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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第六話 Central highway

 
前書き
無印始動。 

 
ハイウェイの道筋に沿って歩く1体のレプリロイドがいた。
彼の名はVAVA。
かつての特A級ハンターであり、イレギュラー認定を受けて留置場に入れられていたレプリロイド。

VAVA「レプリロイドの可能性…ふっ、笑わせてくれるぜ」

嘲笑を浮かべるVAVA。
留置場での会話が脳裏を過ぎる。




































時折伝わる振動。
恐らく外では何らかの事件が発生しているのだろう。
例のメカニロイド暴走事件かもしれないが、まあ、今の自分には関係のないことだ。
VAVAは目を閉じて、スリープモードに切り替えようとした時であった。
独房の扉が開いたのは。

VAVA『…これはこれはシグマ隊長。精鋭部隊の隊長が1匹のイレギュラーを直々に処分しようと?』

最強のイレギュラーハンター・シグマ。
どうやら自分には僅かな希望もないらしい。
だがどうせ殺されるなら、出来るだけの抵抗をして殺されてやる。
何もしないで殺されるのは自分のプライドが許さない。
シグマがビームサーベルを抜いた。

VAVA『ぐっ!!』

手錠をされた腕を前に出して少しでも生存率を上げようとする。
しかし、シグマはVAVAの予想していたことはしなかった。
それどころか手錠、足枷を破壊した。

VAVA『…何の真似だ?』

シグマ『力を貸せVAVA。エックスを倒す』

VAVA『エックスを倒す…だと?あの甘ちゃんハンターをか?』

シグマ『そうだ』

VAVA『ふん…何を言い出すかと思えば…あの悩んでばかりいて実力さえ満足に発揮出来ない奴を倒してどうなると言うんだ?それとも悩みすぎてとうとうエックスもイレギュラー化したのか?』

嘲笑を浮かべてシグマを睨み据えるVAVAに対して、シグマは無表情のまま口を開いた。

シグマ『“悩む”…それが他のレプリロイドには存在しない特殊な能力。その能力を持つ故にエックスは深く悩み、我々では到達出来ない“答え”を出す…それがレプリロイドの新たな可能性なのだが、エックスはその秘められた可能性に気づいてはおらん』

VAVA『つまりその可能性とやらのために自らイレギュラーになると?そして俺にその手伝いをしろと?』

シグマ『…理由はそれだけではないがな。だからこそ来たのだ。』

VAVA『ふ、ふはははは!!なる程、自分から狂うか…魅力的なことを言ってくれるぜ。だがな、俺は自分にしか従わない。それがどういうことか分かるかシグマ?』

VAVAの笑みにシグマも笑みを浮かべた。

シグマ『無論だ。貴様は誰かの命令に従うような男ではない。自分のためだけに戦い、私の首をも狙うつもりなのだろう?それは今回に関してはこのような事態に陥った場合ならば、寧ろ好ましいとさえ思っている。』

VAVA『なる程…いいだろう。しばらくはお前の掌の上で踊らされてやる。だが、覚えておけシグマ…お前も、エックス同様粉微塵にしてやる…』

シグマ『やはりお前もそうだ。お前もエックスやルイン達とは違う意味の“可能性”を秘めし者。見込んだ通りだ。』

VAVA『ふん…』

シグマ『上にお前の武装を用意してある。今まで以上に存分に働いてくれ。』

VAVA『ああ、精々励むさ』



































VAVA「…シグマ、お前がエックスに何を見出したかは知らんが、レプリロイドの可能性だとか未来だとか…そんな物は俺にとってどうでもいいことだ。俺はVAVA…最強のレプリロイドはシグマでもなければゼロでも、ルインでもない…この俺だっ!!」

