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妖精の義兄妹のありきたりな日常

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水泳大会その後

ガヤガヤ ガヤガヤ

水泳大会も多少のアクシデントがありながらも無事終了した。
マカロフはみんなの栄喜を養うためと言って妖精の尻尾内ではお祭り騒ぎの真っ最中だった。
まぁ、いつもと変わらない光景なのだが、そこは黙っているのが良いというものだ。
「だー!!!くそー!!!優勝できなかったァー!!!!」
「まぁ、タクヤやジュビアがいるから優勝なんて夢のまた夢だけどね。」
ナツが骨付き肉を振り回しながら叫んでいるのをハッピーが魚を食べながら静かになだめた。
「いいじゃねーか、罰ゲームを食らわなくて済むんだしよ。」
「てか、最下位って誰だよ?」
グレイの一言にナツは疑問をぶつけた。
「そういえば誰なんだ?やっぱウェンディか?」
「タコに捕まってたんだからそれはねーだろ。」
横からエルフマンが口を挟んできた。
そんな話をしているとみんなの前にマカロフが来た。
「残念じゃが、罰ゲームはなしの方向じゃ。いろいろあったしのー。」
「そういえばタクヤはどうしたんだ?」
「奥の医務室にいるぞ。」
ナツの疑問を近くにいたエルザが答えた。
「なんで?」
「タクヤは魔力の使いすぎで今ポーリュシカさんが来ている。」
「そうか!ウェンディは体力は回復できても魔力までは回復できないんだっけ?」
「そうなんですよ。」
ルーシィはそれを聞いて納得した。
ポーリュシカさんというのは、妖精の尻尾の顧問薬剤師でいろんな薬草を駆使してどんな怪我でも治すすごい人だ。
普段は森深くに家を構え生活している。
何故森深くに住んでいるというとそれは大の人間嫌いだからである。
「ポーリュシカがおれば安心じゃ。」
マカロフはそう言い残し、始末書やらを片付けるためナツたちをあとにした。
























「ったく、なんで水泳でこんなに魔力を使うんだい!!」
「いやいや、色々あったんだって。」
「アンタ、ついこないだだって魔力欠乏症になったばっかりだろう。」
タクヤは激しくポーリュシカに怒鳴られるのを黙って聞いていた。
それは、ニルヴァーナの一件でタクヤは辺りのエーテルナノを常人の数十倍の早さで魔力を吸収し、
さらに一気に使い果たしたため、数日は魔力欠乏症になっていたのだ。
「だって仕方ないだろ。ウェンディが危険な目にあってたんだから。オレはあいつの兄貴だし。」
「アンタはそうやって、いつまでもあの子を甘やかしていくのかい?」
「別に甘やかしてるわけじゃ…。」
ポーリュシカは真剣な顔でタクヤに話しかける。
「アンタの魔力は完全には回復しきれていない。今の状態を維持していけばアンタは魔力を失ってしまうんだ。
何故それがわからない!!」
「…オレの事はオレが一番分かってるよ。このままじゃダメなのも。」
「なら、」
「でも…、体が勝手に動いちまうんだ。ウェンディがつらい思いをするのは見てらんねーだ…。」
タクヤは窓際に立ってそう言った。外はまだ完全には日が沈みきっておらず、
紫色の空に星がちらほら見えている。
「…今度ぶっ倒れるような事があったらアンタの治療はしないよ。」
「あぁ、なるべくそうならないようにするさ。」
「それと、ほら。」

ポイ

ポーリュシカはタクヤに一つのふくろを投げやった。
「これは?」
「私が用意した欠乏症用の薬だ。毎日飲めば治る。」
「おぉ!ばあさんサンキューな。」
「フン、私はこれで帰らせてもらう。」
そう言ってポーリュシカは医務室のドアを開けようとした。

