少年少女の戦極時代Ⅱ
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禁断の果実編
第113話 もしも、あの時
咲と紘汰、それに凌馬の戦場は、屋外の開けた石庭に移っていた。
それぞれが鎧武、月花、デュークに変身し、3体1の圧倒的数の差で挑んだのに、あっというまに外に弾き出されてしまった。
デェムシュも強かったが、レデュエも同じくらい強い。性能だけならアーマードライダー最高のデュークを、一撃で弾き飛ばすほどだ。
『煙幕!』
『はいさ!』
無人の石の回廊だ。遠慮なくDFボムを10発ほど投げた。
爆煙がレデュエに降りかかる。その隙を突いて鎧武が大橙丸で斬りかかった。だがレデュエは攻撃前に気づき、手から出した気弾で、大橙丸を鎧武の手から弾き飛ばした。
『大方、蛇にそそのかされて手に入れた力だろう。おかしいとは思わないのか? 強すぎる自分自身のことを』
『何がだよ!』
鎧武はブドウ龍砲を呼び出し、撃つ。着弾する、というタイミングでレデュエはテレポートして躱してしまう。
『その様子では自覚もないか。では問いを変えよう。オマエは何故この世界の人間のために――戦っている!』
レデュエが現れ、上から鎧武に杖槍を振り下ろした。
月花はDFボムをレデュエに投げた。爆発の衝撃で杖槍の軌道がずれたことで、鎧武と月花はレデュエから距離を取った。
『当然だろ! みんな俺の仲間だ!』
『それは違うな。オマエはもうこの世界の住人ではない。我々の仲間だ』
切り結びながらも、両者の応酬は止まらない。
『何だと!?』
『すでに人間の食べ物が喉を通らなくなっているはずだ』
月花は、はっとした。
自分が食べる横で、一切料理に手をつけなかった紘汰。今までは光実や貴虎が呼びに来て、タイミングが悪かったからだと思った。だが、そこにもっと深い意味があったとしたら。
『禁断の果実の禁断たる所以だ。それが何を意味するか、今から見せてやろう』
レデュエが手をかざすや、周囲が眩い白に包まれた。月花はとっさに攻撃に備えて伏せた。
(…………。なにも、起きない?)
恐る恐る体を起こす。円形にくり抜かれた砂利の上で、立ったまま眠ったように立つ鎧武がいるだけだった。
『紘汰くんに何したのよ!』
起き上がり、DFロッドをレデュエに向けた。
『この先、こいつを待ち受けている世界に案内してやるだけさ』
『この先?』
『あとはジュグロンデョをもぎ取ってやれば、コイツは呆気なく墜落する』
レデュエが杖槍を向けて来た。
一瞬の静寂。
両者は同時に床を蹴り、互いの得物をぶつけ合った。
紘汰は緑林公園に立っていた。
見渡す限りヘルヘイムの植物はなく、インベスもいない。人々が遊び、語らい、笑い合っている。紘汰が求めてやまない平和な世界がそこにはあった。
仮初の光景とも知らず、紘汰が安堵しきった時に、その声は上がった。
「怪物だ!!」
それを皮切りに悲鳴が公園に満ちた。紘汰は周囲を見渡す。インベスがどこかにいるのかと思い、探した。
そして、目に留めた。インベスではなく、いるはずのない青年を。
「出て来たな。バケモノめ」
「裕、也」
死んだはずの裕也が何故ここに。そもそもバケモノとは何だ。問おうとして、紘汰は息を呑んだ。
裕也が紘汰に向けるまなざしが宿すのは、敵意と憎しみ、だった。
手を伸ばそうとして、紘汰はようやく気づいた。
手が。ビャッコインベスの長い鉤爪になっていた。
「何だよっ…何だよコレ!」
ヘルヘイムの蔓が紘汰を覆った。直後、紘汰はビャッコインベスへと変貌していた。
(何で。何で俺が。何で、何で、何で!)
「平和になったこの街を、お前らの好きにはさせない」
裕也が取り出したのは、紘汰と同じ戦極ドライバーと、オレンジの錠前。
「変身」
《 オレンジアームズ 花道・オン・ステージ 》
オレンジの鎧が現れ、裕也を装甲する。常ならば自分が変身するはずの、鎧武に。
「鎧武」は容赦なく、ビャッコインベスとなった紘汰に、大橙丸で斬りつける。紘汰がどんなに叫んでも「鎧武」の攻撃はやまない。
それどころか、助けを求めた手の鉤爪で「鎧武」を傷つけてしまった。
その事実に一気に恐れが噴き上がり、紘汰は背を向けてその場から逃げ出した。
後書き
紘汰が心配過ぎてデュークが消えたのにも気づかない咲です。
この回は裕也カンバック&変身にすごく燃えました。
いつか裕也生存で裕也がライダーになる話を書きたい――と思っていたところ、そんな構想を吹っ飛ばす素晴らしい傑作を投稿された方がいらして、戦う前から負けた気分の木崎ですorz
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