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機神呼嵐デモンベイン

作者:ハイド
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第三部『TAKE ME HIGHER ~機神咆哮ッ!ブラックロッジに反撃の狼煙だゾ!~』
  第11話『何度、不様をさらそうが勝てばよかろうなのだ』

 
前書き
どうも、ハイドです。
今回は第三部クライマックス。
怒涛の展開を用意しております。

それでは本編どうぞっ。 

 
―司令室

「虚数展開カタパルト稼動! デモンベイン偏在化します!」
「またですか・・・警告した筈なのですが」
 都合三度目のデモンベインの無断使用。予測出来なかった事態ではないが、不愉快には違いない。
「どないしましょうか、司令?」
「デモンベインの主導権が向こうにある以上、こちらが介入できる余地はありませんわ。とりあえず、対象区画周辺、10キロ圏内の住民避難を徹底するように」
「了解!」
「出現地点、43廃棄区画です!」
「デモンベイン、実空間に事象固定化。・・・衝撃波、来ます」
 モニターが出現地点を映し出した。景色を揺らがせ、空間を弾き飛ばし、圧倒的質量が実像を結ぶ。
「今度と言う今度は・・・不問には出来ませんわよ。野原さん」

―アーカムシティ

 暴風を伴い、衝撃波と雷光が吹き荒れる。廃墟となっているこの地に破壊を纏った巨人が現れた。
 デモンベイン。
 理不尽に抗う為の理不尽。規格外を打倒する為の規格外。何もかも、一切合財、総ての幕を引き得る絶対者。まさにそれは機械仕掛けの神・・・デウスエクスマキナと呼べるだろう。
「アレが・・・デモンベイン。・・・あの中にお兄ちゃんが・・・」
 気絶している売間と風間を抱えながら、ひまわりはデモンベインを見る。
「やはり・・・呼んだか。野原神之介。見極めさせてもらうとしよう」
「えっ・・・?」
 聞きなれぬ声。その声がした方に眼を向ける、そこには白き仮面を被った天使が居た。
「貴方は・・・?」
「メタトロン・・・そう呼ばれている。彼から聞かなかったか?」
「貴方の事はお兄ちゃんから聞いています・・・お兄ちゃんを見極めるって言ってたけど・・・それって」
「そのままの意味だ。彼の駆るデモンベインがその名の通り、魔を断つ者なのか。・・・それとも地上に災いをもたらす破壊神なのかをな」
 ひまわりの意図を引き継ぐ形でメタトロンは答える。・・・そして、遠くを見つめるように続けた。
「私は、どちらでもなければ良いと・・・そう思う。人は、人として生きるべきだから」
「メタトロンさん・・・」
「だが・・・、それは私の役目ではない。神の役目だ。・・・そして、野原神之介の役目でもある。・・・私に出来るのは、最善の方法を取る事だけさ。・・・それが誰かの苦痛を伴う方法だとしてもね」
 言い聞かせるように語るメタトロンを見ながらひまわりは思う。
(・・・悲しい眼をしてる。・・・まるで、傷つくのは自分一人で良い、みたいな・・・・そんな悲しい眼)
 メタトロンの仮面の奥にある悲しげな瞳を見ながら・・・。

