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第五章
「こんなところで寝たら風邪ひくよ」
「そうですよね」
「だからせめてベッドで寝ないと」
「わかりました」
「けれど立てないよね」
「ちょっと」
「仕方ない、それじゃあ」
自分が抑えられるかどうかいささか自信がないがそれでもだった。
優斗は智秋を助けることにした、そして。
その肩を担いでだ、そしてだった。
智秋の部屋の中を進む、智秋の案内を受けて。そうして彼女をそのベッドがある寝室に連れて行って。
ベッドに寝かした、それで帰ろうとしたが。
智秋は見逃さなかった、すぐにだった。
その優斗にこう言った、その言葉が。
「あの、待って下さい」
「待ってって?」
「折角来てくれましたから」
何とかという仕草でベッドから身体を起こして彼に言うのだった。
「何か食べていって下さい」
「いや、もう充分食べたから」
二人一緒にいる時にとだ、優斗は答えた。
「だからこれでね」
「そういうことは言わないで下さい」
起き上がって脚を動かしながらの言葉だ、動かしてみせて優斗に自分の脚を見せたのだ。何気に胸のボタンも少し外して胸も見せている。
「折角ですから」
「折角って」
「それにもう」
「もう?」
「時間遅いですから」
智秋は今度は時間のことを話した。
「電車もないですよ」
「そういえばそうだね、じゃあカプセルホテルに泊まって」
「お金かかりますよね」
「結構安いから」
「それでもお金かかりますよね、それにカプセルホテルあまり疲れが取れないっていいますし」
「そうでもないよ」
「そう仰らないで。何でしたら」
智秋は微笑んでだ、優斗を少し流し目で見て自分から言った。
「今日は」
「早坂さん、まさか」
「どうですか?」
優斗は答えなかった、だが。
その喉をごくりと鳴らした、そしてだった。
次の日だ、智秋は同僚達に笑顔で言った。
「完璧にね」
「いけたのね」
「成功したのね」
「課長さん朝早くにお部屋を出たけれど」
「成功ね」
「よかったわね」
「ええ、一晩一緒にいたわ」
このことも言うのだった。
「それではね」
「そう、遂にそこまでいったのね」
「それじゃあ今度は」
「さらなる一手を打つのね」
「そうするわ、そして」
次も手を打って、というのだ。
「ゴールするわ、二人で」
「そうなのね、じゃあね」
「次もね」
「さて、次はね」
どうするかと言う智秋だった、そうして実際に優斗との関係を深めていった。だがこの日から三ヶ月後だ、智秋は愕然として同僚達に言った。
「ちょっとね、参ったわ」
「参った?」
「参ったってどうしたの?」
「何か今日のあんたおかしいけれど」
「顔青いわよ」
まずはその顔色から言われた。
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