死人使い
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第九章
今度は刀にも光を込めてだった、老婆に対して投げた。刀は一直線に飛びそのうえで老婆の額を貫いた。
闇が消え死人達は糸が切れた人形の様に崩れ落ちた、本郷は己の周りの気配を感じながらそのうえでこう言った。
「俺の勝ちだな」
「うぬう・・・・・・」
「婆さん、あんたの負けだ」
「それは認めるわ、わしもな」
こう返す老婆だった。
「額を貫かれた、これではのう」
「そうだな、これでこの村もな」
「もう殆ど残っておらんがな」
「それは残念だけれどな」
しかしだとだ、本郷は崩れ落ちている老婆を見ながら言うのだった。
「今生きている命は救えたな」
「それでよしとするのじゃな」
「いや、それ以上だよ俺達がよしってするのはな」
「首都か」
「まあ、あんたには残念だがな」
「抜かしよるわ、わし等はな」
「もうそっちも手を打ったと言うが」
老婆は本郷を忌々しげに見つつ言う。
「生憎じゃが」
「だから言ってるよな、あんた達の計画は失敗するんだよ」
「まだ言うか」
「そうだよ、役さんならやってくれるさ」
そのことを確信していた、言葉にもはっきりと出ている。
「絶対にな」
「その言葉通りにはならんがのう」
「まあそれはあんた達が地獄、いやジャハンナムでわかるさ」
死にゆく老婆にこう告げた、そしてその頃だった。
役はパキスタンの首都イスラマバードの貧民街の奥深くにいた、そしてそこで。
一人のどす黒い顔の老人と対峙していた。貧民街にある古ぼけたモスクのその中においてであった。
老人もまた闇の服を着ている、そのうえでだった。
全身に瘴気をまといそれを球にして次々と役に放つ、そのうえで彼に言うのだった。
「何故わしのことがわかった」
「カラチの近くの村のだ」
「まさかハラザードの」
「あの老婆の名前だな」
役は老人の言葉からすぐにそのことを察した。
「そうだな」
「だとしたらどうする」
「あの老婆から聞いた、頭の中から直接な」
「貴様、その術を使ってか」
「貴様のことを聞いてだ」
そして、とだ。役はその己に次々と放たれる闇の球を己の足の動きだけでかわしながら言葉を返した。
「ここまで来た」
「瞬時にか」
「縮地法を使ってな」
そうして、というのだ。
「ここまで来てだ」
「わしを倒す気か」
「その前に一つ聞いておく」
役は老人の攻撃をかわしながら彼に問うた。
「貴様の狙いはこの国を混乱させることだな」
「左様、我等は魔道の者」
「魔道、それも闇のだな」
「闇の魔道の者としてな」
「人を殺し操りか」
「多くの血を流させる」
その為に乱すというのだ。
「乱れれば乱れる程そうしやすいからのう」
「そういうことだな、やはり」
「まず一つの場所で乱しじゃ」
「この国の術者のほぼ全てをそちらに向かわしてか」
「カラチの近くでハラザードに働いてもらいじゃ」
あの老婆に、というのだ。
「わしが、と思っておる」
「思っている、か」
「今ものう」
「その言葉は思っていた、になる」
役は老人にこう言葉を訂正する様に告げた。
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