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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第七十五話 Nightmare Zero

 
前書き
ヤンマークを下したエックス…。 

 
薄暗い中、モニターが眩しい光を放つ研究室に、青年と老人風のレプリロイドがいた。
ナイトメア調査団を組織し、ナイトメアの真相を解明すると叫んだあの科学者。
アイゾックその人である。
彼は青年に畏まった態度で口を開く。

アイゾック「報告します。早くも調査員が1人…」

「分かっている。例のイレギュラーハンターに倒されたのだろう?」

コマンダー・ヤンマークがエックスに敗北を喫したことを、彼は既に知っていた。
彼がハンターベースに収容され、治療を受けていることも。

「未だにいつ造られたのかも分からないオールドロボットに勝てないのか…」

忌ま忌ましいと思う。
自分の造ったレプリロイドが100年前の旧世代の“ロボット”に負けたことを。

「アイゾックよ、しばらくあのハンターを監視してくれ」

アイゾック「はっ。仰せのままに」

ゲイトの指示にアイゾックは平伏した。

「それより、あの実験はどうだ?成果は出ているか?」

実験…。
研究室で確かに成功したアレは、現実世界ではどう作用しているのだろうか?

アイゾック「全ては順調に、絶大な効果が出ております。99.98%の確率でレプリロイドを陥れています。素晴らしい発明ですな」

アイゾックは青年が発明したアレの性能の高さに唸る。

アイゾック「しかしハイマックスを持ってすれば、今すぐにでも地球上に存在する全てのレプリロイドを抑える事が可能です。現にあのイレギュラーハンターですら敵わなかったのですから」

地球上に存在する全てのレプリロイドを抑えることが出来、あのレプリカとは言え強化アーマーを纏ったエックスですらダメージを与えることが出来なかった最強のレプリロイド。
彼1人で調査員8人分の力に匹敵するハイマックスを青年は未だに動かさなかった。

「駄目だ。もうしばらく実験を行いたい。引き続きデータの収集に当たってくれ」

100%の成功を納めるまで、青年は0.02%の不安要素を何としても消したかった。
アイゾックは頷く。
ふと、青年はアイゾックが熱心に探している“彼”と会いたがっている“彼女”に思いを巡らせる。

「ところでお前の捜し物は見つかったか?恐らくこの世には存在しないと思うが…」

青年の言葉に今まで静かだったアイゾックの表情が俄かに険しくなる。

アイゾック「いえ、そんなはずはありません。それに奴はあの程度のことで死ぬようなランクの低い下等なレプリロイドではありません。」

青年はアイゾックの態度の変わりように驚くと共にその滑稽さを陰で嘲笑う。

「確かにエックスといい、確かにしぶとい奴らだからな。生きているかもしれないが…可能性は低いだろう」

アイゾック「必ずや見つけ出して参ります」

「ふん。僕にとってはどうでもいいことだ。」

異常とも言えるアイゾックの執念を受け流し、青年は冷めた目で見返す。

「お前の好きにすればいい。僕には“ゼロの本体”など必要ないからな…それにしてもアイゾック。前から気になっていたのだが、お前のゼロに対する執着は、少し異常ではないか?」

ゼロの“アレ”は充分役にたったが、本体など眼中にない。
しかし何故アイゾックがそこまでゼロの本体に執着する理由が分からない。

アイゾック「い、いえ…そのようなことは…」

アイゾックの動揺を冷たく見遣ると、青年はあのことを伝えるのを忘れていたことを思い出し、アイゾックに告げる。

「そうだ、アイゾック…あの時の彼女のことだが…データ反応がゼロと同一だった。」

アイゾック「やはりそうでしたか」

「彼女を捕まえたとしてもバラバラにするのは許さんぞ、アイゾック。とにかく例の実験とエックスとルインの監視はしっかりと頼むぞ。」

アイゾック「はっ、それと…メタルシャーク・プレイヤーから連絡が途絶えております。何かあったのかもしれません」

「放っておけ、あいつは元から連絡が遅い。研究熱心で周りが目に入らないところがある。僕とそっくりだよ」

青年は自身の研究熱心な部分を強く受け継いだレプリロイドに苦笑しながら言う。
老人の承諾と青年の笑い声と共に密談は終わる。













































レイヤー「皆さん、あれを!!」

そして、リサイクル研究所では、レイヤーが叫んだ先にはもう1人のゼロがいた。
同じ顔、同じ立ち姿。
己の顔を鏡で見たかのようにそっくりであった。
しかし亡霊と言われるだけのことはあり、透き通って見える。

