ドリトル先生と伊予のカワウソ
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第一幕その七
「わかってきたかな」
「読んでいくうちにですか」
「うん、今回の論文も日本語で書いたしね」
「えっ、英語じゃなくて」
「そうだよ。日本語の文章でね」
書いたというのです。
「最初から最後までね」
「そうだったんですか」
トミーは先生のそのお話を聞いて目を丸くさせていました。そのうえで先生にこうも言ったのでした。
「先生って本当に凄いですね」
「いやいや、僕は凄くなんかないよ」
「凄いですよ、日本に来て間もないのに」
それでもだというのです。
「もう日本語の文章を書けるなんて」
「そんなにかな」
「先生って語学の才能凄いですよね」
「そういえば中国語もわかるよね、先生」
「書くことも出来るしね」
動物達もここで先生に言ってきます。
「あとフランス語やドイツ語も出来るし」
「イタリア語やスペイン語も」
「フランス語fがわかればね」
どうかとです、先生は動物達にお話します。
「イタリア語とスペイン語はわかるんだよ」
「同じラテン系だからですね」
「そう、それでだよ」
トミーにも笑顔で答えます。
「ラテン系の言葉はどれか一つを覚えれば後は方言みたいなものだからね」
「喋れるだね」
「先生みたいに」
「そうだよ、けれど日本語はね」
先生達が今いるこの国の言葉はといいますと。先生はどうにもという苦笑いになってそのうえでトミーと動物達に言うのでした。
「難しかったよ」
「僕も今勉強中ですけれど」
それでもだとです、トミーは困ったお顔で言いました。
「物凄く難しいですよね」
「そう、僕も苦労しているよ」
「けれどもう普通に喋られていますし」
日本人の様にです。
「論文まで書くことが出来て」
「だから凄いっていうんだ」
「本当に凄いですよ。先生語学者にもなれますよ」
そこまで凄いというのです。
「先生でしたら」
「ははは、僕を褒めても何も出ないよ」
「そういう考えで言いはしませんよ」
「それじゃあ純粋な、かな」
「僕が思ったことですから」
ただそれだけというのです。
「そういうのは求めないです」
「そこはトミーだね」
彼らしいというのです。
「本当に」
「僕ですか」
「君らしいよ。じゃあ君らしく」
「はい、今回はですね」
「留守番を頼むよ」
「任せて下さい、お家の中のお掃除もしておきます」
トミーが笑顔で先生にこう答えるとです、動物達がここぞとばかりに明るく言ってきました。
「そうそう、むしろトミーの方がなんだよね」
「お掃除とか出来るからね」
「家事だってね」
「先生そっちはさっぱりだから」
「そうしたことはやっぱりトミー」
「トミーは安心出来るから」
だからだというのです。
「トミーだったらね」
「留守番も任せられるよ」
「私達がいなくても大丈夫」
「先生と違って」
「やれやれだね。僕は本当に頼りなく思われてるんだね」
先生は動物達がまたこう言ったのを聞いて実際にやれやれといったお顔になってそのうえで言うのでした。
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