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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第57話 追い詰められる戦場

 
前書き
こんにちはblueoceanです。

10月に入り、新天地で新たな仕事が始まりました。………のですが、慣れない事をしたせいが、帰ってすぐ寝る生活が続き、パソコンを起動する余力もありませんでした。横になると直ぐに眠気が………


投稿が遅くなって申し訳ありません……… 

 
「スバル、ギンガさん、エリオ、散開して!!こっちに来た敵は私達が相手する!!ガリュー、あなたはマスターとフィーネさんの援護を!!」

ティアナの指示に頷いたガリューがフィーネの元へと向かう。
空ほどでは無いが地上にも敵の手が伸びていた。

「ジェットマグナム!!」

プラズマを纏ったリーガルの拳が勢いよくガジェット、そしてそれを貫いて後ろにいたブラックサレナを巻き込んだ。

「ギ…ガガ!?」

驚いたような声を上げ沈黙する2機。
バチバチとプラズマを帯びる拳を抜き、射撃してくるガジェットに向かっていった。

「一撃で沈黙!?」
「プラズマステーク。プラズマを帯びたステークで相手を貫き回線をショートさせる為にある武器で元はバリアアーマー対策につけられた武装だ。機械で出来たガジェットやブラックサレナにも有効なのだ」

驚くティアナに隣にいたボウカーが説明した。
現在スターズライトニングの5人とベーオウルブズは共闘していた。エンジェルボイスの影響で他の魔導師達は動かなくなり空と地上に居たティアナ達に集中したのだ。

「!?リーガルさんが囲まれてるリーネさん援護を!!」
『分かりました!!』
「ギンガさん、エリオの場所に敵が増えてきてます!!援護に行ってください!!」
『了解!!』
「スバル、あんたはその場で敵を引きつけて耐えて!!他の戦線が安定したら仕掛けを発動させるわ!!」
『分かった!!』
「フィーネさんは引き続き狙撃を!!ルーはフィーネさんの守りとガリューの指示を!!それとイノセクトを増やしてデコイにして!!」
『了解です~!!』
『分かりました!!』

放ったサーチャーの映像で戦場の地図を作り、広範囲に戦場を把握し、逐一指示をするティアナにボウカーは内心驚いていた。

(………これが新人か?)

『俺達が勝つには先ず、ティアナ・ランスターを戦闘不能にすることを第一に考えるぞ』

カーニバルで行うはずだった機動六課とのエキシビジョンマッチ、あの時の六課の対抗策として桐谷が最初に言った打開策だ。
バルト・ベルバイン、佐藤加奈と名の知れた魔導師がいる中、何故一番最初に警戒しなくてはならないのが彼女なのか分からなかった。

「なるほどな………」

その意味をやっと今知れた気がする。そう思いながらボウカーは視線を戦場へと戻す。

「奇跡だな、この状況で………」

と小さく呟く。

現在戦力差は万単位対十数人。何故かガジェットもブラックサレナも行動不能になった魔導師には手を出さず、全て残る魔導師に攻撃をしていた。だがそれでも残っているのは歴戦の魔導師、そしてそれに鍛えられた新人達、そう簡単にやられることは無いと思っている。しかし如何せん、数が違いすぎる。

更に、他の魔導師達が行動不能になったのを見て、敵は動く魔導師達に集中しだしたのだ。

「増援も呼べぬとはな………」

援軍を呼ぼうとしたティアナとボウカーだがエローシュの念話によって止められた。

『何故援軍を呼べん!?』
『今呼んでも彼等の二の舞になるだけだ!!それよりも今はこの戦場で大悟さんを援護すること!!大悟さんを守りきれなかったらこのままゆりかごの力で世界は滅ぶぞ!!!』

エローシュの血を吐くような叫びにボウカーも只々従うしか無かった。

「くっ、歯痒いな………」

結局六課のメンバーに引っ張られる形になった事と、そうならないために自分が引っ張るような実力が無い事に歯痒さを感じていた。

「ボウカーさんすみません、センターガードで皆の援護を!!そろそろ仕掛けを使うのでそれに合わせてスバルの方へ敵を誘導するように攻撃の指示を!!」
「了解した」

(だがそれは今は関係無い………今は自分の出来る事をやるだけだ!!)

