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遊戯王GX~決闘者転生譚~

作者: Blue
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初年度
学園編
  TURN-01『入学試験─VSクロノス』(2015/05/07改稿)

【章刀side】

「‥‥ぅ‥‥ぅん‥‥‥‥」

俺は再び目を覚ました。

真っ先に目に映ったのは白──知らない天井。

全身を包み込むような心地よい感触からして、ベッド──それもかなり質の良いやつ──に寝転がっているようだ。

上体を起こして状況を確認すると、そこはどこかのホテルの一室だった。

洒落たヨーロピアン調が落ち着いた雰囲気を醸し出す、少々高そうな部屋だ。

しかし値段云々よりも、転生していきなりホテルにチェックイン済みとは‥‥。

〝転生〟じゃなくて〝憑依〟、あるいは〝トリップ〟の類か‥‥?

そう思っていると、突然、頭の中に自身のものと思しき個人情報が流れ込んできた。

・光凪章刀、16歳、A型。

・両親を早くに亡くして1人暮らし。

・両親の遺産を継いでいるため金銭面での苦労は無い。

・現在アカデミア受験のため、2駅離れたホテルに宿泊中。

大雑把だが十分な情報だ。

取りあえずただの〝転生〟ではなく、〝憑依〟か〝トリップ〟で間違いはないだろう。

〝GX〟の世界に俺と同じ名前のキャラはいないが、本来は原作に関係の無い一般人とも考えられる。

まあ〝転生〟であろうとなかろうと、今はどちらでもいい。

「しっかし‥‥アレは参ったな。ちょっと酔った気がするぞ」

俺の言う〝アレ〟とは、この世界に来る瞬間に経験した意識の暗転だ。

急にあの状態になったものだから、少し焦ったのが本音だ。

「それにしても‥‥」

もう1つ。

俺には引っかかったことがある。

あの女神様が最後に呟いた言葉──


『ごめんなさい』


あれはどういう意味だったんだろうか?

意識が暗転することに対する謝罪、とか?

「謝るくらいなら先に説明してほしかったぜ‥‥」

これはもっともな感想だ。

事前説明があれば構えられもしたものを、突然と来たもんだ。

まあ今更言ったところで後の祭り──過ぎたことだ。

もういいだろう。

女神様とのやり取りのことを一旦忘れ、俺はもう1度部屋の中を見渡す。

窓の方へと目をやると、自身の鏡像と視線がぶつかる。

ベッド脇に置かれたアンティークの目覚まし時計を確認すると、短針が〝7〟を指している。

現在の時刻は夜の7時らしい。

今度は窓とは反対の方へと視線を移す。

すると、部屋の隅に段ボール箱が山積みにしてあるのが目に留まる。

少し大きめな箱だ、内容量の総計は相当なものだろう。

これだけの荷物は間違いなくカードだ。

この世界の重要な事柄に関するカードを除いても、遊戯王のカードにはまだ数え切れないほどの種類がある。

そのほとんどを要求したのだ。

(かさ)()るのも当然だな。

内心で苦笑していると、ふと箱の表面に目が止まった。

何やら文字が書いてある。

読んでみると──

「〝女神宅配便〟‥‥?」

ご丁寧にすべての箱には漏れなくそんな文字列が明記されていた。

おそらく女神様の軽いジョークだろう。

「ホテルの人は何とも思わなかったのか‥‥?」

女神様のボケ、そしてホテルマンの思考に素朴な疑問を抱きながら、箱の1つを開ける。

中にはカードを保管する為のモノと思しきジュラルミンケースが入っている。

ちなみにこのジュラルミンケースだが、よく似た物にアタッシュケース──正式にはアタッシェケース──という物が存在する。

その違いは一言でいうと〝材質〟である。

ジュラルミンケースがその名称通り〝ジュラルミン〟という合金を素材とした金属製であるのに対し、アタッシュケースは材質を限定しておらず、金属製の物の他に革製の物も存在する。

