つぶやき

ボーンアックス
 
神座廻り―――ポーズトレスのイラスト、描いてみた(麟斗)
ボーンアックスです。

 今回はとあるADVのCGの、ポーズをトレスし自分のキャラに置き換えたイラスト・第二段です。
 ―――はい、懲りずにちょっと続けて行こうと思ってます、このシリーズ。
 癖の強い馬鹿(エッ がウチには多いので、理を考えやすいのも一端を担ってますが……。

 また某ゲームが何かは……鋭い人は、タイトルとポーズだけで何のゲームか分かると思います。
 まぁ、推奨BGMを調べれば、誰でも普通に分かっちゃうんですけど……。

  注意事項としましては
 ・イラストだけじゃあれなので、原作通り―――小っ恥ずかしいオリジナルの碑文、及びそれを読んだ者の感想もあります。
 ・長いです、ご注意をば
 ・中二全開と言うか常識全壊というか、非常に痒くなりそうなので、苦手な方は更にご注意を。

 そのほか……とある『厭魅凄艶』と言うBGMを合わせれば、より雰囲気がでる……と思います。

 また、話の前後の『世界』に繋がりは有りません。
 統治後の世界観に合わないじゃないか! と言う突っ込みはご遠慮ください。

 宜しい方は↓へ↓へ








………………



 階段を下り、次の階に踏み入った―――俺は思わず、一歩立ち止まってしまった。
 何故だか体が急に、本当に急に、酷く重たくなったのだ。
 それは宛ら、許容量を超えた石材を、脈絡無く身体へ乗っけられた様だと感じる。

 一体何なのかと辺りを見渡せば……其処の階は灰色に彩られている事に、まず気が付く。
 しかし……何でだろうか。また体が重くなった。
 正確に言えば灰色だと認識した刹那、まるでそう感じた事自体が『罪』だとでも言いたげに、重みと言う名の『罰』を科せられたよう。

 理不尽だと思いつつよく、よーく部屋を見てみれば、僅かながらに『茶色』掛った配色となっている事に気が付く。
 要するにこの部屋は灰色なのではなく、茶がかった灰色の部屋らしい。
 …………不思議だ。
 今度は、体が軽くなった。
 しかも部屋に入る前の状態まで戻ったみたく、重みが嘘のように取れちまった。
 でも……灰色の中に隠れそうな茶色を認識しきれなくなると、また其れなりに重くなってしまう。

 これは、一体どのような理なのか。


 中央の台座には、男の像が据えられている。





 恐らくは俺よりも若い。現状、歴代の神座に付いた男達の中でも、一番若いと言って良いかもしれない。
 青年寄りの少年、と呼べるだろう。
 その口は固く結ばれていて、与えられた苦痛に耐え忍んでいるとも、それら“何か”に対して怒り、反発しているようにも思える。見るな、俺を見るんじゃあ無い、そう叫んでいる様に見える。
 しかし……一方でじっと見ていると、何処か自分を見て欲しいとも、触れあって欲しいとも訴えている様で……。

 ―――台座の碑文には、こんな事が刻まれていた。


『その者、記憶をつなぎ二度の若き日を経験した特異な存在なれど、得た物は苦痛一色しか存在しておらず、その事に耐えがたい怒りと屈辱を覚える

 一度目の若き日は冷淡、冷血、若干の冷酷、まるで氷河の上部へ座するが如く、凍えそうな家庭の中にいた 
 生んだ、だから育てよう、殺生は良くない、食事と睡眠がとれれば良い、其れで子は育つ
 子を授かっておいてその実、彼自身を見ていたのではなく、子どもと言う存在にしか眼を向けていなかったのだろう
 だが無知とは酷く恐ろしい物で、つまり、彼はそれを苦痛と思わなかった
 ……これはこれで“温かみ”があると言える。俺にとってはこれこそが家庭の“温かさ”なのだ

 そう信じて疑わず、また疑念を抱こうとも鋼鉄の蓋で押し潰し、視界に入って居ながらにそれを無視し続ける。
 もしかすれば少年は、この状況はもう手遅れなのだと……吹雪からは抜け出せないのだと、既に気が付いていたのだろう
 なればこそ、スズメの涙にも満たぬ“温かみ”を求め、一滴の希望にすがったのかもしれない
 しかし……報われる事無く、本人すら知覚できぬ異変を持って、彼の一度目の若き日は終わりを告げた

