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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第四話 三人目の人はその十四

「ねえ、そっちの入居者の娘だけれど」
「小林さんじゃない娘ね」
「ええと、水橋さんっていう」
「あのちっちゃい娘ね」
「ああ、あれだよね」
 僕はその女の子達に言葉を返した。
「女子バスケ部に入部したいっていうんだよね」
「もう入部したわよ」
「入部届書いてもらったから」
「それでも部長さんが即決してくれてね」
「もう部員になったわよ」
 朝に行ってそれですぐにというのだ、かなり早いと思った。
「それでだけれど」
「その水橋さんだけれど」
「どんな娘なの?」
「ちょっと見ただけだと随分元気がいい娘だけれど」
「見たままじゃないかな」
 僕は女の子達にこう返した。
「多分ね」
「多分って」
「あまり知らないの?」
「大家さんなのに」
「そうなの?」
「だって昨日の夜来たばかりだよ」
 それで知っているかどうかというのだ。
「だからね」
「ああ、そうなの」
「それでなのね」
「まだ知らないのね、よく」
「そうなのね」
「うん、僕もね」
 こう女の子達に答えた。
「何か忍者になりたいらしいけれど」
「それかなり変わってるから」
「ちょっとどころじゃなくて」
 このことにはだ、女の子達は一斉に突っ込みを入れて来た。
「とうか何者よ、水橋さんって」
「忍者になりたいって」
「いや、そう言われても」
 本当に昨日の今日だからだ、僕もだった。
「まだ知らないから」
「じゃあ私達もなの」
「これからなのね」
「これからあの娘がどういう娘か知っていくのね」
「そうなるのね」
「そうだと思うよ、まあとにかくね」
 僕は女の子達にあらためて話した。
「美沙さんじゃなかった水橋さん宜しくね」
「うん、何かかなり変わった娘みたいだけれど」
「そうさせてもらうわね」
 何かまたしても変わった娘が来たと思いつつだ、その美沙さんも八条荘の住人になった。けれど僕はまだ八条荘がどうなっていくのか全く考えてもいなかった。もっと言えば考えるどころではない状況が続くことも想像していなかった。


第四話   完


                             2014・7・14 
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