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妖精の義兄妹のありきたりな日常

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嵐の水泳大会

ある日の朝
この日は今年一番の暑さになると予報があり、実際に猛暑に見舞われていた。
そんな日に魔導士ギルド妖精の尻尾の裏にある大きな湖にメンバーが勢揃いしていた。
しかも、みんな、水着姿で入念にストレッチをしている。
「これより、第一回フェアリーテイル式水泳大会を開始しまーす!!!」
「「おぉぉぉぉ!!!!」」

ワァァァァァァ

ミラジェーンの開始宣言と同時に全員が気合いを入れ、高らかに叫んだ。
「おっしゃぁぁっ!!!燃えてきたぞォ!!!!」
「ナツ!!!ただでさえ暑ィのに余計暑くしてんじゃねェよ!!!」
ナツが身体中から炎を出しているのをグレイが横からウザそうに絡んでいた。
「っんだとォ!!!グレイ!!!!溶かすぞ!!!コラァ!!!!」
「おぉ!!!やってみろや!!!その前に氷付けにしてやんよ!!!!」
ナツとグレイが暑い中、さらに暑くさせるような喧嘩を繰り広げられていた。
そこに大会の運営委員のエルザがやって来た。
「やめんかっ!!!!バカ者!!!!」

ゴツン

「「痛ってェー!!!!」」
エルザはナツとグレイの頭を衝突させ、喧嘩を治めた。
「喧嘩は大会が終わってからにしろ!!!!」
「「は…はい…。」」
二人は大きなたんこぶを浮かばせながら、エルザに返事した。
「こんな暑ィ中よく喧嘩なんかできるよな。」
「まぁ、あの二人はいつもの事だから。」
そう言って話していたのはタクヤとウェンディだった。二人も大会に出場するため、水着に着替えていた。
「そ、それより、お兄ちゃん…。」
「ん?なんだ。」

「私の水着…似合ってるかな…?」
ウェンディは顔を赤くしながら自分の水着の感想をタクヤに求めた。
ウェンディの水着は白と水色の縞模様になっており、胸の間には星形のホックが付いていた。
「あ、あぁ。似合ってるんじゃねーか?」
「本当!!!よかった…。」
ウェンディは胸をおろし、心底安心したようだ。タクヤも顔を赤くしてウェンディから視線を外した。
なぜなら、これ以上見ているとタクヤの方が照れてしまうからである。
「ちょっと!!ナツ!!!炎をこっちにやらないでよね!!!やけどしちゃうでしょ!!!」
「ルーシィは焼いてもおいしくなさそうだよね。」
「あたしは魚かっ!!!!」
別の所ではルーシィとハッピーの息の合った漫才をしていた。
他の所でも、ガジルとレビィがもじもじしていたり、ジュビアがグレイに迫っていたりと、
水着姿以外はいつもの日常が広がっていた。
「これこれー。今からルール説明するから静かにせんかい。」
そう言ってみんなを静かにさせたのはマスターマカロフだった。
「ルールは簡単じゃ。この湖の5㎞地点にフラッグを立てておる。そこから戻ってきて一番だった者が優勝じゃ!!!
尚、魔法の使用は自由!!!ただし、体が湖から出れば、即失格とする!!!」
「5㎞って、どんだけでけぇ湖だよ。」
タクヤは湖を見てみたが水平線が広がるばかりで向こう岸が全く見えなかった。
初めてこれを見たら海と勘違いしてしまうだろう。
「グレイ様!!!見ててくださいね!!!ジュビア、グレイ様のために必ず優勝してみせます!!!」
「いや、オレも出るんだけど。」
「そうはいかないぜ、ジュビア!!!」
ジュビアの優勝宣言に割り込んで来たのはタクヤだった。
「優勝はオレがもらうぜ!!!」
「タクヤ君…!!!いいえ、優勝はジュビアです!!!!」
共に水の魔法の使い手である二人の間で激しい火花が散らされていた。
「おもしれー!!!!ぜってぇ優勝してやるァ!!!!」
タクヤとジュビアに刺激され、みんなも緊張感を走らせた。
「じゃあ、10分後に始めるからちゃんと準備運動しておくのよー!!。」


