一気に跳躍。
そして着地と同時に迫り来るメカニロイドを腕部兵装のチェリーブラストで殲滅する。

VAVA「チッ、まともな整備もされてないことを考えればマシな方か…シグマの野郎、いい趣味してやがる」

ハンター時代に使っていた頃より威力が僅かに落ちていることにVAVAは苛立つ。

VAVA「まあいい、このイレギュラー共の動きから察するに暴動でハンター共の戦力を分断してエックスを追い込む手か…恐らくどこかにエックスがいるはずだが…」

少なくともメカニロイド程度にはやられはしないだろう。
甘ちゃんではあるが実力はそれなりにある。

VAVA「さて…エックスを探す前に…」

右肩のキャノン砲から砲弾を放って、ロードアタッカーズの車を搭乗者ごと粉砕する。

VAVA「楽しませてもらうとするか!!」




































VAVAは留置されていた期間のブランクを感じさせない動きでメカニロイド等の雑兵を破壊していく。

VAVA「ウォーミングアップはこれくらいでいいだろう…」

最後のメカニロイドを殴り砕いて目の前のレプリロイドを見据えるVAVA。

VAVA「最後はお前だ。レプリロイドの可能性さんよ」

イレギュラーハンター・エックスがVAVAの目の前にいた。

エックス「VAVA!?ここで何をしている!?」

VAVA「ようエックス。何を仕出かしたのか知らんが随分とシグマに気に入られたようだな。シグマの掌の上で踊らされている気分はどうだい大将?」

エックス「シグマだと…貴様もシグマの反乱に加わっているんだな!?」

VAVA「まあ、今のところはな。いずれは奴もぶっ潰すがな……」

エックス「………」

VAVA「シグマは随分と面白いことを言ってたぜ。お前にはレプリロイドの可能性があるってな。もしそれが本当なら、その力を見せてもらうぞ!!」

エックス「可能性…何を訳の分からないことを!!VAVA、お前を拘束する!!」

VAVAがエックスに向けてバルカンを放つ。
危なげなくエックスはそれを回避してみせる。

VAVA「反応速度は中々だ。」

エックス「この……っ!!」

VAVA「バスターの威力も精度も申し分ない。だが、スタッガーとの決闘の時に見せた力はそんなもんじゃなかったはずだ。見せてみろ!!」

キャノン砲による砲弾がエックスに炸裂し、吹き飛ばす。

エックス「ぐっ…」

VAVAとエックスでは戦いの条件が違いすぎる。
ただエックスを破壊しようとするVAVAと拘束を目的としているエックスとでは攻撃にも差が出る。

VAVA「この程度か…ならがっかりだぜエックス!!」

全砲門を開き、全火力がエックスを襲った。





































ハンターベースでの治療を受けていたルインはウィルスの除去に手間取り、エックスやゼロと大幅に遅れて復帰した。
現在は高層ビルの頂上から周囲を見渡し、状況を確認する。

ルイン「…………」

今のシティ・アーベルの空は灰色に覆われ、かつてのような雲1つない空が嘘のようである。
地上では至る所から黒煙があがり、炎が噴き出している。
建物が倒壊し、痛々しい姿を曝している。
ルインは胸の辺りに鈍い痛みを覚えた。
シグマの計画に気づけなかったがために起こった悲劇。
必ず…必ず止めなくては…。

ルイン「止めて見せる…この戦いを…ルイン…行きます!!」

高層ビルから飛び降りたルインの瞳には強い光が宿っていた。





































フットパーツの緊急加速装置をフルに使い、落下速度を減速させながら着地する。
ルインが着地するのと同時に蜂のようなメカニロイドが押し寄せてくる。
チャージしたZXバスターから周囲に2つの赤い螺旋状のエネルギー弾を伴った砲撃が放たれた。
大した耐久性を持たないメカニロイド達は砲撃に飲まれて蒸発していく。

ルイン「イレギュラーを扇動して暴動によってハンターの戦力を分断してエックスを追い込む気なんだね…シグマ…あなたの好きにはさせない!!」

後にルインの目の前に蜂のようなヘリ型メカニロイドが現れたが、ZXバスターをセイバーモードに切り換えて強烈な回転斬りを喰らわせ、フルチャージショットを喰らわせるとあっさりと沈んだ。

ルイン「(おかしいな…敵の数が思っていたよりも少なすぎる…エックスが破壊した割には数が…)」

ルインは高速道路をひたすらに突き進んでいく。
メカニロイドをひたすらに破砕しながら突き進んだ。
時に撃ち抜き、時には切り捨てながら。
メカニロイドが道路を砕いているので進みづらいが特に問題はない。

ルイン「ん?これは…ロードアタッカーズの車?」

現在イレギュラーハンターの頭を悩ませているレプリロイド暴走族。
ボンネットには大型のビーム砲を装備しており、それで攻撃をしてくるために他のイレギュラーハンター達が頭を悩ませていたのを見たことがある。