ガチャ

「!!」

ドサドサ ドサッ

「「うわぁー。」」
「なにやってんだ?お前ら。」
ポーリュシカがドアを開けると雪崩のようにナツたちが流れてきた。
「いてて、おぉ!タクヤ。元気なったか?」
「あぁ、おかげさまでな!!」
「よかったねー。」
「で、何してんだよ。」
タクヤは倒れているみんなに事情の説明を求めた。
「今日お兄ちゃん家でパーティーをやろうって事になって。」
「それでタクヤを呼びに来たのよ!!」
ウェンディとルーシィが立ち上がりながらそう答えた。
「いや、なんでオレん家なんだよ!!?」
「いーじゃねーか。それともなんだ?人に見られちゃまずいもんでもあんのか?」
「そうなの!!?お兄ちゃん!!」
グレイがニヤニヤしながら迫ってき、ウェンディも食いついてきた。
「そ、そんなのあるわけねーだろ!!!ウェンディもそこに食いつくな!!!」
「なら決まりだな。」
「「いぇーい。」」
タクヤを置いて一同は勝手に話を進めていった。タクヤの意思などは当たり前のように無視される。
「はぁー…。」
「まぁまぁ、いいじゃないですか。」
そう言ってタクヤを慰めてきたのはエマだった。何故だか輝いているように見える。
「エマ…。もしかして、お前がみんなを…。」
「それはどうでしょうねー。」
エマは満面の笑みを浮かべながらみんなの輪の中に入っていった。
「ウェンディ、タクヤの家を案内してくれ。」
「はい、わかりました!」
エルザがウェンディにタクヤの家を案内させる。
それと同時進行でエマとルーシィ、ナツ、ハッピーがパーティー用の食材の買い出しに出掛けた。
「お兄ちゃんもほら!行こっ!」
「なんかどっと疲れが出てきたんだけど…。」
「気のせいじゃないわよ。」
「あ、やっぱり…?」
シャルルの一言を聞いてさらに、疲れが出てしまった。
タクヤはウェンディに手を引っ張られながら自分の家へと向かった。





















「ほう、なかなか良い家じゃないか。」
エルザがタクヤの家の中に入り、素直な感想を言った。
「一人で住むにはもったいねー広さだな。」
確かに、グレイの言う通りタクヤの家は3LDKの貸家で一人ではいささか広く、
余りの部屋もあったりする。
時々、泊まりにくるウェンディとシャルルのための部屋があるくらいであとは物置きになっている。
「ウェンディもここに住めばいいじゃねーか。」
すると、ウェンディは突然顔を真っ赤にしてグレイに言った。
「えっ!?いや、私は!!?その、えっと…。」
もう言葉にはなってはいなかった。
「何焦ってんのよ?」
「そ、そんな事ないよ!!?そ、それにしてもエマたち遅いなー?」
「そういえばそうだな。どこまで行ってんだ?」
その時、

ピンポーン

「噂をすれば来たんじゃないか?」
エルザがそう言ったので、タクヤは玄関のドアを開けた。

ガチャ

「おせーじゃ、」
タクヤがドアを開けると目の前にあるのはエマたちじゃなく、視界を埋め尽くすようなダンボールだった。
「な、なんだ…?」
「はーい、ちょっとどいてくださいねー。」
そう言うとダンボールはゆっくり前進してきた。
「ちょわ、ま、おわっ!!」

バタン

タクヤはダンボールの前進に驚き、押し倒されてしまった。
「いってー…。」
「何やってんだ?タクヤ。」
そこにダンボールの陰からナツが顔を出してきた。
「ナツ!!なんだよ、このダンボールの山は!!?」
「あ?何って食いもんに決まってんだろうが。」
あどけない顔でナツは言った。
「なんでこんなに買って来たんだよ!!!」
「パーティーなんだし、多い方がいーじゃねーか。」
「にしても多すぎだ!!!」
タクヤの言葉などまるで聞いていないかのようにダンボールの山を玄関に置いた。
「いやー、こんなに買ったら作りがいがありますねー。」
「あたし、エマのご飯楽しみにしてたのよねー!!!」
「シャルルたちも美味しいって言ってたもんねー。」
後ろからはエマとルーシィ、ハッピーが食材が入った袋を持って来た。
「おまたせー!!うわっ!!ひろーい!!!」
「こんなに広いとは思わなかったよー。」
ルーシィとハッピーがリビングに入り、他の者たちと同じ感想が返ってきた。
「とにかくパーティーの準備だ。各自、持ち場につけ!」
「「おぉー。」」
















そして、日もすっかり沈み、星がちらほら輝いていた。
「みんな。今日はよく頑張った。乾杯!!!」
「「かんぱーい!!!!」」

カチャン

みんながエルザの乾杯の音頭に合わせ、乾杯した。
「次は絶対にかぁぁーつっ!!!!」
「分かったから座りなって。」
ナツが叫んでいるのをルーシィが静かに止める。
「いくらやっても勝つのはオレだけどな。」
「んだとぉ!!!今から決着つけるかコラァ!!!?」
「上等だ!!!!水の中でオレに勝てる奴なんざ、」
「やかましい!!!!」

