零治の意識で貴方達のことを知っていたつもりだったけど本当に厄介だわ」
「だったら諦めてレイを返して!!」
「それは無理だって言ったでしょ?………それに貴方達の相手に時間を掛けてるとクレインに笑われるし、やりたいこともあるから私も本気で行かせてもらうわ!!」

そう言うとホムラの姿が消えた。

「!?優理!!」

ライの声に優理は反応し、盾を構え、夜美と星の前に立つ。

「プロテクトウォール!!」

盾を中心にその空間に巨大な壁を展開した。

「夜美!!」
「分かっている!!」

互いに確認した後、バインドを設置する2人。

(面倒ね………神速の対策も考えてるわけか………)

零治の神速の時間はせいぜい5秒ほど。それ以上すると負荷に耐え切れず集中力が続かない。
だからこそ星達は時間稼ぎとして様々な手段を考えていた。

それが優理が壁を展開し、夜美と星がバインドを設置するなどの手段である。
実際にそれは零治に対してはかなり効果のある戦法だった。

しかし………


(時間制限があればの話だけどね!!)

「えっ………?」
「優理!?」

目の前にホムラが現れ、思わず声が漏れる。

「先ずは1人………」

そう言いながらゆっくりと優理目がけて刀を振り下ろそうとした時だった。

「優理!!!」

スプライトフォームになったライがその間に入り、間一髪間に合った。

「あら、速いわね」
「インフェルノ!!」

一度動きが止まったホムラに夜美が球体の魔力を降り注ぐ。

「全く、味方がいてもお構い無しね。厄介なのがそれでも味方に当たらない事かしらね………」

不満気に呟きながら4人から距離を取った。

「時間制限がない!?」
「そう。私はこの体を手に入れたけど、その全てを受け継いだ訳じゃないの」
「どう言う事だ!!」
「簡単に言えば彼の精神の部分。心を壊し、そこを支配して体を使っているだけなの。だから今の私には痛み等の感覚が無い。………だからいくら脳に負担をかけても神速が使えるってわけ」
「そんな………!!」

優理の呟きと共に顔が険しくなる4人。
しかしそれだけでは無かった。

「もしかして感覚が無いだけでレイの身体は………」
「そう、体に限界がくればそれまでって事。まあ壊れるまでって事ね」

飄々と答えるホムラに4人の顔は真っ青になった。

「レイの体を何だと思ってるの!!」
「私の出来の良い人形かしら?実際戦争時代で乗っ取った身体と比べてもトップクラスの人形よ、素晴らしいわ」
「貴様!!!」

夜美がデバイスを向け、攻撃しようとした時だった。

「消えた!?」
「夜美!!」

再びライが動き、その直後、金属同士がぶつかる音が響いた。

「辛うじて私のスピードに付いてこれるみたいね。だけどその防御を失った状態でスピードも負けている貴女は下手をすれば一番危険な状態なのは分かってる?」
「分かってるよ!!でも簡単にやられるつもりは無い!!」
「そう、だったら先ずは貴女からにしてあげるわ!!」

そう言うとホムラはライに向かって行った。

「くそっ、ライ援護を!!」
「夜美、私も………!!」
「星、夜美、少し私の話を聞いて!!」

優理に声を掛けられ、優理の方を向く2人。

「何を言っている!!ライにだけ任せていればいずれライも………」
「どっちにしてもこのままじゃ私達はいずれ負けちゃう。ライが負けたら必然的にあのスピードには付いていけなくなっちゃう。………本当はこれは使いたくは無かった。今の星達だったら実際どの様な影響を及ぼすか分からなかったから………」
「優理、何の話です………?」
「トリニティ化。夜美なら覚えがあるでしょ?」
「………ああ、星の理、ライの力を我に集めて、覚醒するあの力だな」
「そう」
「そんなのがあったんですか!?」

聞いた事の無かった言葉に星は驚き思わず聞き返してしまった。

「だったらそれをすれば今のレイにも………」
「駄目だ、それは出来ん………」
「どうしてです!?」
「トリニティ化は星とライそのものを我にまとめて、三位一体になる技なのだ。………プログラムであった我等ならばいざ知らず、人間となった我等ではもしかすれば覚醒後、元に戻れなくなる可能性があった。だからこそ我はその力を使うつもりもなかった。………優理も分かっていたはずだ。それを何故今更蒸し返す?」
「それしか可能性がないからだよ。それにトリニティ化は1つじゃない。別のやり方もあるの」
「別のやり方だと………?」
「そう。3人の力を分け、それぞれ合わせる3人3色の姿。結果的にどうなるか分からないけど、もうこの可能性しかない。じゃないと作戦も行う事が出来ない。星も分かってるよね?チャンスは一度きりだって事を………」
「分かってます………」

