リンネの記憶
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
チャプター4 別れ
僕とリリィ、ツバサ、コロン、イーゼルは森の入り口に着くまでにいろいろな話をしたが話の話題はほぼ僕の話で持ちっきりだった。
「転生する前は何だったの?」
とイーゼルが問いてくる。
「実はね…転生する前は人間だったんだ」
僕は答える。
「へぇ~、人間だったんだ。」
イーゼルが相づちをうつと僕はさらに続ける。
「でもね…待たせてる人がいる気がするんだ…僕はその人のために必ず戻らないといけない」
イーゼルは少しがっかりしたような様子で
「ふ~ん…ずっといてくれればいいのに…」
「えっ…そ…そういう訳には…」
僕がそう答えるとリリィがイーゼルに話しかける。
「そうだよイーゼル。さっきナイーブが言ってたようにナイーブを待ってる人もいるみたいだし今はナイーブが戻れるように応援しないと…」
「実は…今思い出したんだけど…僕、転生してくる前は結婚する予定だったんだ…結婚式も1か月後に控えてた。だけど…」
「だけど…?」
みんなが声を合わせて言う。まぁ故意に合わせた訳ではないと思うが…
「…ごめん…こっからは…思い出せないよ…」
「そう…ごめんね。嫌なこと思い出させて」
リリィが言う。
「構わないよ。僕も実のところ転生前の事を思い出せて嬉しかった。ありがとう」
僕とリリィの間に微妙な空気が流れる。意外にもその空気の流れを断ち切ったのはツバサの言葉だった。
「ほら、着いたぞ。ナイーブは知らんと思うから紹介するがここが俺たちのキッチン兼ダイニングの『ヤグルマの森』だ。」
――…この入り口…なんか見たことある気がする…
「ここは木の実がいっぱいなってて…おい…ナイーブ…聞いてるか?」
僕はいつの間にかボーっととしてしまっていたみたいだった。
「あ…あぅん…だ…大丈夫…」
「ホントに大丈夫なの?」
コロンが言う。
「だ…大丈夫だよ」
強がってみたもののなんか今日は体がおかしい。「そうか♪じゃあ森にいこう♪」
コロンが言う。
「う、うん」
僕と四匹は森の中へ進入して行く。初めは軽く体がおかしいだけだった。しかし森の奥に進み行っていくほどに体がおかしくなってくる。
「ハァハァハァ…」
歩いた疲れもあるかもしれないが違う疲れもそのあえぎ声には含まれていた。
「ほ…ホントに大丈夫なの?」
コロンが問いかけてくる。
「はっはぁっ…もしかしたら…もう…ダメ…かもしれない」
僕は答えながらその辺の草に寝転ぶ。それを見てコロンは
「えぇっ…そんな…そんな…」
言いながら涙ぐむのだった。このあたりにはコロン以外誰もいなかった。だから僕は彼女に最期の言葉を残す。
「僕、コロンやリリィやイーゼル、ツバサが好きだ…だから…最後にっ…言っておきたい…」
「う…うぅ…ウソでしょ…ウソって言って」
いやだからダメなんだって。まぁそんなこと言ってもしょうがない。今は伝えたいことを思いっきり伝えるのが伝えるのが最優先だ。
「僕は…二日間…二日間だけでも…君たちと過ごせて幸せだった…もっとポケモンで…いたかった…きっと…僕は…また…転生して…生き返る…転生して…生きてるうちに…きっと会いに来るよ…それまで…君たちは自分を…一生懸命…生きろ!…」
「待って…まだダメ…まだダメだからっ…」
彼女は首につけていたネックレスを僕の手に握らせた。
「…コ…ロン…?」
「私っ…あなたが好きなのっ…このまま会えなくなるなんていや…いやだよ…」
彼女の本当の気持ちを知って胸が熱くなった。
「ごめんなコロン…また会いに来るよ…だから…もう…泣くな…」
僕は彼女にハグを送る。
「ナイーブ…ナイーブっ…ナイ…ブ……ブ…」
彼女の声が徐々にフェードアウトしていく…
ページ上へ戻る