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保育園の先生

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第一章


第一章

                      保育園の先生
 その保育園は通学路にあった。だから毎日その傍を通りかかる。
「懐かしいな」
「そうだよな」
 そこを通る中学生の生徒達はかつて保育園に通っていた。彼等にとっては母校であるのだ。だからそこを通る時には笑顔になることが多かった。
 それは前川淳博も同じであった。彼はその保育園を見て笑顔になっていた。
「昔あのプールで泳いだよな」
「ああ、あのプールか」
 隣にいる昔からの友人が彼のその言葉に頷いていた。見れば保育園の広いグラウンドの一角に水色の場所がある。子供用の小さいプールだ。
「あそこでだよな」
「先生達に手を握ってもらってな」
「だったよな。それにな」
 友人は今度は滑り台を見ていた。他の遊ぶ器具もある。赤や青。黄色といった派手な色でペンキで塗られている。子供が喜ぶように派手にしているのだ。
「あの滑り台でも遊んだよな」
「だよなあ。校舎の中でもな」
 校舎は二階建てだ。そこに幾つか部屋がある。渡り廊下の手すりも奇麗に塗装されている。何もかもが子供に合わせた色になっている。
「遊んだよな」
「先生達もいい人達ばかりだったしな」
「そうそう」
 二人で思い出の話をしていく。
「ただな」
「ああ、年配の人ばかりだったからな」
「何でなんだ?あれは」
 このことも話すのだった。
「あれって」
「さあな。何でかな」
 友人は淳博のその言葉に首を捻った。
「あれは」
「今は違うかな」
 友人はふとこんなことも言った。
「今は」
「どうかな。奇麗な人いたらいいけれどな」
「そうだよな。若くて奇麗な人な」
「いるかな」
 そっと覗く。見れば今は子供達はいない。保育園が終わるのは早いのだ。
 それで先生達もいないかと思われた。しかしであった。
 校庭にだった。赤や緑のジャージを着た若い女の人達が出て来た。そうしてその校庭をトンボやローラーで整地しはじめたのである。
「あれっ、皆若いな」
「そうだよな」
 淳博も友人もそれを見て言う。
「先生達かわったんだな」
「そうみたいだな」
「まあよく考えたらな」
 ここで友人が腕を組みながら述べた。
「俺達が卒業してもう八年か」
「中二になったからな」
 淳博も年月について話した。
「もうそれだけなるよな」
「だったら先生が皆かわっても当たり前か?」
 友人は言った。
「やっぱりな」
「そうなるか」
「ああ、そうなるか」
 今度はこう述べたのだった。
「八年って長いしな」
「その間に先生が全員交代して」
「今はああした若くて奇麗な先生達だ」
 その校庭を整地している先生達である。どの先生達もかなり若い。しかも美人揃いだ。二人はそんな先生達を見て顔をうっとりとさえさせていた。
 そうしてだ。淳博はだ。
「特にな」
「どうした?」
「あの先生よくないか?」
 先生の中の一人を見ての言葉だ。見れば淡い茶色の髪を左右で赤いリボンで束ねた人だった。目は大きくはっきりとした顔をしている。先生だが何処か幼さも残している顔である。赤いジャージのズボンの上は白いティーシャツだがそこから胸がはっきりと出ている。その先生が明るい顔でいたのだ。
「あの先生な」
「あの人か」
「一番美人だろ」
 こう友人に言うのだった。
「あの中でもな」
「まあそうかな」
 友人の言葉は今一つはっきりしないものだった。
「確かに奇麗な人だよな」
「そうだよな。いけるよな」
「御前って年上趣味だったんだな」
 友人は彼の顔を見てこんなことを言った。
 
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