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ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~

作者:enagon
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第2章 滅殺姫の憂鬱と焼き鳥の末路
  第26話 GETだぜ!




 今俺は絶体絶命な状況に陥っている。それは社会的にも、そして貞操的にもだ。

 場所は女子更衣室、使用不可と張り紙が貼られているロッカーの中、そこで俺は息を潜めていた。……黒歌姉と一緒に。

 そしてマズい事に黒歌姉は息を荒げて顔を赤くしつつ俺に抱きついてきていた。興奮していること丸分かりだ。しかもいつも隠している猫耳と尻尾まで出してしまっている。こんな状況、外で着替えている3年女子たちに見られたら大変だ。のぞきに加え幼馴染の先輩にコスプレさせる変態だと思われちまう。この状況は非常にマズい。

 そもそもこんな事になったのは松田と元浜に紳士のVIP席とやらに誘われたのが原因だ。それが女子更衣室のロッカーの中だと分かってすぐに俺は前回のお仕置きを思い出し反対したんだけど

「おっぱいがいっぱいなんだぜ? ……本当にいいのか?」

 などと言われてしまい、抗いきれずにVIP席に入っちまった。そして待つこと数分、ついに更衣室を使いに女子が来たんだけど

タッタッタッ……バン!

 やって来たのはなんと黒歌姉ただ一人、どうやら1人走って先に来たみたいだ。そして対面の松田と元浜の入っているロッカーまで一直線に向かうと

ドゴンッ!

 2人の入っているロッカーへ激しいパンチ! 扉が歪んで開かなくなっちまった!

「ひぃぃぃ!」

「あ、姉御! 許し……」

 2人の命乞いが聞こえるけど黒歌姉は構わずロッカーを殴り続け、ついには2人の声は聞こえなくなった。そして2人を沈黙させた黒歌姉はこっちを向き

ガチャ

「や、やあ黒歌姉、奇遇だね」

 や、やっぱりバレてた。仙術を使える黒歌姉から隠れるなんて出来るわけないし。昔から隠れんぼしたりしても絶対見つかるもんな。……先に走って1人だけ来たのも俺らがいるって結構前から分かってたからか? なんでよりにもよって黒歌姉のクラスののぞきに誘ったんだ松田、元浜!

「……にゃん♪」

 黒い! 笑顔が黒いよ黒歌姉! さよなら火織。どうやら俺はここまでのようだ……。などと思って、観念して目をつむったんだけど

パタン ぷにょん

 ……え? な、何だ今の音? それに何やら胸に柔らかい感触が……? 恐る恐る目を開けてみるとそこには……

「にゃん♪」

 ロッカーの扉は閉められ目の前には至近距離に顔を赤くした黒歌姉が! おまけに狭いロッカーの中だからほぼ抱きあうような状態で、黒歌姉の全身が密着しちまってる!

「く、黒歌姉! なn「シッ!」……」

 黒歌姉が口に指を当てて静かにするようジェスチャーすると同時に

ガチャ

『あれ? 神裂さん先に行ったと思ったのにいないよ?』

『え? お姉さまいないの?』

『お手洗いにでも行ったのではないでしょうか?』

 先輩たちが来ちまった!

「(ふふ、イッセーったら前あんなにお仕置きしたのにまだ懲りてなかったのかにゃ?)」

「(い、いや黒歌姉、俺は……)」

「(ねえイッセー。イッセーはお姉さんたちの着替えをのぞきに来たのかにゃ? それとも……私の着替え?)」

ザラッ

 !? く、黒歌姉に首筋舐められた!? 舌がザラッとした感触なのはやっぱり猫又だからか!? ってそうじゃないよ俺! っていうかなんだこの状況!? ロッカーの外では先輩のお姉さま方が着替えていて、ロッカーの中では黒歌姉と密着してるって一体どこのゲームだ!? まるっきり龍巳の好きなシチュエーションじゃねえか! 俺も好きだけどさ! っていうかさっきから黒歌姉が俺の体に全身を擦りつけて来るんですけど! おまけにずっと首筋をピチャピチャと舐められててさらに息を荒げてる! 黒歌姉興奮して、いやもしかして発情してるのか!? や、やばい、このままじゃ俺の理性が……ってヤバッ!

