ソードアート・オンライン ~白の剣士~
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最強の布陣
シオンたちはユイの情報を元に、ヨルムンガンドの攻略を開始していた。
ユイの情報によれば、ヨルムンガンドは核を中心としたエネルギー回路により構成されており、その核を破壊しない限り再生を繰り返すとされている。
そしてその核のある場所というのが───
「奴の額ってわけか・・・」
「はい、でもその強度ははかり知れません。普通の物理、魔法攻撃ではなんとも・・・」
「そして遠距離攻撃も一切受け付けないときた、これじゃあまるで・・・」
「無敵、だね・・・」
エリーの言葉はまさに的を射ていた。しかし、シオンには一つ違和感があった。
「なぁ、ヒースクリフ」
「何かね?」
「ヨルムンガンドはほぼ全ての攻撃を受け付けないんだよな?」
「ああ、そうだが」
「・・・ユイ、その他にもアイツが受け付けないものはなんだ?」
ユイは彼の質問に対し、疑問に思いながらも答えた。
「おそらく魔法以外にも、麻痺、毒などの異常系統の部類も受け付けないと思っていいです」
「目眩ましも?」
「は、はい」
「シオン、さっきからどうしたんだ?」
「いや、一つ疑問に思ったんだ。魔法、物理、異常系統を受け付けずに更に目眩ましも効かない。確かにこれは無敵だ」
「それがどうした?」
キリトの疑問に対してシオンはこう答えた。
「外部からの攻撃も干渉も全て受け付けない、じゃあ・・・」
彼が思った最大の疑問、それは───
「アイツはどうやって俺たちを見てるんだ?」
「あっ・・・!」
「言われてみれば、確かに・・・」
シオンの言葉に皆は同じ反応を示す。
「音、とか?」
「いや、それはない。蛇には内耳はあるが、空気中の音波を集音する器官はない」
「じゃあ、どうやって・・・」
「これはあくまで勘だが、音を聴かずに獲物の位置を特定する蛇だけが持つ武器を一つだけ知っている」
「それって・・・?」
「ピット器官って知ってるか?」
ピット器官とはヘビが暗闇の中で遠くのネズミなどの獲物が発するわずかな体温を正確に察知するもので、ガラガラヘビ、ニシキヘビなどのヘビには、目と鼻の間にコレがあり、この器官が周囲の微弱な赤外線放射、つまり熱を感知することができる。
「熱の感知、この世界に存在するのか?」
「おそらく、奴は熱をデータ化してそれを読み取っているんだと思う。そしてそれを元に俺たちの位置を割り出して攻撃を仕掛けてくる」
「でも、それがどうしたんだよ?」
「まだ、分からないのか?これだけのヒントがあって分からないとはキリト、お前やっぱりバカだろ?」
「なッ!」
シオンの言葉にキリトはショックと言わんばかりの顔をする。
「熱で俺たちの位置を割り出しているってことはあのピット器官が唯一攻撃が通る場所だって言ってんだよ!!」
そう、正確な位置を割り出しているということはそこが唯一、絶対防御が解除されているということになる。そしてその場所こそが唯一の弱点となる可能性が高い。
「さて、これよりヨルムンガンド討伐作戦を開始する。皆、作戦通り動いてくれ」
「「「「「「了解!!」」」」」」
合図と同時に飛び出した彼らはまず二組に別れた。
シオン、ヒースクリフ、エリーシャ組とキリト、アスナ、シュタイナー組に別れたフォローはそれぞれアルモニーとユイがついた。
「パパ、10時の方向から小型のエネミーが接近してきます!数は30!!」
「やはり足止めしに来たか・・・」
「私に任せて!アックアお願い!!」
「キュウ!!」
アスナはアックアを呼び出し、錫杖に変化させると
「ハァアアアッ!!」
錫杖に溜めた魔力を無数の弾丸のように放つ。その弾丸はエネミーを貫き、次々と倒していく。
「凄い、これが神龍の力・・・」
シオンはこうなることを予想して皆に神龍を共有して使えるようにしておいたのだ。
案の定、向こうは刺客を送り込み自分たちの足止めを考えていた。
しかし、その程度で止まる彼らではない。
「言ったろ?俺たちを倒したければ一万は持ってこいって!!」
シオンの方にもエネミーの大群は来るが、それでも容赦なくなぎ倒していく。
『シオン、更に敵が増えてくるぞ!』
「了解、ならコイツの出番かな?チェーニ、《リンク》!!」
「ギャアアア!!」
チェーニとリンクしたシオンは小太刀に魔力を込めて投げる。
「くらいなッ!!」
投げられた小太刀は不規則な動きをしてエネミーたちを撹乱、そして攻撃を与えていく。
その速さは気づいた頃には既に相手の急所を捉え、的確にダメージを与える。