そう心に決めたボウカーは抜けて現れたガジェットに魔力弾のマシンキャノンを発射したのだった………

























「エンジェルソング!?」
「はい、今それが聖王のゆりかごの最終兵器の名前です」

そう言って戦場を確認しながらはやてに説明した。
空の方は地上ほど戦場は緊迫していなかった。その理由として一番大きいのはキャロの奮闘が大きかった。

ヴォルテールにフリード。人ではない竜にはエンジェルソングは効かない為、エローシュの負担も少なく、なお大きい戦力であった。
しかしヴォルテールの攻撃を持ってしてもゆりかごには被害を与えられず、エンジェルソングを使い始めてから展開された強固なバリアーに阻まれていた。

「あのバリアーは何や?」
「………エンジェルソングはゆりかごの最終兵器にしてゆりかごの全機能を解放するキー替わりでもあったんです。あれが発動され、他の国を寄せ付けなかったゆりかごは他の国の人間を退行させてゆりかごに残った聖王の人間達が世界を作り、今があります」
「………待てや、それって今のミッドの住人は全員聖王家の人間の末裔って事なんか!?」
「いえ、エクスみたいに、封印された人や、ずっと遠い管理外世界で効果が広がる前に停止した事で逃れた人もいたでしょう。ですが、エンジェルソングによって対抗していた殆どの国が滅亡しました。………エクスの国の様に」

そんな重々しい言葉にはやては何も言えなかった。

「退行………ってどんな風になるんや?」
「言葉通り、動かなくなった人は脳を破壊されていき、最後には植物状態になるみたいですね。戦後、世界には植物状態の死体や、それを漁る生物。中途半端に脳に破壊され、退行した人間と世界はかなり酷い状態らしいです」
「そんな風にこの世界もなるんか………?」
「このままじゃそうなります。咄嗟にエンジェルソングを阻害する一時的なプログラムで皆を援護しましたけどそれも良くて2時間が限界だと思います」
「それまでに何とかエンジェルソングを止めなくてはならないんやな………」
「はい。そしてそれが出来るのは中に侵入した突入組次第って事になります………」

エローシュの言葉を聞きながらはやては前を向く。下は向いていなかった。

「それだったらきっとなのはちゃん達がやってくれる。なら私達は最初の予定通り、大悟君を守りながら戦うだけや!!!」

気合を入れ直し、力強い言葉で自分を鼓舞するはやて。

「皆、この場には私達しかおらへんけど、絶対に突入組のみんながやってくれる筈や!!だから皆信じて頑張ってや!!!」

そのはやての言葉に直接答える者はいなかったが、それでも皆が応えてくれたと確信が持てた。

「エローシュ君も頑張ってね!!」
「ああ」

真白にそう答えたエローシュだが、その内冷静に分析して不利な事に状況を覆す一手を考えていた。

(ああはやてさんは言ったが、実際は厳しいだろう………せめてもう何人か来てくれれば………)

ここに来る前にイーグレイ家とシャイデやアルビーノ夫妻に連絡を入れたエローシュ。彼女等は後ほど、来るように話していたのだが、先ほど連絡し、止めさせた。
無理にでも来ると言ったゼストをメガーヌとジェイルが懸命に宥め、止めた。来ない事に一安心したエローシュだったが、これで唯一来れる筈だった援軍が無くなった。

(最初のあの人数で何とか耐えられる計算だった。その人数がかなり減り、更に敵は想定よりも多い。援軍も無闇に来れないとなるとやはり状況は………)

そう深く考えていたエローシュは油断してしまった。疲労もあったのだろう。

『エローシュ!!』
「しまっ………!?」

不意にエローシュに向けられ、グラビティブラストを発射しようとしていたブラックサレナが居た。他の角度からエローシュを守っている真白は気が付いていない。

(今やられるわけには………!!)

