ハイスクールD×D 『存在の消失~ Memory life ~』
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プロローグ
俺は真っ暗な夜の町で一人、道端に座っていた。
誰も近づいては来ないし、俺を探す人もいない。
なぜなら、俺には何もないのだから。
俺はたった一つしかない居場所である、家族に忘れられた。
ある日、高校から家に帰ると母親からあなたは誰ですかと聞かれた。
母親だけではなく、父親も、妹も、高校の友達ですら、俺のことを覚えている人はいなかった。
俺はその場から逃げた。
いや、逃げることしかできなかった。
こうなったのも全て、俺のある力のせいだ。
俺は昔からある力を持っていた。
その力を使うたびに、周りの人から俺という存在が消えていった。
ただ残るのは俺が持つ、唯一の記憶のみだ。
そして、今度はその力で全てを失った。
(もう……死にたい。…………これ以上誰かに忘れられるのは嫌だ)
俺は手元に剣を創り出して、自分の心臓に向けて近づけていく。
「何をしているんだい?」
目の前からそんな声が聞こえてきた。
「…………もう、死にたいんですよ」
俺は目の前にいる、紅い長髪の男性に向かってそう言った。
「良ければ訳を話してくれるかな?君がなぜ、泣きながら死にたいと言っているのかを」
「…………いいですよ」
どうせもう死ぬんだと思うと、最後ぐらいは誰かに話してもいいんじゃないかと思えた。
それから俺は紅い長髪の男性に全てを話した。
家族のこと、高校のこと、自分の力のこと、そして絶望していたことを。
「……そうかい。君の歳でそんなに辛いことが…………。もし、もしだよ?君がまだやり直したいと思えるのなら、これを君にあげよう」
そう言って男性が渡してきたのは、どこかの学校のパンフレットらしきものと家の鍵だった。
「これは?」
「ここの近くの家の鍵と、駒王学園の転入届けだよ」
「……何で見ず知らずの俺にこんなことをしてくれるんですか?」
俺は笑顔でそう言ってくる男性に対して、こう言い返していた。
「ほっとけないからだよ。君が絶望しそうなら私がその絶望を、希望に変えてあげたいんだ」
(なぜかはわからない。でも、この人の言葉を聞いていると自然にもう一度、やり直したいと思えてくる)
「……ありがとうございます。俺、もう一度やってみます」
「そうかい。ところで君の名前はなんというんだい?」
「俺は風鳴刀矢です。あなたは?」
「私はサーゼクス・ルシファーだよ」
俺は改めて、サーゼクスさんの顔を見た。
「君に一つだけ頼みたいことがあるんだけど、いいかな?」
「いいですよ。サーゼクスさんには助けてもらいましたし」
「よかった。駒王学園に入ったら、妹の部活動に協力してくれないかな?君の力のことは伏せておくとしても、妹達となら君は上手くやっていけるかもしれないしね」
「わかりました。サーゼクスさんの妹さんですね」
「君のことは私からも言っておくよ。あと君にも一つだけ話しておきたいことがある」
そう言ってサーゼクスさんは場所を俺の新たな家に移してから、ある話を俺にしてくれた。
サーゼクスさんはその話をすると、帰っていった。
俺が聞いた話はこの世界の裏の話だった。
悪魔、堕天使、天使、神、ドラゴン。
この世界にそのようなものまでいることに驚いていたが、サーゼクスさんが自分は魔王だと教えてくれたから信じられた。
(明日は駒王学園に転入か…………。きっと大丈夫のはずだ)
俺はそう思いながら、眠るのだった。
後書き
次回、一話『オカルト研究部と不死鳥』
誤字などがあればご報告ください
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