Side 神之介

『ぬっふっふっふっふ、現れたであるな!デモンベイン!今からこのスーパーウェスト破壊ロボ(以下略の真骨頂をお見せするのであーる!トォォォォォランスフォォォォォォォォォォォッム!!!!』
 ウェストのシャウトと共に、破壊ロボが変形を始める。2本あったドリルアームは4本に増え、何故かドラム缶のようなボディの上らへんにもドリルが生えた。
 だが、これで気合負けする訳には行かない。デモンベインを一歩踏み出させ、身構える。それと同時に、デモンベインの超重量によって、大地は激震。それにより崩れかけてたビルがいくつか倒壊する。これが、開戦のゴングとなった。
―轟ッ!!!
 先に動いたのは破壊ロボだった。足元から爆炎を噴射させ、4本のドリルアームを構えて突っ込む。
「速い・・・だけどっ!」
 見切れない速さではない。受け流す形で回避する。
「やっぱ、ドリルが厄介だゾ。・・・なーんか打つ手とかねーか?アル」
 現在のデモンベインの武装は2つ。頭部バルカンとレムリア・インパクトのみ。覇道財閥なら、何か知ってるかもしれないが・・・喧嘩売った以上聞くわけにも行かない。・・・マジどないしよ。
「それならば、ある術式をデモンベインの武装に改竄している最中だ。完了するまでしばし持ちこたえろ」
「了解だゾ」
 今、取れる手段でどう戦うか・・・。バルカンはダメだ。無理がありすぎる。レムリア・インパクト・・・威力が高すぎるうえに、封印(ロック)がされており姫ちゃんの承認がいるっぽいのでダメ。
 ・・・素手での接近戦。それしかないかね。
『ぬりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!!』
 そう思ったオラは破壊ロボのドリル攻撃をかいくぐり、デモンベインを至近距離に近づける。・・・そして、
「だらぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
『ぬおおおっ!?』
 ボディに思いっきり鉄拳をぶちかました。破壊ロボにデモンベインの鉄建の痕がくっきりと残り、吹っ飛ぶ。
『ぬぅ・・・やるであるなっ!・・・だぁが!まだまだ、奥の手は残っているのであるっ!くらぇい!!!ギガドリル・ジェットアッパァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』
「なっ!?」
JET!!!
 追い討ちをかけようと、破壊ロボに駆け寄る。が、破壊ロボのドリルが唸りを上げると同時に、デモンベインに衝撃が走り、今度は逆にこっちが吹っ飛ばされる。どうやらアッパーをされたようだ。
「なぁ、アル」
「何だ?」
「・・・最近、オラ達って落ちてばっかだよな」
「どうでもいいわっ!!!」
 落ちる最中、そんなどうでも言い漫才をしつつ、落下の衝撃に備えた。

Side Out。

―司令室

「デモンベイン、42番区に落下!見事な車○落ちです!・・・いやー、実際にホンマもんの車○落ちが見られるなんてなー」
「あ、それと付近の住人の避難はすでに完了しております」
 頭から思いきりビルに墜落・・・もとい見事な車○落ちをやらかすデモンベイン。その落下の衝撃により、モニターの画像が大きく乱れる。
「そんな事はどうだっていいでしょーがっ!!!ってか何ですか!あの体たらくは!!!マスターテリオンならともかく、あんなガラクタに遅れを取るなんて!」
 生車○落ちを見て、ボケをやらかすチアキにツッコミながらも、苛立たしげに声を荒げる瑠璃。そんな瑠璃をチアキは、仕方あらへんですよ。と諭す。
「兵装系に関しては何も説明しとりませんし、操縦は出来てもデモンベインの力を十全に発揮できんのでしょう。特に脚部シールド内蔵の断鎖術式を開放せんことには、デモンベインの機動力は本来の40%にも及ばへんです」
「くっ・・・」
 それを聞き悔しげに、唇を噛む瑠璃であった。

―時同じくして、別の部屋。

「・・・」
 モニターで、デモンベインの戦いの様子を見守る一人の青年がいた。白衣を着た、どこか物静かな印象を与える顔立ち。歳は神之介や風間と同じだろうか。
「・・・この動き・・・恐らく、しんちゃんはデモンベインの断鎖術式を知らない・・・。この事を瑠璃お嬢様に話して、しんちゃんに教える許可をいただかないと・・・」
 そう呟きながら、青年はパソコンを起動させ、キーボードを入力した。・・・幼馴染を救うために・・・。

