八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三話 女難、当たった!その十四
「お友達になって頂いた方にもいつもお願いしています」
「そうですか」
「はい、そうです」
「わかりました、ただ」
「ただ?」
「さっきから気になっていたのですが」
少し落ち着いてからだった、僕はどうしてもこのことを聞かずにはおれなかった。若しかすると非常に失礼なことかも知れないと思いながら。
「そのお面ですけれど」
「能面ですか」
「はい、それです」
小夜子さんが今着けているそのことだった、聞かずにはいられなかったことは。
「どうして能面を付けてるんですか?」
「恥ずかしいので」
だからと言われた。
「ですから」
「恥ずかしい、ですか」
「はい」
そうだとだ、実際に気恥かしそうな返事で答えてきた。
「それで」
「いや、僕は別に」
僕は答えてくれた小夜子さんにこう返した。
「取って食べたりしませんし」
「笑ったりもしません」
畑中さんも小夜子さんに言ってくれた。
「そうしたことは絶対にないので」
「安心していいですから」
「そうですか」
まだ警戒している口調だった。
「それなら」
「はい、どうか」
「能面をお外し下さい」
「醜い顔ですが」
小夜子さんはこうしたことも言って来た。
「構わないですか」
「人は顔ではありません」
畑中さんが年長者としてはっきりと言ってくれた、本当に畑中さんはこうした時にとても頼りになる。尊敬出来ると言ってもいい位だ。
「心です」
「だからですか」
「顔に劣等感を持つ必要はありません」
正論だった、まさに。
「どなたであっても」
「では」
「能面をお外し下さい」
優しく包み込む声での言葉だった。
「是非」
「わかりました」
畑中さんの言葉を受けてだ、そうしてだった。
小夜子さんはその両手、よく見ればあちこち傷がある。どうも華道で鋏や花を使っているうちでそうなったらしい。
その手をだ、能面に持って行ってだった。
その能面を外した、そこから出て来たのは。
切れ長の奥二重の目だった、瞳は黒く大きい。琥珀の様だった。
眉は細くて綺麗なカーブを描いている、切れ長のその長い睫毛の目にとても合っている。白い顔は細面で鼻が高い。
唇は紅色で小さい、頬はうっすらと赤みが差している。詩織さんとはまた違う、まさに大和撫子と言うべき顔だ。
その顔を見て僕も息を飲んだ、そうして小夜子さんに言った。
「あの、全然」
「全然ですか」
「はい、綺麗ですよ」
また思わず言ってしまった。
「凄いですよ」
「ですがよくブスだと」
「そんなの言う方がおかしいですよ」
心から思った、本当に。
「というか人の顔だけを見て言うって」
「義和様の仰る通りです」
畑中さんも言ってくれた、ここでも。
「人は顔ではありません」
「顔が悪いとか言う方が馬鹿なんですよ」
「全く以てです」
「といいますか」
僕はさらに言った、小夜子さんに。
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