「エリー!残りは任せた!!」
「了解!お願いウロス、力を貸して!!」
「ギャアッ!」
ウロスを二台のボウガンに変化させ、更にラファエルを呼び出しビットに変化させる。
「乱れ撃つ!!」
エリーシャが放つボウガンとラファエルのビットから放たれるビームが残りのエネミーを貫く。
「うへぇ~、流石はエリー。同時に二体も使うとは・・・」
「君は使えないのか?」
ヒースクリフがシオンに尋ねるとシオンは両手を挙げながら答える。
「やれなくはないが俺の場合、複数を組み合わせるタイプだからな。あんな風に多数を独立して動かすのは難しい・・・」
そう、シオンができるのはあくまでクロスオーダーのように足し算のような複数を組み合わせるタイプ。それとは逆にエリーシャは複数を独立して動かすことができる。
特徴としてはシオンの場合手数は減るがそれを威力でカバーし、エリーシャは威力を手数で補っている。
「まあ少なくとも、ああいうのを敵に回さなくて良かったと思ってるよ」
シオンはそう言って、「SAOではやっててしんどかったからな~」と苦笑しながら付け足した。
「さて、無駄話もここまでだな。シュタイナー!!」
「オッケー!クラウン、行くよ!!」
「クァッ!」
シュタイナーはクラウンを杖に変化させ、全員に支援魔法を付与した。その支援魔法とは、
「これって・・・」
「向こうは異常系統を通さない。なら、こっちが変わればいい話だ」
全員についたアイコン、それは《同化》のアイコン。
これは、幻惑魔法のような相手を騙すと言うよりは隠密行動に使うと言った方が正しい。周りの景色、気温、湿度などに同化することにより幻惑魔法とほぼ同じ効果が得られるのだ。
これができるのは《トリックスター》の異名を持つクラウンならではである。
「キシャアアア!!」
ヨルムンガンドは雄叫びと共に尻尾を振り回し、その尾の刃はフィールドを次々と破壊していく。その傷跡は深くえぐれていた。
「分かってはいたことだが、滅茶苦茶だな・・・!」
「そうだな、あれを一撃でもくらってしまえば」
「HP全損だな・・・」
「だが、今なら!」
「キリト!!」
上空の彼方、そこには既にフラムを武装変化させたキリトがヨルムンガンドに向けて突進していた。
突破力と攻撃力を兼ね備えたフラムの力とキリトのスピードがあればあの核を破壊できると踏んだ為、シオンはキリトを抜擢したのだ。
「ウォオオオオ!!!」
ヨルムンガンドもキリトの存在に気づいたらしく鋭い尾をキリトに向けて放つ、しかし───。
「やらせるかよ!!」
その攻撃はグラビオンを纏ったシオンとヒースクリフによって弾かれる。
「こんな攻撃、あのビーム比べれば軽いんだよ!!」
「さぁ行け、キリト君!」
「うぉおおおおッ!!」
キリトの刃はヨルムンガンドの核を捉える、しかしその硬さは情報通り一筋縄ではいかない。
「グッ!硬ェ・・・!!」
「ならッ!」
シオンはウロスとリンクすると、キリトのいるところに垂直降下した。そして高速で落下しながら拳を握る。
「ハァアアア!!」
シオンの拳は槍の底を的確に捉え、更に力を込める。
「砕けろぉおおお!!」
「うぉおおおお!!」
シオンとキリトの一撃はヨルムンガンドの核を破壊できる勢いにあった、しかし───。
「キシャアアアア!!」
「うおッ!!」
「ッチ!!」
ヨルムンガンドはそれを自力で振りほどき、二人を吹き飛ばす。二人は空中で体勢を立て直しヨルムンガンドの核を睨む。
「クソッ!ダメか・・・!」
「いや、少なくとも傷は付けたみたいだ。見てみろ」
そう言ってシオンはヨルムンガンドの核を指差した。そこをよく見てみると、核にヒビが入っているのが確認できる。どうやら先ほどの攻撃は通っていたようだ。
「あと一撃入れられれば・・・」
「でも、向こうもそう簡単にやらせてくれないようだな・・・」
「何ッ?」
ヒースクリフの一言にシオンとキリトは疑問符を浮かべる。しかしその言葉の意味をすぐに知ることとなる。
「み、見ろ!あれ!!」
「ッ!ヨルムンガンドが・・・!」
「変化、している・・・!?」
ヨルムンガンドが蛇の姿から形状を変化し始めたのはヒースクリフが言った直後だった。
背中からは翼が生え、その翼は徐々に数を増やし左右五枚ずつとなったところで変化は止まった。しかしその姿は正しく蛇のそれを超えた存在だった。そう、蛇の先の存在、超えたものだけがなれる存在。
それは───。
「龍・・・!」
「ギャアアアアアアア!!!」
ヨルムンガンドから滲み出る殺気が更に鋭さを増す。その殺気に多くのものがたじろぐ。
「そんな・・・」
