機神呼嵐デモンベイン
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第三部『TAKE ME HIGHER ~機神咆哮ッ!ブラックロッジに反撃の狼煙だゾ!~』
第10話「汝、夜の闇を忘れることなかれ」
前書き
今回は、アトラック・ナチャ戦です。
ちょっと驚き&無理矢理な展開ありかも…。
それでもいい方はどうぞ~。
メタトロンの襲撃からはや一週間が経った。今日も今日とてあいも変わらず特訓、特訓、特訓の毎日。
ロードワーク、瞑想、ナイトゴーントとの戦闘訓練・・・エトセトラ、エトセトラ・・・。最初は、浮くのがやっとだった飛行も今は自由自在に飛べるし、魔力を拳に纏わせた攻撃も普通に出来るようになったのだが・・・。
「ん~・・・な~んか違うんだよなぁ・・・」
「何が?」
「ああ、何というかな・・・。魔術師として覚醒しきれてない・・・って感じなんだよなぁ・・・。何で上手くいかねーんだろ・・・」
そんでもって夜。一通り特訓を終え、オラ、ひまわり、アルの三人で事務所に帰りながら、オラは首をかしげながら問いかけるひまわりに答える。今のオラは『ただ魔術を使っているだけ』と言う感じで魔術師だ。と言う感じがしないのだ。
「うむ、付け焼刃的な内容になってしまう以上しかたあるまいて、それでもそこから汝が魔術師としての感触を掴んで覚醒すれば次の位階もすぐなのだが」
「んで?その魔術師としての感触ってのはどうやって掴めばいいんだ?」
「こればかりは直感的なものだ。都合の良い方法論など存在しない以上、汝が自ら見つけ出すより他無い」
「・・・そうは言ってもなぁ」
アルの言葉に、はぁ・・・とため息をつく。こんなんではマスターテリオンに勝とうなど笑い話にもならないゾ。
(・・・オラの何が足りないんだろうな・・・)
「ま、そんなに焦らなくてもいいんじゃないかな?私、魔術習ってないから分からないけど・・・諦めずにコツコツと積み重ねてやっていけばお兄ちゃんも魔術師になれると思うんだけど。はいジュース」
「うむ、ひまわりの言うとおりだ。焦れば焦るほど精神が乱れ、成功するものもしなくなるものよ」
・・・焦らずゆっくりと・・・か。まぁ、確かに一理ある。ひまわりから差し出されたジュースを受け取り、開けようとプルタブに指をかけようとしたその時だった。
「うわあああああああああああああああああああああああああっ!!!?」
「「「!?」」」
夜の闇に突如響く、絶叫。どうやらこの先の路地裏の奥のようだ。
「この気配は・・・、妾の断片かッ!?」
「と言うことはつまり・・・」
断片とは言え、アルの一部、・・・つまり魔力を秘めているという事。ならば魔術的怪異を発生させてもおかしくはない。
「急ぐゾ!ひまわり、アル!!」
「ああ!」
「うん!!」
兎に角、とりあえず怪異に襲われているだろう悲鳴の主をお助けしなければ・・・。オラはマギウススタイルになってひまわりと共に夜の路地裏を駆け抜ける。
角を2,3回曲がってようやく現場らしき場所へとたどり着く。そこは、建物と建物の間・・・それ全体を覆うように張り巡らされた巨大な蜘蛛の巣が存在した。
「さぁさ、詳しいお話はこちらへどうぞ~♪」
「は、放せ!キャッチセールスなんてお断りだ!放せー!」
そこに蜘蛛の巣に覆われたビルへと連れて行こうとする女と、必死に抵抗するオラと同い年だろうか?若い男が居た。
「待てッ!」
「・・・ん?何よ、人が商売をしているってのに・・・」
オラの声に反応して、女が振り向く。・・・何ともケバい厚化粧にどう見ても凛々しい男にしか見えない顔。
「コイツ、オカマか?」
「誰がオカマじゃあアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!ん?・・・何かどっかでこんなやりとりをしたような・・・。ってアンタ、16年前のじゃがいも小僧!?」
思わずオラが言ってしまった言葉に女もといオカマ(?)大絶叫。その後、オラを見て考え事をした後、オラを指差しながら叫んだ。・・・何かオラを知ってるような口ぶりだな。
「汝の知り合いか?このオカマ」
「いや、全然しらねーゾ。このオカマ」
「だからオカマじゃねーっつの!私の名は売間 九里代!かつて春日部で『地獄のセールスレディ』と呼ばれていたれっきとした女よ!」
売間と名乗るオカマの言葉でハッと気づく。・・・そういや居たなこんな奴。
「まぁ、兎に角。まさか、そちらからノコノコと現れるとは思ってなかったわ!今日こそ、手に入れた力で16年の恨みを込めてアンタに高額商品を売りつけてくれるわ!!!」
「何か知らないけど、あのオカマのおばさんに結構恨まれてるね。お兄ちゃん」
「やっぱ、小さい時に『オカマ』とか『おばさん』呼ばわりしたのがいけなかったかな」
そんな売間のおばさんを見ながら、会話するオラとひまわり。と、その刹那である。
ぞくりっ。
異様な殺気を感じ。ひまわりを抱えその場を飛びのく。すると、べちゃっ!とオラが先ほど居た場所に白い何かが・・・。それは糸だった。白い粘着性の糸。それが売間のおばさんの指先まで続いている。・・・これはっ!?
