ロックマンX~朱の戦士~
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第七十四話 Amazon Area
前書き
メタルシャークを下したゼロ。
その頃エックスは…
エックスは古代文明が眠りについた静かな森を探索していた。
足元は青々と茂った草。
その下には巨像を造って栄えた遺跡が眠っている。
目を閉じた静かな表情の石像の群、これらは自然に覆い隠され、誰の目にもさらされることはないだろう。
遠くには月明かりに幽玄と浮かぶピラミッドがあった。
アイリス『エックス、ここがアマゾンエリア。今の地球でガラパゴスの次に尤も自然豊かな場所であり、天然の植物が残っている場所よ』
エックス「ああ、天然の植物はもう映像くらいでしか見られないと思っていたが…」
ナイトメアの存在は忌まわしいが、自然豊かなアマゾンエリアの空気はシティ・アーベル等とは比較にならないくらい澄んでいた。
アイリス『ハンターベースからだとそっちの状況が分からないの。多分これはナイトメアの影響ね…』
エックス「そうか…では通信はアテに出来ないと考えた方がいいな……とにかく先に進んでみる」
アイリス『分かったわ。気をつけてエックス』
レプリカファルコンアーマーを装着すると高い機動力を活かして奥へと進んでいく。
レプリカファルコンアーマーは最大の長所であるフリームーブを失ったために、オリジナルのファルコンアーマーより装甲が厚くなり、レプリカフォースアーマーとほぼ同等の高い防御力を得ている。
蟷螂型のメカニロイドをチャージブレードで破壊し、先へと進む。
途中でレプリロイドを保護しながら突き進む。
薄暗い洞窟はナイトメアの巣窟と化している。
エックス「アイリス、異常なデータ反応を感知した」
アイリス『きっとナイトメアよ。気をつけて!!』
エックス「鬱陶しいイレギュラーだ…!!」
チャージブレードで切り捨てる。
メカニロイドを破壊すると青い球体が浮かび上がり、微かに上下しながらキラキラと輝いている。
エックス「これは一体何だ…?」
先程の異常なデータ反応といい、気になる。
アイリス『謎のアイテムを発見したわね…まるでイレイズ事件のソウルのよう…ナイトメアソウルと呼びましょう。エックス、これを転送してもらえるかしら?解析すれば何か分かるかもしれないわ』
エックス「分かった」
アイリスに言われたように、エックスはナイトメアソウルをハンターベースへ転送すると、再び奥へと進んでいく。
先程のイレギュラーを見つけたら即座に破壊し、ナイトメアソウルを回収した。
ホバーと足場となるメカニロイドを駆使して針の洞窟を抜けると再び外へ。
蟷螂型メカニロイドを破壊しながら奥へと進む。
強力なデータ反応がシャッターの仕切りの先から感知された。
このエリアのナイトメア調査員は確かコマンダー・ヤンマークと言ったか。
シャッターの向こう、風雨にさらされた巨像の顔面が横たわり、周りに草木が茂っていた。
エックス「静かだな…」
呟いた直後に静寂を破る羽音が空からした。
3体の蜻蛉型メカニロイドを従え、降りてくる。
エックス「アマゾンエリアのナイトメア調査員、コマンダー・ヤンマークで間違いないな?」
ヤンマーク「そうだ!!アマゾンエリアの調査に当たっている」
警戒するエックスに対し、ヤンマークは正義は我にありという風に続けた。
ゼロのことだ。
ヤンマーク「教えろ!!ゼロは何を企んでいる?ナイトメア現象を起こし、レプリロイドを何人も犠牲にしている!絶対に許せない!!」
エックス「違う、ゼロは絶対にそんなことはしない!!変な言い掛かりは止せ!!」
ヤンマーク「そんな話は信用出来ない!!」
ヤンマークは蜻蛉型メカニロイドから砲弾を発射させた。
エックス「何をする!?止めるんだヤンマーク!!」
ビームスピアとXブレードを凄まじい速さで振るい、砲弾を切り裂いた。
ヤンマーク「イレギュラーハンターもレプリロイド研究員も!!裏切られて消されるのがオチだ!!」
エックス「何を言っている!?」
