【短編集】現実だってファンタジー
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俺馴? 外伝2-3 [R-15!]
認められない事実を前にした時、人はまずその事実を否定しようとする。
拒絶して、否定して、確かめて、そしていつか否定できなくなったその時に、事実は事実として本当にその意味を持つ。
俺は、全ての疑惑を振り切ろうとするように家に走った。
曖昧になった記憶など、もうどうでもいい。ただ最初から愚直に真実を求めて行動すればよかったんだ。早く見つけてしまおうじゃないか。そうすれば全て――悪夢は醒める筈だろう。いりこにも疑問を抱かなくなるはずだろう。世界を受け入れられる筈だろう。
あの二人は俺をからかっているか、きっと他人の空似なんだ。家に帰ってちゃんと探せば両親の使っている物も、家族3人の写真もあるはずだ。戸籍を確かめればそれこそ証拠になる。あるんだ。あるはずなんだ。探せばある。昨日の今日ですぐに変えられる訳が無い。手がかりが、ぼろがあるはずなんだ。
なのに、なのに、なのに――
「はぁっ……はぁっ……!そんな、そんな馬鹿な話が……はぁっ、あるかよッ!」
戸を開ける。箪笥を空ける。本棚をひっくり返す。金庫を開ける。この家に存在する、思いつく限りの場所を探し尽くす。だが、探せど探せど俺といりこ以外の人間を証明するものが一切出てこない。代わりに出てくるのは、出鱈目としか思えない書類や断片的な情報ばかり。
俺が捨て子?いりこも天涯孤独?それで、気が合って同棲?
後見人のこいつは、誰だ?こんな大人は見たこともない。
事故――なんだこれは、落下事故?それで俺が頭を強く打って、それで脳の一部に傷がついた?
出鱈目だ、何もかも。俺には事故の記憶なんか残ってない。俺の記憶と全然違うじゃないか。滅茶苦茶だ。全部作り物に違いない筈なんだ。おかしいのは俺じゃなくてこいつらの筈なんだ。そうだろ?なのに何で俺の主張を立証する物的証拠は何一つ見当たらないんだ。なぜこの世界には俺の正当性を証明するものが何一つとしてない。記憶じゃ駄目だ。者が俺を納得させるのに必要なんだ。
墓を荒らすように浅ましく家にあるものをひっくり返したが、何一つとして俺の求めるものは存在しなかった。運動による発汗かどうかも分からない汗が全身の汗腺から吹き出し、額を何筋も汗が垂れる。震える腕が、とうとう本を取り落した。物が乱雑にぶちまけられた床に、ばさり、とページを開いて落下する。
そのページには、見覚えのない部屋のベッドに、自分といりこが座って笑いあう写真がしおり代わりに挟まっていた。
「……そうだ、いりこ。あいつが首謀者なら、あいつの部屋に……」
いりこ。不確定。あいつに対して強く感じたざらつく寒気が嘘でないなら、それもあり得るのではないか。そう、俺のあやふやな記憶には故意があるかもしれないじゃないか。どうして今まで思い至らなかったんだ。
はっと時計を見る。いりこは買い物を済ませて帰ると言っていたから余り時間が残されていないかもしれない。もしいりこが本当に首謀者で、かつこの部屋の惨状を見れば、証拠があったとしても隠滅されるかもしれない。いりこの部屋はどこだ。この家は俺の住んでいた家と同じ構造をしている以上、おそらく両親の部屋か物置代わりに使っていた個室のどちらかに――
そう思って階段を駆け上がり、2階に辿り着く。いりこの部屋は直ぐに判明した。俺の部屋の真向かいにある物置部屋のドアに、ご丁寧に「いりこの部屋」と書いたプレートがぶら下がっていたからだ。鍵など最初からこのドアにはついていないから、躊躇いもなくドアを開け放つ。