ゴツン

「んがっ。」
タクヤは後ろから強烈なげんこつを食らった。一撃で再起不能になる。
「んははははっ。だっせーの、」
「お前もだ!!!!」

ガツン

「んごっ。」
さらに、ナツの顔面に強烈なパンチを1発。これも再起不能レベルだ。
「もっと静かに騒げんのか!!」
「「ず、ずみまぜぇん…。」」
「逆にどうやるのか教えてほしいんだけど…。」
ルーシィはエルザに聞こえない程度につっこんだ。聞かれればその後どうなるか分かっているからだ。
「おまたせしましたー!!」
「おっ!待ってました!!」

ズラー

タクヤたちが囲っているテーブルの上に彩り豊かな料理が並べられた。
「わぁ!!どれも美味しそうねー!!!」
ルーシィがテーブルに置かれた料理を見てそう言う。
骨付き肉に唐揚げ、エビフライ、スパゲティ、ポテトサラダetc…。
どれも一流レストランでしか食べられないと自負しているエマの手料理である。
「まだまだありますからいっぱい食べてくださいねー!!」
「「いただきまーす。」」
タクヤたちは手を合わせ、挨拶を済ますとここぞって料理に箸を伸ばした。
「これを毎日食えるなんて!!ずりーぞ、タクヤ!!!」
「ならお前もハッピーに作ってもらえよ。」
ナツとタクヤは骨付き肉を頬張りながら喋っていた。
「それがよー、ハッピーの当番の時は絶対ェ魚になんだよ。」
「ナツだって当番の時は炎しか出さないじゃないか。オイラは食べられないよ!!」
「だから、魚を焼いてんだろー。」
「大体丸焦げにしてるじゃないか!!!」
ナツとハッピーは不毛な争いをしていたが、タクヤは無視して料理を食べ続けた。
「おぉ、このシチューはなかなかのものだな!!」
エルザはシチューを食べながら驚いていた。これはホワイトソースをベースに作っており、
具材にはジャガイモ、ニンジン、白菜、豚肉、玉ねぎ、八宝菜などが入っている。
「ほんとっ!!!どうやって作ってるの!!?」
「それは内緒ですよー。」
「えぇー!?いいじゃなーい!!!」
女子一同はガールズトークに花を咲かせていた。
「ていうより、また腕を上げたんじゃない?」
シャルルがそう言うと言う事はそうなのであろう。シャルルはめったに誉めたりしないので、
こういう発言はかなりのレアなのだ。
「本当ですかー!!?シャルルありがとうございますー!!!!」
「ち、ちょっと!!!抱きつくんじゃないわよ!!!」
エマは珍しくシャルルに誉められたのがよほど嬉しかったようで、ついシャルルに抱きついてしまった。
「お、お兄ちゃん…。」
「ん?なんだ?」
タクヤはスパゲティをズルズルと食べている時、ウェンディに話しかけられた。
「あ、あのね。これ…。」
ウェンディがそう言ってタクヤに差し出してきたのはデミグラスソースがかかった一口サイズのハンバーグだった。
「これ、ウェンディが作ったのか?」
「うん…。エマに作り方教えてもらいながら作ったんだけど、形がうまくまとまらなくて…。」
確かに、差し出されたハンバーグはでこぼこしていて見た目からはあまり旨そうには見えなかった。
「ごめんね…!うまくないかも知れないけど…、」

ヒョイ パクッ

「!!」
タクヤは皿に盛り付けられたハンバーグを指で摘まみ、口に頬張った。
「モグモグ…うっ!!」
「えっ!!?不味かった!!?」
タクヤが俯いたのをウェンディは心配した。自分の料理がそこまで不味いのか思ったり、
これのせいで体調でも壊したらタクヤに謝りようがないからだ。
だが、
「うめぇー!!!!」
「え?」
「おい、これうめーぞ!!!みんなも食ってみろよ!!!」
タクヤはハンバーグをみんなに分けてやった。
「どれ…。…おぉ、確かにうめーな!!」
グレイが一つ指で取り、口に運んだ。感想はタクヤと一緒で高評価だった。
「ずりーぞ!!!オレももーらいっ!!!。」
「オイラもー!!!」
続けて、ナツとハッピーが、
「あたしもー!!!」
「頂くぞ!!!」
その次はルーシィとエルザが、
「私も貰うわね。」
「私も頂きますね。」
最後はシャルルとエマがそれぞれ一つずつ取り、口に運んだ。

モグモグ モグモグ

「…ごくっ…。」
そして、
「うめー!!!」
「あい!!!」
「おいしー!!!」
「見事なものだ。」
「なかなかじゃない。」
「おいしいですー!!!」
どうやら、みんなにも絶賛のようだ。ウェンディはそれを聞いて満面の笑みを浮かべた。
「よかったな。」