「蜘蛛の糸・・・もしや・・・」
「知ってるの?アルさん」
その糸を見て、何か心当たりがありげなアルにひまわりが問いかける。
「左様。恐らくあのオカマ・・・『アトラック・ナチャ』の記述を取り込んでおる。あのオカマの強い渇望に反応して力を貸しておるようだ」
「・・・成る程な」
それならば、糸を飛ばすというスパイ○ーマンじみた芸当が出来るのも頷けるゾ。ちなみにアトラック・ナチャと言うのは、エイグロフ山脈の最高峰。ヴーアミタドレス山の地底に広がる、底なしの深淵に糸で橋をかける蜘蛛神である。まぁ、詳しい話はWikiとかで調べると分かるかもしれないゾ。
「っと、とりあえずひまわり。あの男の人を連れて全速力で逃げろ。オラはおばさんから断片を取り戻してくる」
「うん!分かった・・・ってアレ?この男の人もどこかで見たような・・・」
「ん?・・・そう言えば。・・・って風間君!?」
「ひまわりちゃんに・・・神之介・・・なのか?」
これはビックリのコッペパーン。売間のおばさんに連れ去られそうになっていたのは何と、風間君だった。
「まぁね。って何で風間君もアーカムに?・・・まさかオラの事を追っかけて!?」
「そんな訳あるかっ・・・!!お前がここに来る事事態知らなかったんだっ・・・!ってか再会早々それかよっ・・・!?」
あ、懐かしいなこのやりとり。とまぁ、久しぶりの旧友との再会に喜んでいると・・・、
「私を差し置いて盛り上がってんじゃねェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!」
べちょり。
売間のおばさんの怒号と共に、何かが右腕に張り付く。見てみると・・・、やられた。
「しまった!?ふりほどかねーと・・・って解けねぇ!」
振りほどこうとするも、全く解ける気がしない。
「ふっふっふ・・・、このまま私の巣につれて帰って高額商品を売りつけてくれるわ!」
勝ち誇った笑みでオラを引っ張ろうとする売間のおばさん。オラも負けじと引っ張るが・・・、如何せん力が強い。・・・仕方ないならば・・・。
ガシッ!
