リメイク版FF3・短編集
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青+赤=紫の嫉妬
◇エンタープライズ船内◇
「ふわぁ~~うぅっ、おはよぉ……」
「相っ変わらず起きて来るの遅いわね、今叩き起こしに行こうと思ってたけど……! ほら、さっさと顔洗って朝食たべちゃいなさいっ」
起きて早々、ルーネスはレフィアに叱られた。
「 ……あれ、イングズとデッシュは?」
「あの二人ならとっくに起きて、船外の方で早朝から手合わせしてるよ。……デッシュさんが僕らに同行するようになってから、イングズとちょくちょくそうしてるよね」
先に朝食を済ませたらしいレフィアと、自分の分の後片付けをしながら答えるアルクゥ。
「またかよ……、おれとはその分手合わせしてくれなくなってさっ」
「あんたが相手じゃ物足りないのよ、きっと。イングズにしてみれば腕の立つ年上が相手の方が、鍛練になるでしょうからねぇ?」
「お、おれだって強くなってきてるよ!」
「それ以上にイングズだって強くなってるのよ、まだまだあんたじゃ追い付けないって事ね!」
レフィアに貶され、ルーネスは膨れっ面になる。
「む゙~~……! ばくばくばくっ」
「わ、ルーネス! よく噛まないで朝食かっ込んだら体に良くないよ……?!」
テーブルの上に置かれていた朝食に、いきなり手を出したルーネスに驚くアルクゥ。
「むぐむぐ……、ゴっクン。────おれも二人の手合わせに交ぜてもらってくるっ!」
そう云ってジョブは戦士のルーネスは武器の剣を携え、急いで船外へ出てゆく。
「……それってただ邪魔したいだけでしょ~? 分かり易い奴ねぇ、やきもち焼いちゃって!」
「デッシュさんにイングズを取られちゃったと思ってるのかな? ……実際あの二人、戦闘でも息ピッタリだもんね。デッシュさんの方が背の高さも年も上だから……おちゃらけたお兄さんと、しっかりした弟って感じかな」
「そうねぇ、今イングズ赤魔だし……"青赤コンビ"とも云えるわね。でもそれ以上に────デッシュの方が色恋沙汰が多いでしょうけどイングズはそっち方面からっきしよね~、サラ姫がいながら……。そういう所もデッシュに"ご教授"されればいいのに。それともアレかしら、デッシュからルーネスが教わって、そのルーネスからイングズに……ってのもアリかもしれないわねぇ」
「レフィア……、何気に不敵な笑みを浮かべてるのは、気のせいかな………」
「そ~ら、これでどうだッ!」
「フ、ならばこちらも……!」
エンタープライズから少し離れた平原の開けた場所で、気持ちの良い朝日を浴びながらデッシュとイングズは互いに剣を手にまるで剣舞しているかの如く、華麗に手合わせをしている。
「す……ストップ! すとぉ~っぷ!!」
ルーネスは一瞬見とれてしまったがすぐ我に返って声を掛け、二人の動きを止めた。
「何だい、ルーネス坊っちゃん! 今いいとこなのに水さすなよッ」
「全くだ……、今頃起きて来たお前に構っている暇は無い」
息ひとつ乱れていない二人に冷たくあしらわれても、ルーネスはめげずに云い返す。
「いっ、いいじゃんか別に……!? それとデッシュ、おれは坊っちゃんじゃないっての! アルクゥの方がそれっぽいだろっ」
「坊っちゃんは坊っちゃんだぜぇ? イングズ君とキミらが歳それ程変わらないようには見えないしなぁ?」
「そりゃアレだ、おれ達よりイングズは老けて見えるだけだろっ!」
「 な゛……ッ 」
少しショックを受けたのか、イングズは云い返せない。
「こらこら~、言葉を選べ坊主! イングズ君はキミらと違って『大人びて』見えるのだよ!! その大人の魅力も解らないんじゃあ……、まだまだお子ちゃまだっつーのッ!」
デッシュは自然な動作で、イングズの肩に片腕を乗せる。
「お、おいっ! 近寄り過ぎだろ、離れろよデッシュ!」
「おやおやぁ、早速嫉妬か? 悔しかったらもっと早く色々成長するこったな~ッ!」
からかうような笑みを浮かべるデッシュと、羽付き帽子の下で若干困った表情のイングズ。
「い……イングズの魅力くらい、おれだって分かるよ! 男のくせに、ムダに顔キレイだし……城の兵士で、強くていっつも冷静で、体付きとかおれと違ってムダにカッコ良すぎるし……!!」
「 る、ルーネス?? 」
「ほっほ~、云えるじゃねぇ?」
「そ、それに! デッシュは自分の事よく男前とか云ってるけど、おれはあんたよりイングズの方が断然いい!! ────あっ」
「 …………… 」
ルーネスの思いきった言葉に、イングズは羽付き帽子の下で少し驚きの表情を浮かべている。
「おっほ~! 素直に云えたじゃないか、お前ッ。ほらイングズよ、あぁまで云われてお前さんも何とか云ってやったらどうだッ?」
何故かけしかけるように、背中をバシッと叩いてルーネスに近寄らせるデッシュ。
「あ、いや、私は──── 」
「 …………… 」
ルーネスはきまりが悪そうに顔を横に逸らし、その頬はほんのり紅くなっている。
「 ────フ、可愛い奴だな、お前は」
「はぁ……?! ちょっ、なに人の頭に片手乗っけてんだよ! 子ども扱いすんなっ、しかもカワイイとか云うな! お、おれは……! イングズみたいにカッコ良くなりたいんだよっ」
羽付き帽子の中から目を細めて微笑まれ、更に頬を紅潮させるルーネスだが、頭に置かれたイングズの片手を払い退けようとはしない。
「私のようになる必要はないさ。……お前は、お前のままでいい」
「 むうぅ……っ」
ルーネスは妙な唸り声を出すが、片手で銀髪を優しく撫でられいつの間にかアメジスト色の目をつむって、その手の優しい感触に浸る。
────が、その手は急にルーネスの額をパシッと軽くはたく。
「いてっ、何すん……!」
「手合わせ、しに来たんだろう? ほら、さっさと構えろ」
「へっ、上等だぜ。イングズから今日こそ1本取ってやるからな! せぇりゃあーっ!」
「フ、それではまだ甘いぞ……! はッ!」
「………あら? いつの間に船内に戻って来てたの、デッシュ?」
「いやぁレフィアにアルクゥ、お邪魔虫な俺は退散して来ただけさ!」
「あ、じゃあルーネスとイングズは手合わせしてるんだね」
「ふ~ん……、ご教授成功ってとこかしら?」
「まぁな~? だが"やっこさん"達、まだまだこれからってヤツですぜ、レフィア嬢ッ!」
「ふふん、そこはまぁ何気にけしかけつつ、見守りましょ……!」
(こ、この二人、何がしたいんだろう……)
アルクゥは、怪し気な笑みを浮かべるデッシュとレフィアにちょっとした戦慄を覚えるのであった。
End
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