ぬいぐるみや清潔感のあるクッションの置かれたベッド。いくらかの本と文房具が几帳面に納められた勉強机。箪笥、本棚、テーブルの上のPC、化粧道具が幾つか置かれたドレッサー。何も不審な点の見当たらないその部屋にずかずかと踏み込む。
よく見ると、テーブルの上にはPCの他に見たこともない型のデジタルカメラやミニプリンタが置かれている。デジカメからPCに、そしてPCからプリンタにデータを送っていたようだ。しかし、確かこの型のプリンタはデジカメと直接繋げて印刷が出来た筈だ。PCにデータを取り込みたかったのだろうか。
PC……情報は紙媒体だけとは限らない。このPCの中にも手掛かりがあるかもしれない。素早く電源を入れると、想像以上の速さで起動した。そういえばあいつは機械に強い人間だったから、ひょっとすればこのPCに手を加えて高性能化を図ったのかもしれない。
ロックがかかっていたが、色々と試していると俺の生年月日で突破できた。勝手に中を盗み見る事に罪悪感を感じる暇もなく中身を改めた。すると、様々なデータ類の中に一つだけタイトルの意味が分からないファイルを見つける。『ロバリーの隠し本』……それにどんな意味が込められているのかは分からなかったが、開く。中にあったのは動画ファイルだ。
「これは……俺?」
そこには――赤外線モードで少々わかりにくかったが――パジャマ姿で眠る俺が映し出されていた。恐らくデジカメで撮影されたのだろうが、それにしては嫌に映像が鮮明だ。――盗撮、だろうか。俺の求める真実ではないが、いりこへの疑いを深めるものだ。この先に何が納められているのかを、他のファイルも漁りながら確かめる。
少し間をおいて、部屋に電気が付けられる。撮影モードも通常モードに切り替わる。突然電気の光が付けられたのに、映像の中の俺は一瞬眉を顰めただけでそれ以上は反応しなかった。余程深い眠りに入っていたのだろうか。
ふとテーブルの下に、何か白い粉のようなものが落ちているのに気付いた。お菓子の食べこぼしにしては微粒が細かすぎる。
俺は、PCで再生され続ける映像に目配せしつつ、その粉を観察する。粉はよく見ればカーペットに点々と落ちており、机の引き出しまで続いているようだった。後で調べた方がいいかもしれない。――と、カメラに撮影者であるいりこが映った。どうやら三脚のようなものでカメラを固定したようだ。斜め上から見下ろす視点になっている。と、そこにいつものようにテンションの高い少女の顔が映り込む。
『○月×日、今日はさざめくんのお薬に、新しく配合したのを盛っちゃったので……何しても起きません!きゃう、私ったらイケナイ子!でもさざめくん、幾らアピールしても一緒のベッドには寝てくれないもん!これくらいいいよね?』
「………………」
絶句。
目の前に映る過去の映像の中で、女は俺に薬を盛ったと明言した。その事実を裏付けるように、映像の中の俺はいりこが普通に喋っているのに身じろぎ一つせず眠りこけている。――じゃあ、朝に飲んだあの薬は何だよ。あれは、俺の身体に何をしたんだ。記憶にかかった靄は。
『よく寝てるねぇ~……今回のはいつもと配合を変えたので、服用の所為で数日記憶が飛ぶなんて副作用は起きませぇん!まぁ服用前後数時間くらいの記憶は曖昧になるかもしれないけど……サクマ様直伝の健康に害がない薬物だから問題ないよ!』
「………うくっ、何だ、これ……!?」
喉元が干上がり、言葉にならない声が一瞬漏れた。確かに言われてみれば、朝目覚めた時に昨日のことを思い出せなかった。あれが薬の所為?しかも今までも何度か薬を盛られて、その度に俺の記憶は飛んでいたのか?
