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インフィニット・ストラトス~IS学園に技術者を放り込んでみた~

作者:壬生咲夜
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本編
  第30話「お引越し」

 
前書き
すみません遅くなりました

話が進まない…
ネタが思い浮かばない…
どうしよう…
 

 
時は既に夕方。
一夏とシャルルの二人は夕暮れがさす校内を歩いていた。

いつもならまだISの訓練をしているのだが、今日は基礎訓練だけにしていた。
いや、今日に限っては多くの生徒が放課後の活動を早めに切り上げて部屋へと帰っていた。
なぜなら、二人の転校生が来たことによって、今まで溜まりに溜まっていた部屋替えの申請が一斉に行われることになったからだ。

相性の悪かったモノ、仲の良い者同士になりたかったモノと様々だが、出された申請の中で圧倒的に多かったのは織斑一夏との同室希望であった。
基本的に一人1回なのだが、少なくても3回は同じ人間が一夏との同室希望を出しているのだ。
因みに最も多かったのは武道を嗜む武道を嗜む黒髪ポニーとか、激マズサンドウィッチを作った金髪少女とか、ツンデレなニャン娘とからしい。

この時、部屋割担当をしていた教師(麻耶)は荒れに荒れたそうだ。
1つ1つ申請内容をチェックするだけならまだしも、同じ人が何度も同じ内容の申請を出していれば誰だってストレスがたまるだろう。
当の本には昔ながらの~と用紙での提出にしたことを心のそこから後悔していると後に語ったそうだ。



もっとも、いくら一夏との同室希望を出そうが、すでにそれが叶うことはほぼ無いといってもいいのだが…


「ねぇ、一夏。男子寮ってどんなところなの?」
「さぁ? 俺も山田先生に部屋替えの話を聞くまで全く知らなかったからな」
「え? そうなの?」
「ああ、俺は入学してからずっと箒の部屋で一緒に生活してたんだ」
「そ、そうだったんだ。大変だったんだね」
「そうなんだよ。初日なんて、箒に木刀振り回されて部屋を追い出されてさ。外に出たら出たで皆部屋着とか殆ど下着姿でほんと焦ったよ」
「……一応、そういう意識はあるんだね一夏」
「? 何がだ?」
「んん、なんでもない」


これまでの流れでわかると思うが、これから二人は男子寮で暮らすことになった。
訓練後、一度女子寮へと帰宅した一夏はあらかじめ纏めておいた自身の私物を回収し、別の場所にて荷物を預けていたシャルルと合流。
二人して案内役が来ることになっている場所へと向かっている途中だ。

因みに、その道中で同室だった幼馴染のポニテや同室希望をだしていた候補生とでもめ事をがあったがそこは割合する。
作者的にもメンドクサイ。


『っ教官!!!!』
『……はぁ、お前もしつこいなボーデヴィッヒ』


「っとあれは、ちふ――織斑先生と」
「僕とボーデヴィッヒさんだね。こんなところで何を…」

歩くこと数分、前方の中庭にて誰かが話し合っているのをみかける。
それが赤の他人ならば特に気にしなかったであろうが、その人物が1組の担任にして一夏の姉である千冬と転校してきたラウラの2名だ。
今朝のこともだが少々気になることもあり、取りあえず木陰に隠れて二人の様子を聞き入ることにした。


「答えてください教官!! なぜ、こんなところで教師など」
「…何度も言わせるな。私には私の役目がある……それだけだ」
「こんな極東の地で何の役目があると言うのですか!!」
「………」
「失礼ながら、調べさせてもらいました。ここにいる者の大半は毎日のように問題を繰り返してばかりではないですか」
「ああ、全学年主任並びに4組の担任は毎日のように苦労しているな(主に鏑木先生(3-4担任)が…)」


「そうなの一夏?」
「あ~、うん。昼間見たいのが日常茶飯事だな」
「うわぁ…」

一夏の言葉に顔を引きつかせるシャルル。
転校初日からあの様な騒動に巻き込まれ、それが一時的ではなくこれからも待ち受けていると思うと想像を絶するだろう。

「そんな者どもに教官が時間をとられるなど…。お願いです教官。どうか再び我がドイツで教鞭をとってください!!」


「……やっぱり」
「? 織斑先生ってドイツにいたことあるの?」
「ああ、前にちょっとな…」

一夏の脳裏に苦い記憶が蘇る。
自分のせいで千冬は―――

「……ドイツでの教鞭か、偶にあの頃を懐かしく思えるときがある」
「っ!! で、でしたら!!――「だがなボーデヴィッヒ」――っ」

千冬の呟きにチャンスとばかりに取り入ろうとするラウラ

だが――、


「私はここでの日々に充実しているのだよ」

そう続けて答えた千冬の顔は一夏ですらあまり見ることのない優しげなモノであった。



が――、


「ひじょ~~~~~~~~~~~~~~~に認めたくないがな」

続いて出た声と顔は本当に嫌そうなであった。


「っ!? 今日は引き下がります。ですが私は諦めませんので」
「そうか……」

今まで見たことのない千冬の表情に困惑と嫉妬とがごちゃ混ぜになったラウラ。
このままでは分が悪いと判断し、一度撤退することにしたらしい。

だが、残念ながらそうは問屋が許さない。


「ああ、そうだボーデヴィッヒ」
「なんでしょうか教官?」
「…ちょっとこい」
「?」

呼ばれて素直にトコトコと千冬の元へ向かうラウラ。

そして――


[スパンッ!!!]