「・・・おい、神之介」
「ん?何?」
「何・・・じゃないっ・・・!何で僕の手を掴んでいるんだっ・・・!アレかっ・・・!?道連れかっ・・・道連れなのかっ・・・!?」
「うん、その通りだz・・・じゃなくて皆の力を合わせれば何とかなるかなと思って」
「その通りって言おうとしたなっ・・・!?大体お前でも無理なのに僕が加わった所で・・・」
「シィアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
「おわあああああああああああああああああああああああああああ!!!?」
「ほらやっぱりねェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!?」
風間君を捕まえて引っ張ってもらおうとしたが・・・、あっさり力負け。そのまま風間君もろとも投げ飛ばされる。
「イモコッ!?」
「ザヨゴッ!?」
そしてそのまま勢い良く車○落ち。やっぱ顔面から行くのって痛い・・・。
「いてててて・・・、畜生っ・・・!お前のお陰でまた大ピンチだっ・・・!」
「いやー、それほどでも~」
「ふざけろっ・・・!いつ、僕が褒めたっ・・・!?大体、こんな事をしてる場合じゃ・・・ってうわっ!?」
「風間君!?ぬわっ!?」
そんなコントをしつつ地面に打ち付けた顔をさすりながら立ち上がろうとするオラ達を蜘蛛の糸が襲い掛かる。たちまちあっという間に縛られてしまうオラ達。
「神之介!何とかせんか!?」
「大丈夫だゾ、アル。まだ慌てる時間じゃあない」
「馬鹿かっ・・・!何を根拠に言ってるっ・・・!このおバカっ・・・宇宙的おバカっ・・・!」
蜘蛛の糸に巻きつかれまくってもうミノムシ状態でアルに言うオラ。途中で風間君にツッコミを入れられたがまぁ、気にしない。
「おーっほっほっほっほっほ!お二人様ごあんなーい♪」
「ああ・・・やっぱりダメだったゾ。アイツは話を聞かないからな」
「誰に向かって話してるんだよ!?つかアイツって誰!?」
オラの健闘もむなしく、風間君と二人仲良く巣である、壊れた廃ビルに連れて行かれたのであった。
―廃ビル内
「ねぇ、風間君。オラ達どうなるんだろうね」
「どうなるんだろうね・・・じゃないっ・・・!助かったと思ったのに、お前の所為でこの状況だっ・・・!」
「いやー、それほどでも~」
「また、それかっ・・・!?僕は褒めてないと何度言えば・・・」
いま、オラは暗い廃ビルの中で風間君と会話をしていた。連れ去られた後、両手両足を拘束され放置。現在に至るのである。
「恐らくここは奴の巣のようだな。今の我々は餌・・・大方、後からじっくりと味わうつもりだろうよ。身動きを取れなくして、腹わたを・・・」
「やめろっ・・・!その生々しい・・・圧倒的悪寒のする説明をっ・・・!やめろっ・・・!」
いつの間にかついてきていたアルの言葉に、何か全身をぐにゃ~っ・・・とさせて某ざわ・・・ざわ・・・に定評のあるギャンブル漫画の登場人物のようなツッコミを入れる風間君。どうやら、アルも捕まったようだ。・・・どうりでマギウススタイルが解けてないはずだよ。
「ま、とりあえず落ち着こうぜ。ひまわりはあのオカマに捕まってないんだし・・・、とりあえず助けに来るのを待つか・・・ん?」
ふと・・・何か声が聞こえてきた。すすり泣き、嗚咽・・・そんな類の声だ。
「どうしたんだ?」
「いや、何か声が聞こえたな・・・と思ってさ。オラ達の他にも捕まってる人が居るみたいだゾ」
風間君の問いにそう答えながら、声のした方を振り向いてみると・・・、暗闇の奥に人影がいた。サラリーマン風の男性である。何か物凄くやつれており、虚ろな眼で何かぶつぶつ呟いている。
「・・・?」
何を言っているのか、気になったので魔力で聴覚を研ぎ澄ませ、声がはっきり聞こえるようにした。
「ご・・・五十万っ・・・。ふざけろっ・・・。払えるかっ・・・、そんな圧倒的暴利っ・・・」
「・・・」
五十万?払えるか?暴利?・・・どういうことなの?男の声を聞き、オラはすぐさま脳内で整理する。
「だけど・・・買わなければ・・・一生この中っ・・・。買えば・・・借金地獄っ・・・。この究極的選択っ・・・」
・・・男の声で、オラの頭がある一つの答えを導き出した。
(・・・まさか、あのオカマ・・・。ここに金づるとか拉致って無理やり高額商品売りつけてんのか・・・?)