ヤンマークの脳裏には“あの日”の出来事が蘇っている。
あれは何年前だったか…。
『緊急事態発生!!ポイントARの森林が炎上しています!!』
部下のレプリロイドから報せを受けたヤンマークが駆け付けるとそこは火の海と化していた。
ヤンマーク『消化活動を早く!!森林が燃え尽きる前に!!』
ヤンマークは叫んだが既に遅く、数時間後、焼け野原が辺り一面に広がっていた。
イレギュラーハンターの調査の結果、ヤンマークのミスである。
ウェザーシステムをコントロールしていたのだが、人工太陽の設定ミスで森林を燃やしてしまったのだ。
『コマンダー・ヤンマーク』
ヤンマーク『…はい』
本部に呼び出されたヤンマークは平身低頭の体で謝罪した。
『今回のミスは問わない。お前が森林保護プロジェクトに尽力していたことはよく知っている。これからは今回のことを肝に銘じ、より尽力を尽くしてくれ』
ヤンマーク『っ…ありがとうございます!!』
処分すら覚悟していた。
しかし本部は寛大であった。
だが、連中がその後自分を地獄に突き落とすことを彼は知らなかった。
『君がプロジェクトに貢献出来るよう、より飛行能力を高めたい。飛行システムを解析させてくれないか?』
誘いに乗り、ヤンマークは飛行システムを改造された。
そしてある日、森林を飛行調査した際、飛行システムが停止した…。
羽を失ったヤンマークは地上に落下し、帰らぬ人となった。
ヤンマーク「裏切られる前に消してやる!!もう二度と騙されるものか!!レプリロイド研究員も…イレギュラーハンターなど、“あの人”以外信じられるものか!!」
イレギュラーハンターはもう“あの人”しか信じない。
誰にでも優しく、明るく。
主に友人だと紹介され、慣れない仕事に悪戦苦闘していた自分に優しい言葉かけてくれた人。
天才であるが故に孤立しがちだった主を必死に友人として理解者たろうとした“あの人”しか信じられない。
攻撃が一層激しくなる。
エックスはブレードとスピアで砲弾を払う。
エックス「(ヤンマーク…)」
彼に何があったのかエックスは知らない。
ただその気迫から悲惨な目にあったことは分かる。
“裏切られた”
“信用出来ない”。
彼の言葉が胸に突き刺さる。
ヤンマークの攻撃は蜻蛉型メカニロイドを行使したオールレンジ攻撃。
メカニロイドが四方八方に動き、エックスに砲弾を当てていく。
ダメージは大したことはないが、このままではダメージの蓄積により支障が出る。
エックス「(すまない…耐えてくれよ)」
意を決したエックスは全身に凄まじいエネルギーを纏うと、それを広範囲へと解放する。
エックス「スピアショットウェーブ!!」
広範囲に発生した無数の貫通弾は蜻蛉型メカニロイドを一蹴し、ヤンマークの蜻蛉型メカニロイドによる攻性防御はあっさりと瓦解した。
ヤンマーク「フ、フォーメーション……うわあああああ!!!!」
レプリカファルコンアーマー最大の攻撃であるスピアショットウェーブを受けたヤンマークは錐揉み回転しながら墜落する。
低空飛行のために打ち身によるダメージは皆無に近いが、スピアショットウェーブにより、蜻蛉型メカニロイドと羽根を失ったヤンマークに勝ち目はない。
ヤンマーク「くっ…また僕は殺されるのか……」
無念さを瞳で雄弁に語っていた。
眼前には最強のイレギュラーハンター・エックス。
彼のバスターかビームスピア、ブレードが自分を貫くだろうと、ヤンマークは恐怖に強張る。
しかしエックスはバスターを元の腕に戻し、ブレードを腰に戻すとヤンマークに手を差し延べる。
エックス「立てるかヤンマーク?一応手加減はしたんだが…ハンターベースに行けばライフセーバーが君を治療してくれるだろう」
ヤンマーク「なっ…!?」
信じられなかった。
今まで戦っていた相手を助けようとするエックスの行動に。
エックス「ヤンマーク」
ヤンマーク「絶対に行かない!!助けるフリをして殺すつもりなんだ!!もう僕は信じない…お前達なんか……!!裏切られたあの日から……止めてくれ…」
言葉の最後は哀願であった。
