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髑髏の山

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第六章

「洞窟に隠れ。木の実や茸を食ってな」
「よく生きていられましたね」
「猛獣から逃れてな」
 そうしてだったというのだ。
「何とか生きていた。生き残れたのは御仏のお陰だ」
「本当にそうですね」
「何度も餓えたがな。生き残れた」
「それでプノンペンに戻ってもですか」
「寺のことが気になり近くにいたがな」
 だが、だ。どうしても僧侶であることは言えなかったというのだ。またポル=ポトの様な狂気の集団が出たらと思いそれは隠していたというのだ。
「それでもだ」
「そうだったんですね」
「噂を聞いてまさかと思っていた」
「だから俺達が肝試しをしようって言ったら止めたんですね」
「その通りだ、危ういところだった」
 穴を見ながらの言葉だった。
「あの穴に生き埋めにされればな」
「髑髏の仲間入りだったんですね」
「俺達が」
「おそらくあの穴にだ」
 何時の間にか開いていたその穴にだというのだ。
「あの人達がいる」
「坊さんや尼さんがですか」
「ポル=ポト派に殺された」
「そうだ、あの人達がな」
 老人は苦々しい声で答えた。
「埋められているのだ」
「じゃあこのままにしておいたら」
「どうなるんですか?」
「今は塩を撒いて簡単に封じただけだ」
 それだけに過ぎないというのだ。
「だからな」
「ここは、ですか」
「怨霊を鎮めますか」
「明日本格的に行う、これでも修行は続けてきた」
 身分は隠していてもだ、僧侶としてのそれは行ってきたというのだ。
「だからな」
「何か凄いことになっていますね」
「何時かはしなければと思っていた」
 老人は暗い言葉を出した、ナム達に背を向けたまま話しながら。
「その時が来たのだ」
「そうですか」
だが。ここに来るのはな」
「それは?」
「どうしても出来なかった」
 それが何故かもだ、彼は話した。
「ここで殺された人達の無念を思うとな」
「いたたまれなくてですか」
「逃げていた」
 ここに来て怨霊達を鎮め成仏させることからだ。 
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