拙い・・・非常に拙い。このままだと・・・、あのオカマに・・・しゃぶられる・・・!骨の髄まで・・・。
「ひまァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!早く来てェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!ヘルプミー!プリーズヘルプミー!」
「神之介!?いきなり叫んでどうした!?」
本能的に身の危険を感じ、叫ぶ。魂の底から。だが、そんな願いもむなしく・・・、
「はぁい、お待たせ♪今から、楽しいセールスターイム♪」
来たのは売間のオバサンだった。・・・現実は非情である。このままオラ達は、このオバサンに高額商品を買わされ・・・、
「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉりゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「ぶげぇ!?」
裂帛の雄たけびと共に、オラ達の後ろから人影が飛び出してきたかと思うと、売間のおばさんにとび蹴りを喰らわせる。そのままおばさんは吹っ飛んでいく。
「悪いけど・・・うちはセールスお断りだよ。お待たせ、お兄ちゃん、アルさん。・・・それと風間君」
「「ひまわり!」」
「僕はついでかっ・・・!?いや、助けてくれて感謝はしてるけどっ・・・!」
そう言いながら振り向いたその人物はひまわりだった。ついで扱いされ、風間君が激昂していたが・・・まぁ、気にしない。
「気にしろっ・・・!大体、お前の所為でこうなったんだぞっ・・・!気にしろっ・・・!」
・・・風間君、あーたエスパーですかい?
「こ・・・の・・・糞ガキ共ォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
「「「!?」」」
なんやかんやあって、ひまわりの手で拘束から逃れたその時だった。耳をつんざくような雄たけび、見やると、瓦礫を押しのけ憤怒の形相の売間のおばさんが。
「許さない・・・許さないゆるさないユルサナイ・・・。何回も性懲りもなく邪魔をしやがって・・・ぶち殺してやる・・・ぶち殺してやるぞ!!糞共がァァァァァァァァァァァアァァァァ!!ヴヴヴ・・・グヴォアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
雄たけびと共に、自らの殻を破りアトラック・ナチャとしての真の姿を見せる。中から現れたのは、虫の外骨格を連想させる、黒檀のように真っ黒な体躯。異形の貌に、真紅の輝きを放つ8つの眸。節を持つ鎌のような腕。下半身は大きく膨れ、側面からは腕と同じ形状の三対の脚が生えている。全身を甲殻に覆われたその姿は、正に蜘蛛だった。
「」
「あ、風間君が気絶した」
そんな売間のおばさんもといアトラック・ナチャを見てSAN値が大幅に削れてしまったのか、白目を剥きながら口から泡を吹き気を失う風間君。まぁ、いきなり人間の殻を破ってバケモノが出てくるのだから仕方ないといえば仕方ないだろう。
「兎に角・・・、アレが真の姿って奴か・・・」
「この状態だと・・・、完璧にこちらを殺る気満々だね。今度は油断しちゃダメだよ」
「分かってる」
ひまわりにそう返し、アトラック・ナチャと対峙する。
「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
先に動いたのはアトラック・ナチャだった。こっちに糸を吐き出すが、それを回避。そのまま散開して近づく。
「せぇあっ!!!」
魔力を込めた後ろ回し蹴り。アトラック・ナチャはそれをガードするも、防ぎ切れなかったのか大きくよろめく。
「お兄ちゃんだけじゃないよ?アナタの相手は!!」
「ガヴォア”アアアアアアアアアアアアアアアア!!!?」
その隙を狙い、ひまわりが相手の懐に潜り込んでの鉄山靠を放った。その威力は悲鳴を上げ、アトラック・ナチャが吹っ飛び壁を突き破る程だ。
「へへ、お兄ちゃん。ナイスコンビネーション♪」
「おう。・・・それはそうと、八極拳なんていつ覚えたんだ?」
「にひひ、それはn「二人とも!暢気に話してる場合かっ!?」え?」
アルの言葉と共に、気配を感じそちらを向くと、先ほど突き破った壁からアトラック・ナチャが這い上がり、糸を吐いていた所だった。このままだと、また捕まってしまう・・・。そう思った、次の瞬間である。
(!?・・・何だ・・・コレ?)
瞬時に世界が止まったかのような感覚にとらわれた。意識が弾け、心が昂ぶる。されど思考は冷静・・・。これは何処かで・・・。そうだ、あの時、マスターテリオンに追い詰められた時の感覚だ。
(コレなら・・・いけるゾ!)
