食べないかどうか
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第四章
「飲んで食べてもいいのです」
「そうだったのか」
「その時はこうしてです」
「アッラーに謝ればいいんだな」
「そうです、そうして食べていいのです」
「何とまあ」
その話を聞いてだ、田辺も客達もだった。
驚いてだ、口を大きく開いて言うのだった。
「そうだったなんてな」
「いや、何か」
「それは」
「イスラムは堅苦しい宗教ではありません」
男は笑ってこうも述べた。
「戒律もこうしたことは目標ですから」
「どうしてもという場合は」
「そうです、構いません」
アッラーに謝ればというのだ。
「そうですので」
「じゃあ今はか」
どうかとだ、いぶかしむ顔で言う田辺だった。
「仕方ない時なんだな」
「私は餓えています」
もっと率直に言えば腹が空いている。
「ですから」
「食べているのか」
「そうです、いやそれなら仕方ないですね」
「いや、イスラムって凄いな」
「面白い宗教ですね」
「そうしたこともありなんだな」
「はい、では」
男は串カツをさらに食べつつだ、ビールも飲みながら田辺に言うのだった。
「串カツもっと貰えますか」
「今度は何がいいんだい?」
「豚を」
つまり普通の串カツをというのだ。
「そしてビールもおかわりを」
「そっちもか」
「大ジョッキで」
量もかなりだった。
「私は喉が渇いて死にそうなので」
「食いものもだよな」
「はい、餓えてしまって」
くすりとした感じで言うのだった、そうしてだった。
男は豚肉もシーフードも酒も楽しむ、田辺達はその彼を見つつ話した。
「そういうものか、イスラムは」
「ああ、目標か」
「そういうことでいいんだな」
このことを知ってだった、彼等はまだ驚いているが納得した。彼等にとっては非常に勉強になることであった。
食べないかどうか 完
2014・2・28
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