彼の胸にあの日の苦痛と悲しみ、無念さが込み上げてきて…。
エックスはヤンマークをじっと見つめる。
戦士には酷く不釣り合いな優しさに満ちた瞳だった。
エックス「俺も仲間に裏切られたことがある…。俺の部下であり、俺に剣を教えてくれたレプリロイドだった。そいつはルインというレプリロイドを愛していてな…シグマにそれを利用されたんだ。」
ヤンマーク「ルインさん…?」
エックス「知っているのか?」
ヤンマーク「…僕が森林保護プロジェクトに参加して間もない時、ミスばかりしていた僕を助けてくれた人だ」
エックス「そうか…話の続きだが、シグマに利用された彼はイレギュラーハンターを裏切って俺達の敵となった。怒りもあったけど…同時に悲しかったな…。ヤンマーク、君は裏切られたと言ったな?けどみんながそういう訳じゃない。俺には心から信じられる仲間がいる。だから俺はみんなを信じる。君も…だから…」
ヤンマーク「………………」
長い沈黙の後、ヤンマークは静かに頷いた。
~おまけ~
時間軸はX7後。
アクセル加入。
ハンターベースの中には一部の者しか入れない部屋が存在する。
それはエックス、ルイン、アイリス、ルナ、ゼロ、エイリア、シグナスのみだったのだが、現在は新たに仲間となったアクセルも中に入れるようになった。
現在の時刻は午後14時30分。
アクセルは初めて入る部屋に辺りを見回した。
アクセル「ねえ、この部屋なんなの?」
ルイン「みんなで一緒におやつを食べる部屋♪」
アクセル「へ?おやつ?」
エイリア「いつも任務ばかりでは辛いから、ルインの提案で時間に余裕がある時、ここでみんな一緒におやつを食べるのよ」
いつも殺伐としたイレギュラー掃討で心身共に疲労するエックス達。
少しでも心に癒しをと思い、ルインが考案した。
ルナ「んで?今日のおやつはクランベリーがあったからクランベリーのマフィンか?」
ルイン「当たり!!」
アイリス「ルインの手作りのお菓子は美味しいもの。アクセルも気に入ると思うわ」
アクセル「ルインってお菓子も作れるんだ…」
ゼロ「しかし…」
全員【?】
クランベリーマフィンになるべく待機している材料を眺めるゼロ。
そこにいるのは小麦粉、砂糖、胡桃に卵にクランベリー。
サラダ油と塩少々とバニラエッセンス。
いくつか片付けてしまったのもあるので、現在出されている材料はそれくらい。
彼は1つ1つを数えるように確認すると、くるりとルインに視線を戻す。
ゼロ「マフィンの中身だが、クランベリーと胡桃だけだと、味気無くないか?」
ルイン「そ、そりゃあ…で、でも、その代わり、胡桃はいつもより多めにしたし、クランベリーだって多めにしたんだよ!!」
エックス「他に入れられそうな材料はないのか?」
ルイン「クランベリーに合うような果物が無いんだもん」
ルナ「そうだなあ。季節の果物と合わせると、味のバランス悪いしな。」
アイリス「ルインだって好きで味気無いマフィンを作るわけじゃないし」
ルイン「そうだよ!!私だって出来ることなら具が沢山入ったマフィンが好きだもん!!」
エイリア「だったらレモンチーズを使ってチーズケーキ風のマフィンにしてみたらどうかしら?」
プンプンと怒るルインに苦笑しながら、クランベリーマフィンではなくレモンチーズケーキ風のマフィンにしてみてはどうかというエイリアの意見にルインは瞳を輝かせた。
ルイン「エイリア、そのアイディア頂き!!」
レモンチーズを取り出すと早速作り出すルイン。
しばらくして、可愛らしい皿に載せられたレモンチーズケーキ風のマフィンが出された。
レモンチーズの香りに全員が表情を綻ばせた。
アクセルとルナに至っては瞳をキラキラと輝かせながらマフィンを一口放り込む。
アクセル「美味しい!!」
ルナ「うんめえええ!!」
ルイン「えへへ♪」
子供達の素直な感想にルインは照れ笑いを浮かべ、エックス達も穏やかに笑いながらマフィンを口にした。
後書き
ヤンマーク撃破。
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