ポン

「うん!!!」
タクヤはウェンディの頭を撫でながらそう言った。
(「でも、一番嬉しいのはお兄ちゃんに誉められた事だけど…。」)
そう思いながらウェンディは横で料理を食べているタクヤを見た。




















「はぁー、食った食った!!!」
「あーい。」
それからしばらくしてテーブルの上を飾っていた料理たちは姿を消し、きれいな皿が残っていた。
「ごちそーさま。」
「はーい、お粗末様ですー。」
エマはそう言いながら皿をシンクに持っていった。
「あっ、私も手伝うよ。」
「じゃあ、私も。」
そう言ってウェンディとシャルルも残った皿をシンクに持っていった。
「こんなにうまいものは食べた事ないな。」
「うん!!癖になる美味しさだよねー。」
エルザとルーシィがエマの手料理の余韻に浸っているとグレイがタクヤの横に座ってきた。
「ところでよ、お前らどうなんだよ?」
「どうって何が?」
「何がって、ウェンディだよ。」
「は?」
タクヤはグレイが何を言っているのか分からなかった。
「お前ら兄妹なんだからよォわざわざ違う家に住む必要ねぇじゃねーか。」
「そんな事言われたって、ウェンディがフェアリーヒルズに住むって言い出したんだし。」
「確かにそうよねー。四人で住んだ方が家賃だって半分で済むし。」
さらに横からルーシィもやって来て会話に混ざった。
「言われてみりゃそうだな…。」
「あたし思うんだけど、ウェンディはタクヤに気があるんだと思う!!」
「はぁ?」
「だって、兄妹だからって毎日一緒にいるじゃない。絶対にそうだって!!」
ルーシィは強く断言した。
「それを言うならルーシィだってナツとずっと一緒にいるじゃねーか。」
「あれは違うの!!チームだから一緒にいるわけで別に好きって事じゃない!!!」
ルーシィは顔を赤くしながら必死に否定してきた。そこまで否定してはナツが傷つくんじゃないかとナツを見ると、
「ぐがー…Zzz。」
「……。」
ナツはいびきをかきながら寝ていた。他人の家だと言うのになんて馴染みっ振りだとタクヤは呆れた。
「で、結局の所どうなんだよ?」
「は?いや、そんなんじゃねーよ。まじで。そんな事考えた事とかねぇし。」
「ふーん…、どうだかなー。」
「なんだよ!!そのふーんって!!!」
グレイがニヤニヤしているのを、何故かタクヤはイラッときてしまった。
「なるほど、お前たちはそういう関係だったのか。」
「「え?」」
タクヤたちの後ろからエルザの声が聞こえてきた。
「そういう事は言ってくれればタクヤの家に邪魔しに行こうとは言わなかったものの。」
「い、いや、待てエルザ。お前が思ってる関係じゃな、」
「言うな!!!皆まで言わずとも分かっている!!!!」
(「「聞かれたくねー奴に聞かれちまったー!!!!」」)
タクヤ、グレイ、ルーシィがまったく同じ事を思ったのは言うまでもなかった。
よりによって一番面倒なエルザに聞かれてしまったのだ。このままでは誤解が誤解を呼んでしまいかねない。
そこでグレイがいち早く行動に出た。
「エルザ!!!さっきのはタクヤをからかって言ったことであってだな。」
「なんだグレイ?そこまで隠す事ではないではないか。」
「だからね、さっきのはグレイの冗談で、」
「私も薄々は感じてはいたんだ。やはり、そういう仲だったのか。うんうん。」
(「「まったく耳を貸してくれねー!!!!」」)
グレイとルーシィの必死の行動もエルザを前にしては水の泡と化してしまう。
エルザをどう説得するか、3人は頭をフル回転させて考えた。
すると、
「何の話をしてるんですかー?」
「「!!!」」
タイミング悪く、いや、逆にタイミング良く食器を片付けていたウェンディたちが帰ってきた。
「どうせろくでもない話でしょ。」
「おぉ!ウェンディ。実は今な、」
「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」
タクヤは咄嗟に大声を上げた。
「ど、どうしたの?お兄ちゃん。」
「そんな大声を出したら近所迷惑ですよ!!!」
「い、いやー。急に叫びたくなって…。ハハッ…。」
タクヤは冷や汗をかきながら引きつった顔で笑って見せた。
「ちょい、エルザ。」
「ん?なんだグレイ。」
グレイは機転を利かせてエルザを廊下に呼び出した。
「さっきの話はあいつらの問題だ。あいつらが自分自身で向き合わなきゃなんねーんだ。
ほかから口を挟むってのは野暮ってもんだぜ。」
「そ、それもそうだな。うむ、わかった。私の口からは何も言わん。」
「ほっ。」
そして、グレイとエルザが廊下から帰ってきた。その時、グレイはタクヤに親指を立てて見せた。
(「なんとか説得できたようだな…。一時はどうなるかと思ったぜ。」 )
「エルザさん。私に何か言いかけてませんでした?」
「そ、それはだな…。おっ、お前たち自身で、その…。」
「い、いやー!!!さっき、みんなの好きな子のタイプについて話してたのよー!!!ウェンディはどうかなーって。」
今度はルーシィがエルザを退け払いウェンディに説明した。
(「ナイスだ!!!ルーシィ!!!」 )
タクヤは心の中でガッツポーズをした。
「え!?好きなタイプですか!!?」
「べ、別に言いたくなかったら言わなくてもいいからな?」
「…お兄ちゃんは、言ったの…?」
「へ?オレは…。」
意外な質問が飛んできたのでタクヤは思わず変な声を出してしまった。
「オ、オレは優しい子なんかが好きだな、うん。あと、料理が上手い人もいいな…。」
「へぇ、そうなんだ…。」
(「あ、あれ?なんか間違った事言ったか?」)
ウェンディのリアクションが予想とは少し違ったためタクヤは再び冷や汗をかいた。
「あっ!!!もうこんな時間!!!私たちはそろそろ帰るね!!!」
ルーシィは時計を見て帰り支度を始めた。時計を見ると夜の10時を軽く越えていた。
「ほら!!!ナツもハッピーも帰るよ!!!」
「んあっ。なんだよ、人がせっかく、」
「いいから!!!」