 二度目の若き日は、一度目とは打って変わって、いっそ驚愕するほど大切に育てられ、愛を育まれた
 正しく彼の求めていた“温かみ”そのものが発露したかの如き家庭―――されど“偽り”の幸福は、そう長く続かない
 彼等は皆、一度目と同じように……いやそれ以上に、彼の事を見ていなかったのだ
 父は言う―――自分は正しい、絶対的に正しい、道を外れるな、外れた物は潰されても文句は言えんのだ
 母は言う―――貴方は私の理想通りに育ってほしい。勉強? 特訓? そんな事どうでも良いから恋をしろ、と
 妹は言う―――彼は拳を浴びせかけ、罵倒してくるが、その実自分に恋慕して仕方ない、本当に死ぬ程好いているのだ、素直に慣れないだけなのだと
 幼馴染は言う―――そんなの気に入らないから、嘘や偽りを許せない、お前のそれだけは絶対に
 知人は言う―――嫌悪している? 違う違う、彼ら家族は、友人は、ただ仲が良いだけなのだ

 彼等に共通して言えるものを上げるなら……それは皆正しく自分の抱く理想像が、現実だと思い込んでいる事。それが全くの誤解であり、真実の“彼”は全く別の所に有るなど、知る由もない
 それでも彼は理解しようとした、せめて自分だけはと理解しようとした
 そして感じる彼等の後悔、友愛、懺悔……真実とは、一歩大きく踏み込む際に掛る重圧とは、まるで身体が石になったが如く重いのだと知った
 真を知るという事は故に重く、そして辛く―――だから人は虚ろに逃げるのか、と
 彼は理解したからこそ、己の真実をさらけ出す事を止めなかった

 されど家族の、愚かな妄執による押し付けは―――とある事件により顕現した六“体”の化物の影響でより悪化する。
 なまじ女の姿をしていた所為か、母の恋愛中毒は悪化し、女に甘過ぎる父は一層彼に厳しくなり、妹は自分の妄想が現実化したのだと只騒ぐ
 秘めたる力に気が付かず、この世ならざぬ者等が具現した影響で、個々の妄言は酷くなっていく

 唯一寄り添ったのは、奇しくも六“体”の魔物が内一体、彼に味方した黒衣の少女のみだった
 彼女だけは彼と話をし、その中で得た真実を心にしまい、彼自身を透明な瞳で見続けてくれていた
 それでも、味方一人では焼け石に水
 途方に暮れたその時―――少年は自分の身体の中にも、魔物の力が宿り眠る事実に気が付いた
 ……これが有れば彼女達を降せる。少年はその武を振い、意志を持つ破壊から救おうと討伐に乗り出す

 されど、世界はまたも彼を裏切った
 洗脳した者達を助ければ、大合唱の如くこの上ない悪罵を投げつけて来る
 剣の元から人を逃がせば、美しき騎士から遠ざけてくれるなと蹴り飛ばされる
 四方に広がる陣を消せば、女型の化物に同情した男達が激昂し暴力をふるう
 ……少年は怒る―――実際に彼女等は世界を壊している。なのに、何故受け入れようとしない
 楽だからか。真実を知り心が痛むのを避ける為に、己の失敗を認めない為に、重みから逃げるのか

 家族からの意見も、何も変わらない
 お前は“愚かな人間”ではなかった筈だ、貴方は“恋する人間” の筈よ
 彼女達は可愛いから心も綺麗なの、あなたは“こんな人間” じゃない筈、脅威だと嘘を突くな、君は“そういった人間”の筈でしょ
 ……少年は嘆く―――何故皆、見姿だけで決める? 自分が思った事が常に正しいのだと思い込める?
 “そういう人間”?“こんな人間”? それはお前らの中だけの事、俺の本質じゃあないだろうが
 知ることが怖いのか……真実を、結果と言う名の“重み”を背負う事がそんなにも嫌か