エローシュがやられれば、今戦っているメンバーは直ぐにエンジェルソングを受け、動かなくなるだろう。徐々に高度の上がるゆりかごはエンジェルソングもそれに合わせて広範囲に歌を広げていく。大悟が止まってしまえば、例え中で味方が居てもその前に世界が終わってしまう。

そんな悪い事に思考が行く中、エローシュの後ろから猛スピードで横切る人影が居た。

「はあああああ!!!!」

覇気のある声で固い装甲のブラックサレナを一閃した影。

「トーレ・イーグレイ…………いや、ランスターと名乗っておくか。トーレ・ランスター到着」

そこに現れた青い髪の女性。黒の全身タイツの様な生地の上に軽装を纏ったような格好。
足と腕に羽を付け、エネルギーブレードを片手にそう宣言した。

そんな堂々と立つ彼女に当然、ガジェットが群れで襲い掛かる様に現れるが、それを彼女を守るように一斉にガジェットを魔力弾が貫いた。

「いや、まだ式も挙げてないし、まだ届けも出していないし、むしろプロポーズもまだしてそんなに経ってないんですけど………」

そう恥ずかしそうに呟きながら彼女の横に並ぶ男。
彼女の恰好とは違い、白いバリアジャケットを身に纏い、双銃を構える。

「それにまだジェイルさんに報告するって難問があるし………はぁ、何を持っていけばいいんだろうか………?誰かに聞くべきかな………?」
「な、何で………」

いきなり現れた2人にエローシュを始め、驚く全員。

『エローシュ君』

そんな中、ジェイルから通信が入った。

『ギリギリ間に合ったみたいだね』
「ジェイルさん!?どうして彼女達を!?」
『賭けに近かったが、戦闘機人の彼女達ならエンジェルソングにも耐えられるのではないかと思ってね。その賭けにはどうやら勝ったようだが………というよりもトーレが勝手に突っ込んで行って慌ててティーダ君に即席の阻害装置を作って後を追わせたんだが………取り敢えず今の状態なら何とか耐えられるみたいだね。………ただ長時間聞いていると彼女達でも耐えられないだろう。だからそれまでになるが、私の代わりに使ってくれ』
「ジェイルさん………!!」
『それとフェリア達も地上の部隊の援護に向かった。済まないが、皆を頼むよ』
「分かりました」
『それとティーダ君だが、阻害装置は即席だからそれほど効力は持たないと思う。悪いけど面倒を頼むよ』
「えっ………?」

そう言われ、ティーダの方を見るエローシュ。

「あれ?段々眠く………」
「ブースト!!」

エローシュは慌てて皆と同じようにブーストをかけたのだった………






















「くっ………!!」

敵の集中砲火を辛うじて避けスバルは舌打ちをする。
ティアナが仕掛けを発動させる為にも敵をここで抑えるため、この場を動かず最小限で避け、攻撃を防御しなくてはならなかった。

「リボルバーシュート!!」

反撃をしながら自分へと注意を向ける。

「こっちだ!!」

他の場所へ向かおうとしたブラックサレナ数体がスバルの方へと向かう。

「そう、それで良いよ!!さあ来い!!」

と強気で呼ぶものの、数の多い相手にスバルも冷や汗をかいた。

(みんな〜!!早く〜!!!)

心の中で叫びながらもスバルは壁として敵を引きつけ続けていた………








「紫電一閃!!」
「!?」

雷の槍の一閃がガジェットを斬る。

「これで20機目………」

冷静に呟いたエリオは後ろから斬りかかろうとしたブラックサレナを後ろ向きのまま貫いた。


「ギギ……!?」
「中が人じゃないなら容赦しない………!!」

槍を引き抜き、蹴ってブラックサレナを吹っ飛ばす。

「凄い………ブラックサレナの装甲の薄い部分に槍で一突き………それも後ろ抜きのまま………」

エリオの技に驚きながらもギンガも向かってくる相手をさばく。
エリオはゆりかごが動くまでの間、ずっとバルトと共に訓練をしていた。それも互いに敵とみなした純粋な戦闘を。それは零治とやっていた実戦感覚に近い訓練ではなく、言葉通りの戦闘をだ。勿論バルトはエリオを殺すつもりは無い。しかし戦闘不能の大怪我になる程の激しい戦闘をしていた。
そんな中、エリオは耐え切り今日に至っている。勿論いきなり強くなることは無い。だがそれでも今のエリオには怖いものが無かった。