しかし全くの別物であるかと言えばそうではない。

ジュラルミンを使用した金属製のケースをアタッシュケースと呼称する場合もあり、結局のところ、各個人の認識次第と言ったところだ。

閑話休題──

箱からケースを取り出し、さらにそれを開けると、今度は予想どおり大量のカードが入っていた。

多い多いとは思っていたが、実際に目にしてみるとさらに多く感じる。

1つでこれだ、他の箱の物も合わせると‥‥。

「ちょっと調子に乗って頼みすぎたか‥‥」

これは上手い保管方法を考えなければ‥‥。

「ん?」

そんな事を考えていると、俺は箱の中に1枚の紙切れを見つけた。

そこには、

「〝特別に発売前のカードや現世には無かったカードなんかも独断で入れておきました! 他にも新しいカードや情報が出たら随時郵送しますね♪ By女神〟‥‥?」

‥‥色々とツッコミ所満載の文面だ。

まず1つ、ホントにサービス精神旺盛な女神様だな。

2つ、女神様が〝郵送〟って‥‥。

そして3つ、女神様でも先がわからない遊戯王って‥‥。

‥‥いや、最後のやつはツッコまない方がいいのかも知れない。

──まあいい。

俺は紙を横に置いて箱の中を探る。

カードの山を少しかき分けてみると、確かに女神様の言う分類のカード群が顔を覗かせた。

OCG化されているモノだけでもウンザリな量だが、これらも加えるとホントに‥‥。

保管云々の前に整理自体が大変そうだな‥‥なんて事を考えつつ、俺はカードの整理を始めた。



──数時間後。

「お、終わった‥‥」

カードを入れ直したケースを箱に戻し、呟きながらベッドに仰向けでダイブする。

合間に休憩を何度か挟みながらも、今、ようやくカードの整理が終了した。

量が量だけに、始めた時はまだ夜も浅かったにも関わらず時刻は1時。

日付も変わってすっかりダークな深夜だ。

しかし、

「ハァ‥‥今度はデッキ作らなきゃな‥‥」

終わったのはカードの〝整理〟であって、まだ試験用のデッキはできていない。

「そういやデュエルアカデミアの試験っていつなんだろ?」

ふとそう思い、俺は着ていた服のポケットに手を突っ込んでみる。

恐らくどこかに受験票や試験の日時が書いてる紙か何かが入ってるだろうと思ったからだ。

すると案の定、後ろのポケットにそれはあった。

「〝受験番号120番〟か‥‥」

俺は自分の番号を視認し、次に声に出して確認する。

‥‥いや、誰が答えてくれるわけでもないのだけれど。

実技の受験番号が出ているということは、筆記試験は終わっているのだろう。

まあ二次小説でもその辺りが詳しく書かれているやつはあまり見かけないので、別段どうということは無いのだが‥‥。

それにしても──

「〝120番〟って‥‥また随分と下位な番号だな、オイ」

確か受験番号は筆記テストの順位だった筈だ。

総受験者数はわからないが、〝120番〟はその中でもかなりの下位に位置している。

あの十代や翔よりも下だ。

それなりに知識はあると思うんだがな~‥‥。

「マジかよ‥‥。確か十代が110番だろ? それで翔が──‥‥あれ? 翔って何番だっけ?」

十代の番号はすぐに出たが、翔の番号が思い出せない。

「110番代だったとは思うんだが‥‥う~ん‥‥‥‥」

俺は記憶を辿り、原作での翔の受験番号を思い出そうとした。

‥‥が、いくら記憶の引き出しを開けても、その番号が出て来ない。

「ダメだ、わからん。俺の原作知識も頼りにならねーなぁ‥‥」

自虐するが、それも仕方のないことだと思う。

如何せんGX──それも第1話──がテレビ放映されたのが大体10年ほど前だ。

それだけ経てば原作知識が曖昧になることもあるだろう。

しかし、先行きは不安だ。

重要な事柄などは覚えているが、それも完璧じゃない。

どうしたものか‥‥。

「‥‥まあいいや。今悩んでも仕方ないし」

取りあえず原作知識については追々考えるとして、

「えーと‥‥試験日時は──‥‥っ!!」

改めて試験日時を確認した俺は、その日付に愕然とした。

その日付は明日──既に日付は変わっているので正確には今日──だった。

「ウソだろ‥‥?」

もちろん、まだデッキは作っていない。

これはあれだ、試験に遅刻するというフラグだ。

おそらく試験会場に着くと、十代が『スカイスクレーパーシュート!!!』なんて叫んでる場面に遭遇する筈だ。

そして十代に負けたクロノス教諭の腹いせデュエルが、俺の入学実技試験になるっていうパターンだろう。

二次創作でも割と多いパターンである。

しかしその光景がいやというほどリアルに想像できることが逆に怖い。

「ハァ‥‥デッキ作るか‥‥」

半ば脱力モードで、俺はデッキ作りを始める。

『せっかくの実技試験だから面白いデッキでやろうか』なんておちゃらけた考えもあったが、もう面倒だ。

生前俺が使ってたデッキにしよう。

