銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(旧版)

レビュー一覧

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  • 物語のダイナミックさ、詳細さ、綿密さは確かに新版なのですが、展開の面白さという一点においては私は旧版を推したいです。

    主人公が記憶を持ったまま、人生の岐路に再びタイムスリップするところから始まる「二度目の人生」。彼が「逃亡者とならなかったことで歴史が変わっていく」というif物。

     しかし、変わったところで超人でも天才でもない主人公は歴史に大きく関与はできない。迷いながらも歴史が微妙に違うだけで、大筋では変わらないことを感じながら、自分に出来る限りのことで受動的な立場から次第に能動的になっていく。

     俺様最強の二次創作が多い中、小説として読み応えある作品。同盟の登場人物も見方を変えればこういう評価になるかもしれないという納得感もある。
     

  • 所謂、「時間遡行」ものの変異型といえる作品。
    主人公である「遡行者」が過去の自分に戻ったととるか、別の並行世界の自分になっていると解釈するかで意味合いが変わってくる。前者の場合は原作世界の「別解釈」で後者の場合は「再構築」といえる。その当たりは著者は明確にしていないので読者が解釈するしかない。
    ただし遡行者的の体感的には過去のやり直しを「別の形」で作品世界を追体験していることになり、どちらのケースであっても主人公は大局に関与できていない為にさして違いのあるものはない。

    作者の作風的に「別解釈」であれ、「再構築」であれ、ストーリーの本筋を大胆に改編するタイプの作品ではないため例えば、ラインハルトが途中退場するか、同盟が勝利する的なものを期待する読者にはお勧めできかねる作品であり、それを許容できるのであれば良作といえる作品である。

    その意味で読者を選ぶ作品である。
     

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