タクヤは念入りに準備運動とストレッチをやる。万が一、足でもつってしまったら優勝出来ないからだ。
タクヤが最も警戒しているのはジュビアとジェットだった。
ジュビアは水の魔法を使えば相当手強くなる。ジェットは神速“ハイスピード”という魔法を使ってくる。
この魔法は自らのスピードを上げる魔法で、レース等の種目では絶大な能力を発揮するのだ。
(「たぶん、ジェットからの攻撃はねぇハズだ。やっぱり苦戦するのはジュビアだろーな…。」)
「お兄ちゃん。」
ストレッチをやっていたタクヤの所へウェンディとシャルル、エマがやって来た。
「あれ?ウェンディは大会に出ねぇのか?」
「ううん。大会には出るけど今はシャルルとエマと一緒に運営のお手伝いをやってたから。」
「私たちは出てもみんなには勝てませんからねー。」
エマが笑いながらタクヤに言った。
「そうか。見てろよ!!ぜってぇ優勝してやるからよ!!!」
「うん…。でも、無理はしないでね…。」
「おう!!!」























「はーい!!!それじゃあ、みんなー。用意はいい?」
「「おぉぉぉぉ!!!!」」
「それじゃあ、いきまーす!!!」
ミラジェーンの掛け声と同時に出場者は一斉に構えた。
「よーい…、」
緊張感はMAXに達していたその時、
「あー、それとビリには罰ゲームが待っとるから楽しみにしておれー。」
「「えっ?」」
「ドン!!!!」

パァン

空気を弾く音がした時にはほとんどの出場者はスタートを出遅れた。ごく一部を除いて。

ザバァァァァァン

「アクアジェット!!!!」
タクヤは体を水で覆い、水の弾となって一直線にフラッグを目指した。
「へっへー!!!おっ先にー!!!」
「そうはさせません!!!!」
タクヤのすぐ後ろから声がした。スタートダッシュが完璧だった出場者がもう一人いたのだ。

ザッブゥゥゥゥン

「ジュビア!!!?」
ジュビアは自身の体を水にしタクヤに迫ってくる。
「水の中でジュビアに勝てる者はいない!!!!」
「だったら、勝負だァ!!!!」
二人は物凄い速さでフラッグを目指している。スタートから5秒の出来事だった。
「こうしちゃいらんねェ!!!!」

ザッブゥン

ナツは出遅れて湖の中へと入っていった。
「ナツ!!!待ちやがれっ!!!!」

ザッバァン

グレイもナツの後に続いて湖に飛び込んだ。それにつられ、出場者は次々スタートしていく。
「あたしたちも行こっ!!!ウェンディ!!!」
「は、はい!!!」

ザッボォン

「みんながんばってねー。」
ミラジェーンはニコニコ笑いながらみんなを見送った。
「さーて、誰が罰ゲームを受けるかのー。」
マカロフは別の意味で笑っていた。























「行くぞォ!!!!火竜のバタ足!!!!」
「ぅあっちィっ!!!?」
ナツは足に炎を逆噴射させ、速度を上げた。辺りの水温は急激に温まり、熱湯と化していた。
「ガハハハハハ!!!!参ったかァ!!!!」
「くそっ!!!なめやがって!!!」

ザッブゥゥゥゥン

「のあっ!!?」
グレイたちの間を物凄い速さで通り抜けた。そして、それはナツも同様の事だった。

ザッブゥゥゥゥン

「んがっ。」
ナツもペースが乱され、足の炎も消えてしまった。
「くそっ!!!ジェット!!!てめェ!!!」
「ハッハー!!!悔しかったら付いてきやがれってんだ。」
そう先程の神速っぷりを披露したのはジェットだった。彼もまた優勝候補の一人だ。
その速さは一、二を争っているタクヤとジュビアにも引けをとらないものだった。
「優勝は俺だァァ!!!!」
ジェットは物凄い速さでタクヤたちを追いかけていった。
「負けてられっかァ!!!!おりゃァァァァ!!!!」

