ソードアート・オンライン ~白の剣士~
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繋がる力
「サラマンダー、シルフ、ケットシー、スプリガン、インプは前衛でアタック!ウンディーネ、プーカは後衛で支援!レプラコーン、ノームは同じく後方でディフェンス!アイツに、シオンに一秒でも時間を稼ぐんだ!!」
「「「「おお!!!」」」」
残されたプレイヤーは必死だった、シオンに時間を稼ぐために。
対するシオンは、準備を始めていた。
「ヒースクリフ・・・」
「分かっている。しかし、大丈夫なのか?」
「何がだ?」
「とぼけてもらっていては困るな、君はもう既に限界のはずだと言っているんだ」
そう、シオンは既に先ほどのヨルムンガンドのビームを防いだ際にMPをすべて使い果たしている。いくら回復魔法で回復したとしてもそれでも全開とは言えない。
「そんなことか・・・」
「いくら君とて、これ以上無理をすれば・・・」
「分かっている、だから今しかないんだ。この力が残っている今しか・・・」
「それで例え自分の力を失おうともか?」
「ああ・・・」
シオンは悟っていた、これ以上無理を重ねれば必ずそのツケが回ってくる。その代償が自らの積み上げてきた力を失うということが。
だが彼自身、それに後悔はなかった。
「後悔はしてないさ、それで皆を守れるなら」
「そうか・・・」
「俺には、待っていてくれる仲間がいる。そいつらの期待を無下には出来ねーよ」
シオンの覚悟は本物だった。それはSAOで命懸けで剣を交えたヒースクリフが一番感じ取っていた。
「さぁ、始めるぞヒースクリフ、アルモニー」
「了解した」
『分かった』
シオンの言葉にヒースクリフとアルモニーは一言だけ答える。そして白銀のオーラが二人を包む。
「COS、リミットブレイク!!!」
白銀のオーラは二人をリンクさせ、その姿は白銀の長髪に黒のメッシュ、紅と碧のオッドアイ、右手にはネーヴェアルモニー、左手には神聖剣、最強の矛と盾が合わさった姿だった。
「行くぞ!!」
リンクしたシオンはヨルムンガンドに向けて飛翔する。流星のごとく向かってくるシオンに対してヨルムンガンドはビームを複数放つ。
しかし、それは展開された羽で構築されたシールドによって防がれる。更にビームは放たれるが剣によって弾かれ、弾かれたビームは周辺のフィールドへと散っていく。
「ギャアアア!!!」
ヨルムンガンドは再びエネルギーをチャージし始めるとシオンは一気に距離を詰めようとする。しかしそのチャージが完了するまで先ほどの半分以下という短い時間だった。
「速い!」
『強化されたぶん、さっきより威力は上だぞ!!』
「ならッ!!」
シオンは両手の剣を合わせると二本の剣は一本の剣となり、その剣は眩しい程の輝きを放っていた。
「聖剣《エクスキャリバー》、今だけお前の力を貸してもらうぞ!!」
黄金の輝きを放つエクスキャリバーを手にシオンはヨルムンガンドに向かっていく。
「ギャアアアアアアアアア!!!!!!!」
ヨルムンガンドが放ったビームは触れてもいない近くの鉱山を塵に変える。その全てを塵に変えるビームはシオンに向けて迫ってくる。
「うぉおおおおおッ!!!!!」
ヨルムンガンドのビームとエクスキャリバーが衝突したその時、ビームと剣先の間には激しい火花が散る。
高エネルギー同士の衝突、そこにはお互いの全力がぶつかり合っていた。
「グッ・・・!」
「ォオオ・・・!」
「シオン・・・」
シオンの戦いをエリーシャたちはただ見つめていた。彼らの勝利を信じて───。
「お願い・・・」
「頼む・・・」
「シオン・・・」
「シオン君・・・」
「シオンくン・・・」
ある者は手を組み祈り、またある者は拳を強く握る。皆誰もが信じていた、そして託した者は今目の前で神に最も近いものと戦っている。
普通なら無謀だと誰もが思うだろう、しかし皆は何処かで思っていた。
彼が、シオンがこの世界を救ってくれると。例えここが仮想世界でも、現実世界に影響がなくても、皆はこの世界を守りたかった。
『何故だ、何故貴様はそこまでしてこの世界を護ろうとする・・・?』
どこからか聞こえたその声、シオンはその声に対してこう答える。
『俺が、そうしたいからだ・・・』
『理解できない、たかがそれだけの理由で世界を護ろうと言うのか・・・!?』
『だから、こそだよ・・・』
『何?』
『護りたいから、護る・・・それ以外に、理由なんてない・・・!!』
ただ護りたい───
シオンにとってはそれだけあれば充分な理由だった。SAOでも彼はそれだけで動いていた。
『ふざけるな!!貴様には、貴様には何も護れない!!貴様は目の前で仲間が無情に死んでいく様を見るのだ!!』
『そう、だな・・・』
『ッ!!』
『俺は、一人じゃ、何もできない・・・。だから、それを受け入れ、仲間の痛みも、悲しみも、死も、全て受け入れて、俺はそいつらの分まで、生きていく!!』
『戯け!繋がることでしか存在を得られない貴様に私が負けるはずがない!!』
その言葉にシオンは微笑を浮かべる。
『繋がることでしか存在を得られないか・・・なら、お前は俺たちには勝てねーよ』
『何?』
次の瞬間、シオンは高エネルギーのビームを一瞬にして消し去った。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
