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東方鎧核~モノトーンプリンセス~

作者:松藻
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第1部「白黒の纏機編」
  第2話「どちらでもない者」

 
前書き
冒頭は追跡する、敵纏機視点から始まります。
この機体はガチタンではありません。
ギガンでもないですよー。 

 
今回の任務は重要な内容だった。
守す妖共和国の纏機技術向上を目指した試験機実地運用。
この「試験纏機ヘビオンナ」は自国生産纏機パーツ、頭部、胴部、腕部の運用データを取るため、回収纏機パーツは使用せずに組み上げた。しかし、脚部が間に合わず上半身部のみしか完成せず、大型車両上部に下半身部分を直結させ移動能力を付属させた。これは運動中のデータを少しでも取り、脚部パーツに活かす試みらしい。

我が国の焦りは、スカーレット帝国の纏機研究が確認された事とパーツに互換性があることを
知ってから始まった。
このパーツの互換性は纏機が兵器として非常に優秀だということを示していた。
戦況に応じてのパーツ変更は汎用性を向上させ、整備も複雑化せずにコストダウンに繋がるだろう。
スカーレット帝国もこの利点に目を付けたのだろう。

一刻も早い実用化、量産化が急がれ、この機体も河城主任自らが設計製作し、更に天狗を使わず、開発部である河童の私が運用試験をおこなっている事を考えると、我が国のかなりの焦りが伝わってきた。



頭部センサーのテスト、各種武器での射撃テストなど順調に試験内容をこなしていく。
しかし最終日に、アクシデントが発生した。
試験場周辺に大量の機械が降り注いだのだ。
機械の直撃自体は対処のしようはある。問題はその後、降ってきた機械を求めてやって来る回収屋《ハゲワシ》共だ。奴等にこの我が国の技術を知られるわけにはいかない。
この機体、ヘビオンナは下半身が、只の車両でありオリジナルの纏機より遥かに機動力は劣るだろう。
しかし、車両を使用した故の圧倒的武装積載量は正に、動く武器庫そのもの、遠距離、中距離、近距離に応じ武装を切り替えれば纏機ですら相手にできるだろう。
並の車両や兵器は一方的に蹂躙され鉄屑に変えるだろう。

そう、既に私は結論を出していた…
遭遇した回収屋《ハゲワシ》共は全員抹殺し、実戦データを河城主任に献上する。
さすれば、私の評価は鰻登りをし、この自国生産パーツ開発計画の中核に就く機会に近付くだろう。

車両部には大量の武器弾薬を搭載した。
右手には遠距離向けのスナイパーライフル、左手には中距離向けのHE弾ライフル、肩部にはミサイルを搭載した。
ハゲワシ狩りには十分過ぎる装備だ。




最初のターゲットは機械を回収中なのか止まっている。
これは準備運動に丁度良い。私は右手に持つスナイパーライフルの照準を車両に合わせる。
一撃で仕留める様に精密にヘビオンナの操縦をおこなう。
照準が合い引き金を引く。

バンという音とほぼ同時に標的の車両に大きな風穴が空き、火を吹き上げた。
無理もない。スナイパーライフルと冠してるが撃っている物は90㎜の徹甲弾だ。大型車両など空き缶を撃つ感覚だ。