 偽りばかりを見るんじゃあ無い、そんな甘軽い戯言を抱くぐらいなら、俺にすらも目を合わせるな
 真実の重みに耐えられず、盲想という軽い思いに頼ってくれるな
 周りにだっている筈だ、己の本音の曝け出せず周りが責めるからと、己もまた合わせるしかない人間が
 本当の“善”はどちらなのか、言い出せず口籠るしかない人間―――重さに耐える人間が
 必要なのは尤も重き真の筈だ、常に軽き偽りなど役にも立たない……現に俺は絶望の水底に居る。
 そんな孤独の淵に居る彼は、とある一つの、途轍もなく並はずれた提案を思いつく

 ―――皆が本質と言う名の重みから、目を背け逃げようとするのなら、重みへ眼を向けられる意志を、軽さを捨てられる強さを植え付けてやれ

 その方法を模索し続け、彼は遂に座と言う最上の場を見つけ出す
 陸獸の牙を携え、黒衣の少女を傍らに置き、彼は先代へ激を叩き着け―――思い通り、その座へ付いた
 ここで彼等にとっては予想外……そして座にとっては当然の事象、彼の渇望が流れだし世界を変えてしまったのだ。茫然と眺めるだけの彼らに、しかし止める術など、もう残ってはいなかった

 そうして広がった世界は、有体に言えば人の“本質”が強く出る世界
 こうだから大丈夫、きっとこう思ってくれている……そんな楽観的な考えなど人は一切持たなくなり、探り疑うようになった
 また耳心地よい偽りで取り繕わず、自分の有りのままを曝け出す。それを誰も咎めない
 詰まる所、本音と疑心の飛び交う世界であり―――皆自分にとって心地良い人や場所だけを求め、視界の端に映る有象無象とは、深く管をつながなくなった

 俺は俺を見て欲しかった、真実に目を向けて欲しかった、ただそれだけだった
 真は必要、それは正しい―――しかしそれに固執するな。緩やかな偽りもまた、必要不可欠なのだから
 どうか全ての人間よ、願わくばこの先……俺を永劫見つめないでくれ

 “これぞ彼の成した理、彼の代の座、彼の背負った真実の総てである”』


「……」

 何と言うか、かなり複雑な心境になる。
 座についておいて何言ってんだと、随分と自分勝手な奴だと思う半面……周りの家族や知人達も余りに押し付け過ぎだろ、と感じてしまう。

 二回も記憶の繋がった生を受けて、その二回とも碌に自分を見てくれない奴らばっかり。
 しかも一回目は動物そのものみたいなあり方で、二回目はほぼ自分達の妄想を愚直に信じ過ぎる。
 見る限りでは、六体―――いや五体の敵は本気で世界を壊そうとしていたみたいだし、そのために頑張っている自分を『思いこみ』で否定され続ければ、まあ確かにねじくれ曲がるかもな。

 それに……コイツの望みは、自分の真実を見て欲しかっただけ。
 この部屋のように注意深く見れば『茶色』が混ざっているのだと、つまり『真実』が解るようにじっくり付き合って欲しかっただけだ。
 他人がどうこうってのも書かれてたが、それにしたって、やっぱり自分の願いが一番最初に来てた。

 多分、座の仕組みをよく知らないまま、自分の好きな法則へ塗り替える為だけに来たんだろう。
 先代に持ちかけるも話を聞かなかったモノだから、自分で変えるべく打ち倒して……座を交代してしまった訳だ。
 そうして広がったのは疑心暗鬼真っただ中な世界
 しかも座なんてとんでもない位置まで辿り着いたもんだから、恐らく傍にいた黒衣の少女とやら以外は、もうコイツを見る事も感じる事も……理解する事すらも無くなったんだ。

 食い違い過ぎた世界が生まれたのだし、この理がそう長くは続かなかったのは明白だ。
 恐らく辿り着いた次代に、渋ることなく即刻、座を譲ったかもな。

 そんな感想を胸に抱き、俺はその部屋を後にした。









―――いかがでしたでしょうか?

 名を付けるなら、『我真推重』と言った所でしょうか。
 
 えーと……では! また次回!
ボーンアックスでした。