ズドォォォン

ナツも再度火竜のバタ足でタクヤたちの後を追った。























「てか、5㎞って長すぎ…。水泳のレベル越えてるって…。」
「どれだけ広いんでしょうかね?」
スタートから1㎞地点にいたのはルーシィとウェンディだった。
「みんな…どんだけ、体力余ってんのよ…!!」
「大丈夫ですか?ルーシィさん。」
ルーシィは体力が無くなったのか近くにあった岩場に体を預けた。
現在、1位はタクヤ、2位はジュビア、3位はジェット。ここまでは予想通りだ。
ルーシィとウェンディのいる地点には誰もいない。つまり、この二人が今最下位争いをしているという事だ。
「ウェンディ、先に行ってて。あたしは少し休んでから行くから。」
「そうですか…?じゃあ、先に行ってますね。」
そう言ってウェンディはルーシィを置いて先を急いだ。
「はぁー、こんな時に使える星霊なんていたかなー。」
ルーシィは鍵の入ったホルダーを漁る。
「んー…。バルゴじゃダメだし、ロキもダメ、やっぱり水と言ったら、」
ルーシィはホルダーの中から一つの金色に輝く鍵を取り出した。
「開け!!!宝瓶宮の扉!!!」












「アクエリアス!!!!」

ボゥン

「…ちっ。」
「アンタ!!!またチッ、て言ったかしらー!!!!」
「で、何のようだ。用件をはやく言え。」
「ってスルーですか…。」
アクエリアスはルーシィを無視して話を淡々と進める。
「あたしを担いで泳いでくれない?」
「あぁんっ!!?」
アクエリアスはすごい形相でルーシィを睨み付けた。ルーシィもその顔がとてつもなく怖かった。
「何か?私がアンタの足になれって言ってんのか?おっ?」
「いや…、そんなつもりは全くないんですけど…。」
ルーシィは半泣きになりながらアクエリアスを宥めた。
「お願いします!!!」
「っち…、仕方ないね。そのかわりに死んでも知らないから。」
アクエリアスが了承してくれたため、早速アクエリアスのは背中に乗った。
「じゃあ、行くよ…!!!」
「お、お手柔らかにお願いします…。」
今になってルーシィはアクエリアスに頼んだ事を間違ったと思ってしまった。

ザッブゥゥゥゥン

「おりゃぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「きゃあぁぁぁぁぁあっ!!!!」
アクエリアスは雄叫びを、ルーシィは叫び声を上げながら湖を駆けた。
次々と出場者をごぼう抜きしていき、ついでに水泳不能にしていった。

ザッブゥゥゥゥン

「ルーシィさん?」
息つく暇もなくルーシィはウェンディの横を通りすぎていった。
「ちょ、あ、あたし、死んじゃうってェーーっ!!!!」
ルーシィは激しい動きに耐えているだけでやっとの状態だ。だが、アクエリアスにはそんな事はお構いなしだ。
さらにスピードを上げ、一気に上位陣の仲間入りを果たした。

ポイ

「ぎゃふっ。」
アクエリアスは4㎞地点まで来て、ルーシィを放り投げた。
「ちょっと!!!何すんのよー!!!」
「そろそろスコーピオンとデートだ。3日は呼ぶな。分かったな?」

ボゥン

「…なんて勝手なのかしら。でも、結構距離は稼げたわ!!もうひとふんばりよ!!!」
そう言ってルーシィは先を急いだ。
























「よしっ!!!一番乗りだ!!!」
タクヤは5㎞地点の折り返しのフラッグまでやって来た。このまま後半の5㎞を泳ぎきれば優勝である。
「このまま独走だァー!!!!」

ザッブゥゥゥゥン

タクヤはアクアジェットの威力を上げてスピードを上げた。
その時、

スゥン スゥン

「おわっ!?」
突然、後ろから水の刃がタクヤを襲ってきた。
「な、なんだ!?」
タクヤは後ろを振り向くとそこにはジュビアが水の刃を待機させ迫ってきていた。
「水流斬波“ウォータースライサー”!!!」