「レイ兄よりもバルトさんよりも弱い………これならまだまだいける!!」

その言葉は決して強がりではなく確信して言っているのだ。

(………ティアナが何故ルーじゃなく、私をエリオに付けたのか分かったわ。彼は強いけど危うい………私は彼のお目付役ってことね)

と、思いつつギンガは相手に拳を入れる。

「エリオ!仕掛けを使うって!あなたがいないとこの仕掛けは機能しないわ!!敵を引きつけるわよ!!」
「はい!!」

ギンガにそう言われ、エリオとギンガは上手く引きつけながらスバルの元へと向かった………
















「うおっ!?」
「リーガル!?くぅ!!」

援護をしながらリーガルと共に2人戦っているリーネだが、2人が担当している場所に敵が集中し始め、次第に押され始めた。

「り、リーネ!援護を!!」
「わ、私も手一杯!!何とか耐えて!!」

リーガルのアサルトタイプは単体相手であれば他のタイプよりもかなり有効に戦えるのだが、複数の敵と戦うとなるとどうしても後手に回ってしまうのだ。近戦装備と少々の射撃武器、アルトアイゼンの様なクレイモアも無ければ複数の敵に牽制として攻撃出来る様な武装が無いのだ。

「くそっ!!ぐわっ!?」

向かって来たガジェットを半身で躱し、そのままカウンターの流れでステークを打ち込む、しかしその隙を狙われ、後ろから攻撃されてしまった。

「リーガル!!!きゃあ!?」

リーガルに注意を逸らしてしまった瞬間、向かって来たブラックサレナに斬り付けられ、装甲にダメージを負ってしまった。

「この!!」

すかさず反撃をするが、装甲の固いブラックサレナ相手に決定打にはならない。

(ダメージはギリギリで回避に入ったおかげで軽い。だけどこのままじゃ………)

元々ティアナの立てた作戦は今の人数の10倍ほどの人数がいる事が前提で行われる予定であった。そのため、それぞれ2人ずつエリアを支えるのにも無理があった。

(だから援軍を送ってもらうもの難しい。それに私達よりもスターズの面々の方が厳しい状況の筈なのに泣き言も言ってられない………!!)

そう覚悟を決めたものの、悪化していく戦況にティアナの合図で敵を引き付け無ければならない、そんな状態で上手くいくかどうか考えない様にしていたが、それでもふつふつと不安が湧き上がってくる。

「リーガルももう限界………何か戦況を変える出来事があれば………!!」
「それは私にお任せっス!!」

そんな言葉と共にリーネの後ろから高速で大きな影が走り去った。

「何………!?」

慌ててその影を追うとそこにはボードに乗ってまるで波に乗るかの様に敵に魔力弾を撒き散らし、上がっていく。

「行くっスよ~!!カットバック、ドロップターーーーン!!」

そして高々と上がったその上空からリーガルを狙うブラックサレナに向かって急行下していった。

「うおっ!?」

その勢いは周りにかまいたちを巻き起こすかの様に突風が周りを襲う。しかしそれによってリーガルは敵の注意から逸れ、身軽になった。

「よっしゃ!!」

まるで水を得た魚の様に移動しながらの攻撃で流れる様に大量のガジェットを破壊していく。

「リーガルが身軽になった!!リーガル、それとそこのあなたも!!私が指示するから指示したポイントに敵を誘導して!!」
「了解っス!!他の場所にも私達姉妹が行ってる筈っスから上手く行っている筈っスよ、急ぐっス!!」

名前も聞かず、3人は敵を引き付けつつ、移動する。















「ボウカーさん、スバルの援護を!!ここは何とか私が持たせます!!」
「大丈夫なのか!?」
「今スバルに倒れられたら今の作戦が全て無駄になります!!私なら大丈夫ですから!!」
「くっ、分かった!!お前も無理をするな、危険になったら直ぐに駆けつける!!」
「はい!!」