『ッ!!そんな馬鹿なッ!?』
「北欧神話最強、確かにそうだ。だけどな、鍍金で作られた最強なんか、そんなの最強でもなんでもないんだよ!!」
『クッ!このガキィ・・・!!』
「この際だから教えてやるよ、弱者が強者の真似事をしたところでその本領は発揮されない、その逆も然りだ・・・」
『何だと?』
「理由はただひとつだ、それは本来あるべき強さじゃないからだ。王を気取ることは別に誰でもできる。だがな、最強の真似事をしたところでその力がお前のものになるわけではない」
シオンの言葉は更に続く。
「お前のビームは確かに威力があった、それは認めよう。流石は北欧神話最強の名は伊達ではない、だが・・・お前のせいでその力を殺している」
『ッ!!』
「お前の力は消そうとするあまり力が分散していた。これではいくらフィールドを破壊できたところで俺たちを塵には変えられない」
『ふざけるなぁあああ!!!』
ヨルムンガンドはビームをシオンに放つも、そのビームはむなしく剣を前にして弾かれる。
『ッ!!』
「言ったはずだ、今のお前では俺たちには勝てないって」
『クッ!くそがぁあああ!!!』
ヨルムンガンドは再びビームを放つ。そのビームはシオンを飲み込み、ビームが消え去ったそこには何も残らなかった。
「シオン!!」
『ふ、フフフッ、フハハハハハハハハッ!!!!!!!バカめ!僕に逆らうと皆こうなるのだ!!裁かれるべきなのは君たちなのだ!!!ヒハハハハハハハハッ!!!!!!』
須郷の高笑いが響き渡る。アスナは思わず手で口を押さえる。
「そんな・・・」
皆が絶望する中、一人だけ表情を変えない人物がいた。
「いいえ、裁かれるのは貴方だ。須郷伸之!!」
『何ッ?』
「エリーシャちゃん・・・?」
エリーシャは須郷に対して力強く言った。しかし、須郷はそんなこと気にもしなかった。
『フンッ、何をバカなことを。あの小僧はもういない、僕に立ちはだかる障壁はもう、いないのだよ!!』
須郷が再び高笑いをあげる。彼はもう既に自分の勝利を確信していた。
「あーあー、まったく、本当に成長のない奴だなあんたって人は・・・」
『ッ!誰だ!?』
どこからか聞こえた声に須郷は反応する。
「一つ、照準はよく狙え。出ないと当たらないぜ」
その声の主は───
「二つ、戦いの最中に慢心するのは命取りだ」
どんな武器でも断ち切れない───
「三つ、戦いを決めるのは・・・」
“絆”という“繋がり”を持っている。
「最後まで0.1%に賭けたバカ野郎だ!!」
「シオン!!」
「あいつ、アレをかわしたのか!?」
シオンは上空からエクスキャリバーを突きつける。
『この、愚民風情がぁああああ!!!』
シオンは剣を構える、しかしその構えはどの構えと違っていた。
「ッ、まさかアイツッ!!」
「雪花神月流、終の太刀・・・!!」
エリーシャは見た、シオンの持つエクスキャリバーが金色の光を放つのが。
その光は力強く、しかし暖かな光だった。
『いけ・・・ッ』
『死ねぇえええ!死に損ないがぁあああ!!!』
「いっけぇえええ!シオーン!!」
「うぉおおおおおおおおおお!!!!!」
ヨルムンガンドは応戦すべく、渾身の力を込めたビームを放つ。シオンも手に力を込める。
「細氷、《ダイヤモンドダスト》!!」
シオンの渾身の一振りはビームを切り裂き、ヨルムンガンドの核に届く。しかし、その固さは先ほどの倍近くはあった。
軋み、痺れ、渇いていく身体、霞む視界───彼は既に限界にあった。
今にも崩れてしまいそうなその身体───
『ハァ、ハァ、クソッ・・・身体がもう、ボロボロだ・・・。今にも、消えそうだ・・・』
普通ならもうとっくに崩れてもおかしくないその身体。彼はその身体を、たった一つ想いだけで支えていた。
『けど、身体は動く!・・・まだ、まだいけんだろ!!なら・・・』
「なら出ろ!もう一滴ィイイイッ!!」
シオンは再びその眼を見開く。彼の眼はまだ死んでいない、この不利な状況でもなお、濁りのない光を灯す。
“信じる心”───それだけが彼を支えていた。
たったそれだけ、それだけで彼には充分だった。
『「うぁあああああああ!!!!!」』
ガシャアアアアアッン!!!!!
ヨルムンガンドの核は砕け、粉々となった。
「ギャアアアアアアアアアアア!!!!!」
ヨルムンガンドは断末魔をあげ、その姿が光となってだんだん崩れていく。ゆっくりと光となって消えていくヨルムンガンド、その姿をエリーシャたちは見つめていた。
「やった・・・」
「やった、のか・・・?」
その光の中にいる二つの影、リンクを解除したシオンとヒースクリフはそこにいた。シオンはヒースクリフに支えられながら空に浮いていた。
四枚あった羽はもがれ、今は両翼一枚ずつとなっている。その羽もいたるところに傷があり、身体にはラグが所々にあった。
そんなボロボロな彼は荒い息をたてながらゆっくりと、しかし力強く拳を掲げた。
「ヘヘッ・・・!」
そこには力はなくともいつものあの笑顔があった。
エリーシャはその姿に涙が止まらなかった。
でも、彼女は彼に向けて笑顔を作りながらこう言った。
「シオン、おかえり・・・!!」
後書き
遂に終わったぁあああああ!!!!!
最終決戦、意外と長かった・・・
でも、後悔はない!!
コメント待ってます!!
ではでは~三( ゜∀゜)ノシ
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