ゼロ「成る程、あれが俺の亡霊とやらか」

本物のゼロが値踏みするように“亡霊”を見る。

ルナ「ゼロの亡霊とか言われるだけあって顔とか本物そっくりだな」

ルナも亡霊を見つめる。
成る程、透き通った身体にゼロと瓜二つな容姿。
確かにこれなら亡霊と言われるのも分かるような気がする。
スペースコロニー・ユーラシアの破片落下事件でもゼロとそっくりなゼロウィルスがいたが、しかしあれはカウンターハンター事件のサーゲスの手によって強化改修される前のゼロの姿であり、あの亡霊はゼロウィルス以上にゼロに酷似していた。

ゼロ「確かに俺にそっくりだが…滲み出る邪悪な気配は消えない。奴からは悪を感じる。目で見たりデータで捉えられる存在じゃない」

亡霊は本物のゼロを見ると歪んだ笑みを浮かべた。
まるで長年探し続けていた宝物を見つけたような。

「ゼロ…ヤット見ツケタ…青イ…ライト…倒セ…」

ゼロ「話し方までおかしい…ポンコツだな。処分してやる。」

不快そうにようやく手に馴染んできたセイバーを構える。
自分とそっくりな姿で好き勝手されるのは我慢がならない。

「フフフ…死ヌノハ、オ前ダ…」

ゼロ「言ってくれるな、偽物。一体どこの馬鹿だ。技術の無駄遣いしやがって…」

ゼロが苦々しげに言うと亡霊は嘲笑うとゼロが失ったZバスターのフルチャージショットを2発発射してきた。

「電刃零!!」

ダブルチャージショット続いてセイバーによる衝撃波を繰り出す電刃零。

ゼロ「見た目だけではなく俺の技も真似出来るとはな」

ゼロがダブルチャージショットと電刃零を回避し、亡霊がダッシュしたかと思うと、姿を掻き消し、瞬時に移動する。

ゼロ「ちょこまかと…逃げるしか能がないのか?」

ゼロは亡霊の動きを追って、セイバーを振るう。
一瞬で消滅する亡霊、次に現れたのはゼロの背後であった。

「死ネ!!」

亡霊が手にしたセイバーからは灰色の光刃が発現していた。
それを亡霊がゼロに向けて振り下ろそうとした瞬間。

ゼロ「死ぬのはお前だ!!」

気配を感じ取り、振り向きざまに亡霊を斬る。
素早い振りは剣閃どころか振るったことすら分からないほど。
光速の一撃であった。

「ウワアアアアアーッ!!!!」

断末魔の絶叫を上げて、亡霊は消えた。
残骸はない。
亡霊の断末魔の叫びの後は虚空が広がっていた。

ルナ「流石だなゼロ」

ルナは相変わらずのゼロの実力に感心する。
単純な戦闘力ならゼロに勝てるレプリロイド等殆ど存在しないだろう。

ゼロ「ちょっといない間に俺も落ちたもんだな。こんな“玩具”と一緒にされるとはな…さて、これからどうする?」

セイバーを背部のバックパックに収めると、レイヤーとルナを見遣る。

レイヤー「わ、私は…これからも異変の真相を調べます。訓練生ですがイレギュラーハンターのオペレーターとして……」

ゼロ「そうか、俺は俺なりに事件を探ってみる。ここでお別れだな」

ルナ「ゼロ、俺のアジトに帰ろうぜ。武器の調整をしないと」
今のゼロのセイバーはルナが丸腰であろうゼロのために造った急造品だ。
いつ不調が出るか分からないためにしっかりとした調整をしなければ。

ゼロ「ああ」

レイヤー「あ、あの…」

ゼロ、ルナ「「?」」

レイヤー「…ありがとうございました。ゼロ先輩の無実が晴らされる日が1日でも早く来ることを願っています」

ゼロ「ん?あ、ああ…」

赤面しながら言うレイヤーにゼロは疑問符を浮かべ、ルナは合点がいったようにニヤニヤと笑うとゼロを肘で突いた。

ゼロ「…何だ?」

ルナ「いやいや、モテる男は辛いねえ~」

ゼロ「は?」

疑問符を浮かべるゼロだが、いつまでもニヤニヤしているルナにイラッときたため、頬を引っ張る。

ルナ「いひぇえ!!いひぇえはら、はらへ!!」

ゼロ「ふん。じゃあなレイヤー。今度会う時はハンターベースでな」

レイヤー「は、はい…」

赤面しながら言うレイヤーにゼロは内心で首を傾げるが、取り敢えず頷き、レイヤーと別れたのであった。 
 

 
後書き
ゼロナイトメア撃破。
 
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