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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三話 女難、当たった!その十二

 そしてだ、そうした相手とはだった。
「関わると碌なころにならない奴が」
「いますね」
「ですから」
 それでだった。
「そうした人、どうしても好きになれない人は避けますし口もきかないですけれど」
「最初からはですね」
「そうしないつもりです」
 例え相手が誰でもだ、これは僕の信条だ。
「それは偏見ですよね」
「そうなりますね」
「偏見は好きじゃないです」
 もっとはっきり言えば嫌いだ、偏見は。
「自分が持たれたら嫌ですから」
「だからこそですね」
「結構嫌な思いもしてきましたから」
 他ならぬ親父のせいだ、あの親父の女性問題のせいで僕もいきなり女好きだの色々と言われてきた、これも偏見だと思う。
 だからだ、僕は偏見についてはといつも考えているのだ。
「実際に向かい合ってみて話さないと人はわからないですよね」
「どの様なお立場の人でも」
「そうですよね、ですから」
「これから来られる方々についても」
「はい、向かい合います」
 絶対にと答えた僕だった。
「そうしますから」
「そしてそうした義和様のお考えに行動が伴えば」
「行動もですか」
「それが続けばです」
 その時こそとだ、畑中さんは僕に話してくれた。
「義和様のその因縁もです」
「切れるのですね」
「はい、因縁を切るのは簡単なことではありませんが」
 これも天理教の教えだ、畑中さんも天理教については詳しいらしい。僕の話によく乗ってくれて応じて話してくれた。
「しかし切ることは出来ます」
「必ず、ですね」
「義和様がその因縁を自覚されているのなら」
 まずはこのことがあった。
「そしてです」
「そのうえで、ですね」
「行動を続けられれば」
「因縁は切れますね」
「お切りになりたいですね」
「正直僕にとっても災難ですし」
 女難に他ならない、それならだった。
「是非です」
「そうですね、では」
「これからもですね」
「お励みになって下さい」
 その因縁を切る為の行動を、というのだ。
「私も及ばずながら助けさせて頂きますので」
「僕は一人じゃないんですね」
「私がいますし詩織様もおられます」
「そうですよね」
「一人でないだけで人は非常に助かりますので」
 このことはその通りだと思う、一人だとどれだけ辛いか。僕にしてもいつも庇ってくれる人、助けてくれる人がいつもいてくれた。だからやってこれた。
 それに親父もだった、確かにどうしようもない位女好きで浪費家の親父だけれど。
 僕が理不尽な仕打ちを受けていると、実際はそこまでされたことはないけれどそうした話を聞くとすぐにだった、家で本気で怒ってバットを持ち出そうとさえした。
 あんな親父だけれど少なくとも腐ってはいない、だから一緒にいて頼りになるし温かくもあった。そのことを知っているから。
 僕は畑中さんの言葉が嬉しかった、それで畑中さんにこう言った。
「出来るだけ一人でやっていきますけれど」
「それでもですね」
「お願いします」
「それでは」
 畑中さんの言葉はこの時も優しかった、僕はその二十人以上の入居者がどんな人でも向かい合うことを決めた。
 けれどその決心は早速揺らいだ、何しろ。
 今僕の目の前にいる人、畑中さんとお話をしたその次の日の朝に来たその人があまりにもだったからだ、僕はその人を前にしてだ。
 思わず崩れ落ちそうになった、何とだ。
 その人はお面を被っていた、それも能の仮面だ。おかめの無表情な能面を着た見事な和服の人を前にしてだ、何と言っていいかわからなかった。
 その呆然としている僕の横でだ、畑中さんは落ち着いた声でその人に問うた。 
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