ソードアートオンライン〜黒き疾風〜
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護衛役との私闘
前書き
クラディールとの争いです
午前9時。今日の天気は薄曇りだ。
俺とキリトは74層の主街区ゲートでアスナを待っていたのだが…、
「来ねぇな」
「珍しいな。アスナが遅れるなんて」
待ち合わせの時刻から既に10分ほど過ぎている。勤勉な攻略組が次々とゲートから現れ迷宮区を目指して歩いていく。しばらくぼーっとしていると突然転移門内部に青いテレポート光が発生し
「きゃああああ!よ、よけてーー!」
通常ならば転移者はゲート内の地面に出現するはずの所が、地上から1メートルはあろうという空中に人影が実体化した。俺は咄嗟に避けたがキリトは避けきれず人影とぶつかり吹っ飛んで行った。
「や、やーーーーっ!!!」
突っ込んで行ったのはアスナか?キリトはアスナに殴られ吹っ飛んで行ったが…。アスナは両腕を胸の前で硬く交差している。
ははーん、これはキリトやっちまったな。
「や、やぁおはようアスナ」
んなことした後に手を閉じたり開いたりしてたらほとんど変態だぞキリトよ…。
そんなことを考えていると再び転移門が青く発光した。アスナははっとした表情で後ろを振り向くと慌てた様子で立ち上がりキリトの背後にまわりこんだ。
ゲートから現れたのは昨日少しいざこざのあったクラディールだった。
「ア…アスナ様、勝手なことをされては困ります…!」
はぁ、めんどくさそうだな…。
「さぁ、アスナ様ギルド本部まで戻りましょう」
「嫌よ、今日は活動日じゃないわよ!だいたいアンタなんで朝から家の前に張り込んでるのよ!?」
「ふふ、どうせこんなこともあろうと思いまして私1ヶ月前からずっとセルムブルクで監視の任務についておりました。」
「それ完璧ストーカーじゃん」
おっと、思わず本音が
「な…なんだと!!」
自覚ねえのか?
「良かったなぁ。ここが現実じゃなくて。そうじゃなきゃお前今頃警察の世話になってるぜ?」
「私の任務はアスナ様の護衛だ!それには当然ご自宅の監視も…」
「ふ…含まれないわよバカ!!」
その途端クラディールはいっそうの怒りと苛立ちの表情を浮かべ、つかつかとアスナに歩み寄ると乱暴にキリトを押しのけてアスナの腕を掴んだ。
「聞き分けのないことを仰らないでください…さあ、本部に戻りますよ」
抑えがたい何かをはらんだ声の調子に、アスナは一瞬ひるんだようだった。傍らのキリトにすがるような視線を向けている。
キリトはアスナと目があった直後クラディールの右手首を握り、街区圏内で犯罪防止コードが発動してしまうギリギリの力を込める。
「悪いな、お前さんとこの副団長は、今日は俺らの貸切なんだ」
よくもまあそんな臭いセリフを言えるもんだ。
「貴様ァ…!」
クラディールの表情にはシステムによる誇張を差し引いても、何処か常軌を逸した何かを感じさせるものがある。
「明日なの安全は俺らが持つよ。別に今日ボス戦をやろうって訳じゃない。本部にはアンタ1人で行ってくれ」
「ふ…ふざけるな!!貴様らのような雑魚プレイヤーにアスナ様の護衛が務まるかぁ!!わ…私は栄光ある血盟騎士団の…」
「アンタよりはまともに務まるよ」
言い過ぎじゃね?
