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くらいくらい電子の森に・・・
第十章 (2)
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がとな兄さん」
「…流迦ちゃんは、少しは落ち着いたけ?」
父は僕のために、一言だけ聞いてくれた。…聞きたい事はもっといっぱいあった。流迦ちゃんはどうしてるのか、もう泣いてないか。…叔父さんたちは、流迦ちゃんに優しくしてあげてるのか。僕のそんな疑問は、叔父さんが発した一言で全て、崩壊した。

「勘当したがよ。あげな気狂い、家に置いたらとんだ恥さらしだがね」

父が言った通り、僕ではなく父に散々謝罪の言葉を述べて、叔父は帰った。襖を開けると、父は卓に置かれた南部鉄の灰皿に、短くなった煙草を押しつけているところだった。…無駄に礼儀正しい父が、見送りにも出ないなんて珍しいこともあるものだと思った。
「…流迦ちゃん、どうなるん?」
「わからん」父はセブンスターの尻を指でとんとん弾いて一本取り出し、火をつけた。
「僕、全然怒ってないが。流迦ちゃんだけが悪いんじゃなかよ。叔父さん、ないごて、あげないみしこつ言うがね!僕、叔父さんに言ってやるが!」
父は僕を手で招くと、僕の頭をがしがし揺さぶった。父にそんな風に触られたことがないので混乱したけど、これは褒められてるんだな、と思った。
「堪忍せぇ。あんしは、やっせんぼじゃき…」
そう言って、手を引っ込めてぼんやり空を見つめた。
「わしも、じゃ。…あん娘がいっでん苦しか思いしとるごつ、知っとったが」
まずそうに、紫煙をたらたらと零すように吐き出した。
「ぐらしかなぁ…流迦ちゃん」

以後、流迦ちゃんの行方を聞くことはなかった。



「…とまあ、これが僕が知る限りの流迦ちゃんに関する『事件』の顛末、さ」
長い話を語り終え、柚木の方に首を傾けると、柚木は悩ましげに額に手を当てて考え込んでいた。僕と目が合うと、すっと小さく手をあげた。
「はい、柚木くん」
「…えー、分からないことが二つあるんですが、いいでしょうか」
「一個一個、分かりやすく質問してね」
「では一つ目。…話の所々に差し挟まれる呪文の意味が分かりません」
「失敬な!九州の南に位置する某県の方言を呪文呼ばわりするのか!」
「まじで!?…姶良、よくこの短期間でこっちの言語をマスターしたね。今少しだけ尊敬したかも」
「とうとう外国人扱いか失礼な奴め。…で、その方言のせいで、この話のどこを理解できなかったのかね」
「…いや、ざっくりとは理解できたんだけどね」
「じゃ、ノープロブレム。…あ、これは英語ね」
「分かってるわよ。…で、二つ目の質問だけど」
「はいはい、分かりやすく明確にね」
「…この話の中で、姶良のどこが悪いの?」
そう言われて、一瞬まごついた。
「わ、分かりやすく明確にって言ったじゃないか」
「これ以上明確な問いはないでしょ?叔父さんが、地元票を有利にするために、娘を姶良に無理やり嫁がせようと
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