ズゥン ズゥン ズゥン ズゥン

今度はさらに大きく、量も先程の倍以上あった。

「くそっ!!!水竜の狼爪!!!」

カキィン カキンカキン カキン

タクヤは水竜の狼爪でジュビアの水流斬波を撃ち落としていった。
「ジュビアは負けない!!!水流裂鞭“ウォーターカーネ”!!!!」

ギュルルルッ がしっ

「なっ!!?」
ジュビアはタクヤの隙をついて足首に水流裂鞭を巻き付けた。
タクヤはそれを取ろうとするが頑丈で取ることができない。
そして、ジュビアは水流裂鞭を引っ張り、タクヤを大きく回した。遠心力がついてき、速度が上がる。
「こ、これって…。…うっぷ…。」
「ナツさんと一緒ならこれも効果あるはず!!!」
タクヤの弱点をついたジュビアがさらに速度を上げた。
「と、とめ…て…。」
タクヤの顔は水の中でもはっきりわかる青ざめた顔をしていた。
「やぁぁぁぁぁっ!!!!」

ギュルルルッ シュン

「あぁぁぁぁぁあっ!!!!」
タクヤはそのままジュビアに投げ飛ばされていった。
「これでジュビアの優勝です!!!!」
そして、ジュビアは酔いきったタクヤを残し、ゴールを目指した。
それからタクヤは次々と抜かれていく事になる。




















「あれ?お兄ちゃん。」
「お…おう、ウェンディ…。…うぷっ。」
「どうしたの?こんなとこで。」
ウェンディは酔いが戻りきっていないタクヤに聞いた。
「ち、ちょっとな…。思い出すだけで…うぷ…。」
「大丈夫?私の治癒魔法で、」
「いや、少ししたら行くから、先行っててくれ。」
タクヤはウェンディにそう言って、治癒魔法をやめさせた。
「…わかった。無理しないでね。」

ザッバァン

ウェンディはそのままゴールを目指した。
レースも終盤だ。5㎞地点付近で酔いを覚ますタクヤを残し、もう大半の出場者が通過した。
「オレもそろそろ行かねぇと…。」
タクヤはまだ多少酔いが残っているもののこのままではジュビアに追い付けなくなるため、泳ぎだした。



























「「おりゃぁぁぁっ!!!!」」
折り返し3㎞地点
ここでは二つの波しぶきが他の出場者を巻き添えにしながら泳いでいた。
「ぜってぇお前だけには負けねェっ!!!」
「それはコッチのセリフだァ!!!」
二つの波しぶきの正体はナツとグレイだった。
「火竜の翼撃!!!」
「アイスメイク槍騎兵“ランス”!!!」

ドゴォン

二つの技が水の中でぶつかり、弾ける。攻撃力は互角のようだ。
「っちィ!!」
「どけっての!!!」
ナツとグレイはさらに激しくぶつかり合った。その時、
「邪魔だァァァっ!!!!」

ザッブゥゥゥゥン

「のあっ。」
「おわ。」
ちょうどナツとグレイの間にタクヤがアクアジェットで通過していった。
「タクヤ!!!あぶねーだろーが!!!」
「そんなとこでじゃれあってるからだろー!!!」
「「じゃれあってねー!!!!」」
ナツとグレイは声をハモらせ、タクヤに怒鳴った。
「先行ってるぜー。」

ザッブゥゥゥゥン

「「待ちやがれー!!!!」」
ナツとグレイは先に行くタクヤを追いかけた。だが、タクヤのスピードは前半戦のものより確実に速くなっていた。
ナツとグレイも必死についていくが、その差は広まるばかりだった。
「なんつー速さだ!!?」
「負けてられっかァっ!!!!」
こうしてナツとグレイはさらにスピードを上げた。





