 俺はあることに気付き慌てて、でもさり気なく腰を引くけど……

ニヤ

 だから笑顔が黒いって黒歌姉! なんかさっきより黒くない!?

「(ねえイッセー)」

「(は、はい! なんでしょう!?)」

「(どうして腰を引いたのかにゃ?)」

「(な、なんのことでしょう?)」

「(ふーん、誤魔化すんだ。じゃあ聞き方変えてあげるにゃ。どうして前かがみなのかにゃ?)」

「(それ質問の意味一緒だよ黒歌姉)」

「(なんだ、ちゃんと分かってるんじゃない)」

「(……あ)」

 しまった、俺嵌められた? 黒歌姉は俺の耳元に口を持って行き

「(ねえイッセー、すっきりしたいかにゃん?)」

「(な、何言ってんだよ黒歌姉!?)」

「(分かってるくせに。私が女になってイッセーが男になる、ただそれだけのことにゃん)」

チロッ

 うあっ……首筋に加えてさらには耳まで……

「(ねえ、イッセー)」

 黒歌姉、そんな耳元で息をかけられながら喋られたら俺の理性が……。でもその次に聞こえた黒歌姉の言葉は

「(イッセーは私のこと……どう思ってるの?)」

「(!?)」

 今にも泣き出しそうに震えていた。

「(ねえ、イッセー……)」

「(黒歌姉、お、俺は……)」

パタン

 ! い、今の音は! ロッカーの隙間から外を確認してみるけど先輩たちは全員着替え終わったのか更衣室には誰もいない!

「ごめん、黒歌姉!」

「んにゃ!?」

 俺は黒歌姉を押しのけロッカーを飛び出し更衣室から駆け出す。あ、危なかった。危うく状況に流されちまうところだった。黒歌姉のことは嫌いじゃないけどやっぱり俺は火織のことが好きなんだ。だからこんな中途半端な気持ちのまま黒歌姉に手を出したくない! そんなことをしたら後で絶対黒歌姉のこと傷付けちまう! ……でも今のも十分傷付けちまったかな? 放課後部室で顔合わせづらいな。こんなことになるんなら松田と元浜の誘いに乗るんじゃなかった。







 剣道部の部活が終わった後調子が悪いと言って帰ろうとしたんだけど、漫研が終わって迎えに来た龍巳と白音ちゃんに無理やりオカルト研究部の部室まで連行されちまった。部室にはもう黒歌姉がいて、いつも通りに振る舞ってはいたんだけど……やっぱりちょっといつもと違うな。部長たちは気付いてないようだけど幼馴染の俺や姉妹の火織たちは気付いてる。火織は普通に疑問に思ってるみたいだけど……龍巳と白音ちゃんはこっち睨んでるな。こいつら何かあれば全部俺のせいとか思ってないだろうな? まあ今回は俺のせいなんだけど。……とにかく後でどうにかしよう。

「さて、全員揃ったわね? 今日はいつもの仕事はお休みにするわ」

「お休みですか? 何かあるんですか?」

「ええ。そろそろ新人の皆には使い魔を持ってもらおうと思うのよ。皆問題なく契約を取って来れるようになったしね」

「使い魔ですか」

「ええ。あなたとイッセーには少々特殊とはいえ使い魔がもう既にいるけれど、黒歌に白音、それからアーシアにはいないでしょう?」

 確かにそうだな。火織には俺が上級悪魔になるまで龍巳が使い魔で付いてるし、俺にもレイナーレがいる。まあこちらもそのうち使い魔でなくなると思うけど。となると普通はどうやって使い魔を持つのか今から見ておく必要があるな。

「あ、部長、悪いんだけど」

「あら? どうかしたの黒歌?」

「もう私と白音には使い魔がいるにゃん」

 と言った黒歌と白音の腕の中にはそれぞれ黒と白の子猫がいた……って、え?