Side 神之介

「っつ~・・・」
 フィードバックによる痛みに顔をしかめつつ、デモンベインを起き上がらせる。咄嗟に、インパクト位置をずらして被害を最小限に抑えたが・・・そう何度も喰らうわけにはいかない。
「アル、武装は後どれくらいだ?」
「もう少しだ!暫く耐えろ!」
「ぶ、らじゃー。出来るだけ早くしろよ、あんなふざけたのにやられたくないしな」
 アルそう言って、意識を破壊ロボに向ける。
『アレを受けて、立ち上がれるとは・・・頑丈さだけは一人前であるな。・・・だぁーがしかしっ!そんなものは美しくないのである!この我輩の破壊ロボのように、繊細に!ダイナミックに!ロボットとはそうあるべきなのであーる!さぁ!野原神之介!アル・アジフよ!更なる芸術のキワミ、アッー!へと、レッツぷれぇぇぇぇぇい!!!』
 ウェストがそうまくし立てると、同時に破壊ロボの足元に再び爆炎。そして・・・、
「な、何ィ!!!!飛んだァ!?」
 飛んだ。・・・そう、破壊ロボが空を飛んだのだ。・・・大切な事なので2回言いました。
『そぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉして喰らえぃ!愛と勇気と悲しみのォ・・・』
 そして急降下、デモンベインに向かってドリルアームを振りかぶり、
『ギガドリルゥ!ハリケェェェェェェェェェェェェェン!ボルトォォォォォォォォォォォォ!!!!』
「車○先生と香○石松に謝れェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!ってうおっ!?」
 打ち下ろすようにパンチを繰り出す。空を飛んだので呆気に取られていたのが災いし回避行動が遅れた。・・・その為、胸部装甲に掠る。
『ふははははっ!どうだ、陸と空を縦横無尽に駆け抜けるこの破壊ロボの雄姿はっ!!余りにかっこよすぎて手も足も出まいて!』
「かっこいいかどうかって聞かれると・・・ぶっちゃけかっこ悪いがよ・・・」
 ぶっちゃけ今のデモンベインでは手も足も出ないのは事実だ。こっちも空を飛べればいいんだが・・・そうも行かないのが現実。
『さぁ!その頑丈なボディも今度こそ終わりなのである!この男のロマンたるドリルで全身穴だらけのチーズにしてやるのである!!!』
「ざけんな!掘られんのはゴメンだぜ!!!」

Side Out

―司令室

「司令、旗色が悪いですね。やはり・・・野原様に断鎖術式の事を伝えたほうが・・・」
「なりません・・・」
 ウィンフィールドの進言を悩んだ末に却下する瑠璃。
「あれは、使い方によっては街を破壊しかねない兵器になります。・・・それをあの2人に使わせるわけには・・・」
『僕もウィンフィールド先輩の意見に賛成です』
「!?・・・貴方は!?」
 突如聞こえた声に、モニターを見やると、そこには先ほど別の部屋でデモンベインの戦いを見ていた青年が映っていた。
「ボー!」
「「「主任!」」」
 そう、この青年は神之介、風間と同じ幼稚園だったボーちゃんだったのだ。
『話は全部知っています。デモンベインのパイロットがしんちゃんだってことも』
「知っていらしたのですね・・・ですが、さっきも申したとおり・・・アレを野原さんに教える訳には・・・」
『いい加減にしてくださいッ!』
 ボーちゃんの怒声に瑠璃が怯む。そのままボーちゃんは続ける。
『そういう状況ではない事は分かってるでしょうッ!このまま、デモンベインを・・・しんちゃんを見殺しにするつもりですかっ!!!』
「・・・ッ!」
「司令・・・ボー主任の言うとおりです。・・・このままだといくらデモンベインとはいえ・・・」
 ボーちゃんとウィンフィールドの説得に、瑠璃は黙ったままモニターのデモンベインを見るのであった。

