| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

美しき異形達

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十五話 白と黒の姉妹その十

「出来るわね」
「拳法部だからかね」
「そうね、天枢薊さんね」
「ああ、そうだよ」
「そして巨門菖蒲さん」
 少女はここで菖蒲にも言った、
「そうね」
「ええ」
 菖蒲は少女のその問いにも答えた。
「私達のことを知っているのね」
「ええ、聞いているわ」
「そうなのね」
「私の名前は開陽黒蘭」
 少女は自分の名前も名乗った。
「二年G組よ」
「同じ二年かよ」
「そうよ、部活は新体操部よ」
「それはまた綺麗な部活だな」
「綺麗かしら」
「綺麗っていうか華があるな」
 そうだとだ、薊は黒蘭に話した。
「新体操ってな」
「そう思うのね」
「ああ、あたし的にはさ」
「そうなのね」
「黒蘭ちゃんって呼んでいいよな」
 薊は黒蘭にここでこう言った。
「名前で」
「いいわよ」
「そうか、じゃあ黒蘭ちゃんな」
 薊は黒蘭の返事を受けてあらためて彼女の名を呼んだ、そのうえで言うのだった。
「あんたあたしに何か用かい?」
「用があると言えばあるわ」
 黒蘭は表情のない顔と声で述べた。
「挨拶しに来たのよ」
「挨拶ねえ」
「貴女のことをよく聞くから」
「あたし有名人なんだな」
「噂通りの人ね」
「噂通りって?」
「明るくて活発な感じね」
 薊はそうした人間だというのだ。
「噂通りに」
「まあよく言われるよ」
 薊は黒蘭の言葉に笑って返した。
「そうな」
「そうね、ではこれからね」
「宜しくっていうんだな」
「ええ、それではね」
 こう返してだった、そうして。
 黒蘭は無表情なままだ、薊達に言った。
「また会いましょう」
「ああ、じゃあな」
 薊が笑顔で返す、そうしてだった。
 黒蘭は一礼してから薊達の前から去った、そうしてだった。
 薊は裕香と菖蒲にだ、彼女が去ったクラスの扉を見て言った。
「何かお人形さんみたいな奴だったな」
「ううん、菖蒲ちゃんに似てるかしら」
 裕香は薊を見てこう言った。
「何処かね」
「そうだよな、けれどあいつ」
 薊はこうも言った。
「出来るな」
「そうね、気配を消していたわね」
「怪人だって気付くのにな」
「あっという間に間合いの傍まで来たな」
「あと少し遅かったら」
 まさに一瞬の間隔で、だ。
「入られていたわね」
「それでやばいことになってたよな」
「ええ」
 菖蒲は薊にその通りだと答えた。
「闘いだったならね」
「あいつひょっとしてな」
 薊は目を鋭くさせて言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