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神の子は世界を巡る《緋弾編》

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第Ⅴ章 熾る不死鳥
  第027弾 「襲撃」

 
 2013年 4月 13歳
 ──居鳳町──

 遠くで輝く光に、見覚えがある。俺が人口天才として教育を受けて居た時に幾度となく目にした兵器。猛禽類の愛称を持つステルス戦闘機──F-22。通称、ラプター。

「っ────く、ぅ────」

 血の気が引く。
 全身に悪寒が走る。
 身体を恐怖が支配する。

 何時もなら、絶対に逃走するであろう敵。
 鴉との戦闘で満身創痍の俺では、確実に殺されるであろう科学の怪物。

 だが───逃走は許されない。

 アレは俺を狙っている......しかし、今の俺に逃走先は一つしかなく、そこにはリサが居る。そしてアレは、ほぼ確実に転移(逃走)した俺を追ってくる、なら────

「────逃げられないよなッッ!!」

 ボロボロの身体に再度〝喝〟を入る。
 まだ、致命傷は一つも負っていない。ならば──問題は無い。幾つか身体機能が下がっていようと、動けない訳では無いのだから。

「さて──どうぶっ壊すか」


 □ ■ □


 現在確認できる敵戦力は、ラプターが二機.。それ以外は何も存在しない、と思う......現状ではだが。

「うわぁ......ラプター二機とか。一個人に投入する戦力じゃないだろ」

 正直笑えない......だが、言って現状が変化するわけでも無い。敵は俺を殺そうと刻一刻と迫ってくるのだから。
 なら、まずは武装の確認と────

「っ────!!」

 と、対策を建てる前に、思考が打ち切られる。
 本来、俺の知るラプターの性能なら俺の場所まで辿り着くのに、もう少し時間がかかるはずだった......が───

 ───現状は真逆。
 ラプターは目と鼻の先まで迫り、既に中距離空対空ミサイルが発射されていた。ラプター二機が放ったミサイルの総数は八。だが──このレベルならギリギリ対処できる。

「っ......! はぁあああああ!!!!」

 銃弾の速度では間に合わない。
 ──なら、銃弾を撃ち出すのではなく、転移させる事でそのロスタイムを埋めよう──

 ────爆発による衝撃が周囲の空間を揺るがす。
 転移した一発の銃弾が、ミサイルと激突する。ミサイルが起爆し、その衝撃で近くを飛んでいた残りの七弾も、ドミノ倒しの様に──連鎖的に爆発して行く。

 ──まだだ。一個人に対してここまでの戦力を投入してくる相手が、そう簡単に事を運ばせてくれる訳がない──

 最悪なことに、その予感は的中する。
 ミサイルの爆炎の奥に、多数の小さい〝死〟を直死の魔眼が捉えた。自身の知っているラプターの情報で、考えられる武装はただ一つ──M61A2機関砲。

「────っく!」

 転移を発動しながら、必死で体をひねる。
 座標移動の転移には残念ながら、一秒以下のタイムラグが生じる。本来なら問題無いのだが、あの機関砲に対してはそんな悠長な事は言っていられない。当たってしまえば......即、人間蓮根だ。

 機関砲によって数多の銃弾が放たれ、その初弾が───回避行動をとっている俺の胸に着弾する。

「っ────が、ぐぅ───!!」

 呼吸が止まる。
 今まで辛うじて動いていた肺が、機能を停止する。が──その痛みと同時に座標移動が発動し、体が機関砲の猛攻から逃れる。

「ぁ───、く───」

 転移し、ラプターと離れた距離は500m。相手にとっては一瞬で詰められる距離......。なら、何よりも優先するべきは肺の再起動───。本来、こんな状況じゃなければ絶対にやらないが......まぁ、仕方ない───

 先ほど受けた銃弾と同レベルの衝撃──全力の拳を胸に......より正確に言うなら肺に打ち込み、無理やり動きを再開させる。

「っ───がぁ、ぅ───」

 衝撃で、血が口から漏れる。
 痛みで泣きそうだ......が、俺が今涙をこぼして、止まる訳にはいかない。敵機──二機のラプターは俺を絶対に逃がさないと、今も標準を俺に合わせている。

「───、───」

 手榴弾のピンを抜き、コックピットの中へと直接転移させ......確実に命を奪う───

 ───轟音が鳴り響く。
 手榴弾を撃ち込んだラプターは爆炎を上げ、墜落して行った。

「は──ぁ、───残り一機!!」

 今までの戦闘行動で乱れた息を整え、次の行動に移る。
 武器として使うのは今さっき破壊した、ラプターの破片。それを破損していないラプターの目の前に転移する。

 目の前に出現した破片を回避する為に、ラプターは機体をずらし避けようとする────が

「───じゃあな、馬鹿」

 回避の為の無理な向き変更で、ラプターの速度が一瞬(・・)だけ落ちる──だが、それで充分。ラプターのエンジン部にある死点を正確に狙い、そこに銃弾を放ち、同時に座標移動で鉄矢を撃ち込む。

 しかし、それを許すほど敵は甘くはない。
 ラプターに搭載されている機関砲のみをこちらに向け、銃弾をばら撒き俺を殺そうとする。──が、俺の座標移動(ムーブポイント)の方が一瞬早い。

 機関砲から銃弾が放たれる前に、転移された鉄矢が着弾する。そして、ラプターは轟音と爆炎を巻き散らかし、空中で爆散した。

「っ───く、ぅ──。これは......不味いな」

 戦闘行為の緊張で忘れていた痛みが再度、体に襲いかかる。脇腹から流れる血と、脳が焼けるような痛みをどうにかしないと。

「はぁ──有言実行って難しいんだな」

 このザマじゃ、今日中にリサを救うのは無理っぽいな。体を治すのに何日かかることやら。
 
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