Side 神之介

 破壊ロボの縦横無尽の攻撃により、デモンベインのダメージは次第に蓄積していく。終始、一方的な展開である。だけど・・・、
『げぇやーははははははははははははははは!!!どうしたどうしたぁ!!!』
 ・・・。
『さっきまでの威勢はどこへやら・・・やはり所詮は口だけであるな!我輩を糞野郎とののしってくれたが・・・貴様こそ他の連中と同じ!怯えて震えるだけの糞野郎に過ぎんのであーる!!!全く持って無様無様!無様であるなぁ!!!』
(・・・うぜぇ)
 ホント、何でコイツはつくづく・・・。そしてトドメと言わんばかりに破壊ロボがドリルアームを振り上げる。
『さぁ、トドメであるッ!!!超!ギガドリル!ギャラクティカマグナムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!』
 そして、ドリルがデモンベインに迫る。そして・・・。

BACOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!!

 轟音がアーカムシティに響く。

Side Out。

―アーカムシティ

「終わったな。此処までだ」
 戦いを見守っていたメタトロンが腰を上げる。幾ら、覇道鋼造が作り上げたロボットとは言え、あの一撃をまともに受けてはもう戦えないだろう。
「やはり・・・野原神之介は只のヒトだ。ブラックロッジと戦える力は無い。だけど、それでいい・・・彼が戦う必要は何処にも無いんだ」
 ただ、黙って戦いをみつめるひまわりを見ながらメタトロンは言う。兄が負ける様を見て、彼女はどう思っているだろうか・・・。
「・・・心配するな、野原神之介は必ず助ける。・・・約束しよう」
 慰めにはならないかもしれないが・・・ひまわりにそう言って戦場に飛び立とうとした。その時だった。
「大丈夫です。・・・勝ちますよ、お兄ちゃんは」
「・・・?」
 それはどういう意味なのか?そう問いかけようとして・・・、突如落ちてきたものを見て驚愕する。
 破壊ロボの攻撃を受け、吹っ飛ばされるのはデモンベインのはずだった。・・・だけど、
「だって、お兄ちゃんは・・・『元・嵐を呼ぶ幼稚園児』ですから」
 予想とは違う光景に我が眼を疑いながら、ひまわりの声を聞いていたのだった。

―同じ時刻、覇道邸の司令室。

BACOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!!!!

 轟音と共にそのエネルギーでモニタの映像が途絶える。
「デモンベインが・・・」
 デモンベインが負けた・・・その事実に思わずその場に膝を突く瑠璃。
「・・・」
 場が重い沈黙に包まれた。いち早くショックから立ち直ったウィンフィールドが、瑠璃を気遣う。
「司令、大丈夫でございますか?」
「・・・大丈夫です。わたくしのことよりも、デモンベインを・・・」
「承知しております。すぐに回収班を・・・」
「モニタ回復します。・・・えっ?」
 エネルギーの波が過ぎ、モニタが回復する。それを見た者、この場の全員が驚愕に目を見開いた。
『「「「な、何ィ!!!?」」」』
「デモンベイン、健在。倒されてるのは・・・破壊ロボです!!!」

「な・・・何と・・・」
 破壊ロボのコクピットの中、ウェストは驚愕していた。破壊ロボの必殺の一撃。それは、デモンベインを完全に捕らえ、穿ち、吹っ飛ばしたはずだった・・・。だがしかし・・・、
「な、何故・・・我輩が倒れているのだ・・・?」
 倒れているのはデモンベインではなく破壊ロボ。・・・一方のデモンベインは無傷で仁王立ちしている。
『空を飛んだり素早くウロチョロしたりと・・・、最初は驚いたけど。それを何度も受けてると・・・カウンターを与える隙ぐれぇすぐ見つけられるさ・・・』
 どうやら、見切られカウンターを貰ったらしい。
『おい、糞野郎まだやれるか?・・・なら立てよ』
「ふ、ふふ・・・無論であるッ!幸運に救われたな。野原神之介よ、だぁが!この幸運がいつまでも続くと思うな!くらえい!」
 破壊ロボを起き上がらせ、再び必殺の一撃を放つ。
「スーパーウルトラスペシャルギガドリルローリングサンダー!!!この4本のドリルアームから繰り出される、音速のパンチならば見切る事も・・・あれ?」
 これならば、デモンベインを倒せるはず、そう思って放ったパンチはデモンベインを捕らえ・・・る事はなかった。
「げ・・・ゲゲェー!!計算ではヒヒイロカネを砕く強度のドリルが全部粉々にィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!?」
 逆にデモンベインが放った拳に全て砕かれる。・・・青い輝きを放った拳に。
『・・・無様で良いじゃねぇか』
 硬直する破壊ロボに、神之介は告げる。
『無様で良いじゃねぇかよ。どんだけ無様晒しても・・・何度ぶっ倒されようと・・・最後に、勝てばいいんだゾ。・・・無様の一つぐらい晒せねぇ根性無しが・・・偉そうな事言ってんじゃねェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!』

