『自分:第1章』
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『遊鬼』
休日、バスでは無くて途中迄自転車で行った。
自転車は駅に停めた。
なんとなく、いつも行かん処に行きたかった。
でも、電車では無く、バスで行く。
其処で、遊鬼と名乗る偽名の男に出逢う。
『暇?』
『いえ、バス待ち...』
『まだやろ?ちょお来てや』
『えっ!』
腕を捕まれてトイレに連れ込まれた。
田舎やから、人は...まばら。
助かる余地は無い。
早くイッてくれたら...
乱暴にはされんかった。
おとなしく従ったから?
かと言って、気持ちいいわけでもない。
性行為そのものが屈辱でしかない事に変わりは無い。
休みの日は、施設に居たく無くて、フラッシュバックやリストカットも増えてて泣いたり叫び狂ったり、情緒不安定で...
異常な自分が更に異常になるのを実感してた。
いろんな事がありすぎて...
いろんな事を思い出しすぎて...
家庭内だけではなく...
いろいろ、辛かった。
誰かが必要だった。
誰かに必要とされたかった。
今思ったら、そんな感情が強すぎたんやと思う。
だから、遊鬼の『付き合ってや!これ携帯!』って渡された紙を受け取ったんやと思う...
後日、指定された場所に向かう。
色々話して似た境遇の育ちだった事も解った。
だから?同情?
自分がされたら嫌なくせに?
いや、単なる同情では無い。
あわれみでもない。
『ほんの少しでも救えるなら、出来ることなら何でもする』
そんな気持ちしか無かった。
だって、結局、自分達みたいな人間の行き着く先って...
特別に賢い人間ならまともになるんかもしれんけど...
やから周りも『施設出身者は無理』とか『これやから施設育ちは...』とか言うんやろうし?
施設に対する差別が確実にあるのは事実だった。
遊鬼の仕事は、裏の仕事。
零那も良く知ってる悪行だった。
遊鬼は『俺らみたいなんは生きる術が此の世界なんや。女は体売ってなんぼやしな。』って、諦めたような、哀しそうな顔で言った。
零那もそう思ってた。
なんか情けなくなった。
何の為に生き続けなあかんのんか。
生かされ続けなあかん理由を誰かに与えて欲しかった。
そしたら、義務感や使命感みたいなんも出たかもしれん。
数日後、駅で待ち合わせ。
6時間経っても来ず、捕まったんか、ヤラレたんか...ただただ心配だった。
そんな時、声をかけられた。
汗ばんだ服の上から墨入っとんが解った。
『それ、父さんと一緒か見してやぁっ!!』
零那は咄嗟に言った。
その人はビックリしてた。
あ、一瞬、怒ってたんかも?
『おまえ薬打ちよろぉが。』
『打ってません。』
暫く至近距離で睨まれて、零那も相手の眼の奥を見てた。
『おっしゃ!見したる!』
そう言って服を脱いだ。
背中を向けてくれた。
暫くして服を着た。
『...ほんで?改めて聞くけど何しよん?何時間か前、俺が通った時と変わらんまんまやけど?』
『偽名と携帯番号しか知らん彼氏?待ちよる。』
『なんだそれ!偽名って?』
『うん、偽名。だって遊ぶ鬼やもん。』
そしたら、その人は笑い出した。
笑いが落ち着いて、携帯出したら電話かけた。
『今すぐ駅来い。女待っちょるで。』
切った。
『すぐ来るわ。俺帰るけん。何かあったら呼べや。』
零那の生徒手帳に、名前と携帯番号が書き込まれた。
遠藤...さん。
たぶん、結構年上。
20代後半くらい。
遊鬼は、たぶん、未成年。
マダマダ危なっかしい...
遠藤さんとは、どんな繋がりか...
敵か、味方か...
単なる知り合いか...
そんなことを考えてたら遊鬼が来た。
大怪我してた。
顔も腫れてた。
すぐ帰って貰った。
早速、遠藤さんに、遊鬼に何があったんか聞いてみる。
後日教えるって。
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