そう言って懐に手を添えた。小さくもぞもぞと動いた様子を見て、夜美と優理も頷いた。

「これが私達が唯一レイを救える手だってエローシュも言ってた。絶対に成功させなくちゃいけない。だからそのためにも………」
「分かったが、実際発動するまでかなり時間が必要になるぞ!?それまで一体どうするつもりだ!?」
「………私が時間稼ぎをする」
「優理!!」
「大丈夫、防御の固さは有栖家一番だもん。どんな攻撃を喰らっても私が3人の壁になる。………私は3人の盟主なんだよ?信頼してよね!!」

笑顔でそう答える優理に2人は何も言えなくなった。
しかし優理の覚悟を信じ、深く頷いた。

「夜美、やり方は分かってる?」
「ああ、大丈夫だ」
「それじゃあ後は………」

そう言って自分のデバイスを操作し、夜美にデータを送った。

「これは!!………なるほど、これならば確かに成功するかもしれん………」
「それじゃあ後はライと代わって………ライ!!」

話していた3人に向かってライが吹っ飛んできた。

「フープバインド!!」

星が輪のバインドを展開し、ライを優しく捕まえる。

「星……ありがとう………」
「作戦会議は終わったかしら?」

余裕を持って声を掛けるホムラ。
しかし言葉とは裏腹に顔色は青かった。

「………ちょっと神速の効果が弱まって来たわね。やっぱり負担になってるのかしら?………まあそれでも今の貴女達を殺す位の余裕はあるんだけどね」
「次は私が相手………」

右手に持っていた槍をレイピアに変え、盾を前に構えてホムラの前に立ちふさがる優理。

「あらあら?最年少の子に戦わせるつもりなの?」
「あんまり舐めないでよね。これでも私はあの3人の盟主なんだから………!!」
「………確かに魔力量もあの神崎大悟に勝てないとはいえ、良い勝負が出来るほどの膨大な力を持っているわね。だけど分かってると思うけど、魔力が高ければいいって訳じゃ無いのよ?」
「言われなくたって分かってる。体を休めるつもりだろうけど、そうはいかない!!」

盾から膨大な量の誘導弾を発射する優理。

「速さで勝てなかったら数で戦うか………面白いわ、どこまでやれるか付き合ってあげる!!」

優理はクロスレンジの戦闘にならない様に誘導弾と複数を同時発射する砲撃魔法を駆使して、ミドルレンジ、ロングレンジでの戦闘スタイルで戦ってた。

そして気づかれない様に星達から出来るだけ距離を取るように………

「ライ、キツイと思うけどこっちに来てください」
「………何をするつもり?早く優理の援護を………」
「いいから来てくれ」

夜美にも言われ、渋々2人の元へと向かう。
そして手を繋ぎ、三角形の形で互いに向かいあった。

「?何をするの?」
「これから我等の力を皆にそれぞれ分ける。自分の魔力を3分の1をそれぞれ分け与える様なイメージだ」
「それって僕達の力を混ぜるって事?」
「そう、私達は元々1つ。だから本来であれば私達は1つになる事も出来たんです」
「しかし今の我等は人間となり、データの存在ではなくなった。………それでも繋がりの強い我等はそれぞれの力を分け、分配する事が出来る」
「それって、結局力を分配してるだけだから強くならないんじゃないの?」

そう、夜美や星も言葉には出さなかったがその疑問は頭を過った。それでももう4人にはこの手段しかなかったのだ。

「ライの疑問は尤もです。ですが、今の私達にはこれくらいしか残された道は無いんです」
「いずれにせよこのままでは我等は負ける。だからこそ小さい希望だがかけてみようと我等の盟主が決めたのだ」
「盟主か………」

そう呟いてライは少し離れた場所で戦っている優理の姿を見る。いつも見える妹みたいな小さな体がとても頼もしく見えた。

「………分かった、僕達の盟主様だもんね!僕のスピードも負けている今、これしかレイを救う道は無いよね!!」
「分かったのなら、集中しろ。先ずは我等の精神を同調させる………」

そう夜美が説明すると同時に、3人とも目を瞑り、その場で手を繋ぎ、身動きせず立つ。

「そう………ライ、もっと心を落ち着かせろ………星、焦るな………」
「わ、分かってる!」
「すいません………ですが夜美ももっと私達に合わせて………」
「す、すまない………」

しかし一向に精神は同調できず、3人とも焦りが出来てき一層集中出来なくなっていく。

(このままでは………)

そんな風に思い始めた所で完全に同調しようとしていた精神が遮断してしまった。

「夜美!!」
「す、すまん………」

ライに怒られ、小さく謝る夜美。

「2人共、注意や反省は後回しに!!早く成功させないと優理が………」

1人で戦っている優理。いくら防御が固くてもいずれ綻びが出てしまう。

「しかし離れて人間として長く過ごしてきた我等が精神を同調させるのはやはり………」
「弱気になっちゃ駄目だよ!!僕達は負けられないんだ!!」
「そうですよ夜美、諦めるのはまだ早いです!!」
「そうだが、これでは………」