「あ、あなた達いつの間に……?」

「この間学校帰りに捨てられてるところを保護しました」

「なんか昔の自分たちを見ているようで放っておけなかったにゃ。で、思わずその場で契約しちゃったにゃ。やり方はイッセーがした時の見て覚えてたし」

「っていうか私も知らなかったんだけど」

「ん、我も」

「あれ? 姉様たちにも言ってませんでしたっけ?」

「はぁ……、いい? あなた達は力はどうあれまだ駆け出しなんだからそういうことは主の私にひとこと言いなさい?」

「ニャハハ、それはすまなかったにゃ」

「すみませんでした」

「次からは気を付けなさい」

「そういえば部長、部長の使い魔はどんなのなんですか?」

「私のはこれよ」

 そういうと部長の手元に赤いコウモリが現れた。

「私のはこれですわ」

 そう言った朱乃さんの足元には……鬼? いや、大きさ的には小鬼か?

「僕のはこれだよ」

 そう言う木場の肩には小鳥がとまっていた。

「あの、それでその使い魔はどこに行けば手に入るのでしょう?」

 この中で唯一使い魔を持っていないアーシアが部長に聞いた。

「ふふ、心配しなくても大丈夫よ。これから皆でアーシアの使い魔をゲットしに行きましょう」

 そう言って部長と朱乃さんは魔法陣の準備を始めた。







   ☆







 今私たちは魔法陣を介して悪魔が使役する使い魔がたくさん住み着いてるらしい森に来ているにゃん。確かに周りにはいっぱいの気配がするにゃん。そして私達の目の前には

「俺の名前はマダラタウンのザトゥージ! 使い魔のことならなんでもござれ、人呼んで使い魔マスターだぜぃ!」

 ……龍巳と白音が好きなアニメでこんな人いなかったかにゃ?

「ザトゥージさん、今回もお願いするわ」

「お久しぶりなんだぜぃリアス姫。一気に眷属が増えたみたいで何よりだぜぃ。この子たちに使い魔をゲットさせればいいのかな?」

「いえ、実は少々事情があってこのアーシア以外の子はもう使い魔を持っているのよ」

「ほう? それはなかなか優秀なんだぜぃ。 へい! そこの少年! お前はどんな使い魔をゲットしたんだぜぃ?」

「えぇと、俺が使い魔にしたのは彼女です」

 そう言ってイッセーはレイナーレをザトゥージさんに紹介したにゃん

「……どうも」

「……おいおい少年。こいつは堕天使じゃないかぃ。俺も長年いろんな使い魔を見てきたが堕天使を使い魔にした悪魔は初めて見るぜぃ。一体どうやった?」

「あ~、そこはいろいろ事情がありまして……」

「まあ深くは聞かないぜぃ。ここにいるってことは上にもちゃんと通してあるみたいだしな。だがな少年、あまり他の悪魔には言いふらさないほうがいいかもだぜぃ? 無用な争いを生む可能性がある」