整理するついでに組み直しておこうと思って、ソレらのカードは別に纏めてある。

それなら今からでも作るのは容易い。

もうそれでいいや。

俺は箱に詰め直したカードとは別のカードの束を取り、いそいそとデッキを組み始めた。


◆◇◆◇◆◇◆◇


夜が明け、朝‥‥。

俺は昨夜の予想どおり、試験に遅刻している。

しかし、まったく予想どおりの遅刻ではない。

夜更かししたにも関わらず、意外と早く目が覚めた俺は、普通ならば定刻までには試験会場に着いている筈だったのだ。

それが──

「だああ、クソッ!! なんでこんな時に電車が事故なんて起こすんだよ!!」

現在絶賛全力疾走中という有様である。

説明すると、ホテルのレストランで朝食を終えたあと、まだ時間があったので部屋に戻った俺は、試験で使うデッキの最終調整をしていた。

そしてホテルを出て最寄駅から電車に乗り、試験会場へと向かう最中、車内アナウンスで前の電車が事故を起こしたこと、その影響で到着が遅れることを知った。

遅刻を回避できたと高を括っていた分、この時は素で『えっ?』となった。

遅れながらも試験会場の最寄駅に到着したあとは、駅員に遅延証明書を貰い、ダッシュで駅を出た。

その後も厄日なのかすべての信号に引っかかりながら、今に至るという訳である。

「あれか!? 十代曰くこれも〝試練〟なのか!? こんな試練いらねーわ!! エキサイトしねーわ!!」

こんな何の得にもならないクソみたいな試練で人生を左右されるなんて溜まったもんじゃない。

しかし試練云々はともかく、車の事故で死んで電車の事故で試験に遅刻って‥‥。

〝交通安全祈願〟でもするべきか‥‥。

そんな事を考えながら、俺は試験会場へと急いだ。



「スカイスクレーパーシュート!!!」

「マンマミ~ヤ~!!!」

「ハァ、ハァ、ハァ‥‥やってるやってる」

試験会場へ到着すると、奇しくも昨夜の予想どおり、十代がフレイムウイングマンで勝負を決めている所だった。

実技試験の受け付けは終了していたものの、事前に電話で連絡を入れていたことと遅延証明書をもらっていたこともあって、何とか試験を受けさせてもらえることになった。

もし昨夜の予想どおり〝寝坊〟での遅刻だったら、マズかったかもな‥‥。

俺は全力疾走の代償として乱れてしまった呼吸を整えながら、フィールドに目をやる。

視線の先では、十代がクロノス先生に〝ガッチャ〟のポーズをやっているのが見える。

その光景に、俺は僅かな興奮を覚えた。

「俺‥‥マジでGXの世界に来たんだな‥‥」

デュエルフィールドにいる十代やクロノス教諭、観客席の翔や三沢、さらには万丈目、明日香、カイザーの姿を確認して、俺は改めて『GXの世界に来たんだ』と実感する。

その時、

《受験番号120の方は、デュエルフィールドに上がってください》

会場にアナウンスが響く。

遅刻組の十代の番が終わり、俺の番が来たようだ。

と言っても遅刻組は十代と俺だけだろうし、そもそも全受験者の中で残っているのは俺しかいないだろうが。

俺はデッキケースからデッキを取り出し、デュエルディスクにセットしてフィールドに向かう。



「受験番号120番、光凪章刀です。よろしくお願いします!」

「フン‥‥。ワタシはデュエルアカデミア実技担当最高責任者、クロノス・デ・メディチ。このワタシ自らが相手をする事を光栄に思うノーネ、ドロップアウト・ボーイ」

フィールドに立ち、受験番号と名前を言う。

俺の相手は案の定クロノス教諭だった。

しかし教師としてその発言はどうなんだろう。

遅刻しているとは言え、俺に罪は無い。

電車の事故だ、不可抗力だ。

電話で事情は説明したし、遅延証明書だってちゃんとあるぞ。

「準備はいいデスーノ?」

「‥‥OKです」

俺の小さな憤りを余所に、クロノス教諭が言う。

釈然とはしなかったがそれに答え、俺たちは互いにデュエルディスクを構える。

そして──

「「デュエル!!」」


章刀 LP4000
手札5枚

クロノス LP4000
手札5枚


「ワタシのターン、ドローニョ!」

クロノス教諭が胸のディスクに指を翳し、カードをドローする。

(ここは実技担当最高責任者としてのメンツを守るためにーモ、このドロップアウト・ボーイをコテンパンーにするノーネ。ついでにさっき負けた腹いせも一緒にさせてもらいますーノ)

先行をクロノス教諭に取られてしまった。

それにしてもあの顔‥‥〝最高責任者のメンツ〟とか、〝負けた腹いせ〟とか考えてるんだろうな。

‥‥ホント、最後は良い先生なのにな。

「ワタシは《トロイホース》を攻撃表示で召喚!」


《トロイホース》ATK1600


クロノス教諭のフィールドに、木馬のようなモンスターが現れる。

「さらに魔法カード《二重召喚(デュアルサモン)》を発動! このターン、もう1度通常召喚を行うことができるノーネ!」

(っ!? いきなり来るかっ!!)