「ゴールが見えてきました!!!」
後半の4㎞地点
現在トップのジュビアがゴールテープを持っていたミラジェーンたちを捉えたのだ。
ジュビアはさらにスピードを上げ、ゴールを目指すが、

ザッバァァァン

「!!!」
「そうはさせないぜ!!!」
ジュビアの横についたのはジェットだった。だが、ジュビアは慌てない。冷静に対処していけばいいのだ。
「水流拘束“ウォーターロック”!!!」

チャプン

「うわっ。」
「空気は入れてるので安心してください。」
ジュビアはそう言ってゴールを目指す。
「ちょ、待てよー!!!!」
ジェットの声もむなしくこれにてトップ争いから脱落したのだった。
(「まだ、油断はできない。まだ…。」)

ザッブゥゥゥゥン

「来た…!!!」
ジュビアは後ろを向くと、そこには先程よりも速いスピードで迫ってくるタクヤの姿があった。
「優勝は俺だァーっ!!!!」
「そうはさせません!!!水流拘束!!!」

チャプン

「!!!」
タクヤはジュビアの水流拘束に捕まってしまった。
これで優勝は決まったとジュビアは心の中でガッツポーズをした。
(「見てますか、グレイ様?ジュビアは優勝しましたよ!!」)

すぅぅ


「え?」
異変に気づいたジュビアは水流拘束の中に閉じ込められていたタクヤに視線を戻した。
すると、そこには水流拘束を飲んでいるタクヤの姿があった。
「水の滅竜魔導士に水で対抗するなんて笑っちまうぜ!!」
「ジュビアの水流拘束を飲んで…!!」
そして、全てを飲みきったタクヤが笑った。
「飲んだら力が湧いてきた!!!」
タクヤは全身を水で纏い、ラストスパートをかけた。
「水竜の尖角!!!!」

ザッブゥゥゥゥン

「きゃあぁぁぁっ。」
ジュビアはあまりの威力に水中から空に揚げられ、失格となった。
そして、






「優勝はタクヤーー!!!!」
「っしゃァァァァァァっ!!!!」
タクヤはそのまま突っ込んできて、ゴールテープをちぎったのだった。
「優勝おめでとうございます!!!」
「ま、当然ね。」
「おめでとー。」
エマとシャルル、ハッピーがタクヤの優勝に祝いの言葉をかけた。
「さんきゅな、三人とも!!」
「優勝おめでとう、タクヤ!!」
「ありがとう、ミラさん。」
「優勝者はみんなが帰ってくるまでコッチで休んでて。」
タクヤはミラジェーンが指で示した簡易テントで休むように言われた。
たしかに、さすがに魔力が無くなってきたところだ。タクヤは素直にテントで休む事にした。
(「疲れたし、ちょっと寝るか…。」)
タクヤはそのまま寝る事にしたのだった。






















ザワザワ ザワザワ

「ん…。」
タクヤは小一時間ぐらい寝ていたが、外が騒がしいせいで目を覚ました。
「なんだ…?」
タクヤはテントから出るとそこには出場者が帰ってきていた。
だが、その顔には泳ぎきった達成感ではなく、不安感を漂わせた顔をしていた。
「なんかあったのか?」
「おぉ、タクヤ。」
タクヤはちょうど近くにいたグレイに事情を聞いた。
「それが、ウェンディの姿がどこにもないんだよ。」
「は?なんでだよ!!?」
「だから、今みんなで探してんだよ。もしかしたら…。」
グレイは最後の言葉を言い終わり前にタクヤは姿を消していた。
「ウェンディー!!!どこだァー!!!返事しろー!!!」
タクヤはウェンディの名前を叫ぶが、返事は返ってこなかった。
「タクヤー。」
「エマ!!シャルル!!ハッピー!!ウェンディは?」
「辺りを探してきたんですが、」
「どこにもいなかったんだ。」
エマとハッピーの捜索にも進展はなかったようだ。
「そんな…。」
「まさか、まだ湖に…。」
その時だった。



