銀河英雄伝説~その海賊は銀河を駆け抜ける

レビュー

  •  これから初めて二次小説を読まれる方に「銀河英雄伝説の二次小説でオススメは?」と聞かれたら私はこの作品かArcadiaの銀凡伝のどちらかを相手の好みに合わせて推薦します。

     『~その海賊は銀河を駆け抜ける』は、同じ作者による『新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)』のスピンオフ作品(同じ転生者主人公の別ルート)ですが、本編が300話近い未完の長編であることを考慮すると、最初は海賊(交易商人ルート)から入るのが取っつきやすいと思われます。

     自由惑星同盟(ヤン)と銀河帝国(ラインハルト)の戦いである銀河英雄伝説の舞台に、全く違った視点を持った第三者(宇宙海賊エーリッヒ・ヴァレンシュタイン)が飛び込むことにより、新たな視点からの銀英伝が綴られており、二次小説の醍醐味を堪能することができます。戦争、謀略、内政といった楽しみがコンパクト全て詰まっているのも素晴らしい。ヒロイン要素が薄いのもある意味で原作通り。ヤンやキルヒアイスを始めとした人気キャラがほぼ死ぬことなくハッピーエンドを迎えているのも入門には良いかと思います。

     原作知識持ちの転生者主人公がチート過ぎるという批判もあるでしょうが、個人的にはスカッとご都合主義的に主人公TUEEEと物語が進むのは爽快感がありました。
     
     また銀河の統一の最終話まで書かれており、投稿作品の大半がエタるのが宿命づけられている二次小説界隈でライトノベルにして2~3冊分の文量の作品が完結しているだけでも偉業だと思います。

     この作品を入口に数多くの外伝が存在する『新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)』シリーズに触れるキッカケに繋がればと思います。