「はい」

 この人言動と格好はふざけてるけど意外としっかりしてるにゃん。

「じゃあ次にそっちのかわい子ちゃんたちは……その肩に乗ってる子猫ちゃんたちでいいのかな?」

「はい、そうです」

「そうにゃん」

「そっちの2人はその耳と尻尾から判断して元猫又かなん? なるほど、元猫又なら使い魔に猫は相性抜群だぜぃ! 使い魔は主人との相性も大事だからな!」

 そう言うと今度は火織の方を向いたにゃん。

「それじゃあ最後にそこのポニーテールのかわい子ちゃん。君は一体何を使い魔にしたのかな?」

「私はこの娘です。今は仮ですけど」

 そう言って今度は龍巳を彼の前に出したにゃん。

「ほう、これまた可愛い……!?」

 あれ? ザトゥージさんいきなり真っ青になったにゃん? ……ってまさか

「おいおいこれは一体どういうこった!? なんでこいつがここにいる!? 一体どうやって(ウロ)b「「「「ダメ!!」」」」……!?」

 私たちは慌ててザトゥージさんの口を塞いだにゃ。まさか気配遮断を行ってるのに龍巳の正体に気付くとは思ってなかったにゃん。

「ザトゥージさん、あなた龍巳の正体が分かるんですか?」

 口から手を離すと火織がザトゥージさんに聞いたにゃ。

「あ、ああ。昔一度だけ遠目に見たことがあるんだぜぃ。当時は今よりもっと幼かったがその容姿は忘れないんだぜぃ? っていうか龍巳って、もしかして名前を変えたのか?」

 なるほど、龍巳の姿を見たことがあったから分かったのかにゃん。

「ザトゥージさん、龍巳がなんていうドラゴンだか分かるの? この娘達何回聞いても教えてくれないのよ」

「あ~、この娘たちが隠してるんなら俺の口からは言えないんだぜぃ。ただ言えるとすればこいつは存在自体が凄まじいんだぜぃ」

 よかった、黙っててくれたにゃん。正体を明かせば無用な混乱が生まれそうだからおいそれと明かせないにゃん。

「黙っててくれてありがとうございます、ザトゥージさん」

「な~に、いいってことよ。ここにいるってことは何かしらの事情があるんだろうし、おいそれと明かしていい正体じゃないってことも理解できるんだぜぃ? それに……」

 にゃ? ザトゥージさんが龍巳の顔を覗き込んだ?

「いい目をするようになったんだぜぃ? 昔見た時は何も無い空っぽな目をしてた。今は幸せそうな目をしてるんだぜぃ? 昔の姿からは想像できないくらいだぜぃ?」

 そう言われると龍巳は普段なかなか見れない満面の笑顔で答えたにゃん。

「ん、我今すごい幸せ。家族ができたから」







 その後部長たちからもう何度目になるか分からない追求をされたんだけど、今回もなんとか最後まではぐらかしたにゃん。正直話していいのか私達には判断がつかないにゃん。……これはお父さんとお母さんが帰ってきたら相談したほうがいいかにゃん?

「さて、話が逸れちまったが今日はそっちの金髪のかわい子ちゃんの使い魔をゲットしに来たんだったな? 君はどんな使い魔がご所望かな? 強いの? 速いの? それとも毒持ちとか?」

「あの、出来れば可愛い使い魔なんかがいいんですが……」

 何というかアーシアらしい選び方にゃん。ってあれ? なんでそこでレイナーレが前に出るにゃん?

「それもいいけどなるべく強い使い魔をこの娘に付けてくれないかしら? この娘戦うことが出来ないからいざというときはこの娘を守ってくれるような」

「レイナーレさん……」

 確かにレイナーレの言う通りある程度アーシアの護衛も出来る使い魔の方がいいかもしれないにゃん。

「OK! 強くて可愛い使い魔だな! 1つ心あたりがある。とっておきの場所に案内するぜぃ!」

 そう言ってザトゥージさんは森の奥に歩き出したにゃん。龍巳の正体知ってたりレイナーレに関して的確な判断ができてたからこの人は頼りになるかもしれないにゃん。







 しばらく歩くと目の前に泉が現れたにゃん。

「この泉にはウンディーネという水の精霊が住み着いてるんだぜぃ」

 へぇ、ウンディーネ。結構有名な精霊だにゃ。精霊なんだから可愛いだろうしザトゥージさんが勧めるくらいだし結構強かったりするのかにゃ?

