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『自分:第1章』

作者:零那
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『保育園』

0歳~5歳(就学前)迄の乳幼児が居る保育園。
あの...
子供大っっ嫌いなんですが...
前の施設から引き継がれてる筈やけど。
其れは、おかまいなし?

安全ピン、フェルト、裁縫道具を渡された。
名札マスコット作り。
キティちゃんの顔の形に切る。
パ-ツを縫いつける。
安全ピンを縫いつける。
名前を刺繍した体を顔に縫い合わせる。
途中、顔に綿を詰める。
縫い終わらせた。

どうなる自分。
そっちの意味でハラハラ。
ドキドキ。

保護所にいるとき、小学生男児に『多重人格』と言われた。
はい、そうですが。
普段は普通。
怒ったとき怖いって。
誰でもそのギャップはある思うけど。
それが零那は激しいらしい。
やから多重人格って言うたんやろうけど。
それで多重人格は違う。

其れが相当不安。
乳幼児と接する正しい方法とか知らんし。
前の施設でも幼児は言うこと聞かん怪獣やとしか思えんかったし。

保育園側に、職員は何も言うて無いんやろうな。
言うてたら実習なんか引き受けてくれん筈。
なんぼ手が足りん言うても、こんな危険な奴を預かってる大事な子供に関わらせたくないやん普通。
其の旨を自分で園長に話した。
『保育士を見て園児を見て、表情や態度を見て、
園児の気持ちを読みとろうと努力しつつ、自分なりに接してくれたら良い。
難しいこと考えず、まずは素直な心で触れ合ってみて欲しい。』

みたいなことを言われた。


最初は、5歳児。
就学前の年のクラス。
大体の言葉は通じる。
個性豊か。
自我がシッカリある。
衝撃的だった。
タックルされるし。
悠長で口達者に質問責め。

5歳ってこんなシッカリしてるん?
マセ過ぎな女児も居る。
母親の真似事なんかもしれんけど、男児をコントロールして片付けさしたり...
圧倒される。

迫ってくる子を勝手に分析してしまう。
幼児は素直過ぎて怖い。

不安とか、そんなん考える間も無く、幼児は屈することなく近付いてきては手を引っ張っていく。

怖いモノ知らずの純粋で無垢な原石達。

初日を終え、単純に『幼児ってすげーなぁ』ってのが率直な感想だった。
『幼児には不思議な魔力が在る』そう思った。

園長は微笑んでくれた。


何日かして次は4歳児クラス。
雰囲気違う。
それぞれに出来ること出来ないことがあって、互いに手伝い合ってたり...
温かみが増した。
5歳児は殆ど自分で出来てて凄いなぁって感心してたけど。
4歳児は助け合いが自然と出来てて愛しく感じた。



気性の荒い子と、おとなしい子がハッキリ分かれてて少し其れが心配になったりもした。
先生に逆らったり言うことを聞かん子も結構居たかな。


3歳児クラスは更にバラバラ。
まとまりゆうもんは無かった。

一番、自分にとって不安や恐怖を感じる歳の子。
精神を乱される歳。
関わるのが怖かった。
でも、園児はそんなこと知らずにまた手を引っ張っていく...

無垢な笑顔は素晴らしい特効薬。
問題起こすでもなく情緒不安定になることもなく、3歳児クラスも無事に終えた。


2歳になると体格の差も歴然。
言葉の発達の差も歴然。
同じ歳ってホンマ?
不思議なもんやなぁ。
なんか人間って凄いなぁ。

いろいろ、慎重になった。
遊び方も内容も変わった。
言葉も。
神経使った。
難しい歳なんやなって感じた。


0歳1歳は同じクラスだった。
オッチンできない子から歩いてる子。
ミルクの子から普通食の子。
正直、1年違いでこんなに違うんやなって衝撃だった。
産まれてから数年間で、こんなに変わるんやなって...
『成長』の凄さに唖然。
『人間なら皆が通る過程。私達も、こうして成長してきた。すごいよね。』
保育士が言う。
保育士の性格も違って見える。
乳児担当は穏和。