ルイン「これをやったのはエックスじゃない…」

バスターによる攻撃ではない実弾による物だ。
レプリロイドのアーマーを粉々に出来る程の火力を持つレプリロイドは…。

ルイン「ああ……やっぱり君だったんだVAVA」

VAVA「ルインか」

目の前には倒れ伏しているエックス。

ルイン「やあVAVA。えっと…数日ぶりだね」

VAVA「ふん、相変わらずおかしな奴だ」

ルイン「シグマに出されたんでしょ?プライドの高い君ならシグマなんかに従うはずがないと思ってたんだけどね?」

VAVA「俺がシグマに従う?違うな、俺は自分にしか従わない。シグマの奴が興味深いことを言っていたからな。この甘ちゃんハンターがレプリロイドの可能性だとか言っていてな…本当かどうか試してみたらこのザマだ。」

倒れ伏しているエックスを蹴り上げ、ルインの近くに吹き飛ばす。
ルインはエックスを受け止めると、近くの残骸に寄り掛からせる。

VAVA「確かに実力は申し分ないかもしれないが、そいつは甘すぎる。破壊すればいいものを俺をあくまで捕えようとした大馬鹿野郎だ」

エックスとスタッガーの決闘を映像で見ていたVAVAはエックスの実力だけは多少は認めてはいた。
実力だけは。
バスターの威力も機動力も悪くない。
甘ささえなければ、戦闘型レプリロイドの上位に食い込むだろう。
しかし、ハンターにあるまじき甘さがそれを台なしにしていた。

VAVA「こんな甘ちゃんハンターをレプリロイドの可能性と言うシグマもとうとう電子頭脳がイカレたのかもしれんな。」

自分と同じように…。
嘲笑いながら言うVAVAにルインも冷笑を浮かべた。

ルイン「ねえVAVA…まだ暴れ足りないんじゃない…?私が遊び相手になってあげようか?」

VAVA「ククク…、暇潰しにはなりそうだ。少し遊んでやるとするか」

ルインの冷笑を見て、こいつにもこんな表情が出来たのかと、感心してしまった。
表情には出さずに右肩のキャノンを向ける。
ルインもセイバーモードからバスターモードに切り換えてバスターのチャージを開始する。

VAVA「丁度いい、新しい兵装を試させてもらうぜ!!ナーバスゴースト!!」

ルイン「フルチャージ!!」

VAVAのキャノンから放たれた高出力のレーザーとルインのフルチャージショットがぶつかり合う。
レーザーは砲撃の中心は砕いたが、砲撃に伴われていたエネルギー弾がVAVAに襲い掛かる。
VAVAはそれを翻し、ルインに向けてバルカンを放つ。
しかし、バルカンはルインのセイバーによって蒸発する。
ルインに届く弾丸は極僅かだ。
それすらもルインのアーマーには傷つけることは出来ない。

VAVA「ほう…」

ルインのアーマーの頑強さに目を見張りながらも、脚部に装備されているボムをルインに向けて放つ。
直ぐさまルインも距離を取る。
ルインがバスターを向けたその時、VAVAが拳を構えて突っ込んでくる。

ルイン「!!?」

まさかの動きに目を見開き、硬直した。
VAVAの右腕が発射された。
ルインはそれを屈んでかわすが、ロケットパンチは軌道を変えてルインの背中に命中する。

ルイン「ぐっ!!?」

VAVA「インフィニティーギグ…高いホーミング性を持ったロケットパンチだ。」

ルイン「ああ…確か、ロケットパンチ系の兵装を持ってたね…」

セイバーを杖がわりにして立ち上がるルイン。

ルイン「それにしても君らしくない戦い方だね。普段の君なら、圧倒的な火力で敵を捩じ伏せる戦いをするのに、随分と控えめな攻撃ばかり…大方、捕らえられた時のままなんでしょう?」

充分な補給はされておらず整備も特にされてはいないのかもしれない。
実弾を多用するVAVAの兵装は整備を怠るとリスクが大きい。
最悪、暴発して自身を破壊してしまう。

VAVA「ふん…あのシグマも随分といい趣味をしていたということだ。」

ルイン「ああいうのは性悪って言うんだよ」

VAVA「違いねえ」

脚部が展開し、バーナーの炎がルインに迫る。
それを横にかわしてバスターをチャージし、緊急加速装置を使い一気にVAVAに肉薄する。
戦闘でルインが最も多用する手だ。
避けきれないと悟ったのか、VAVAは全身から冷気を放ち始めた。