「見ろ、泉が輝きだした。ウンディーネが姿を現すぜぃ!」

 そして泉から確かにウンディーネらしきものが現れたんだけど……なんにゃあれ? てっきり女性のようなほっそりとした精霊かと思いきやどう見ても水浴びに来た格闘家にゃ。あれが女性とか信じたくないにゃ。

「喜べかわい子ちゃん。あれはなかなかレア度が高い。打撃に秀でたウンディーネも悪くないぜぃ」

「悪いよ! ウンディーネっつったらもっと儚げな可愛らしい精霊だろ! なんだよあの筋肉!?」

「うーん、最近縄張り争いが激しくなってきたから、あのくらいの腕っ節がないと自分の泉を確保できないんだぜぃ? いざという時かわい子ちゃんを守れると思うしあれはお勧めだぜぃ?」

「あの、出来ればもう少し可愛いのがいいんですが……」

うん、私もそう思うにゃ。







蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)?」

「そう、蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)。その名が示す通り蒼い雷撃を放つドラゴンだぜぃ」

 あの泉を離れ、次の使い魔候補を探す道すがらレアなドラゴンの話を聞いてるにゃん。なんでもこの森の奥にそのドラゴンが飛来してるらしいにゃん。ドラゴンを使い魔にするなんて難しいんじゃないかと思ったけど、なんでもそのドラゴンはまだ子供でゲットするなら今しかないらしいにゃん。アーシアも子供ならとやる気になってるにゃん。

 ということで私たちは今森の奥に蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)を探しながら進んでるんにゃけど

「待て」

 急に先頭を歩いていたザトゥージさんが立ち止まったにゃ。どうしたのかと思い前方を見てみるとガサガサと前方の藪が揺れてるにゃん。あそこに何かがいるんだろうけど……おかしいにゃん。仙術で探ってもまったく気配がしないにゃん。白音に目線を送ってみたけどどうやら白音にも気配が感じられないみたい。私達にも気配が感じ取れないって……もしかして相当やばい奴があそこにいる? そう思い身構えた途端それは現れたにゃん。巨大な体、それを支える膨大な筋肉、猫耳と尻尾に……今にも張り裂けそうなゴスロリ服?

「にょ?」

 にゃんだ……あれ?

「「「「ミルたん!?」」」」

 ミルたんって……この娘たちが前言ってたあのミルたん!?

「にょ? 悪魔さんだにょ? こんなところで奇遇だにょ?」

「いやいや、こんなところで何やってるの!?」

「魔法少女には魔法生物がつきものにょ。今日はそれを探しに来たんだにょ。最近悪の組織との戦いが激化してきたからどうしても必要なんだにょ」

「そ、そうか。頑張ってくれ」

「にょ。悪魔さんもまた会おうにょ」

 そう言ってミルたんはまた藪の中に入っていったにゃ。

「ねえイッセー」

「何ですか? 部長」

「イッセーの契約者って皆あんな感じなの?」

「まああれはかなり強烈な部類ですけど……だいたいあんな感じです」

 同意するように龍巳とレイナーレも頷いてるにゃ。

「そう……ごめんなさいイッセー、この間は努力が足りないなんて言って。どうやらあなたに来る依頼は他に比べて難易度が高いみたい」

「部長! 分かってくれて嬉しいです!」

 イッセー涙ぐんでるにゃ。

「そうそう悪魔さん」

 んにゃ!? ミルたんが戻ってきた!?

「今度悪魔さんが紹介してくれた友達と会うことになったにょ」

「そ、そうか、まあ仲良くしてやってくれ」

「もちろんだにょ」

 そう言ってミルたんは今度こそ私達の前から姿を消したにゃ。

「あ、あれはなんだったんだ少年? 新種の猫又か?」

 あんなのと一緒にしないで欲しいにゃん。







「見ろ!」

 あれからしばらく森を進んだところでザトゥージさんが何かを発見し指さしたにゃん。そこには

「運がいい。早々に見つけることが出来た。あれが蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)だぜぃ!」

