| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

死人使い

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十章

「私に倒されるからな」
「言うのう。見たところ」
 老人はその赤く不気味に光る目で役を見ながら言った。
「瞬間移動も使える辺り」
「相手の力量を見極めるだけのものはあるか」
「そのつもりじゃ、相当な者か」
「少なくとも貴様よりはな」
 強いとだ、役は老人にこうも告げた。
「そう言っておく」
「左様か」
「ではいいな」
 役はその手に幾つもの札を出した、その札も黄色い。
「今から貴様を倒し仕事を終わらせてもらう」
「そう言うか」
「その通りだ、攻めさせてもらう」
 言いながらその札達を老人に向かって投げる、すると。
 札達は役の手から離れるとすぐにだった。黄色い鳥達になり。
 そのうえで老人に襲い掛かる、だが。
 老人はその鳥達にも闇の球をぶつける、そうしてだった。
 役の放ったその鳥達を潰す、鳥と球が相殺され消えていく。そうして残っている球で役をさらに攻める。
 しかしだ、それにだった。
 役はさらにだ、鳥となる札を放ってだった。
 老人に攻撃を続ける、それで球も打ち消す。そうしてだった。
 その鳥と球の攻防を続ける、暫しそうしていて。
 そしてだ、そのうえで。
 彼は二人になってだ、それからだった。
 三人になり四人になり五人になってだ、そのそれぞれでだった。
 札を放つ、しかし老人もだった。
 その彼等と互角に戦う、五人になった役とだ。そうした中で。
 役のうちの一人の目が光った、そうして。
 老人の影に何かが突き刺さった、それは光の刃だった。その刃が突き刺さると老人の動きが止まった。そこに。
 役の無数の鳥達が炸裂した、勝負は一瞬で決まった。老人は黄色い鳥達を身体に受けてそうしてだった。
 倒れる、役はそれを見て一人に戻って言った。
「勝ったな」
「仕掛けか」
「私の術は陰陽道だけではない」
「目が光ったが」
「そうだ、目でだ」
 それでだというのだ。
「こうした力も使える」
「わしの影を貫きか」
「その動きを縛ったのだ」
「影、即ちわしの魂の動きを」
「そうした、私の力量は見極めていた様だが」
「そうした術まで使うとはな」
「力量を見抜かれようともだ」
 それでもだというのだ。
「その手の内は隠せる」
「それでか」
「そうだ、こうしてだ」
 そして、というのだ。
「相手がこちらの動きを一つと信じ込むまで、若しくは完全に戦いに集中した時にな」
「今の様にか」
「切り札を使った」
 今で言うと影を攻めることだ。
「この様にな」
「そういうことか、主の頭の出来まで見るべきだったな」
「生憎それは出来ない」
「それは何故だ」
「決まっている、私は貴様より遥かに長く生きていてだ」
 老人、彼よりもというのだ。
「多くのことを学び知っているのだからな」
「貴様、まさか」
「この国にも何度か来ている」
 役はにこりともせず老人にこうも告げた。
「私の長い人生の中でな。伯爵と呼ばれていたこともある」
「伯爵、欧州の爵位か」
「ブルボン朝の頃にな」
「まさかあの伯爵か」
「そう呼ばれてもいた、その私に読みで勝てるにはな」
 それにはとだ、役は全身に攻撃を受けてその身体が今にも崩れようとしている老人に対してこうも告げた。
「私以上に知らねばな」
「くっ、まさか主程の者が来たとはな」
「人は力量だけでは駄目だ」
 こうも言う役だった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