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木枯らしに抱かれて

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第二章


第二章

「何処か。公園でも」
「公園ね」
「今公園って凄くいい雰囲気じゃない」
「そうね。落ち葉が一杯あって」
「お掃除する人は大変だけれどね」
 軽いユーモアも入れて話してきてくれる。
「それでもね」
「そうね。それじゃあ」
「行こう」
 私に言ってくれる。誘いの言葉を。
「そうして歩こう。公園の道をね」
「うん、じゃあ」
 私はまた小さく頷いてそれからだった。彼女と一緒に。
 公園に出た。そうしてだった。
 もう黄色、いや黄金色になった木の葉達が舞い落ちて黒いアスファルトに絨毯を敷いている中を二人並んで歩いた。私はその時何とか泣き止んでいた。
 二人並んでいると私の方がずっと小さい。私は一五〇なくて彼女は一六五ある。その背の差は昔から意識していた。私達は子供の頃から、今の高校でも一緒だから。
 その小さな私に。彼女は言ってくれた。
「どう?今の公園」
「ここね」
「そう。どうかな」
 気遣いながら私に話してくれる。
「今の公園は」
「何かいつもと違うみたい」
 私はこう彼女に答えた。
「全然違う感じに思えるわ」
「そう。普段のこの公園とはね」
「絨毯みたい」
 その落葉達を見て。私は言った。
「本当にね」
「そうよね。絨毯よね」
「それに」
 ただ道にあるだけじゃなかった。上からも。
 ひらひらと落ちてくる。そうして私の前にも横にも落ちて。
 髪の毛にもかかってきた。それを見てだった。
 彼女が私のその髪の毛にかかった落ち葉を取ってくれて。こう言ってくれた。
「この季節はどうしてもね」
「落ち葉がかかったりするわよね」
「私もね」
 そして。彼女もだった。
 少し困った笑顔で自分の制服の右肩のところを払った。そこに落ち葉がかかっていた。
 それを払いながら。私に言ってきた。
「こういうのがあるから」
「そうよね。あるからね」
 私も微笑んで応えた。
 そうしてだった。私は自分から言った。今度は。
「落ち葉って何か」
「どうしたの?」
「切ないわね」
 落ちてきているものも落ちたものも見てだった。
「とても。寂しげで」
「そうね。こうして見たら」
「けれど」
 それでもだった。その切なさと寂しさの中で。
「奇麗よね」
「そう思うでしょ?だからね」
「それで連れて来てくれたの、ここに」
「奇麗な色だから」
 落ち葉のこの黄金の色、輝いていないその色がだと私に話してくれる。
「だからこうしてあんたをね」
「連れて来てくれたのね」
「悲しいことがあったら」
 どうかとも。私に言ってくれる。
「それか辛いことがあったら」
「そうなったら」
「そう。私子供の頃にお母さんに言われたの」
「おばさんになの」
 私も知っている人だった。この娘に似ていてとても優しい人でいつも私に何かと教えてくれる。その人がこの娘に言ったこととは何か。
 
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