「ハ゛ン゛ス゛ッ!?」

[スパンッ!!]

「レ゛ミ゛っ!?」

[スパンッ!!!]

「ヒ゛ト゛ラ゛ーっ!!??」

[スパンッ!!!]

「ハ゛イ゛ン゛リ゛ヒ゛っ!!??」

[スパンッ!!!]

「エ゛ーリ゛ッヒ゛っ!!!???」


「ここでは先生だと何度も言わせるな」
「っす゛、す゛み゛ま゛せ゛ん゛………」

「うわぁ…」
「五連撃とかひでぇよ千冬姉」
「ボーデヴィッヒさん泣いてない?」
「ありゃ泣くって…」

“教官”と呼ばれた数だけ出席簿で叩れたラウラ。
シャルルの言うとおり、彼女の眼元には薄らと涙が浮かんでいる。


「もういい。部屋に帰れ」
「し、失礼します。きょうk――「(スッ」――お、織斑先生!!」

再び“教官”と言いかけたところで出席簿(若干摩擦で煙が出てる)を構える千冬。
その姿をみて慌てて言いなおし、一目散に逃げて行った。

「…さて」

ラウラが逃げ去るのを見届けたあと、身体を大きく捻り(恐らく野球のフォーム)、

[ヴォンッ!!!]

遠心力と腕力にモノを言わせて手に持っていたソレを投げた(本人曰くストレート)

[ガッ!!!]

「「ひっ!!!???」」

そしてその出席簿(被害者たち曰く、その名を語った別の凶器)は、一夏達が隠れていた柱にめりこみ、その様子を一から見ていた二人は思わず悲鳴を上げてしまった。

「盗み聞きとはあまりいい趣味では無いな」

「「す、すみません」」

いつもよりもトーンが低い千冬に“これは不味い”と判断したのか、すぐ様に柱から出て謝る。

「ふん、まぁいい」
「なぁ、ちふ――「あ?」――織斑先生、今のって…」
「何でも無い。単なる昔話だ」

ラウラとの関係を問いかけるものの拒絶されてしまう。
恐らく一夏が考えている通りのことなのだろう。

「でも!!」
「……お前ら、ここで油を売っていていいのか? 確か集合時間はとうに過ぎていると思うが?」

なおも聞き出そうとする一夏であったが、ふと思い出したかのように話題を変える。

「「あ!!」」
「はぁ…ささっと行け」
「で、でも…」
「先輩を待たせるなんて非常識なマネするな」
「そ、そうだよ一夏」
「っ!? この話はまた今度な千冬n―[ブォンッ!!!]――あべしっ!?」
「い、一夏!!!???」
「連れて行けデュノア」
「イ、Yes, Sir!!!!!」」
「Ma'amだ」

慌てたせいか普段通りの呼び方をして出席簿を喰らってしまう。
同じく予想外の出来事の連続にてんぱってしまったシャルルは軍隊の敬礼をし、慌てて気絶した一夏を引きずり立ち去って行った。


「…で、お前はいつまでそこにいる近衛」
「ありゃ、やっぱりばれてました?」

二人が立ち去ってすぐ、先ほどまで一夏とシャルルが隠れていた柱の声をかける。
バサッと布切れが捲られた音が鳴り、そこから騒ぎの元凶とも言える問題児筆頭が姿を現した。


「ふん、いつもと違って、気配を適当に消してたら嫌でも気付く」
「その割には他の奴らは気づいてなかったようですけど?」
「ただ単に鍛錬が足りないだけだ」
「ハハ、厳しいですね~」

忍者みたいに保護色の布で隠れ蓑の術をしていれば普通は気付かない。
というか、千冬の口ぶりではいつもの連中のほぼ全員が気配を隠しながら逃げているのだろうか?

「そうだ近衛、お前に1つ聞いておきたいことがあった」
「何です?」

ふと思い出したかのように鏡也に声をかける千冬。

「お前は何故、IS学園(ここ)にいる?」
「そりゃ、IS学園ですからISの知識を学びに――「違うな、何故ならお前にはその必要が無い」――っ……」
「更識家の様に仕事でも、候補生のように国に命じられたわけでもない」
「………」
「答えろ。事と次第によっては…」

そう言い、普段のように出席簿を振り下ろすポーズをするのではなく、武術の構えをとる。

鳥の囀りさえ聞こえないほどに空気が張り詰める。
実際、千冬の闘気に当てられて逃げてしまっているのだろう。

「……それはですね」
「………」

ゴクリと唾を飲む音が異様に響く。

そして――、



「乙女のヒミツで~す☆」


「………は?」

あまりにも場違いかつ、いつも通りのふざけた答えに一瞬呆けてしまう。


「知りません? 人は秘密が多いほどより神秘的で魅力的に映るんですよ♪」
「…ようするに話す気は無いということか」
「ええ、今のところは誰にもね」
「その様子だと、布仏姉にも話していないようだな」
Exactly(その通りでございます)

なぜにドイツ語?