グイ

ルーシィはそう言って、ナツのマフラーを掴んで引きずりながら玄関へ向かった。
「そ、それじゃあオレらも帰るな?」
「あ、あぁ。」
グレイもエルザの背中を押しながら玄関へ向かう。
「ウェンディはどうすんだ?送っていくが。」
「いえ、私はまだ片付けとかもやるので今日はお兄ちゃん家に泊めてもらおうかと。」
「そうか、じゃあ、また明日な。」

ガチャ バタン

そう言い残してグレイとエルザたちもタクヤの家をあとにした。































「ふう。これで洗い物は終わりだね。」
「はい。ありがとうございました。」
ウェンディとシャルル、エマは食器を洗い終わり、エマとシャルルがお茶でも入れると言って、
ウェンディを先にリビングに向かわせた。
「おう、お疲れ。」
「うん、ありがとう。」
そう言ってウェンディはタクヤの横に腰を落とす。
「………。」
「………。」
二人の間に長い沈黙が訪れた。
(「…き、気まずい…。」)
タクヤは心の中で叫んだ。
(「なんで喧嘩したみたいな状態になってんだ!!?元はと言えばグレイのヤローが…、」)
「お兄ちゃん…。」
「お!?おう、なんだ?」
何故、こんなにドキドキしなくてはいけないのか、タクヤは思考の迷宮をさまよい続けた。
「さっき、本当はどんな話をしてたの?」
「だ、だから、好きな子の、」
「お兄ちゃん、嘘をつく時はいっつも左斜め上に目線が行くもん。」
(「そ、そうなのかー!!!?」)
タクヤは自分の隠れた特徴を知り驚いた。
「どんな話をしてたの?」
「いや、えっとだな…。」
タクヤは少し考えた。だが、それはすぐに終わった。
(「…しかたねーか。」)
そして、タクヤは一つ溜め息を吐いてウェンディに向き直った。
「実はな、ウェンディがその、オレに気があるんじゃないかって話してたんだよ…。」
「……。」
「いや!!だからちゃんと行ってやったぜ!!!そんな事はねぇーって。」
「ダメ…。」
「え?」
タクヤはウェンディの言った事が聞こえず再度聞いてみた。
「ううん。やっぱり何でもない。私疲れちゃったからもう寝るね。おやすみ。」
「あ、あぁ、おやすみ…。」

ガチャン

そうして、ウェンディは一足早く寝室に向かった。
ちょうどその時、紅茶を淹れてきたシャルルとエマが戻ってきた。
「あら?ウェンディは?」
「さっき、疲れたからって先に寝たぜ。」
「そうなんですか。せっかく紅茶を淹れて来たんですが仕方ないですね。」
















「やっぱり、ダメなのかな…。」
ウェンディはドアを閉め、その場に立ち尽くしながらそう呟いた。
 
 

 
後書き
というわけで5話目はこれで完了ですねー。スピンオフで書いてたら文字数が予想以上に増えて調節が難しいですねー。
いろいろ変なところがあると思いますが多目にみてやってください
それでは感想待ってまーす! 
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