VAVA「フローズンキャッスル!!!!」

身体の表面に薄く硬い氷を纏う。
フルチャージショットは直撃したものの、威力の大半は殺されてしまった。

ルイン「……君、そんな兵装を持ってたの…?」

VAVA「ふん…あのペンギンのデータを参考にしてな。お前が来るのは分かっていたからな、用心するに越したことはない。即興にしては中々の出来だろ?」

嘲笑うように言うVAVA。

ルイン「(ちょっとやばいかな…?)」

表情には出さずにルインは何とか離脱を考える。

VAVA「逃げようとしても無駄だ。スピードデビル!!」

次にVAVAは全身に薄く空気の層を纏う。
次の瞬間、VAVAが凄まじい速度で肉薄する。
繰り出される拳。
VAVA最強のロケットパンチ系の兵装・ゴールデンライト。
まともに受ければただではすまない。
間一髪でかわす。
ヘッドパーツの一部が粉砕される。

ルイン「…っ、全身に薄く空気の層を纏うことで空気抵抗を軽減して、移動速度を向上させたんだね?」

VAVA「ご名答。イーグリードのデータを参考にさせてもらった。こちらも即興だったが悪くない」

ルイン「…どんな天才だよ君は?」

VAVA「当然だ。俺はVAVA、シグマを倒し、最強のレプリロイドとなる者だ」

ルイン「そう、嫌いじゃないよ?君のそういうとこ…でも私ばかり見ていてもいいの?」

VAVA「!!?」

殺気に気づいたVAVAは横から放たれた紅い砲撃に気づき、飛び上がる。

ゼロ「VAVA!!」

VAVA「ゼロか!?」

ルイン「ゼロ…」

ゼロがバスターを構えながらルインとVAVAの間に入る。
バスターからフルチャージショットが放たれた。
ルインよりも強力で、それでいて正確に放たれる砲撃。

VAVA「そいつらのために随分と頑張るんだな。」

ゼロ「こいつらはシグマを倒すのにいなくてはならない奴らだ。ここで失うわけにはいかない」

VAVA「ふん…ここでお前達を潰すのも面白そうだが…」

VAVAはチラリとエックスを見遣る。
どうやらダメージから回復したようで、起き上がった。
流石に3対1は分が悪い。

VAVA「今は退かせてもらうぜ」

ルイン「逃がすと思う?」

ルインがバスターをチャージし、ゼロと共にVAVAへと向ける。
エックス達が得意とする合体砲撃。
クロスチャージショットを繰り出すつもりなのだろうが…。
旗艦兼空中要塞デスログマーがこちらに向かってきた。
VAVAは道路の外に飛び降り、デスログマーの翼に着地。
そのまま呆然とする一行の前でデスログマーと共に空の向こうへと去って行ってしまった。

ルイン「デスログマー…」

ゼロ「第7部隊…イーグリードが堕ちたか…」

この事実は敵が確実な制空権を手に入れたことに等しい。

エックス「ゼロ…VAVAは一体何を…?」

傷ついた身体を引きずりながらエックスはゼロに尋ねる。

ゼロ「分かっているのは…奴は俺達の敵だということだ…」

ゼロはデスログマーの去った空の向こうを睨みつけながら言った。
親友であるイーグリードが下された事実に対する彼の心中は察するに難い。
それでも彼はあくまで冷静なハンターとしての態度を貫いた。

ゼロ「俺はしばらくシグマの足取りを追う。お前達は一旦ハンターベースに戻れ。」

エックス「分かった。後で合流しよう。」

ルイン「気をつけてねゼロ」

ゼロ「ああ、後は頼んだ。」

エックス「分かった。……ゼロ。ありがとう、また君に助けられた」

エックスの心からの礼に言葉を返さずゼロは笑みを浮かべた後、去って行った。

エックス「ルイン、君もありがとう助けてくれて」

ルイン「気にしないで、だって仲間でしょ?」

エックスとルインは互いに笑みを浮かべると転送装置でハンターベースへと戻る。






























ハンターベースに戻ったエックス達はメンテナンスを受けると司令部に向かった。
オペレーターの顔色が悪い。

ルイン「どうしたの?」

「各地でイレギュラーによる暴動が発生しているのよ…本格的に動き出したようね…」

エックス「くっ…シグマの部下達か…」

ルイン「早く何とかしないとね…」

エックス「シグマを追うより、こっちを止めるのが先か…!!」

世界各地で暴動を起こしている特A級ハンターを止めるためにエックスとルインはモニターに映るエリアを見つめるのだった。 
 

 
後書き
VAVA戦終了。
VAVAはルインを警戒してフル装備で来ました。 
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