「それじゃあ、いつからだ。……俺はいつから記憶が無いんだッ!?どこから、何度ッ!!」
今の今まで、お前は平気な顔をして何度俺に薬を盛った。そしてそれを何回繰り返した。俺はもしかして、今まで何度も何度も今日のような戸惑いや寒気を覚えていたのか。それすら薬で忘れて、あやふやな記憶であの薬を危険のないものだと思い込んだ。
「何のためにこんなことをしたんだ、いりこッ!?答えろッ!!」
映像の中で無邪気に笑う少女はあくまで過去の映像を投影している存在に過ぎない。それでも聞かずにはいられなかった。だから――
『だからぁ……』
いりこの手が、俺のベッドにかけてあった毛布を取り払う。そして俺の上にまたがり――あの顔を、うっとりと見とれるような悦楽に溺れた顔を見せた。得体のしれない悪寒が背中を駆ける。
そしていりこはそのまま俺の上に倒れ込むように身をおろし、パジャマのボタンに手をかけて一つ一つ丁寧に外しながら――映像の中の俺の唇を奪った。思わず自分の口を覆う。なにか、とても不浄なものをくちにしてしまったかのような感覚さえ覚えるほどに、その姿は生々しくて――こんなのは、間違っている。
『んちゅっ……ハァっ、こんな事しても……全然起きないんだからぁ!あははっ♪』
再度、獣が顔を押し付けるように俺の唇を奪い、眠っている俺の顎を指でこじ開けて口腔に舌をすべり込ませる。はっきりと見えはしないが、じゅるじゅると響く何かを吸い上げるような水音と、臆面もなく俺の身体を貪るように求める女だけが映り込んでいる。
俺は、その豹変に言葉が出なくなって後ろに後ずさりした。眼を逸らしたくなるような本性と、蹂躙される俺の身体。だが、その映像が持つ圧倒的なまでのリアリティが俺の魂を雁字搦めに拘束した。縛る茨が、それがお前の求めてやまない真実だとせせら笑う。
やがていりこは俺の頬や首筋などを、まるでこれは自分のものだと主張するように舐め回した。うっとりとした表情で、荒い息を抑えようともせず。パジャマは脱がされ、やがていりこは俺の身体も――
これも、今までずっと?
間違ってるよ。
間違ってるだろう、こんなことをして。
お前は優等生だったじゃないか。分かるだろ。
何でだよ。
「嘘だ……嘘だろう、こんなもの。よく出来た作り物だろ……っ」
そう喋る自分の口が、小さく痙攣していた。悪寒に肩まで震えだす。俺はいつからこんなことをされていたんだ。いりこは、いつから俺を、何のきっかけでこんなふうに扱うようになったんだ。いりこ、お前は――お前の仕業なのか?俺の身体を弄んでいたのか?
心のどこかで、そうであってほしくないと願っていた。それが今、叶わぬものになった。考えてみれば確かに今日の布団はいやに湿気を含んでいた。それに、考えてみれば俺のベッドには「シーツなんてかかってない」。いりこが、痕跡を誤魔化すためにかけたとしか考えられなかった。映像の中のいりこは俺の質問には答えない。だが――雄弁にもこれが真実であることを語る。
『えへへ……さざめくんにこんな事していいのは私だけなんだから……んむっ、~~……』
俺の左脇腹辺りに顔を運んだいりこは、そこに自分の身体を埋めて何かをしている。ややあって、ちゅぱっという大きな音を立てていりこは顔を離した。そこには、内出血で唇の形に赤くなった俺の皮膚があった。
『…ぷはっ!初めてやったけど、上手くいったかな?キスマーキング!』
「……ッ!?」
反射的に、シャツをたくし上げて自分の左わき腹を見る。そこには、映像でつけられたそれと全く同じ痕がくっきりと残っていた。朝に何でもない顔をしていたあいつは、俺が知らない所でこんなことを繰り返していた?
