雲は遠くて
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17章 世田谷区たまがわ花火大会 (6)
17章 世田谷区たまがわ花火大会 (6)
株式会社・モリカワの社長の、森川誠も、
テーブル席で、くつろいでいた。
普段着の、ポロシャツに、チノパンであった。
森川誠の右どなりには、無二の親友で、
会社の顧問・弁護士(こもん・べんごし)を、
してもらっていいる、清原美樹の父でもある、
清原和幸がいる。
森川誠の左どなりには、
本部・部長の村上隼人、
そのとなりには、本部・主任の市川真帆がいる。
定員4人の、まるくて、白いテーブルである。
浴衣姿の、市川真帆は、
女性らしい、こまやかさで、
テーブルに、飲み物や、ビールや、軽食とかを、ひろげる。
そのテーブルの、まわりのテーブルには、下北沢の、
モリカワの本部の社員たちが、気ままに、歓談している。
森川純や川口信也たち、ミュージック・ファン・クラブ(MFC)の
部員たちは、
予約してある、定員4人の、まるいテーブルや、
四角いテーブルや、10人用の大型シートに、くつろいだ。
「毎年、こんなふうに、花火を、鑑賞する、催しは、
やっていこうよ。
童心に戻れるようで、楽しいじゃないか。わっはっは」
450mlの、缶ビールに、上機嫌の、森川誠が、
左どなりの、
部長の村上隼人に、そう語って、わらう。
「そうですよね。わかりました。毎年、ここで、楽しみましょう」
人懐っこくて、善良そのものの、わらい顔で、
誠に、返事をする、隼人だった。
「ただ、残念なことなんですが。わたしたちは、土日とか、
休日ですから、
こういう、花火大会にも、出席できるのですけど、
わたしたちの会社のお店は、
ほとんど、土日も、営業をしているのがですよね。
わたしたちの、会社の、
多くの社員のみなさんが、
せっかくの、すてきな、イベントに、参加しづらいというのが、
申しわけ無い、気がしてしまうのですよね」
「そのとおりだな。隼人さん。その点は、
また、みんなで、いい、打開策を見つけよう」
「はい」
「会社を経営していると、問題が、いろいろあるよ。
ねえ、和ちゃん。
そうそう、美咲ちゃんも、ストレートで、
司法試験に、合格できそうですよね。
さすが、和ちゃんちのお嬢さまだ!
大変に、おめでたいことですよね!」
「結果が出るまで、わかりませんけどね。
ありがとうございます、誠ちゃん。
何事にも、
運がありますから、
みなさんには、感謝することばかりですよ。はっはっは」
そういって、陽気に、わらう、清原和幸。
和幸は、12月で、59歳に、
誠は(まこと)は、8月に、59歳になったばかりだった。
「真帆さんは、いつお会いしても、本当に、
お美しい。
きょうの、浴衣姿も、見とれてしまいます。
先日は、松下陽斗さんの、
ピアノ・リサイタルで、お会いできましたね。
村上隼人さんと、ご一緒で・・・。
お二人は、
また、美男と美女で、本当に、お似合いのカップルだ」
ビールに酔って、リラックスしているのか、
どちらかといえば無口な、和幸が、
真帆にそんな話をする。
「ありがとうございます。でも、わたしなんて。
清原さまの、お嬢さまたちのほうが、
わたしなんかより、
かわいらしいし、きれいだと思いますわ。
松下陽斗さんの、
ショパンの名曲の数々は、
情熱的な演奏で、すっかり、わたしも、酔いしれましたわ。
松下陽斗さんは、
やっぱり、評判どおりの、天才的な人だと思います!」
「陽斗さんも、何かの縁で、
うちの、美樹と、おつきあい、してくれていて、
いつまでも、仲よくしていってくれると、いいんだけど。はっはは」
「だいじょうですよ。お父さま。
美樹さんと、陽斗さんですもの」
そういって、心の穢れが、1つもないような、澄んだ、
瞳で、ほほえむ、市川真帆だった。
和幸の、右隣にいる、
本部・主任の市川真帆は、
華やかな、色合いと柄の、浴衣姿であった。
本部・部長の村上隼人も、
市川真帆の浴衣に、
合わせたような、甚平の格好だった。
今年の4月で、25歳になった、市川真帆は、
今年の10月で、32歳になる、村上隼人と、
知らず知らずのうちに、
恋仲になってしまっていた。
どちらかが、愛の告白をしたというものでもなく、
お互いに、
仕事のことで、頼みごとをすることがあったり、
質問をし合ったり、
簡単な議論をすることもあったりと、
そのような日々の、オフィス(会社)のなかで、
知らず知らずのうちに、
愛を、確かめ、合っていたのだった。
≪つづく≫
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