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フロリロール

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2部分:第二章


第二章

「神様?それともニンフ?」
「実は人間なんだ」
 アポロンは思い詰めた顔のままそれも述べたのだった。
「名前はフロリロール。知ってるかな」
「フロリロール!?ああ、彼女ね」
 アフロディーテはその名を聞いて納得したように頷いた。彼女がフロリロールを知っているのはその仕草から明らかであった。
「彼女だったの。可愛いから当然ね」
「それでなんだ」
 あらためてアフロディーテに言う。
「告白したくてもできなくて。どうすればいいかな」
「上手くいくわよ」
 アフロディーテはにこりと笑ってこう言ってきた。
「安心して。それは確かよ」
「そうなのかい!?」
「私は愛を司る女神。こうしたことは全て私の中」
 そのにこりとした笑みで語ってきた。
「だから。任せておいて」
「愛の女神にだね」
「そうよ。誰かが誰かを愛するというのは当然のこと。それが神であってもね」
「それじゃあ僕は」
「ええ。胸を張っていいのよ。ただ」
「ただ?」
 アフロディーテがここで言葉を変えてきた。アポロンはそれに気付き声をかける。
「何かあるのかい?」
「あるわ。恋にはつきもののことが」
「それはまさか」
 アフロディーテが何を言いたいのかわかった。アポロンも顔を曇らせる。
「どんな結果になっても。後悔はしては駄目よ」
 彼女はアポロンの顔をじっと見詰めて言ってきた。
「いいわね、それで」
「うん」
 アポロンもそれに頷く。彼も覚悟を決めたのだった。
「それでもいい。それじゃあ教えてくれ」
 アフロディーテに頼み込む。どうすればフロリロールの心を手に入れられるのかを。
「僕は・・・・・・どうすればいいんだ?」
「青い太陽の花を彼女にプレゼントするの」
 こうアポロンに言うのだった。
「青い太陽の花を!?」
「そうよ。それを最初に彼女にあげれば彼女は貴方に永遠の愛を誓うようになるわ」
「フロリロールが僕を」
「いい?それでね」
 アフロディーテはさらに言ってきた。アポロンもそれを聞く。
「最初によ。それが果たせないと彼女は貴方のものにはならない」
「終わりなんだね」
「ええ、わかったわね。青い太陽の花よ」
「それを最初に彼女に捧げれば」
「彼女は貴方に永遠の愛を」
 その言葉を聞いた。アポロンはそれからずっと青い太陽の花を探した。しかし花は中々見つかりはしない。まるで幻の中にあるように見つかりはしなかった。
「青い太陽の花」
 自分の神殿の中で休むアポロンはその名を一人呟いて水を飲む。喉の渇きは癒されたが心の渇きは癒されない。普段は落ち着く筈の神殿の中も落ち着きはしない。
「何処にあるんだ、それは」
 それが何なのかさえもわからない。あてもなく探し続け気ばかりがはやる。神といえどどうにもならないまでの心の乱れようであった。
「何処に」
「アポロン様」
 そこに彼を心配してやって来た者がいた。忠実な従者である烏だった。
「お話は聞いていますよ。青い太陽の花ですよね」
「そう、青い太陽の花なんだ」
 アポロンは神殿の奥で石の椅子に座って項垂れていた。しかし彼の言葉に顔を向けて応えた。表情も項垂れて暗く沈んだものになっていた。
「探してもない。何処にあるのかさえも」
「青い太陽の花」
 烏はここで考える顔をアポロンに見せてきた。そのうえで呟いた。
「ひょっとすると」
「心当たりがあるのかい?」
「ひょっとするとですよ」
 そう主に断る。
「あの花かな、って思うんですよ」
「あの花って」
 その言葉を聞いて半ば無意識のうちに身を乗り出していた。そうして烏に問う。
「どんな花なんだい!?教えてくれ」
「少し待って下さい」
 烏はこう答えてきた。焦る主に対して彼は穏やかな顔をしていた。
「その花を持って来ますので」
「うん、頼む」
 アポロンは烏にその花を持って来てくれるように頼んだ。それから暫くして烏は青く小ぶりな、丸い花を持って来たのだった。アポロンはその花を見て言った。2
「その花がそれなのか」
「野原の片隅に咲いていたんです」
 烏は主にその花を差し出して言った。
「まだ生まれたばかりで広まってもいないみたいですけれど」
「そうなのか。それで見つからなかったのか」
「多分。そうだったかと」
「名前もないのかい?」
 アポロンは今度は花の名前を問うた。しかし烏はこの問いに首を横に振った。
「わかりません。生まれたばかりですから多分」
「そうか。何もないんだな」
「そうなんです。けれどアポロン様」
 烏はまた言った。
「これをその人に差し上げればそれで」
「そうだ。それじゃあ」
「すぐに行かれるといいです」
 急かすようにして言う。アポロンもその花を受け取って頷く。そうしてそのままルーマニアのフロリロールのところへ向かうのだった。
 
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