「……あまり秘密を抱え過ぎると、離れていくぞ」
「フフ、残念ですが本人から直接ずっと待ってるって言われてますので」
「はぁ……時折、お前らの関係が不思議に思えてならんな」
「フフン、自慢な彼女です。あ、絶対にあげませんので」
「いらん」
「は? あいつの何処に不満があるんですか?」
「…ホントに面倒なやつだよお前は…」

言葉の通り本当に面倒くさいやつだと言わんばかりの表情を浮かべるが、彼女の口元は本の少しだけ緩んでいた。


「きっちりかっちり話してくださいよ!!」
「あーもう、さっさと逝け」
「字が違います」
「いいから行け!」
「はいはい。わかりました」

そう言い放ち立ち去ろうとする鏡也。
千冬も同じようにこの場から立ち去ろうとするのだが、再び思い出したかのように鏡也へと振り返り声をかける。

「近衛」
「はい?」
今回の件(・・・・)、頼んだぞ」
「…了解」

そう言い、今度こそ二人は立ち去った。


【オマケ】
◆千冬の想い

「一夏…」
「千冬姉?」
「私が間違っていた」
「ど、どうしたんだよ急に」
「今更許してくれとは言わない……だがひとつだけ…頼みがある………」
「………」
「世界の全てを敵に回しても…私だけはお前の味方だ……だから約束してくれ………」
「……(ゴクッ」






「お前だけは染まらないでくれぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!!」



千冬の切実な叫びだった

◆部屋替えの手続き

とある日の夕方。
苦労人の称号を取得してしまった1-1の副担任こと山田麻耶は今度行われる一斉部屋替えの作業を一人で行っている。

「えっと次は…3組の飯泉さん! はい、織斑君。人気ですね~(カキカキッ……」

申請書に書かれた内容を読み、それを別の紙に記入する。
読み終えた申請書は右側に置き、今度は新たな申請書を左側からとり、また記入する。
この作業を彼女は延々と行っているのだ。

因みに、別紙に書かれた希望は一夏が多い様子。

「あ、布仏さんですね~。なになに~『このままかんちゃんと一緒がいい~』フフ、実名でって言ったのに何であだ名…しかも解り辛いので書いてるんですかね~」

内容自体は微笑ましいがこれでは相手が普通はわからないが、すでに相手と同室だとわかっているので、彼女の同室相手の名前を記入。

「次は~『簪ちゃんと一緒がいいわ!! これは姉として決して譲れないことよ!!』 あれれ~? 何で楯無さんのがあるんでしょう。嫌がらせですかね~」

その申請は問答無用でゴミ箱へポイしました。

「はい、次は……あ、篠之乃さんですか。はい、織斑君ですね~(カキカキッ」

開封するまでも無く、すぐに書類へと記入。
なお、申請書はそのままゴミ箱へ…。

「これで篠之乃さんは7回目ですね~。1人回って聞いてなかったんですかね? あ、こっちはオルコットさんと凰さんですか~。この二人は6回目、ハハ人の話全く聞いてませんね~」

またもや開けること無く記入していく。
麻耶の表情に苛立ちが混ざりはじめてきているのは間違いないだろう。

「4組の日向さん! え~とっ『かんちゃんと同室希望を出した奴はデストロイ!!』…アハハハッ、関係無いこと書くなーーーー!!!(ビリッ!!」

哀れ、日向とやらの申請書は微塵に引き裂かれた。

多少の苛立ちを抑えつつ、新たな紙へと手を伸ばす。

「あ、鏡さんですね。なになに『本音ちゃんと同室がいいな…』フフ、友達想いですね~っとこっちは谷本さんですか~。えっと『ナギ、抜け駆けは許さない』…ダ~カ~ラ~!!!!」(ビリリッ!!!

またもや申請書が――(略

「ハァハァ……次!! また、鏡さんですか? まぁ、何となく予想はできますが……『ご、ごめん癒子(汗』ほ~らね~!!(スパンッ!!!」

また――(略

「もう、なんなんですか皆して同じ人が織斑君との相部屋希望だしたり、関係無いこと書いたり、何か会話したり! もう、いい加減にしてください!!!!」

頑張れ山田先生!
半分まで来たじゃないか! 残り半分頑張れ!!

「頑張れじゃないですよ!! なんですかこの量は!! 全部重ねたら私の身長越してましたよ!! 苛めですか? 苛めなんですね!! あ~もう今夜も徹夜ですーーーー!!」

end

 
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