そう思い、この攻撃を防ぐ手立てを思案、最適案を導くと同時に、術を紡いで実行させる。
「なっ!?」
「えっ?」
「ギシャ!?」
刹那、鋭い剃刀のように変化した翼が糸を切り裂いていた。オラ以外の全員が眼を見開いて驚愕している。
「さっき、捕まった時いくら引っ張ってもゴムみたいに伸びて千切れなかったから、鋭い刃なら切れるんじゃねぇかと思ってナイトゴーントの鋭い刃翼を参考にしてみたんだが・・・上手く行ったみたいだゾ」
実際アイツとのスパーリングで、何度もそれに苦しめられたものである・・・。ナイトゴーント感謝。
「は、ははは・・・汝にはいつも驚かされるな・・・。ナイトゴーントの戦闘法を参考に術を編み出すとは・・・」
「いや~、それほどでも~。っと」
苦笑交じりに言うアルに返しながら、迫ってきたアトラック・ナチャの攻撃を回避する。どうやら、接近戦でねじ伏せるつもりのようだ。
「おせぇんだよ!マギウスウィングッ!!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアオアアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!?」
ベアハッグをしようとしたアトラック・ナチャの両腕を刃に変形した翼・・・名づけて『マギウスウィング』で切断。苦悶の表情で雄たけびを上げるアトラック・ナチャ。
「これで・・・フィニッシュ!!!」
「ギャバラベ!?」
顎にとどめのアッパー。そのまま数歩のけぞり倒れたかと思うと、光を放ち売間のおばさんへと戻った。先ほどの激戦が嘘のようにキズ一つ無い、息をしているという事は死んでおらず気絶しているだけのようだ。
「ふぅ・・・ん?コレは・・・」
ふと、売間のオバサンの傍らに落ちてあった仄かな輝きを纏った数枚の紙片を見つけた。
「うむ、妾の断片だ」
「これがか・・・、でどうやって戻すんだ?」
オラの問いに、アルはまぁ、見ておれ。と言うと、断片に手をかざす。
「接続!アエテュル表に拠る暗号解読!術式置換!正しき姿へ還れ、我が断章!」
アルが呪文を唱えると同時に、断片がオラの纏っているボディースーツに吸い込まれ魔術文字の輝きをやどして一体化した。・・・これで終わりのようである。
「コレで回収成功だ。よくやったな神之介」
「おう。・・・それより、どうすっか。この気絶した2人」
そういって、オラは気絶している風間君と売間のおばさんを見る。ついさっき会ったばかりだから家何処かわかんねーんだよなぁ・・・。そう思っていると・・・。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。
「あれ?何か音がするよ?地震?」
ひまわりの言葉に、オラの直感が警告を鳴らした。
・・・間違いない、ヤツだ。そう思った、オラは静かにひまわりに言う。
「ひま、オラに捕まってろ」
「え?どういう事?」
「すぐに分かるから」
眼をしばたかせながら問いかけるひまわりにオラは諭すように言う。分かった、と答えるとひまわりはオラの背中にしがみついた。んでもって、両手で売間のおばさんと風間君を抱えると上空へ飛ぶ。
バッゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
それと同時に、オラ達が居たビルが崩壊し、そこから何かが現れた。ドラム缶のような無骨なデザイン・・・破壊ロボである。
「」
背中にしがみついていたひまわりが呆気に取られた様子で破壊ロボを見ていた。・・・オラもこの街に初めて来た時もこんな感じになったのだ。ってかあんなもん見たら誰だってそーなる。
「ぬーっひゃっひゃっひゃ!我輩のナイスミドルな発明品!魔力探知機『ダウジン・・・グー(エ○は○み風)』がティンと来まくったので駆けつけてみれば、成る程、アル・アジフの断片を追えば野原神之介!貴様が現れるのが道理といえような!さーぁ!覚悟するのであーる!!!」
案の定、操縦していたであろうドクターウェストがパカッと割れたコクピットから姿を現し、オラに言う。・・・つーか、名前まで覚えられてんのか?・・・勘弁して欲しいゾ。
「お兄ちゃん」
「何か用かな?」
「・・・何あのキ○ガイ」
「・・・知らん」
そんなキチ○イもとい、ドクターウェストを見ながらオラとひまわりそんな会話をする。そんなオラ達などお構い無しにドクターウェストはヒートアップ。