センターガードとして皆の援護にへと向かわせるつもりが、スバルにへと敵が集中した事でその余裕がなくなってしまった。

「まだ増援が出てきているの………?」

ゆりかごの映像を横目で確認しつつ、更に悪くなる状況にティアナは再び思考を巡らす。

(今の戦力じゃ地上はともかく、空はいずれ崩壊する………ある意味、守る場所が無くなったおかげで私達は自由に動けるようになった。地上の物を利用すれば戦力に差があっても戦える。だけど空は………)

ティアナ達の後ろに構える後援の部隊。救護隊、ヘリでなのは達を送ったヴァイス達、そしてそこに今回の作戦の本部としてはやての命令を他の武装隊の部隊や、協力してくれている航空隊へと様々な部隊に送られる言わば本陣の様な場所であった。

その本陣を守るのも陸で戦う部隊の任務であり、それを踏まえティアナも作戦を考えていたのだ。

(今の戦力で戦闘が出来ない大悟さんを庇いつつ、戦うのはいくら隊長達でも………)

「ティアナ!!」
「!?くっ!!」

ボウカーの叫びにティアナが反射的に反応し、後ろに反応した。

「この!!」

ティアナはすかさず攻撃のあった方向へと攻撃を加える。

「あっ………」

考え事をしていた事で注意が怠っていた。敵は複数居て既にティアナを攻撃出来る準備が出来ており、発射しようと構えていた。

「まずい!!」

慌ててボウカーが援護射撃をしようとするが距離も遠く、向かうにも間に合わない。

「一か八か………!!」

そう考え、攻撃に移ろうとしたその時だった。

「はあああああ!!」

そんなティアナを狙っていたブラックサレナが吹き飛ばされた。

「えっ………!?」

不意に起こった出来事に驚くティアナだが、それだけで終わらず、巨大な砲撃が次々に放たれ、次々と敵が沈んでいく。

「一体………」
「間に合ったね」

そこで現れたのはスバルと同じナックル系の装備、ガンナックルを付けた赤髪の少女。

「ノーヴェさん!?」
「ディエチ姉も来てくれているよ。ここからは私達ヴァルキリーズとトーレ姉、ティーダさんペアも協力するから」
「トーレさんに兄さんも!?」
「そう!!トーレ姉とティーダさんは空に向かって、ウェンディと私、それにセイン、後、援護射撃でディエチ姉、後クア姉が色々企ててる」
「………最後が凄く不安だし、兄さんこのエンジェルソング大丈夫なの?」
「エローシュが頑張ってるから。私達は戦闘機人だから多少耐性があるみたい」
「分かったわ。………それで取り敢えずあなたとウェンディ、それにディエチ姉?に指示を出したいのだけれど………」
「分かった」

そう互いに話しながらノーヴェは他の姉妹達に連絡する。

『本当に成功するの………?』

ティアナの説明に疑問の言葉を溢すクアットロ。

「やって見せます。成功すれば一網打尽で1度有利に出来る。後は耐えれば突入組がやってくれます」

しかしティアナはしっかりとそう答えた。

『分かったわ。仕込みも済んでるみたいだし、任せるわ』
「はい」

そう話した後、再び戦場を見渡す。
空を見上げれば大きな箱舟が歌を奏でながら更に上へとゆっくりと向かっていた。

「負けるもんか………!!」

小さく隣にいるノーヴェにも聞こえないほどの小さな声だったが、とても力強く意思のある呟きだった………





















時を少し戻して突入組は………

「さて、潜入したが………」

侵入した突入組はそれぞれデバイスを構え、敵の攻撃に備えたが………

「何もいない………?」

ヴィータが呟くように、そこには何もいなかった。

「これは予想外ですね………もっと敵も抵抗して来ると思ったのですが………」
「いいや、奴なら何をして来てもおかしくない。油断すんなよ?」

そう答えたバルトだが、言われずともその場にいた誰もが警戒を解いていなかった。

「要らない心配だったみたいだね」
「ぶっちゃけお前が1番不安だ。曲がりなりにも怪我明けだ。無理し過ぎるなよ?」
「バルドさんもだよ?むしろバルドさんの方が重傷だったんだからね!!」