 へぇ、あれが蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)。確かに大きさはオオワシくらいだから子供みたいにゃん。あのくらいなら確かに可愛いしアーシアの使い魔にはいいかもしれないにゃん。……でもそれより気になることがあるにゃん。私は妹たちに目線を向けてみるけど……うん、3人とも気付いてるみたいにゃん。どうやら私達何かに完全に囲まれてるにゃん。さっきからずっとこっちを伺ってる感じだったけど立ち止まったことで一気に近付いて来たにゃん。

蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)、私も見るのは初めてよ」

 他の皆は……気付いてないわね。

「ゲットするなら今しかないぜぃ? 大人になったら手に負えないからな」

 ……あれ? 周りを取り囲んでる奴らの気配、前にどこかで……。あ、そうか、こいつら。クク、いいこと思いついたにゃん。

「アーシア、あれ、使い魔にするにはいいんじゃねえか?」

「はいイッセーさん。私もそう思いま、きゃっ!?」

 おっと、第一陣がついに来たにゃん。空から女性陣に向けてネバネバした物体が降り注いできたにゃ。余裕で避けれるけど私は避けもせずわざとそれらを受けるにゃん。そして木の影からは触手が現れて私達を縛り上げたにゃ。んにゃ、ちょっと気持ち悪い。さらにネバネバが触れたところの服が溶けだしたにゃん。

「こ、これは、きゃっ!?」

「あらあら」

「な、なんなんですか~!?」

「こ、この! 離しなさい!」

 部長たちは普通に捕まってるにゃん。……この程度に遅れを取る主で大丈夫かにゃ? まあそれはともかく私も悲鳴を上げとこうかにゃん?

「んにゃぁぁぁ(棒)」

「きゃーーーー(棒)」

「ヌルヌル~~(棒)」

 ってなんで龍巳と白音まで捕まってるの!?

「(ちょっと! なんであんたたちまで捕まってんのよ!?)」

「(それ、我のセリフ)」

「(……皆考えることは一緒ですか)」

 ああもう、せっかくイッセーにあられもない姿見せて誘惑した後あっちこっち触られながら助けてもらう計画だったのに!

「こいつは服を溶かすスライムに女性の分泌物をすする触手なんだぜぃ。こいつらはよくコンビを組んで行動するんだぜぃ?」

「マ、マジか!? そんなスライムと触手が!? ……はっ!? じゃあ火織もこいつらの餌食に!?」

 ってそれはまずいにゃん! 火織まであられもない姿になってたらイッセーの視線が全部持ってかれるにゃん! 私は慌てて火織の方に視線を送った。そこでは

「……あはは」

「な、なんで火織にはスライムも触手も襲いかかってないんだ?」

「さ、さあ? なんか私が近付くとこいつら逃げるんだけど」

「そ、そんな……」

 なんか火織は襲われもせず普通に突っ立ってるにゃん。そんな姿を見たイッセーは地面に膝をついちゃったにゃん。

「(な、なんで火織は襲われてないにゃん?)」

「(……多分魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)持ってるせい。魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)の持ち主、ある意味魔獣の王。本能的に逆らわない……かも?)」

「(まあこれでお兄ちゃんの視線は独占されないので不幸中の幸いです)」

「とりあえずイッセーは黒姉たちを助けてあげなさい。私は部長たち助けるから。祐斗も私と一緒に……って1人後ろ向いて何やってんの?」

「いや……」

「あ~、見ないようにしてんのね。紳士ね祐斗。イッセーはガン見してるっていうのに。じゃあ私部長たち助けてくるから黒姉たちは任せたわよイッセー」

 ナイス火織! 当初の予定とちょっと違っちゃったけどこれでイッセーを誘惑できる!