この展開で、呼び出されるモンスターなんて限られている。

──いや、むしろ決まっている。

「〝トロイホース〟は地属性モンスター召喚の生け贄にする場合、1体で2体ぶんの生け贄とすることができるノーネ! ワタシはトロイホースを生け贄に、《古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)》を召喚シマスーノ!!」

トロイホースが消え、今度は機械仕掛けの巨人が出現した。


古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)》ATK3000


ソリッド・ビジョンで見るとすごい迫力だ。

外野から「アイツ終わったな」とかなんとか聞こえてくるけど、気にしない気にしない。

「カードを1枚セットして、ワタシはターンを終了するノーネ」


章刀 LP4000
手札5枚
モンスター0体
魔法・罠0枚

クロノス LP4000
手札2枚
モンスター1体
魔法・罠1枚


「俺のターン! ドロー!」

俺はデッキからカードをドローした。

やっぱりデュエルディスクでのデュエルはテンションが上がる!

俺はその昂りを抑えつつ、ドローしたカードを加えた手札を確認する。

すると、

「ん?」

6枚のカードを見て、俺は思った。

(オイオイこれじゃ‥‥Meの勝ちじゃないか!)

友達がよくネタで言っていたセリフを頭の中で再生する。

‥‥すこし小恥ずかしい気持ちになった。

まあいい、やりますか。

俺は手札から緑色のカードを1枚取り、ディスクにセットする。

「俺は手札から魔法カード《召集の聖刻印》を発動! その効果でデッキから『聖刻龍』と名のつくモンスター1体を手札に加えることができる! 俺はトフェニドラゴンを選択!」

クロノス教諭や周りの生徒が「せ、せいこく‥‥?」なんて顔をしているのが見える。

それはそうだ。

俺が使っているデッキ──【聖刻】は、この時代には存在しないカード群。

周りの奴らが知らないのも無理はない。

まあこの世界で【聖刻】なんて、鬼畜だとは思うけどな。

「そして手札に加えた《聖刻龍─トフェニドラゴン》の効果を発動! 相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、このモンスターは手札から特殊召喚できる! 現れろ! トフェニドラゴン!」

俺がディスクにカードをセットすると、フィールドに鎧を纏った白い龍が現れる。


《聖刻龍―トフェニドラゴン》ATK2100


「フン、攻撃力2100‥‥。そこそこのモンスターデスーガ‥‥ワタクシの《古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)》の足元には到底及ばないーノ!」

攻撃力だけでその自身とは、流石はステータス至上主義。

けど、その考えは間違いだということを教えてやる。

「さらに俺は手札から《聖刻龍─シユウドラゴン》の効果を発動! このカードは自分フィールド上の『聖刻』と名のつくモンスター1体をリリー──‥‥生け贄にして特殊召喚できる! 俺はトフェニドラゴンを生け贄にして、手札からシユウドラゴンを特殊召喚!」

白い龍の姿が消え、新たに青色の龍がフィールドに現れる。


《聖刻龍―シユウドラゴン》ATK2200


「それでもまだ攻撃力2200‥‥。《古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)》の敵じゃないノーネ!」

「焦らないでくださいよ。さらに俺は、生け贄にした〝トフェニドラゴン〟の効果を発動! このカードが生け贄となった時、自分の手札・デッキ・墓地からドラゴン族の通常モンスター1体を特殊召喚する。現れろ、《神龍の聖刻印》!」

シユウドラゴンの隣に、球体のモンスターが出現した。


《神龍の聖刻印》DEF0


〝聖刻印〟を召喚した瞬間、外野から「攻撃力・守備力共に0の通常モンスター(笑)」とか「アイツ馬鹿だろ」とか「意味不明」といった嘲笑の声が聞こえてくる。

‥‥まぁ、軽く無視だ。

それにコイツの出番は戦闘じゃないからステータスは関係ない。

「俺は聖刻印を生け贄にして、手札から《聖刻龍―ネフテドラゴン》を特殊召喚!」

球体モンスターが消え、そこに今度は紫色の恐竜のようなドラゴンモンスターが出現した。


《聖刻龍―ネフテドラゴン》ATK2000


「何がしたいのかわからないノーネ。どんなにモンスターを召喚シテーモ、攻撃力3000には届かないノーネ」

‥‥そうだな、ここいらで1つ、言っておくか。

「攻撃力だけがモンスターのすべてじゃないですよ、クロノス教諭! 俺は〝ネフテドラゴン〟のモンスター効果発動! 1ターンに1度、このカード以外の手札・フィールドの「聖刻」と名のついたモンスターを生け贄にして、相手のモンスター1体を破壊する! 俺は手札の《聖刻龍─アセトドラゴン》を生け贄に捧げ、《古代の機械巨人(アンティークギア・ゴーレム)》を破壊する!」