「ど・・・どうなっとんのや!?幾ら、特殊合金のヒヒイロカネっちゅうても、さっきまで装甲えぐってたドリルを砕くほどの強度はあらへんのに・・・それにあの光・・・何者なんや彼は!?」
『・・・彼は、僕の友達ですよ』
 動揺するチアキにボーちゃんはそう言う。一方の瑠璃は・・・驚いた表情でデモンベインを見ていた。
「野原・・・神之介・・・」
 そして、瑠璃は覚悟を決めたのか、ボーちゃんに言う。
「ボー、野原さんに断鎖術式の説明をお願い」
『・・・お嬢様、ありがとうございます』
「破壊ロボを排除する為にやむなしと判断した為です。・・・はやく、説明してあげなさい」
『わかりました』
 ボーちゃんはそういうと、通信を切ったのであった。

Side 神之介

『そ、そんな馬鹿なァ!?一体・・・一体何なのであるか、このロボットは!?我輩の破壊ロボと何が違うというのだッ!!?』
 そう言いながら、ウェストは破壊ロボを上昇させる。どうやら空中から頭に一本あるドリルで攻撃するようだ。そのロケットの炎に晒されながらも、デモンベインは煤一つ無く、仁王立ちしている。
『我輩が負ける・・・そんな事があってたまるものかァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』
 急降下、そして突撃する破壊ロボ。その時だった。
「待たせたな!コレを使えッ!!!」
 アルがそう言うと同時に、オラの脳内にある武装の術式が流れ込んでくる。・・・これは真逆・・・。
「・・・これは・・・、ありがとよアル」
 オラはアルにそう言うと、武装の名を叫ぶ!
「アトラック・ナチャ!!!」
『ぬおおっ!?』
 それを叫ぶと同時に、破壊ロボが何かに引っかかり、空中で停止した。
『な、何が起きたのであるか!?』
 それを空中にとどめる夜空に光る白いライン。・・・眼を凝らしていないとよく見えないが・・・これはまるで蜘蛛の巣のよう。
「これが・・・」
「そう、これこそ捕縛結界呪法・・・アトラック・ナチャだッ!」