「んにゃぁ、イッセー、早く助けて」

「ん、助ける」

「早く助けて下さい、お兄ちゃん」

「お、おう、で、でもあのその……」

「ってなんで目を逸らすにゃ!?」

「いやだってさっきよりさらにいろいろ丸見えに……」

「イッセー、こういうの好き」

「いや、そうなんだけどさ……」

「どうでもいいから早く助けて下さい」

「っていうか俺は誰から助けりゃいいんだよ!?」

「私!」 「我!」 「私です!」

「同時なんて無理だ!」

 ああもう早く助けてよ! 昼間のこと気にしてるの!? ……それとももしかして本当に私のことなんてどうでも……。

「んにゃ!?」

 ってそんな事言ってるうちに触手がパンツの中にまで入ってきた!? さ、さすがにそこはダメ!! しょうがない、こうなったら自分で……って振りほどけない!? この触手、思ってたより硬い!? あ、それ以上先に進んじゃホントに、ホントにダ……

「黒歌姉!!」

 にゃ? イッセーがパンツに入ってた触手を引き抜いてくれた?

「待ってろ黒歌姉! すぐ助けるから!」

「……イッセー、なんで? 私のことなんてどうでもいいんじゃ」

「んなわけあるか! とにかくじっとしてろ!」

 そう言ってイッセーは私に絡みついてる触手と格闘し始めたにゃ。

「……イッセー、私……私ね」

バリッ

「にゃ?」

バリバリバリバリバリッ!

「うぎゃああああああああああああ!」

 にゃ!? スライムと触手もだけどイッセーも丸焦げに!?

クオっ

 ……蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)? 今のは蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)の雷撃? 見れば私に絡み付いていたスライムと触手だけじゃなく龍巳と白音に絡みついてた分まで黒焦げになってるにゃ。蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)はそのまま火織に開放された部長たちの方に行ってアーシアの肩にとまったにゃ。

蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)は外敵と思った相手にしか攻撃しないんだぜぃ。加えてどうやらその金髪のかわい子ちゃんが気に入ったようなんだぜぃ」

 って言ってるけどザトゥージさん、あんたも丸焦げにゃん。あんたも外敵認定ってこと? それに祐斗まで丸焦げにゃん。

 その後どうやら本当にアーシアは蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)に気に入られてようで、その場で使い魔契約を行ったにゃん。蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)も素直に従って、その場でアーシアにラッセーなんて名付けられたにゃん。一応めでたしめでたしなんだけど……イッセーと祐斗から微妙にラッセーに対して殺気が漏れてたにゃん。







その後部室に戻り、ラッセーは女性陣に順番に可愛がられてたんだけど、龍巳と火織のことだけ恐れてたのが笑えたにゃん。で、今私はそんな輪の中から抜けだしてイッセーの傍に来たにゃん。

「ねえイッセー」

「なんだよ黒歌姉」

「さっきなんで急に助けてくれようとしたのかにゃん?」

「そ、それは……あれだ、幼馴染なんだから助けるのは当然だろ?」

「ふーん、そう」

 私はそう言ってイッセーに抱きついて耳元に口を寄せたにゃん。

「お姉ちゃんの初めてを触手なんかに取られたくなかったのかにゃ?」

「な!?」

「ふふ、もしかして触手に嫉妬した?」

「ばっ!? そ、そんなわけ」

「ねえイッセー、昼間の質問覚えてる? 私知ってるんにゃよ? イッセーが私の気持ちに気付いてること」

「なっ!?」

 ふふ、イッセーったらすっごい驚いてるにゃん。

「気付かれてないとでも思った? 大好きな人のことなんだから分かるにゃん」

 そう言って耳元から顔を離し正面からイッセーの顔を見たら真っ赤になってるにゃん。

「黒歌姉、俺は……」

「もちろんイッセーの気持ちがどこに向いてるかも知ってるにゃん。だからまあ……質問の返事はまた今度でいいにゃん。でも……」

 そう言って私は多分赤くなってる顔で満面の笑顔を向けるにゃん。

「覚悟してなさいイッセー。今度は私があんたの気持ちをしっかりゲットしてやるにゃん」

 そう言った時のイッセーの顔は今までにないくらい真っ赤だったにゃん。


 
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