そう言いながら互いを支えながら進む2人。

「………親密だな」
「そうだね………」

そんなバルトとなのはのやり取りを見てライと桐谷は呆れ気味に呟いた。

「取り敢えず進まないか?でなければ何も始まらん」
「早く零治とヴィヴィオを助けないと!!」

そう言った夜美と優理の提案に断る者は誰もおらず、取り敢えず目の前にある道へ進むことにした………















ゆりかごの内部はとても広く、まるで通路全体が戦闘を考慮されて作られているようにバルト達は感じた。
既に警戒しながら5分ほど進んだが特に迎撃部隊も現れず、返って不気味に思えた。

「なのは、外の様子は分かるか?」
「ううん、内部と外部は完全に途絶されているみたいで駄目みたい。外がどうなってるかも分からない………」

と心配そうに呟くなのは。
突入組が侵入する前に既に予想以上の敵が現れていた。当然予測は所詮予測でしかない。変化するのは当たり前だが、それでも不安は拭えなかった。

「誘ってますね」
「………ったく、内部まで侵入されて余裕か。野郎……!!」

怒りを内に貯めつつ、先頭を進むバルト。

「ようこそいらっしゃいました」

そんな中、代わり映えのしない通路の前に1人の女性が待っていた。

「お前は………」
「イクトと申します」
「イクト……?貴方レイと闘った!!」
「はい、クレイン博士から作られた戦闘機人でございます」

ライの問いにそう淡々と答えた。

「俺達の足留めに来たのか?」
「いいえ。エンジェルソングが発動する以上、例え貴方達が暴れようとも世界は終わります。私はドクターとホムラ様から言われ、バルト・ベルバイン、高町なのは、そして有栖家の4人のご案内を言いつけられました」
「案内………だと?」
「お二組にはそれぞれ別々の目的がおありでしょう?ドクター達は是非ご案内するようにと言われましたので」
「そんなの罠に決まってんだろ!!」

と大声を上げ言うヴィータ。

「何故俺とヴィータの名が無い?」
「加藤桐谷……貴方に関してはドクターも興味を持っておいででした。佐藤孝介と同じように転生した貴方自身はどういった事があったのか等」
「!?何故それを!!」
「佐藤孝介?」
「誰の事?」

夜美と優理の問いに桐谷は答える事は無く、イクトの事を睨みながら視線を外さなかった。

「それを貴方が知る必要はありません」

そう言うとイクトは手を上げた。
それと同時に皆身構えるが、それがあだとなった。

「済みませんが分断させて頂きます」

手を下すと天井からバルト達を三組に分ける様に壁が降りた。バルトとなのは、有栖家の4人、桐谷とヴィータの三組にだ。

「バルト・ベルバインと高町なのはは私と。有栖家の4人はそのまま真っ直ぐ。そして残りの2人は………」
「!?敵!!」
「分断して攻撃か!!」

ヴィータと桐谷の方、来た道からガジェットとブラックサレナの大群が2人に向かってやって来ていた。

「ヴィータちゃん!!」
「桐谷!!」

なのはとライがそれぞれ心配して声をかけた。

「行け!!それぞれのやるべき事をやれ!!」
「私達は自分達で何とかする行け!!」

2人の返事と共に激しい音が響く。戦闘が開始された。

「2人共………」
「行くぞ星」
「分かってる。絶対にレイを助け出します!」
「うん!!」
「レイ、待ってて………!!」

4人はそれぞれ気合を入れ直し………

「では行きましょうか」

バルトとなのはの2人はイクトの後ろを歩き、進むのだった………


















「さて、それぞれ動いたね。加藤桐谷とヴォルケンリッターの少女は駆動炉を目指しているのかな?………まあ狙いは良いが、鍵がある以上、動力には困らないのだがね」
「だけど良いの?バルト・ベルバインと高町なのはを鍵の場所へ向かわせて………」
「私はゆりかごで世界が壊れる所と同じくらい、形だけの家族を装っていた者達の戦いも興味があるのだよ」
「………まああの忌まわしい聖王の血が消えるのは私も賛成だけどね」