はっと、俺は立ち上がってさっきの白い粉を辿り、いりこの机の棚を乱暴にあけた。このキスマークが事実ならば、あの白い微粒の正体も、最悪の予想という形で思い至る。本当はあってほしくなかったが、しかし現実は逃げる事がなかった。
天秤。鉄製のスプーンや小皿、紙、ビーカー、すり鉢、試験管等の実験器具。見たこともない小型の機械。ぎっしりと詰まったプラスチック製の容器。その全てに床に落ちていたそれと同じ真っ白な粉が詰まっていた。小瓶も大量にあり、透明な液体が中で揺れている。見た所、実験器具類はそれなりに使い込まれていて、容器の中身は半分以上減っているものもあった。
いりこは、これを使って、ずっと俺に――
「……ぅわああぁぁぁぁぁぁぁッ!?!?」
訳が分からなくなって、悲鳴を上げた。気が付けば涙も溢れ出ていた。
お前は確かに正体不明だったが、それでも女の子だったじゃないか。恥じらいだって失敗だってあったし、時には怒ることだってあったろう。なのにお前は――どうして俺にそんなことをする。何故普通に接して、普通に愛せなかったんだ。それともお前には愛など無くて、俺の事を弄んで欲望の捌け口にしているのか。
愛が無いのなら、俺はどうやってお前から逃げればいい。
愛があるのなら、俺はどうやってお前に接したらいい。
それとももう、俺は袋小路の壁に縫い付けられているのか。
「っぐ、く…ぅうう……!う、ああぁ……っ!!」
嗚咽が漏れる。もう嫌だ。いりこという存在が分からない。向き合いたくもない。ただ、俺から離れて、俺に何もしないでくれ。お前は――俺に何を求めているんだ?顔を抑えて声を押し殺し、そのまま自分も押し潰してしまいたいとさえ願う。
そんな俺の耳に、しかしいりこは応えない。それは過去の映像であって、変えることの叶わないものだから。
『ハァっ、んんっ……ふう。それじゃあこれからが本番だよっ!』
「え……」
PCかのスピーカーから垂れ流される聞くに堪えない水音はいつの間にか止んで、代わりにいりこの大声が届いた。まだ、続きがあるのだろうか。
もう何のために俺はPCに向かっているのかが判然としなくなっていた。きっとこの先には俺の知りたくなかった恐ろしい事実があるんだろう。それでも――そうだ、目を逸らしたくはない。俺が喚いて泣いてもこの部屋から出て、いりこから逃げ出そうとしないのは、結局そんな自分の精一杯の意地なのではないだろうか。
結局、延年冴鮫という男は田楽入子という女を放っておけないのだ。
そんな俺だから、いりこは狂ってしまったのか。それとも元からあいつは狂っていたのか。
恐ろしくて悍ましくて醜くて、それでも――
あいつから目を逸らすのも間違っている。だから目を逸らさずに、お前の事を見極める。
『これから、最愛の人にまた一つ、大切なものを捧げます。こんな映像まで取ったってばれちゃったらきっと怒られるかな?でも、さざめくんったら恥ずかしがりで奥手だから……私がリードしてあげないとね!』
『もう、私は貴方だけのもの……貴方に相応しくて、貴方を全部知っていて、貴方を満足させられるのは……私だけなんだよ!私は貴方の隣にいられればそれでいい、あとは何もいらない。だから、もっと……ちょうだい?』
『大変だったんだよ?エレミアにもサクマ様にもばれずに、同期のメンバー全員を術の支配下に置くの。だって皆わたしのやることに反対するんだもん!……私に術で勝てる訳ないのに、たった3人で私を止めようなんてナメられたものよね!』
『さざめくんのおじさんとおばさんも、本当は一緒に居させてあげたかったけど……まだ改竄がちゃんと住んでないから。もう少し経ったらまた一緒に住めるよ。勿論”こちら側”での私の両親も!』
『分かってるもん。さざめくんは優しいから、口ではなんだかんだ言って許してくれるよね?だから……”あの時”も許してくれた君だから、私の全てを奉げてあげる。いっぱいいっぱい、幸せをあげる』
全てを見終えた俺は、保健室であいつが言っていたことを思い出しながら、「あのバカめ」と呟いた。
≪そんな優しさを持っているさざめくんだから――私は、全てを捧げたんだよぉ?≫
俺はゆっくりと立ちあがって、一度深く深呼吸した。震えも涙も、もう止まっていた。
「…………”あの時”ってのがいつだか知らねえけど一度許したからって何でも許されると思うなよあのキチ○イ妄執女ぁぁぁーーーーーっ!?確信犯かっ!俺が最終的に許してくれるからって確信犯かっ!?というかやっぱり全部お前の仕業じゃねえかこのスケベ女がッ!というか何で俺の幸せをお前が決める流れになってんだよふざけんな!!」