「須郷の奴、さながら傷つけられたことを根に持っているんだろう。なんて嫉妬深い男なんだ・・・」
「・・・アルモニー」
『なんだ?』
「アイツの力はどれくらい上がった?」
『そうだな、プラス59%と言ったところか・・・』
「それは総合的にか?」
『ああ、おそらく半分を防御に回しているがな』
「そうか」
アルモニーから情報を受け取ったシオンは再び核を見る。どうやら核の方は再生されておらずヒビが入ったままである。
シオンは再び考える。
アイツは今空にいる。さっきもそうだが迂闊に攻め混めば全滅はあり得る、だが核を破壊しない限りどんなに攻撃したところで意味がない。
クソッ!いったいどうすれば・・・。
そう考えているシオンの手を誰かが握った。その握っている人物を見ると、そこにはエリーシャがいた。
「ッ、エリー・・・」
「大丈夫、君なら勝てる」
「何を、根拠に・・・?」
そう言ったシオンに対してエリーシャは首を横に振る。
「根拠なんてない。でも、わたしは信じてる。君は、シオンは、どんな不可能も可能に変えてきたから!」
「ッ!!」
その言葉にシオンは思い出した、あの頃を、SAOでの自分を。
彼は、シオンというなのソロプレイヤーは、常に可能性を信じて模索し、どんな時でも、リスクを気にせず戦ってきた。
そしてただただ、がむしゃらに生きてきた。
「・・・・・」
「だから、信じてる。君がもう一度、私たちを救ってくれるって!!」
エリーシャの眼差しは真っ直ぐだった。その想いはシオン自身に一番伝わっていた。
「・・・まったく、俺らしくねーな」
「シオン・・・?」
「一時期記憶無くしたせいで、本当の教えを忘れてたよ・・・」
シオンはそう言ってネーヴェアルモニーを取り出す。その刀身には自分の姿が映し出される。その顔は何処か穏やかで、それでいて覚悟を決めた顔をしていた。
「俺は今一度、白の剣士に戻る!!」
シオンがそう言うとシオンの周辺には白銀のオーラが漂っていた。
それはSAOで見せた姿を彷彿とさせるものだった。
「皆、アイツを、須郷を足止めしてくれ。無茶なことだとは分かってる、でも!俺たちは前に進まなきゃいけない。俺たちの未来のために!!」
シオンの言葉に一人の人物が声をかける。
「お前の無茶は今に始まったことじゃないだろ?」
「キリト・・・」
「それに、その頼みをするってことはシオンくんが勝てると思ったときだけだしね」
「アスナ・・・」
シオンの言葉に最初に賛同したのはキリトとアスナだった。そしてまた、この男も同じだった。
「やはり、君にこの戦いを託して正解だったよ・・・」
「ヒースクリフ・・・」
「君にはそれだけの価値があり、またそれを認めるものも多数いる。君は誰かと繋がることにより、その力を真のものとした。私ではなし得なかった本当の強さ、君にはそれがあるのだ・・・」
「繋がる、か・・・。確かにそうかもな、この力も皆を守りたいと思って生まれた。そのためには、一人ではなく、共に繋がることによって強くなれる、それを皆が教えてくれた。だから・・・」
シオンは覚悟をきめる。仲間と共に、その手に未来を掴むために。
「俺は、俺たちは、この戦いに勝って、未来を切り開く!!」
そう言ったシオンは全員に連絡を繋ぐ。
「全プレイヤーに告げる。これが最後の指令、いや願いだ・・・。未来を・・・掴むぞ!!」
「「「「「「ォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!」」」」」」
「さぁ、はじめようか。これが・・・」
シオンの眼はあの頃のように、いやそれ以上に強い意思が宿っていた。
本当の未来を切り開くために
「これが、本当の最終決戦だ・・・!!」
後書き
はい、ついにここまで来ました!!
勝負の行方はどうなるのか?
手に汗握ります!!
さて、今までほったらかしにしていました累計のPVを見てみたのですが9/6時点でなんと14万5444PVになっていたというとんでもない事実を知りました。
それから過去のPVを見てみると2013年8/25時点で既に10799PVということで書き始めたのが2013年4/10だったので約4カ月あまりで一万PVを突破したということです。
これが早いのか遅いのかはさておき、ここまでの数値になったのは御愛読くださった読者の皆様のお陰です。
本当にありがとうございます!!
これからも変わらずに御愛読いただけると嬉しいです!!
コメント待ってます!
ではでは~三( ゜∀゜)ノシ
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