俺は手札のカードを生け贄として墓地へ送る。

その直後、ネフテドラゴンが口から光弾を放ち、その攻撃を受けた機械巨人が爆散した。

「マンマミ~ヤ~!! ワタシの《古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)》がァァァ!!!」

恐らく本日2回目のセリフを叫びながら、崩れ落ちる機械巨人を見るクロノス先生。

「生け贄となった〝アセトドラゴン〟の効果発動。墓地から《神龍の聖刻印》を特殊召喚する」

俺の場に再び球体のドラゴンが姿を現す。


《神龍の聖刻印》DEF0


俺はふとクロノス教諭の表情を見る。

「ぐぬぬぬぬ」と下唇を噛んではいるようだが、いまだ余裕が見える。

おそらくはあのセットがその理由だろう。

(ま、まだナノーネ。ワタシの伏せカードは《聖なるバリア―ミラーフォース》! これで相手のモンスターを全滅──)

「〝シユウドラゴン〟の効果発動! フィールドの《神龍の聖刻印》を生け贄にして、相手の魔法・罠カード1枚を破壊する!」

「──なんデスート!?」

今度はシユウドラゴンの口から光弾が放たれ、クロノス先生の伏せカードを破壊した。

これでクロノス教諭のフィールドはがら空きとなった。

「バトル! シユウドラゴンとネフテドラゴンで相手プレイヤーに直接攻撃(ダイレクトアタック)双龍爆裂弾(ダブル・ドラゴン・バースト)!!!」

ドカァァァァァン!!!!!

「マンマミ~ヤ~~~!!!」


クロノス LP4000→0


外野からまた声が聞こえてくる。

だが今度のはさっきまで漏れ聞こえていた嘲笑のソレではない。

「ワンターンキルだと!?」とか「あのクロノス教諭相手に!?」とかの驚嘆の声だ。

ちょっと気分が良いが、気持ち恥かしかったりもする。

しかし、実際にデュエルしてみるとやっぱり初期ライフ4000というのは低いってことを改めて実感した。

元の世界ではまずアトゥムスを立て、そこからレダメ→墓地からトフェニを蘇生し、余裕があればさらに展開というのが基本の動きだろう。

あるいは青眼+ガード・オブ・フレムベルで銀龍→次ターンで青眼蘇生へと持って行くか、はたまたラブラドライ+エレキテル辺りでタクシーを呼ぶか‥‥。

どちらにせよ、今回のような動きはまずしない。

全盛期ならワンキルも可能だが、その場合はこの程度の動きじゃ済まない。

それがこうも簡単にワンキルなのだから‥‥。

《もう少し自重した方がいいんじゃないですか?》

「そうだな‥‥考えとくよ‥‥」

俺はデッキケースから聞こえた声に返答する。

けど、これで入学はまず確実だろう。

これからの生活が楽しみだな。

そんな事を考えながら、俺は試験会場を後にした。


─ To Be Continued ─ 
 

 
後書き

いかがでしたでしょうか?

デュエルの話を読ませたあとで言うのもおかしいのですが、この作品のデュエルは現実的ではありません。

現実的なデッキや戦法、表現もあるつもりですが、「こんなカードデッキに入れねーよ」なんてカードも登場します。

ご都合主義的デュエルにもなります。

オリカ(自作・原作問わず)もバンバン使用します。

チートドローも当然あります。

それらが苦手・嫌いな読者様は、申し訳ないのですがそれを踏まえた上で読んでいただくか、残念ですが素直にBackしてください。

こればっかりは、すみません(汗)

小説の書き方についても段落等を無視したモノとなっておりますが、見易さ・書き易さを優先させていただいております。

その点につきましては、何卒ご容赦を‥‥。

今回はこの辺りで失礼させていただきます。

次話以降も順次投稿していきますので、お付き合いくださる読者様はしばしお待ちください。

作品の感想、誤字・脱字の指摘、設定等の質問など、お待ちしております。

では‥‥m(_ _)m


次回、TURN-02『デュエルアカデミア』


※2015/05/07改稿
初掲載時点で情報の無かった《アルティマヤ・ツィオルキン》に関する描写を追加いたしました。 
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