「ただいまぁ~……………あ」
ふと後ろを見ると、悪戯がばれて顔面蒼白になる子供のようないりこの姿が。
散々人の身体を弄びやがって、このさざめ容赦せんぞ。
「い~り~こ~……」
「……知られちゃったんだ。嫌いになった?私のこ――」
今更気取ったような態度をとっても許さぬ。
「問答無用!その柔らかそうな頬を摘まんで思いっきり引き伸ばしてやるの刑に処す!!刑罰、執行ぉぉぉぉッ!」
「ふぇあああああああ!?いふぁいいふぁいいふぁい!!ごえんなふぁいほうひまひぇん!ゆるひてくらふぁぁぁ~~~い!!」
「許さん!お前が泣いて謝っても気分次第では暫く許さん!!何をてめえは寝ている間に人の貞操散らしてやがりますかぁ!?というかなんだ術って!なんだサクマとかエレミアとかっていってたのは!吐けぃ!!俺の幼馴染だってのも結局嘘だったわけだなコラぁ!?」
「ごえんなふぁいうふぉれひたぁ!!うふぉふいてごえんなふぁぁ~~い!!」
その日、俺はいりこをある意味完全に服従させた。……変な意味も含んで。
≪……という具合でして、どうシミュレーションしても対象を薬物で丸め込むのは難しそうです。以上、エレミアさまからの演繹シミュレータ結果でした≫
≪あー、それってどっちかというといりこの方に多大な問題があるんじゃ……つーかアタシら3人がかりでもいりこを止めれないって明言されちゃってんだけど≫
≪はらひれほろふりゃぁあ~……わ、わたひには刺激が強すぎる内容でしたにぃ~……≫
「どう考えても一番恥ずかしいのは私でしょおッ!?」
≪≪≪確かに……≫≫≫
「うううう……うううううううーーーっ!!」
激しく納得できないが素直に返事を返されるとそれはそれで受け入れがたいがために地団太を踏むが、こちらの両親に不審がられる事はない。この部屋は神秘術で防音対策も完璧なのだ。
一度通信相手の友人三人をはっ倒したい衝動に駆られたいりこだったが、流石に3人同時に空間攻撃は”疲れるから”止めた。……疲れるという点に目をつぶれば、3人より遙かに神秘術の才能に恵まれた彼女ならやって出来ない事はないのだが。これでも実は稀代の神秘術師なのだ。さざめの所為であまり活かせてはいないが。
――彼女たち「NDXナンバーズ」が来た”向こう側”で、自立意思を持ったコンピュータ「エレミア」は最高の性能を誇る。その演算能力は最早完全に人知を超えており、シミュレーションに至っては一定環境下に絞れば未来予知に等しい精度を叩きだす。彼女たちはその機能を借りて、「さざめを薬物によって籠絡してプランを次の段階へ進める」という試案をシミュレートしていた。
だが何度条件を変えてシミュレートしても、どんなに変な角度から洗脳を施そうとしても、はたまたいりこの人格を変えてシミュレートしても最後は必ずさざめに全て露呈してしまうという結果が弾きだされたのだ。
「折角サクマ様経由で無理してエレミアのお力を借りたのに……どぉしてそこまで状況を膠着させるの!?さざめくんの馬鹿ぁぁぁーーーーッ!!」
ちなみに先ほどのが最も長くさざめを誤魔化したシミュレーションである。
光明が差したかと思われた「星の意思観測計画」、再び頓挫。
ちなみにシミュレーションのその後は、さざめがいりこにあれこれ説教をしまくった挙句に何だかんだで「もしもの時は……面倒見てやるよッ!」とツンデレ気味にいりこを赦してくれるという内容だったりするが、恥ずかしさに耐えられなくなったいりこが「私、こんな子じゃないもん!」とデータを全消去したため、日の目を見る事は無かった。
後書き
……ヤンデレを想像で描いてみたんだけど、途中からなんだかエロい方に流れてしまいました。限りなくアウトな台詞を2,3個消してトラップひとつ潰したらずいぶんマシになりました(えっ)
ちなみに”あのとき”というのは、(あくまでシミュレーションの中でですが)いりこがとても致命的なミスをしたせいでさざめが重体に陥ったんだけど、回復後にその事実を知ったさざめは怒りながらも許してくれた、というイベントを指していたり。その時にこのシミュレーションでのいりこは箍(たが)が外れてしまったのです。
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