Side Out

「魔導書・・・アル・アジフ」

Side 神之介

 摩天楼の夜空を覆う蜘蛛の巣。それは淡い輝きを放つビーム状の糸で構成されていた。
「この糸・・・何処から・・・」
 そう呟きながらデモンベインのステータス画面を覗いてみる。ビームが発生しているのは、デモンベインの頭部・・・そこから生えている鬣からだった。ビームの鬣がアーカムシティ全体に伸び、ビルなどを伝って巨大な蜘蛛の巣を形成しているのだ。
「元々はアイオーン用の呪法兵装だったものだが、それをデモンベインでも使用出来るように術式を編纂したというわけだ」
「・・・となると」
「そう、この意味が分かるか」
「ああ、これってお前の断片であるアトラック・ナチャを回収して、その力を使えるようになった・・・つー事は集めれば集めるほど、デモンベインも強くなるって事だな」
 オラの言葉に、アルはそうだとも!と頷く。
「我が主、野原神之介よ!デモンベインも汝ももっともっと強くなる!さぁ、あのガラクタにトドメを刺してやれ!」
「・・・とは言っても、どうすりゃいいか分かんないゾ」
『断鎖術式壱号ティマイオス、弐号クリティアスを使うんだ』
「えっ・・・?」
 オラ達の会話に割り込んできた通信。モニターの片隅に置かれた、ウィンドウから青年の顔が現れる。・・・この顔は・・・。
『しんちゃん、久しぶり』
「ボーちゃん!」
 なんと、オラの旧友の一人であるボーちゃんだった。
『元気そうだね。安心したよ』
「なんつーか、暫く見ない間に笑顔が恐ろしくなったね」
 そういって、ニッカリと笑うボーちゃん。・・・なんつーか、某装甲悪鬼の主人公の例のアレを彷彿とさせる笑顔である。
「汝ら、久しぶりの再会で申し訳ないが、用件を手短に済ませてくれぬか?」
「そういや、そうだった。こってり忘れてたゾ」
『それを言うなら、うっかり。じゃあ今からデモンベインの機動システムについて説明するよ』
 そういって、ボーちゃんはデモンベインの機動システムについて説明した。

―ボーちゃん説明中・・・。

『まぁ、こんな感じ。ぶっつけ本番になるだろうけど・・・頑張ってね』
「検索は終了した。・・・こいつか。ふ・・・、デモンベインよ。汝はつくづく面白い鬼械神だな」
 自分の腰掛けるシートを撫でながらアルは微笑む。大体分かった。ボーちゃんから教えられたデモンベインの機動システム。・・・それは、現代の技術を遥かに凌駕したものだった。
 ・・・はっきり言って、非常識と言っても過言ではない。
(・・・っつーか、何者だよ。こんなん作った覇道鋼造って・・・)
「どれ、では・・・ボーとやらの言うとおり、試してみようか!」
「応ともよ!」
 精神を集中し意識を研ぎ澄ませる。冷たく澄んだソレと、真逆に、熱く滾る血が力を漲らせていく。その感覚は正に覚醒・・・嗚呼、オラは遂に魔術の本懐へと足を踏み入れたんだなと・・・そう思う。
 体の中で生成した魔力をデモンベインの足へと流し込むイメージ。そのイメージに呼応してか、デモンベインの足に取り付けられている二つの大型シールドに魔術文字が走っていく。
「断鎖術式、壱号ティマイオス!弐号クリティアス!」
「開放ッ!時空間歪曲ッ!!!」
 魔術文字が浮かび上がった脚部シールドにより、脚部全体が眩く輝いた。発生した凄まじいエネルギーにより、周囲のビルが押し潰されていく。砕け、スコールのように降り注ぐ瓦礫が、歪められた時空による重力異常に落下と上昇を繰り返していく。デモンベインの足許で、巨大なエネルギーがうねったと思うと爆発。
 それを推進力にデモンベインは跳躍した。空中の破壊ロボ目がけ、砲弾の如く空を翔るッ!
『と、飛んだァ!?だが、しかぁし!こんなこともあろうかと、代えのドリルアームを持ってきといてよかったのであーる。くらえい!起死回生のォ・・・ギガドリル・ブーメランフックゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!』
 いつの間に付け替えていたドリルアームをフック気味に振り回し、デモンベインを迎撃。このタイミングと急速で上昇中と言う体勢の中、デモンベインはこの攻撃を回避できるのであろうか・・・。
 出来るッ!出来るのだッ!!!
『な!?なんとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?』
 破壊ロボのフック攻撃が空を切る。デモンベインには、当たってはいないッ!
 推進力のベクトルを操作・重力制御による超機動により回避したのだ。・・・物理法則も何もあったもんではない。
『な・・・何と非常識な・・・』
 お前が言うな。
 そして、そのままデモンベインは破壊ロボに接近する。今度は時空間歪曲エネルギーを円状に解放し、まるで体操選手のようにデモンベインの機体を捻り、回転させる。その遠心力を利用しデモンベインの脚を振り上げ、軌跡を描きながらエネルギーを収束。破壊ロボに、必殺の一撃を放つッ!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
 膨大なる時空間歪曲エネルギーを敵に直接叩き込み、粉砕するデモンベインの近接粉砕呪法ッ!その名も・・・。
「アトランティス・ストライクッ!!!」
 破壊エネルギーを纏ったその回し蹴りは破壊ロボの装甲を容赦なく砕く。そして、エネルギーの本流が破壊ロボの内部を暴れ周り・・・、
『ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?うわらば!?』
ドッグォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
 ウェストの断末魔の悲鳴と共に、爆発した。ちなみに、爆発する寸前、「あぁ~れぇ~」と叫びながら黒焦げになったウェストらしき人影が落ちていったが・・・まぁ、気にしないで置こう。
「ブラックロッジ!マスターテリオン!・・・よく見ておけ!コレが・・・オラ達の反撃の狼煙だ!テメェらはオラとアルが・・・完膚なきまでに叩き潰してやるゾ!!!ちなみにクーリングオフとかはねぇからなッ!!!」
 そして、オラは叫ぶ!奴等に届けと・・・力の限りに。