「アル・アジフの断片はとっくの昔に回収されたようであるがっ!この『スーパーウェスト無敵ロボ28號改ドリル・エディション~男の夢よ永久に~』でボコボコにした後、アル・アジフを回収してやるのであーる!!さぁ覚悟っ!」
そういうと、ウェストは再びコクピットに乗り込むと暴れだした。
「ふん、あんな鉄屑如き・・・。神之介!デモンベインを呼ぶぞ!」
「ちょいと待て!まだ、ひまわりたちを安全な場所に避難させてねぇゾ!」
ひまわり達をそのままにした状態でデモンベインを呼べば危険が及ぶ可能性がある。
「そうは言っても向こうは待ってはくれんぞ!・・・ぬわっ!?」
「うおおっ!?」
そうこう言っている内に、ドクターウェストがミサイルをぶっ放した。それを回避し、地面に着地する。
「ほらほらほら!どうした!?どぉぉぉしたのだ!?あのデモンベインとか言う巨大ロボットを喚ばないのであるか?それとも我輩の黄金な頭脳には勝てないと悟り、潔く討たれるつもりであるか?ひゃーっはははははははっ!!!」
「あの野郎・・・、好き勝手言ってくれるゾ・・・」
「まあ、アレも少しはできるロボットだったようであるが・・・その程度で我々ブラックロッジと、ましてやあの大導師と戦おうなどと、随分と身の程知らずなのであーる!」
余りのウザさに無視を決め込み、ひまわり達が避難できる場所を探そうとしたが・・・、この一言にカチンと来る。
「しかし、大導師に愚かにも挑み理解したであろう? 所詮、貴様らの力などあの程度!この世の理は焼肉ていsy・・・じゃなかった弱肉強食!弱者に過ぎぬ貴様らは、大人しく我々に平伏し、喰われるが定め!」
弱者・・・?オラ達が弱者だと・・・?
「お兄ちゃん?」
「神之介?どうしたのだ?」
ひまわりとアルがオラを見ているが、そんな事はどうでもいい・・・。今、オラが思っていることはこの糞野郎を黙らせる。・・・ソレだけだった。
「そもそも!大導師御自ら相手をする必要など、最初からなかったのである!そのことを我輩の大!傑!作!スーパーウェスト無敵ロボ(以下略)で、たっぷりとその身体に教えてやるのであーる!さあ覚悟しr「黙れよ」・・・はい?」
「マスターテリオン、マスターテリオンうっせぇゾ。そいつが何だってんだよ。この醜悪な糞野郎共がよォ!!!」
「な、なななななななぁ!!!?」
呆気にとられるウェストの声を聞きながらオラは、ある感覚に陥っていた。・・・体が燃えるように熱いのだ。だが、その反面、頭の中は恐ろしい程に冷たい。
(・・・これが魔術師としての覚醒ってヤツか)
視点がガラリと変化し、世界を一段上から見渡しているような認識と、カラダの奥底から無限に力が湧いてくるような実感。・・・今のオラなら、何でも出来そうだ。
「ひま」
振り向かずオラはひまわりの名を呼ぶ。
「な、何?」
「風間君達を連れてここから避難しろ」
「避難しろって、お兄ちゃんはどうするの!?」
「オラは・・・」
そういって、ひまわりの方を向き、ニッと笑って答えた。
「アイツをぶっ飛ばす」
オラの言葉にひまわりは何かを言いたそうだったが、それを飲み込み同じくニっと笑うと、風間君達を抱えて避難を開始した。
「・・・よし、アル。デモンベインを呼ぶぜ。・・・オラ達の力、あの糞野郎に思い知らせてやるゾ!!!」
「応ともよッ!!!」
「お・・・己ェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!さっきから、我輩を散々コケにしてくれおってェェェェェェェエェェェェェェ!!!」
オラ達の声が聞こえたのか、激昂したようにブンブンドリルを振り回すドクターウェスト。
・・・いいぜ、お前等ブラックロッジが何でも出来る強者だってんなら・・・。
まずはその幻想をぶち殺すッ!!!!
「憎悪の空より来たりて・・・正しき怒りを胸に!我等は魔を断つ剣を執る!汝、無垢なる刃!デモンベインッ!!!」
さぁ・・・、反撃の狼煙を上げさせてもらうぜ!!!
To Be Countenude・・・。
後書き
いかがだったでしょうか。
今回、マギウスウィング開眼イベントがなんか無理矢理過ぎたような…そんな気がします(汗)
まぁ、何はともあれ、次回は西博士との2戦目。驚きの展開を用意しておりますので楽しみに待っていて下さい。
それでは~(0w0)ノシ
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