ザッボォォォン




湖から大きな水しぶきが立った。
「な、なんだ!!?」
水しぶきの中から現れたのは大きなタコだった。その大きさはギルドより巨大だった。
「タコォォーっ!!!?」
ハッピーが大きなタコを見て驚愕していた。いや、ハッピーだけでなくそこにいた全員が驚いていた。
「この湖の主か!!!」
「湖にタコっているんだっけ?」
エルザの発言にルーシィはつっこんだ。
「見ろ!!!タコがなんか持ってるぞ!!!」
ナツが巨大ダコの足を指差して、全員に注目させた。
「おい、あれって…!!!」
















「ウェンディ!!!!」
巨大ダコが足に持っていたのはなんとウェンディだったのだ。
通りでウェンディが見つからないハズだ。なぜなら、ウェンディを隠していたのだから。
「てめー!!!!ウェンディを放しやがれ!!!!」

バッ

タクヤは巨大ダコに向かって攻撃を繰り出そうとしたが、

ビュン バチン

「がっ。」
タコの足に軽々と薙ぎ払われてしまったのだ。

ドゴォン

「大丈夫か!!タクヤ。」
「あんやろー…、よくもウェンディを…!!!」
「一人ではダメだ!!全員で一気に…、」
「それじゃダメだ!!!」
「!!!」
タクヤの発言にエルザは驚いた。全員で一斉攻撃を仕掛ければタコは間違いなく倒せる。
だが、タクヤはそれを妨げたのだ。
「なぜ…!!」
「確かに、一斉攻撃を仕掛ければ巨大ダコは倒せるが、それじゃあウェンディを巻き込んじまうだろ!!!!」
「なら、どうすれば…。」
エルザはタクヤに作戦を仰いだ。
「オレが囮になる。その隙にウェンディを救出してくれ!!!」

ダンッ

「待て!!!」
エルザがタクヤを止める前には既に巨大ダコに突撃をかけていた。
「仕方ないわ。ここはタクヤの言う通りにしましょ!!!」
「…行くぞ!!私の合図と同時にウェンディを救出するんだ!!!」
「「おぉぉ!!!!」」














「水竜の咆哮!!!」

ゴアァァァッ

タクヤは水のブレスで巨大ダコに攻撃を仕掛けているが、体が頑丈なのかびくともしない。
「っ…!!水竜の狼爪!!!」
次は水の爪で巨大ダコを斬り裂こうとするが、

ヌルン

「なっ!?」
体がヌメヌメしているため、打撃系の攻撃が無効化してしまっているのだ。

ギュン バチィン

「がっ。」
タクヤは一瞬の隙を突かれ、砂浜に打ち付けられた。

ドゴォン

「くそっ!!あのヌメヌメが邪魔だ…。せめて、一箇所だけでもヌメヌメしてなかったら…。」
タクヤは体中をヌメヌメの体液でコーティングされている巨大ダコを睨む。
それを感じ取ったのか巨大ダコはウェンディを締め付けている足に力を入れた。

ググッ

「うっ…あ…。」
「ウェンディ!!!」
「火竜の、」
「!!!」
タクヤの頭上からナツが巨大ダコに攻撃を仕掛けようとしていた。
「鉄拳!!!」

ヌルン

「ありっ?」

ザッブゥン

タクヤ同様打撃系の攻撃が無効化されナツはそのまま湖の中に落ちていった。
「何やってんだよ!!」
「いや、焼いたらどうかと、」
「打撃は奴には効かねぇんだよ!!!さっき見てたろ!!!」
タクヤは湖から出てきたナツに怒鳴り散らした。
「それなら先に言えっての!!!」
「逆ギレかよ!!!大体焼くったて発想どっから…。」
「…あ?どうしたんだよ。」
タクヤは何かをぶつぶつと小声で言っていた。そして、
「…そうか、それだ!!!焼けばいいんだよ!!!」
タクヤはナツの肩を掴んでそう叫んだ。
「は?食うのか。」
「いいか、ナツ。お前に頼みがある。」
「?」
ナツはタクヤが何を言っているのか分からなかった。





















