関西弁のイタリアン

　そしてだ、実際にだった。
　二人は顔を見合わせれば言い合うばかりだった、しかも何かとあれば顔を見合わせる、そして言い合う。そうした関係をだ。
　ヌッチはだ、困った顔になって言うのだった。
「これこそ運命の茶色い糸やな」
「全然有り難い糸やないな」
「汚らしいなあ」
「茶色って何やねん、茶色って」
「そこで普通は赤やろ」
「そんな糸願い下げや」
「いらんわ」
　周りもこう突っ込みを入れる、しかも一斉に。
　しかもだ、円も同じことを言う。そんな二人だった。
　このことについてだ、ヌッチはあくまで力説した。
「交際はないで」
「何でそこでインタヴューに答える形式やねん」
「自分芸能人かいな」
　またツッコミを入れる周りだった。
「というか全然余裕やな」
「何でもない感じやな」
「いや、余裕ないから」
　ここでこう返すのだった、彼は。
「これでもめっちゃ焦ってるで」
「ほんまか？」
「そう言うてさっきも円ちゃんと言い合ってたやろ」
「喧嘩する程っていうしな」
「それ考えたらな」
「そやからそういうのやないで」
　彼氏彼女ではないことはまた言うのだった。
「わい等はな」
「じゃあどういう関係やねん、具体的に」
「そこがわからんわ」
「喧嘩する程やないんか」
「ほんまにちゃうんか」
「わい等そう見えるんか」
　逆にだ、ヌッチは彼等に問い返した。
「交際してる風に」
「見えるから言うんや」
「実際にな」
「そうか？わいあいつのことはな」
「好きか嫌いかどっちや」
　クラスメイトの一人が彼にダイレクトに問うた。
「そい聞かれたらどっちや」
「二択かいな」
「そや、どっちやねん」
「そう言われるとな」
　ヌッチも困った、それで言うのだった。
「困るな」
「ほな嫌いか？」
　ダイレクトな質問も来た。
「それやったら」
「嫌いかっちゅうんか」
「具体的にはどうやねん」
「そう言われるとなあ」
「そもそも嫌いな娘とよく一緒におらんやろ」
「嫌いな奴と話なんかするか」
　売り言葉に買い言葉にだ、ヌッチはそのクラスメイトに反論した。
「わいは嫌いな奴と話したりせんわ」
「答え言うたな」
「いや、これはな」
「自分円ちゃん好きやねんな」
「好きやっちゅうてもな」
　それでもだと言う彼だった。
「彼氏とかそういうのちゃうからな」
「ツレやっちゅうねんな」
「そや、そういうものやさかいや」
　あくまでこう言うヌッチだった、それもかなり必死に。
「そこはわかっとくんや」
「わかったわ、まあとにかくや」
　クラスメイトは諦めずに彼に言った。
「これからも円ちゃんと仲よくな」
「それはするわ」
　こう話してだ、そしてだった。
　ヌッチは円とはよく話をした、そうしたことを続けていた。
　それでだ、その中でだった。円の方からだった。学校で一緒に食堂で昼食を食べている時にこうヌッチに言った。