幼児担当はシッカリきっちりって感じ。
強く叱ったり優しく叱ったり、それは様々だったけど。
正しいやり方ってのも、その人その人の判断であって、決まってるわけでも無さそうだった。


一通り、クラスを廻ってみて、次どうしたいか聞かれた。
気になった子が居るから3歳クラスに行きたいと申し出た。
その子について園長と話す。
結果、行かして貰えることに。


陸君。
母親の送迎。
登園時、母親にバイバイする時は超笑顔。
教室に入ったら泣きそうなん必死に堪えてる。
淋しいの我慢してるんやろなぁって思った。
母親が迎えに来る。
超笑顔で飛びつく。
嬉し過ぎて泣きそうなくらいの笑顔で...
今現在、冷静に考えると、普通かもしれん。
母親と離れるのが淋しくて園ではずっと落ち込んでるって。

でも当時は『なんかあるんちゃん?』って疑ってしまってた。
『おうちで嫌なことある?』
『誰かに痛いことされる?』
とか聞いてしまってた。

実際、着替えるときに見える傷やアザが不自然で...
気になって気になって。
もし虐待なら...
どぉにかならんかな...


陸君は本当におとなしくて言葉を発することは必要最低限。
小さくて細い声。
守りたくなる。
泣きそう。


皆が外遊びでも陸君は中で1人。
自分が陸君と一緒に遊んだ。

普通なら、1人に付きっきりはあかんねやろうけど、園長に話してみた。

『気になるならとことん向き合ってみるのも良い経験になる』

許可をいただけた。
もう、何かを聞くのはヤメた。
そんなことより陸君の声を聞きたい。
あの可愛い笑顔を向けられたい。


本当になかなか声を出さない子。
凄く可愛い声を、初めてまともに聞けたときは感動して泣いた。

陸君がどこまでわかってたんかは知る由もないけど、実習終わりの前日。
帰り際に急に口を開いた。

『ごめんね、ありがとうね、うれしかったよ』って言ってくれた。
ビックリして、嬉しくて、言葉にならんくて、2人抱き合って泣いた。

迎えに来た母親はキョトン。
自分は陸君に鞄持っておいでって。
母親が『何か喋りました?』って。
咄嗟に『大丈夫です、嬉し過ぎての涙です』って。
母親は凄く優しく微笑んでくれて、飛びついてきた陸君の頭をナデナデしてた。

其れ見てまた涙。
悔いの涙。
母親を疑ったこと...


陸君が凄く愛しい存在になった。
またサヨナラが辛い。
明日も泣くやろな。
陸君と向き合った日々は人生の中で本当に大事な想い出。



最終日、お別れ会を全員で開いていただきました。
いろんなことをしてくれた。
いろんなことを言ってくれた。
いっぱい泣かされた。


みんな、それぞれ本当に良いところをシッカリ持ってる。
それが生かされてるのが凄いと思った。
園の方針もあるんだろうけど。
保育士さんの質が本当に良かったと思う。
だから園児達も素直に伸び伸びと自分らしく居られるだろうと感じた。


『子供が嫌いとは思えんかった』園長に言われた。

そういや...キライだと感じる事が無かった。

『貴女が子供嫌いになったキッカケは聞かないけど、それはきっと思い込み。安心しなさい。気になる子と、とことん向き合えるのは素晴らしいこと。子供が嫌いなら出来ません。』


最初は不安しかなかった。
嫌だった。
でも、そんなこと忘れてしまうくらい、夢中になってた。
施設に帰っても、日記では園児のことばっかり。
明日はどんな事が起きるかなってワクワクしたり。


言葉にすることは難しいけど、凄く凄く大事なことを学べれたと思う。
できるならマダ実習を続けたいと思ったくらい。

陸君、最後の最後に『また会おうね♪』って満面の笑顔で言ってくれた。
ズキュン!
恋??
嬉し過ぎて号泣...

 
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