「くそっ!どんどん沖の方へ行っちまうぞ!!!」
「全員、巨大ダコの動きを止めるんだ!!!」
エルザたちは巨大ダコの動きを止めるために攻撃を仕掛けるが、
ウェンディが捕まっているため上手く魔法を使えないでいた。
「くっ、このままでは…!!」
その時だ。
「火竜の咆哮!!!!」

ゴォォォォ

ナツは巨大ダコの背中に回り込み、炎のブレスを巨大ダコにぶつけた。
「~~~~~~~~~!!!?」
巨大ダコは奇声を上げている。ナツの炎が効いているのだ。
「もっとだ!!!全身に炎をぶつけろ!!!!」
ナツはタクヤの指示通り巨大ダコの全身に炎を浴びせた。
ウェンディは辺りの温度が上がったおかげで気を取り戻した。
「暑い…。ナツさん?」
「ウェンディ!待っててね!今助けるから!!!」
ハッピーはウェンディが気がついたのを確認してから声をかけた。
「助けるって…、って何これ!!?」
ウェンディは自分がおかれている状況を把握できていない。
「ひぃぃっ!!?」
「ウェンディ!!!」
「お兄ちゃん!!!」
「待ってろよ!!!すぐにそっからたすけてやるからな…!!!!」
タクヤは巨大ダコを倒すため、いつでも攻撃できるように待機していた。
「お兄ちゃん…。」
ウェンディは半泣きになりながらタクヤの名前を呟く。
「これでヌルヌルはなくなったぞ!!!」
ナツは巨大ダコの体を焼いて体液を蒸発させたのだ。
「ジュビア!!!頼む!!!」
「はい!!!超水流拘束!!!!」

チャプン

ジュビアはタクヤを巨大な水流拘束の中に閉じ込めた。

すぅぅ

それをタクヤは全て飲み干した。
「…いくぜ!!!」
タクヤはジュビアの水のおかげで魔力が全回復していた。
「水竜の狼爪“烈”!!!!」
普段の狼爪よりもさらにでかく、鋭い狼爪がタクヤに纏われた。

ダッ

タクヤはいきよいよく巨大ダコに向かって飛んだ。
「+水竜の尖角!!!!」
タクヤは水の弾となり巨大ダコに突撃をかけた。



ドゴォォォン



「~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」
その攻撃は見事に命中し、巨大ダコは遥か彼方へと飛んでいったのだった。
「やったァ~!!!!」
「ウェンディは!!?」
「きゃあぁぁぁぁっ!!!!」
ウェンディは上空から叫びながら落下していた。このままでは地面に激突してしまう。

バシャァァァン

だが、そんな心配はすぐに消し飛んでいた。

がしっ

「!!!」
「…怖かったろ?もう大丈夫だからな。」
タクヤがアクアジェットでウェンディの元へ飛んでいき、すぐさまキャッチした。
「う…う…うぇぇぇぇぇん!!!!」
「そんなに泣く事ないだろ。」
「だって、だってェ…!!」
そして、タクヤは静かに砂浜に降りてウェンディを下ろした。
「よくやったぞ!!!タクヤ!!!」
「堅っ。」
鎧を来ていたエルザに抱き締められるが、それはただ痛いだけだった。
「もう大丈夫よ。ウェンディ。」
「みなさんありがとうございます…。ヒグッ」
ミラジェーンが優しくウェンディを抱き締めた。タクヤもそっちがよかったと思ったのはナイショである。
「何はともあれこれで一安心じゃの。」
「マスター。」
「そして、第一回水泳大会優勝者はタクヤ・フローゼフじゃー!!!!」

ワァァァァァァッ

辺りはタクヤを囲み、大きな声援を送った。
「おめでとう!!お兄ちゃん!!!」
「おう!!さんきゅな!!!」
こうして嵐の水泳大会は幕を閉じたのだった。












 
 

 
後書き
すみません。次はこれの後日談を書こうと考えとります。
みなさんも優しい目で読んでください。お願いしまーす。
ということでコメント待ってまーす 
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