Side Out・・・。

―司令室

「破壊ロボ、完全に沈黙しました」
「「やったァァァァァァァァァァァァ!!!」」
「さすがですね、断鎖術式をぶっつけ本番で使いこなすとは・・・」
『しんちゃんですから』
 デモンベインの勝利を見届け、歓喜に沸く司令室。瑠璃は一人ふぅ、とため息をつきながら言う。
「今回の件、評価しない訳には参りませんね。ですが・・・」

―アーカムシティ

「だが、私は・・・彼らを認めるわけにはいかない」
「メタトロンさん・・・」
 爆発をバックに咆哮するデモンベインを見ながらメタトロンは言う。
「とりあえず、今回の事は見事だ。だが、それでも君達を手放しに評価出来るわけではない。と野原神之介に言っておいてくれ」
「・・・メタトロンさん。貴方がお兄ちゃんをデモンベインから下ろそうとした事は聞いています。・・・今まで、アーカムシティを守ってきた貴方からしてみればお兄ちゃんやアルさんはまだまだかもしれない。だけど・・・」
 メタトロンを見据え、ひまわりは続ける。
「貴方も生まれた時からヒーローだった訳じゃないはず。・・・お兄ちゃんを信じてあげてください、強くなるって・・・。貴方に認めてもらえる程に・・・ブラックロッジを倒せるほどになるって・・・」
 その言葉に、メタトロンは何も答えずに踵を返すと、背中の翼を広げ、明けの空へと飛び立った。
「それでも・・・戦うのは私一人で十分なんだ」
 そう、悲しげな声を残して・・・。

―何はともあれ、ここに一人の英雄が再び誕生した。

 野原神之介

 外道の知識を携え、魔を断つ刃金を駆り、邪悪と狂気の道を往く嵐を呼ぶ者。

第三部『TAKE ME HIGHER ~機神咆哮ッ!ブラックロッジに反撃の狼煙だゾ!~』・完

第四部『CHILD'S PLAY ~邪神暗躍ッ!闇に囚われた少女を救え!だゾ~』に続く。 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
今回、ちょびっとだけですが、ボーちゃんが登場。
ぶっちゃけ彼のキャラクターイメージは『明るい湊斗景明さん』な感じで書いてみました(神之介に見せた笑顔もとい悪鬼スマイルがその証拠)
そして、破壊ロボの必殺ブローのオンパレード。・・・ぶっちゃけ、車○先生や黄金の日本Jrの皆さんにローリング土下座をしながら描写を書きました(何だそれは)・・・ホント、ごめんなさい車○先生。
そんでもって、次回はライカさんとこのアリスンちゃんに焦点を当てた『CHILD'S PLAY』を題材にしたエピソードを書いていきます。楽しみに待っていてください。それでは~(0w0)ノシ 
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