「ガキ共ォ…そ、そこまででかい口叩くからには、それを証明する覚悟があるんだろうな…」
顔面蒼白になったクラディールは、震える右手でウインドウを呼び出すと素早く操作した。即座にキリトの前にシステムメッセージが出現する。
「いいのか?ギルドで問題にならないか?」
「大丈夫。団長には私から報告する」
キリトがYesボタンを押そうとしたとき
「あ、ちょっと待てキリト。俺にやらせろ」
ちょっとイラついてたとこだしな。
「え?まぁ構わないけど」
「アンタもそれでいいよな?どうせ俺ら2人とやりたかったんだろ?」
「いいだろう。先にお前を倒してやる!!」
俺の目の前にシステムメッセージが出現した。
『クラディールから1vs1デュエルを申し込まれました。受諾しますか?』
俺は即座にYesボタンに触れオプションの中から≪初撃決着モード≫を選択した。
「ご覧くださいアスナ様!私以外に護衛が務まる者など居ないことを証明しますぞ!」
クラディールは狂喜を押し殺した表情で叫び、芝居がかった仕草で腰から大振りの両手剣を引き抜くと、がしゃっと音を立てて構えた。
対して俺は腰にある刀に手を添えて構える。
「なんでサトシ君は剣を抜かないの?」
「ああ、アスナはサトシの戦い方をちゃんと見たことはなかったんだっけ。あいつの<黒き疾風>とは別のもうひとつの二つ名は知ってるか?」
「うん、<抜刀斎>でしょ?」
「そう、あいつはユニークスキル<抜刀術>を持っている。あれはその構えなんだ」
カウントを待つ間にも周囲にはギャラリーが集まっていた。
「ソロのサトシとKoBメンバーがデュエルだとよ!」
ギャラリーの1人が大声で叫び、ドッと歓声が湧いた。
カウントが進むに連れ雑音が聞こえなくなっていく。クラディールの構えを見る限り突進系上段攻撃の気配だ。まぁフェイクかもしれないが。
カウントが少なくなっていく。そして2人の間の空間に紫色の閃光を伴って<DUEL!!>の文字が弾けクラディールは読み通り両手剣突進系スキル<アバランシュ>を使ってきた。それに対して俺は構えたまま動かない。2人の距離が縮んでいく。それと同時に俺の感覚も研ぎ澄まされ加速していく。大きく振り後ぶられた大剣がオレンジ色のエフェクト光を発しながら俺に向かってくる。勝利を確信したクラディールの顔に隠せない狂喜の色が浮かぶ。
しかし俺は抜刀術ソードスキル<紫電>を発動。抜刀術のソードスキルは基本的に威力と速度は異常に高いが技後硬直が長い。<紫電>は抜刀術の基本技だ。ちなみに抜刀術の中にはる○うに剣心の技がある。茅場の趣味だろうか。俺の刀は青色の光を帯びながら、まだ降り途中で攻撃判定の発生する直前の奴の大剣に命中した。結果クラディールの剣が折れポリゴン片に変わった。
「まだやるかい?護衛殿?」
クラディールは体を細かく震わせながら
「アイリザイン」
と言った。直後開始の時と同じ位置にデュエルの終了と勝者の名を告げる紫色の文字列がフラッシュした。再びワッという歓声。
クラディールはよろけながら立ち上がると、ギャラリーの列に向かって喚いた。
「見世物じゃねえぞ!散れ!散れ!」
次いでゆっくりと俺の方へ向き直る。
「貴様…殺す…絶対に殺すぞ…」
その憎悪に染まった目つきを俺はしれっと受け流した。
呆れた。天下のKoBメンバーが逆恨みかよ…。俺がそんなことを考えているとスッと歩み出た人影があった。
「クラディール、血盟騎士団副団長として命じます。本日を以って護衛役を解任。別名あるまでギルド本部にて待機。以上」
アスナの声は表情以上に凍りついた響きを持っていた。あいつも苦労してんなぁ…。同情するよ。
キリトはアスナの肩に手を掛けアスナは小さくよろめくと、俺にもたれかかるように体重を預けている。
「………なん……なんだと……この………」
俺にはそれくらいしか聞き取れなかった。多分呪いの言葉的な何かをぶつぶつと呟きながら、クラディールは俺たちを見据えた。奴は予備の武器を装備し直し転移結晶で転移して行った。転移光が消滅した後の広場は後味の悪さが残っていた。時間が経つに連れギャラリー達は三々五々散っていく。やがて広場にいるのは俺たち3人だけになった。
やがてアスナが日頃の威圧感が嘘のように抜け落ちた声で囁いた。
「………2人ともごめんなさい、嫌なことに巻き込んじゃって」
「いや…俺はいいけど、サトシは?」
「俺も平気だ。どっちかっつーと俺から首突っ込んでったしな。ただまあ、アスナには同情するよ」
「それよりギルドの方は大丈夫なのか?」
「ええ。今のギルドの雰囲気はゲーム攻略だけを最優先に考えてメンバーに規律を押し付けていた私にも責任があると思うし…」
「それは仕方ないって言うか、逆にアンタみたいな人がいなかったら攻略ももっとずっと遅れていたよ。ソロでだらだらやってる俺に言えたことじゃないけど………いや、そうじゃなくて………だから、アンタもたまには俺らみたいないい加減なのとパーティー組んで息抜きするくらいしたって、誰にも文句言われる筋合いじゃない……と思う」
「俺も珍しくキリトに賛成だな。たまには息抜きしようぜ」
キリトが文句を言いたそうだったが気にせず俺はアスナに近寄りキリトに聞こえないぐらいの声で
「それに愛しのキリト君と一緒の方が楽しいだろ?」
と囁いた。それを聞いた瞬間アスナの顔は真っ赤になった。やはり人をからかうのは楽しいな。
「じゃあお言葉に甘えて今日は楽させてもらうわね。2人とも前衛よろしく」
「「ちょっと待て、前衛は普通交代だろう!」」
「あら、2人なら交代できるじゃない」
そんなたわいもないことを話しながら俺たちは迷宮区へと進んだ。
後書き
なかなか話が進まないですね。
感想アイデア等お待ちしております。
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