そう話すクレインと零治の体を得たホムラ。
2人はイクトが分断に成功した所で立ち上がった。

「そう言えばバルトマンはどうするつもりなの?」
「彼は私が相手をするさ。わざわざ私の招待に応えてくれたんだ。それ相応のお礼をしなくてはね」

そう言って手に持った宝石を光にかざす。

「それがブラックサレナを元に作ったデバイス?」
「ああ。これが私専用に作った最高傑作だ。オリジナルよりも高性能だよ?」
「だけどあなたが戦いが得意とは思わなかったわ」
「苦手だよ。でもボロボロの彼に対しては良いハンデだろ?」

笑いながら答えるクレインにホムラは特に何も言わずに刀を構える。

「………まあいいわ、私も行くわ。彼女達の絶望した顔が楽しみだわ」
「ホムラ君、本当に有栖零治は消えたのかい?」
「ええ、彼は佐藤孝介の時の大きなトラウマ、………それも死を体験した事で今まで操って来た者達と比べても類を見ないほど、精神が消えたわ。もうこの体は私の物よ」
「佐藤孝介………か」
「何か引っかかる事でも?」
「………ああ、だけどそれが何かは分からない。くれぐれも油断しない様に頼むよ。今のエンジェルソングは君が稼働させた事で停止も君によって行われる。もし君が破壊されればエンジェルソングは止まってしまうんだからね」
「分かってるわ、安心しなさい。負ける事は無いわ」

そう言い歩き出すホムラ。

「あなたこそ世界が終わる前にバルトマンに負けないでね」
「ああ、分かってるさ」

そう答えたクレインもホムラとは違う出口へと歩き出したのだった………

















「はぁ………はぁ………」

壁伝いにゆりかごの中を歩くバルトマン。
怪我は加奈のお蔭で死に至るものは無くなったとはいえ、安静にしてなくてはいけない状態なのだが、それでも歩みを止める事なく、一歩一歩進む。

「カリム………」

バルトマンはここへ来る前のカリムとの約束を思い出していた………










『………』
『何処に行くのバルト………?』

静かに出ていこうとしたバルトにカリムは声を掛けた。

『………クレインから直々に招待された。奴との因縁も今回の事態も全てケリを付ける』
『その体で………?』
『ああ。止めても力ずくで行かせてもらう』

そう言うバルトマンに対し、近づくカリム。

『おい、聞いてるのか!?』
『………止めないわ。私が泣いて止めてもあなたは行くでしょ?………だから』

そう言ってバルトの手に小さなブローチを渡した。

『これは確か………』
『ログスバインの家紋です。そして新しいデバイス、グローリアです。………バルト・ログスバイン、あなたに命じます。今回の騒動、ゆりかごとそれを動かすクレイン・アルゲイルを止めなさい』
『カリム、お前………』
『そしてこれを………』

そう言ってバルトマンの首に自分のネックレスを着けた。

『おい………』
『これはお父様に誕生日に貰ったネックレス。貴方のお守り代わりに渡します。だけど必ず返しに来てください!!それに話したい事もあります!!絶対に帰ってきなさい!!』

そう言って後ろを向き、進むカリム。

『………ったく、あのバカは。俺がログスバインって名乗ってたのは何年前だっての………』

そう言いつつ思わず笑みがこぼれるバルトマン。
振り向き際に見えた涙には何も言わない事にした。

『バルト・ログスバイン、行ってくるぜ………』

カリムの後ろ姿を再度見た後、バルトはゆりかごへ向かった………




















「命令………だからな………」

目の前に見えた扉に入り、しっかりと地面に立つ。

「ようこそ、バルトマン・ゲーハルト………」

部屋は大きな空洞の様な場所で柱が規則的に並んでいる以外特に何も無い部屋だった。
そしてその部屋の中心にクレイン・アルゲイルが嬉しそうに立っていた。

「さて、君とも付き合いが長いが、もう君の利用価値も無くなった。今までありがとう、最後に私の最高傑作のデバイスの試運転に付き合ってもらうよ。バルトマン」

そう言ってバルトの答えを待つクレインだったが、その答えは思っていたものと違っていた。

「いいや、違うね」

そう言って家紋をクレインに向けた。

「俺は………バルト・ログスバインだ!!!!」

大きな声で宣言し、デバイスを展開させ、クレインに向かって真っすぐ突撃した……… 
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