と弱気な発言が目立つ夜美にライと星が再び檄を飛ばすが、制御する夜美が現実を一番理解していた。

(このままではいくらやっても成功しない………)

これしか手が無いと言うプレッシャーが更に夜美達を焦らせる。

(どうすればいいのだ………)

解決案も見つからず、時間は刻々と過ぎていく。

「………おい3人共、私達は何の為にここまで来たんだよ?」

そんな中、不意に星の懐から声が聞こえた。

「私達はみんな零治を救うためにここまで来たんだろ?」
「そうです、当たり前じゃないですか………」
「だったらそれだけを考えていれば勝手に繋がるんじゃないのか!?成功させるとか失敗は許されないとかこれしかないとか考えるんじゃなく、絶対に零治を助けるって気持ちが一番大事なんじゃないのか!?」


そう言って顔を出す赤毛の少女。

「アギト………」
「頼むぜみんな。零治を、マスターを助けるために………」

そう言って再び懐に隠れるアギト。

「………そうだ、我等は絶対にレイを………」
「そしてみんなで帰って………」
「平凡だけど幸せな………そんな生活を………」

「「「だから………!!!」」」

その瞬間、その空間は大きく優しい光に包まれた………



























「はああああああああああ!!!」
「次から次へと砲撃を撃ったところで!!」

次々と発射される様々な砲撃の弾幕を最小限の動きで避け、ホムラは優理に詰め寄る。
神速に乗った状態のホムラも流石に1分も2分も神速状態を続ける事はせず、小刻みに使い分け、動く姿はまるで瞬間移動している様な状態だった。

「私も有栖零治のレアスキルの転移が出来ればよかったんだけど、あれは使用者が使い込んで慣れないとダメね。今の私じゃ目標の座標に転移出来ないわ………あれがあればここまで無駄に神速を使わず戦えたんだけど………」

と呟きながらも余裕の表情で攻撃を避け続ける。

「当たれーーーーー!!!!」

それでも優理は攻撃の手を緩めない。

「いくらなんでもそんなペースで攻撃を続けていたら直ぐにガス欠になるわよ。闇雲に撃ったって当たりはしないわ。それとも………それほどあの3人の奥の手に期待出来るのかしら?」
「3人をバカにするな!!甘く見てると痛い目みるよ!!!」

優理は自分を中心に3つ魔力を集束し始めた。

「本当に恐ろしい子ね。あれだけの魔力を一度に3つも集束させるなんて………直撃したらとても立っていられないわね」

と言いつつ神速を発動。
優理が視認出来ないほどのスピードで迫る。

「だけど当てられたらの話よ、今の貴女じゃ絶対無理ね」
「あっ!?」

集束に集中した影響で、攻撃の手が緩んでしまった。そしてそれを見逃すホムラでも無かった。
集束途中にいきなり目の前に現れたホムラに慌てて砲撃を放ったがそれよりも速くホムラが優理を斬り裂いた。

「硬いバリアジャケットね………あの一撃でも使い手にはダメージが届かないか………」

地面に倒され、背中を打った優理。その衝撃で斬り裂かれた部分からは出血がない。

「いや、斬られた途中から体を逃した?………まさかあの一瞬で砲撃を放ったのは自分の体を動かすため………?」

ホムラが刀を振り下ろしたのと同時に優理は右側の集束途中の魔力を発射した。その勢いを利用して少しではあるが体を動かしたのだ。

「センスがあるわね………だけど今度は逃さないわ!!」

そう言ってトドメを刺す為、地面に倒れた優理に向かって刀を突き刺そうとしたその時だった。

「なっ!?」

その時部屋全体を優しい光が包み込んだ。

「何!?」

いくら速く動けても視界が分からなければ動きようがない。

「あうっ!?くうっ………!!」

動けずにいたホムラに何者かの砲撃を受け吹っ飛ばされた。

「何なのよ一体!?」

徐々に元に戻る視界を感じながら叫ぶホムラ。

「すみません、お待たせしました」
「優理お疲れ!少し休んでて!」
「後は我等が引き継ごう」

そう話す3人にはそれぞれ自分のバリアジャケットに他の2人の魔力の小さな球体が使い手を護る様にくるくると回っていた。そしてそれぞれ3人の色が入った綺麗な翼が広がっていた。

「……綺麗だね3人共。レイをお願い」

そう言い残し、立ち上がって後方に下がる優理。

「パワーアップしたみたいね。でもだからって私に勝てるとでも………」

「勝つのが目的じゃない」
「私達はただ………」
「大事なレイを救うだけだ!!」

そう宣言し、互いを見つめる3人。誰も迷いは無かった。
全ては自分達の大好きな有栖零治を取り戻すため、救う為………

「有栖星、トリニティモード………」
「有栖ライ、トリニティモード………」
「有栖夜美、トリニティモード………」

「「「行きます!!!」」」

3人のマテリアルは戦いに赴くのだった……… 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