撃ち抜いた車両から4名程出てくる。
接近し、すかさず左手のライフルを構える。

「哀れな野鳥共、おやすみ」

鈍い銃声と共に標的は爆発に呑まれていく。

その後も次々とハゲワシ共を狩り尽す。
手持ち武器や車両の取り付け武装で
抵抗を試みる者もいたが、手数と火力で此方が勝っている。
敵では無かった。


数えるのも忘れた頃、2台の車両を発見した。
先程墜ちてきた機械を争って居るのだろう。

照準を片車両に付ける。

銃声と共に呆気なく片側の車両は風穴を空け爆散した。

2両目に狙いを付けようと思った矢先
スナイパーライフルの弾が切れてしまった。

「はぁ…まったく」
ため息をつき、スナイパーライフルを地に捨てる。

車両部のクレーンが動きだし、貨物部分が開放される。
クレーンが貨物からショットガンを取り出し、右手に差し出す。
ショットガンを右手に持ち、動作をチェックする。

纏機の強みはパーツの互換性や運動性能だけでない。
武装を手持ち化することで、デッドウェイト化を防ぎ、
戦況に応じた武装で汎用性を大きく高めることができる。

纏機こそ次の時代のキーパーツになるだろう。と私は確信している。


2両目に接近し、照準を合わせる。
そこには車両武装部分で顔を出し、銃口を構える女が居た。
哀れな抵抗をすると呆れつつ、引き金を引く手前、モニターが女と車両を映し出さなくった。機体めがけて飛んできたのは大量のスモーク弾、私は苛立ちを覚えた。
「煙幕など小癪な!」

まぁいい。
煙幕が晴れた暁には車両は穴空きチーズのようにしてやる。

しかし、煙を映し出していたモニターは映像を途絶えさした。
「頭部センサーを破壊された?おのれ!」
奴等は煙幕を逃亡用に使ったのではなく、センサーを狙い撃つ為、動きを少しでも止める為に煙幕を使ったのだ。

我が国のヘビオンナが傷つけられた?
我が国の未来がかかったヘビオンナを?

私の未来がかかったヘビオンナを?

「ふざけるなよ…ハゲワシ…」

なによりも自分がこの罠にかかった事が屈辱であった。

猛スピードで逃げる車両。

胸部センサーに切り替え、逃げる車両を追う。
次こそ仕留める為に。

車両のスピードなどで逃げても、たかが知れている。
ヘビオンナの背部スラスターが火をあげる。
みるみる速度が上がり、地を駈ける速度が速くなる。

すぐさま逃げる車両を捕らえる。
ライフルを構え、射撃をおこなう。
高速移動の為、照準がうまく合わない。しかし、HE弾ライフルなら、かすっただけで、車両を横転させられるだろう。

器用に避ける車両だったが、車両が限界だったらしい。
HE弾の熱で後輪が破損し、バランスを崩し、奴等が追っていたであろう機械付近で大きく横転した。

残るは生き残りの処理と車両の完全破壊だけである。
ゆっくりと近付く。

致命傷を与えた狩人は焦らないのだ。

満を持して、車両に到着する。
車両には男がいるのみであり女は見つからない。
恐らく投げ出されてしまったのだろう。

そして、銃口を構える。

「終わりだよ…ハゲワシ」

銃口が火を噴き出す瞬間、私のヘビオンナは轟音と共に、何かに大きく吹き飛ばされた。

まるで大きな塊が激突したかのような衝撃しかし、空から降ってきた物が直撃するのとは違う。

私は衝撃でふらつく意識から回復し、土煙の中にいる私を吹き飛ばした物を目にした。

そこには巨大な巨人、鋼鉄の巨人、纏機が立っていた。
「なっ…て…纏機だと!?一体どこから!?」
私はとある事に気付いた。

降ってきた大きな機械が無いことに

「まさか…ハゲワシが纏機に乗っていると言うのか!?」

纏機が完全な状態で発掘されるなど、聞いた事が無い。
しかし、ここにあの忌々しいスカーレット帝国は居ない。
そして、落下地点に機械が無い。
そして、周辺には他ハゲワシは居ない。
そして、先程から死体が見付からない女。

あの私の目の前に立つ纏機
あの纏機は我が国にも帝国にも属さない機体。

そしてなにより
あれこそが、私のヘビオンナに2回も傷を付けた女が乗る、
私の憎きハゲワシである。

「私のヘビオンナの傷。報復は1つや2つでは済まさんぞ!」


私は銃口を構えた。





続く







 
 

 
後書き
次回「ムラクモ」



難産でした。纏機の説明やらをしたかったので少し視点を変えました。
次回からはまた魔理沙です。 
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